鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

Malena Szlam&"Altiplano"/来たるのは大地の黄昏

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今まで自分はあまり実験映画とは縁がなかった。しかし最近はMUBIなどで実験映画界の俊英であるケヴィン・ジェロームエヴァーソン Kevin Jerome Eversonベン・リヴァース Ben Riversなどの作品が配信されており、そういった作品を観る機会がかなり増えた。ということで今回は数いる注目の実験映画作家の中から特に注目すべきだろう人物であるMalena Szlamと彼女の最新短編である“Altiplano”を紹介していこう。

題名になっているアルティプラーノとが何か。これは新生代に形成された山脈の間に広がっている標高の高い平坦な高原地域のことを指している。アンデス山脈の中でもペルー南部からボリビアやチリの北部までこの高原は広がっているという。荒涼かつ乾燥した厳しい気象ゆえ、草木はほとんど生えず赤茶けた大地がここには延々と広がっている。

まずカメラが映し出すのはそんな赤茶色の大地である。抜けるような青い空の下、果てしなく広がる寂漠たる風景は見る者にどこか畏敬の念を抱かせる類いの風景として映る。監督はこの赤茶色の大地の風景の数々を幾つも重ねては星のように瞬かせ、明滅させていく。その浮かんでは消える大地たちは私たちの心を掻き乱していくだろう。

それが繰り返されることで今作は段々と現実離れした感触を宿し始める。橙色に染まる大地は不穏なる雰囲気を纏い出すのだが、その光景は黙示録の光景を想起させるものだ。そして地表からは真っ白に染まった熱湯と水蒸気が禍々しく噴き出していく。まるで大地が終りを迎えようとしているかのように。

次に“Altiplano”が至る場所は地獄の季節だ。血の赤に染まった月は闇を彷徨い続け、冥界の隆盛を祝福している。色彩の反転した蒼白の大地は骨の蠢きを見せ、世界を濁りで満たしていく。生の証はどこにもほとんど存在していない。ただただ圧倒的な無限の死だけがそこには存在している。“Antiplano”はそんな世界の黄昏を描き出した幻惑的な実験映画だと言えるだろう。

他にネットで観られる彼女の作品に、カナダのサイケデリック・ロックバンドSuunsによる楽曲“Sunspot”のPVがある。濃密な青に塗り潰された森の風景から今作は幕を開ける。高速で移り変わる風景はひどく幻想的であり地球の青い黄昏を幻視させるものだ。一方でその色彩と競いあうような形で赤の彩りが映像に現れ始める。そして炎のような色彩の中で世界は燃え盛るのだ。これらの作品を観ると、Szlamは黙示録を宿命づけられた世界に捧げる挽歌を作り続けているように思われてならない。

Malena Szlamはチリ出身、モントリオールを拠点とする映像作家だ。アルテス・イ・シエンシアス・ソシアレス大学ではファイン・アートを、モントリオールコンコルディア大学では映画製作を学んでいた。実験映画やパフォーミング・アートなど多岐に渡って作品を製作する傍ら、実験映画のプログラマーとしても活躍している。そして2018年にはロサンゼルスで回顧展が行われた。そんな現在知名度急上昇中の作家Szlamの今後に期待。

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私の好きな監督・俳優シリーズ
その201 Yared Zeleke&"Lamb"/エチオピア、男らしさじゃなく自分らしさのために
その202 João Viana&"A batalha de Tabatô"/ギニアビサウ、奪われた故郷への帰還
その203 Sithasolwazi Kentane&"Woman Undressed"/ Black African Female Me
その204 Victor Viyuoh&"Ninah's Dowry"/カメルーン、流れる涙と大いなる怒り
その205 Tobias Nölle&"Aloys"/私たちを動かす全ては、頭の中にだけあるの?
その206 Michalina Olszańska&"Já, Olga Hepnarová"/私、オルガ・ヘプナロヴァはお前たちに死刑を宣告する
その207 Agnieszka Smoczynska&"Córki dancingu"/人魚たちは極彩色の愛を泳ぐ
その208 Rosemary Myers&"Girl Asleep"/15歳、吐き気と不安の思春期ファンタジー!
その209 Nanfu Wang&"Hooligan Sparrow"/カメラ、沈黙を切り裂く力
その210 Massoud Bakhshi&"Yek khanévadéh-e mohtaram"/革命と戦争、あの頃失われた何か
その211 Juni Shanaj&"Pharmakon"/アルバニア、誕生の後の救いがたき孤独
その212 済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!
その213 アレクサンドラ・ニエンチク&"Centaur"/ボスニア、永遠のごとく引き伸ばされた苦痛
その214 フィリップ・ルザージュ&「僕のまわりにいる悪魔」/悪魔たち、密やかな蠢き
その215 ジョアン・サラヴィザ&"Montanha"/全てはいつの間にか過ぎ去り
その216 Tizza Covi&"Mister Universo"/イタリア、奇跡の男を探し求めて
その217 Sofia Exarchou&"Park"/アテネ、オリンピックが一体何を残した?
その218 ダミアン・マニヴェル&"Le Parc"/愛が枯れ果て、闇が訪れる
その219 カエル・エルス&「サマー・フィーリング」/彼女の死の先にも、人生は続いている
その220 Kazik Radwanski&"How Heavy This Hammer"/カナダ映画界の毛穴に迫れ!
その221 Vladimir Durán&"Adiós entusiasmo"/コロンビア、親子っていうのは何ともかんとも
その222 Paul Negoescu&"O lună în Thailandă"/今の幸せと、ありえたかもしれない幸せと
その223 Anatol Durbală&"Ce lume minunată"/モルドバ、踏み躙られる若き命たち
その224 Jang Woo-jin&"Autumn, Autumn"/でも、幸せって一体どんなだっただろう?
その225 Jérôme Reybaud&"Jours de France"/われらがGrindr世代のフランスよ
その226 Sebastian Mihăilescu&"Apartament interbelic, în zona superbă, ultra-centrală"/ルーマニアと日本、奇妙な交わり
その227 パス・エンシナ&"Ejercicios de memoria"/パラグアイ、この忌まわしき記憶をどう語ればいい?
その228 アリス・ロウ&"Prevenge"/私の赤ちゃんがクソ共をブチ殺せと囁いてる
その229 マッティ・ドゥ&"Dearest Sister"/ラオス、横たわる富と恐怖の溝
その230 アンゲラ・シャーネレク&"Orly"/流れゆく時に、一瞬の輝きを
その231 スヴェン・タディッケン&「熟れた快楽」/神の消失に、性の荒野へと
その232 Asaph Polonsky&"One Week and a Day"/イスラエル、哀しみと真心のマリファナ
その233 Syllas Tzoumerkas&"A blast"/ギリシャ、激発へと至る怒り
その234 Ektoras Lygizos&"Boy eating the bird's food"/日常という名の奇妙なる身体性
その235 Eloy Domínguez Serén&"Ingen ko på isen"/スウェーデン、僕の生きる場所
その236 Emmanuel Gras&"Makala"/コンゴ、夢のために歩き続けて
その237 ベロニカ・リナス&「ドッグ・レディ」/そして、犬になる
その238 ルクサンドラ・ゼニデ&「テキールの奇跡」/奇跡は這いずる泥の奥から
その239 Milagros Mumenthaler&"La idea de un lago"/湖に揺らめく記憶たちについて
その240 アッティラ・ティル&「ヒットマン:インポッシブル」/ハンガリー、これが僕たちの物語
その241 Vallo Toomla&"Teesklejad"/エストニア、ガラスの奥の虚栄
その242 Ali Abbasi&"Shelly"/この赤ちゃんが、私を殺す
その243 Grigor Lefterov&"Hristo"/ソフィア、薄紫と錆色の街
その244 Bujar Alimani&"Amnestia"/アルバニア、静かなる激動の中で
その245 Livia Ungur&"Hotel Dallas"/ダラスとルーマニアの奇妙な愛憎
その246 Edualdo Williams&"El auge del humano"/うつむく世代の生温き黙示録
その247 Ralitza Petrova&"Godless"/神なき後に、贖罪の歌声を
その248 Ben Young&"Hounds of Love"/オーストラリア、愛のケダモノたち
その249 Izer Aliu&"Hunting Flies"/マケドニア、巻き起こる教室戦争
その250 Ana Urushadze&"Scary Mother"/ジョージア、とある怪物の肖像
その251 Ilian Metev&"3/4"/一緒に過ごす最後の夏のこと
その252 Cyril Schäublin&"Dene wos guet geit"/Wi-Fi スマートフォン ディストピア
その253 Alena Lodkina&"Strange Colours"/オーストラリア、かけがえのない大地で
その254 Kevan Funk&"Hello Destroyer"/カナダ、スポーツという名の暴力
その255 Katarzyna Rosłaniec&"Szatan kazał tańczyć"/私は負け犬になるため生まれてきたんだ
その256 Darío Mascambroni&"Mochila de plomo"/お前がぼくの父さんを殺したんだ
その257 ヴィルジル・ヴェルニエ&"Sophia Antipolis"/ソフィア・アンティポリスという名の少女
その258 Matthieu Bareyre&“l’Epoque”/パリ、この夜は私たちのもの
その259 André Novais Oliveira&"Temporada"/止まることない愛おしい時の流れ
その260 Xacio Baño&"Trote"/ガリシア、人生を愛おしむ手つき
その261 Joshua Magar&"Siyabonga"/南アフリカ、ああ俳優になりたいなぁ
その262 Ognjen Glavonić&"Dubina dva"/トラックの棺、肉体に埋まる銃弾
その263 Nelson Carlo de Los Santos Arias&"Cocote"/ドミニカ共和国、この大いなる国よ
その264 Arí Maniel Cruz&"Antes Que Cante El Gallo"/プエルトリコ、貧しさこそが彼女たちを
その265 Farnoosh Samadi&"Gaze"/イラン、私を追い続ける視線
その266 Alireza Khatami&"Los Versos del Olvido"/チリ、鯨は失われた過去を夢見る
その267 Nicole Vögele&"打烊時間"/台湾、眠らない街 眠らない人々
その268 Ashley McKenzie&"Werewolf"/あなたしかいないから、彷徨い続けて
その269 エミール・バイガジン&"Ranenyy angel"/カザフスタン、希望も未来も全ては潰える
その270 Adriaan Ditvoorst&"De witte waan"/オランダ映画界、悲運の異端児
その271 ヤン・P・マトゥシンスキ&「最後の家族」/おめでとう、ベクシンスキー
その272 Liryc Paolo Dela Cruz&"Sa pagitan ng pagdalaw at paglimot"/フィリピン、世界があなたを忘れ去ろうとも
その273 ババク・アンバリ&「アンダー・ザ・シャドウ」/イラン、母という名の影
その274 Vlado Škafar&"Mama"/スロヴェニア、母と娘は自然に抱かれて
その275 Salomé Jashi&"The Dazzling Light of Sunset"/ジョージア、ささやかな日常は世界を映す
その276 Gürcan Keltek&"Meteorlar"/クルド、廃墟の頭上に輝く流れ星
その277 Filipa Reis&"Djon África"/カーボベルデ、自分探しの旅へ出かけよう!
その278 Travis Wilkerson&"Did You Wonder Who Fired the Gun?"/その"白"がアメリカを燃やし尽くす
その279 Mariano González&"Los globos"/父と息子、そこに絆はあるのか?
その280 Tonie van der Merwe&"Revenge"/黒人たちよ、アパルトヘイトを撃ち抜け!
その281 Bodzsár Márk&"Isteni müszak"/ブダペスト、夜を駆ける血まみれ救急車
その282 Winston DeGiobbi&"Mass for Shut-Ins"/ノヴァスコシア、どこまでも広がる荒廃
その283 パスカル・セルヴォ&「ユーグ」/身も心も裸になっていけ!
その284 Ana Cristina Barragán&"Alba"/エクアドル、変わりゆくわたしの身体を知ること
その285 Kyros Papavassiliou&"Impressions of a Drowned Man"/死してなお彷徨う者の詩
その286 未公開映画を鑑賞できるサイトはどこ?日本からも観られる海外配信サイト6選!
その287 Kaouther Ben Hania&"Beauty and the Dogs"/お前はこの国を、この美しいチュニジアを愛してるか?
その288 Chloé Robichaud&"Pays"/彼女たちの人生が交わるその時に
その289 Kantemir Balagov&"Closeness"/家族という名の絆と呪い
その290 Aleksandr Khant&"How Viktor 'the Garlic' Took Alexey 'the Stud' to the Nursing Home"/オトンとオレと、時々、ロシア
その291 Ivan I. Tverdovsky&"Zoology"/ロシア、尻尾に芽生える愛と闇
その292 Emre Yeksan&"Yuva"/兄と弟、山の奥底で
その293 Szőcs Petra&"Deva"/ルーマニアとハンガリーが交わる場所で
その294 Flávia Castro&"Deslemblo"/喪失から紡がれる"私"の物語
その295 Mahmut Fazil Coşkun&"Anons"/トルコ、クーデターの裏側で
その296 Sofia Bohdanowicz&"Maison du bonheur"/老いることも、また1つの喜び
その297 Gastón Solnicki&"Introduzione all'oscuro"/死者に捧げるポストカード
その298 Ivan Ayr&"Soni"/インド、この国で女性として生きるということ
その299 Phuttiphong Aroonpheng&"Manta Ray"/タイ、紡がれる友情と煌めく七色と
その300 Babak Jalali&"Radio Dreams"/ラジオには夢がある……のか?
その301 アイダ・パナハンデ&「ナヒード」/イラン、灰色に染まる母の孤独
その302 Iram Haq&"Hva vil folk si"/パキスタン、尊厳に翻弄されて
その303 ヴァレスカ・グリーゼバッハ&"Western"/西欧と東欧の交わる大地で
その304 ミカエル・エール&"Amanda"/僕たちにはまだ時間がある
その305 Bogdan Theodor Olteanu&"Câteva conversaţii despre o fată foarte înaltă"/ルーマニア、私たちの愛について
その306 工藤梨穂&「オーファンズ・ブルース」/記憶の終りは世界の終り
その307 Oleg Mavromatti&"Monkey, Ostrich and Grave"/ネットに転がる無限の狂気
その308 Juliana Antunes&"Baronesa"/ファヴェーラに広がるありのままの日常
その309 Chloé Zhao&"The Rider"/夢の終りの先に広がる風景
その310 Lola Arias&"Teatro de guerra"/再演されるフォークランド紛争の傷痕
その311 Madeleine Sami&"The Breaker Upperers"/ニュージーランド、彼女たちの絆は永遠?
その312 Lonnie van Brummelen&"Episode of the Sea"/オランダ、海にたゆたう記憶たち

Lonnie van Brummelen&"Episode of the Sea"/オランダ、海にたゆたう記憶たち

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伝統はそれぞれの国に存在しているだろう。だが1つではあり得ない。更に地域ごとにその色彩を変えながら存在している。それらは、しかし、そういった伝統は急速に移りゆく世界においては均一化され消え去ることを余儀なくされてきた。そんな中でも映画などのメディアは様々な形でそれらを記録してきた訳であるが、今回紹介するLonnie van Brummelen&Siebren de Haan監督作“Episode of the Sea”は正にその作品の1つだ。

今作の舞台はオランダの中央に位置する漁村ユルクだ。ここでは特有の言語や伝統文化を今に受け継ぎながら、人々は生活を営んでいる。住民の殆どが漁業に従事しており、特に男性は漁師として働いている者たちが多く、親から子へとその仕事は継承されていっている。そして彼らは今日も朝早くから大海原へと漁に出掛けていく。

監督たちはそんな漁師たちの営みを淡々と見据えていく。網を力強く引っ張って大量の魚を捕らえていく。甲板に横たわる縄を自由自在に結んでいく。夜の闇が辺りに犇めく中で、他には何も目をくれずに黙々と作業を続ける。漁の最中、憂いを湛えた目で大海原を見つめる。その様は崇高な感触に満ちていると言ってもいいだろう。

作品は漁村それ自体も描き出そうとする。漁村の周りには森が広がっているが、雰囲気はどこか寂れており寒々しい風景がそこにはある。それでも生き物たちは生命力旺盛に生きており、森では虫たちが鳴き、海辺では鳥たちが鳴き声を響かせている。工場では漁師たちが獲ってきた魚を機械的に選別していく人々の姿がある。様々な営みがここには存在しているのだ。

そして作品はユルクの深層にまで潜行していく。今、この村には世知辛い状況が広がっている。昔、漁師たちは誇り高き男たちとして尊敬を集めてきた。しかし今は海の資源を簒奪する海賊と呼ばれている。更にここに生まれる男性たちは皆が漁師になる定めにあるが、若い世代は漁師という仕事に将来性を見出だせず漁村を去っていく。その代わりにポーランドからの移民労働者たちが仕事に就くのだが、伝統が受け継がれないことに対して漁師たちは忸怩たる思いを抱いているのだ。

そんな中、劇中にはいくつもの寸劇が挿入される。漁師たちが監督たちの脚本に従って自分たちの日常を再演するという内容のものだ。声の抑揚や台詞回しは演劇を彷彿とさせるものであり、ユルク独特の方言の響きもその印象を強めていく。そうして再演される日常は、失われゆく伝統への憂慮や減っていく労働力への焦燥など、先行きへの不安や憂鬱に満ちている。それらについて漁師たちはカメラを通じて私たちに強く語りかけてくる。

彼らの憂いの通り、伝統は終わってしまうのだろうか。答えはNoだろう。終盤においてカメラは漁師たちが乗る船の姿を映し出す。丁寧に整備されていくそれは、巨大な要塞さながらの威容を湛えており、見るものに息を呑ませるような迫力が漲っている。それらを見ているとユルクの長きに渡って続いてきた伝統は、まだまだ力強く生き続けると思わされる。“Episode of the Sea”はそうして伝統の中で輝き続ける希望を捉えていくのだ。

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私の好きな監督・俳優シリーズ
その201 Yared Zeleke&"Lamb"/エチオピア、男らしさじゃなく自分らしさのために
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その308 Juliana Antunes&"Baronesa"/ファヴェーラに広がるありのままの日常
その309 Chloé Zhao&"The Rider"/夢の終りの先に広がる風景
その310 Lola Arias&"Teatro de guerra"/再演されるフォークランド紛争の傷痕
その311 Madeleine Sami&"The Breaker Upperers"/ニュージーランド、彼女たちの絆は永遠?

Madeleine Sami&"The Breaker Upperers"/ニュージーランド、彼女たちの絆は永遠?

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いわゆる“別れさせ屋”という職業がある。彼らはカップルの関係性にあらゆる形で介入し、恋人たちをバラバラにしてしまう。日本の映画やドラマでもちょいちょい題材として使われ話題になったりする。そんな職業、日本以外にも存在しているのだろうか。少なくともニュージーランドには存在しているようである。という訳で今回はニュージーランド別れさせ屋コメディ、Madeleine Sami&Jackie van Beek監督作“The Breaker Upperers”を紹介していこう。

ジーンとメル(監督たちが兼任)は2人で別れさせ屋を経営している。恋人にウンザリな男を行方不明に仕立てあげたり、結婚式に乱入して幸せを台無しにしたり、彼女たちはあらゆる方法を使って、その類い稀なるプロ根性で以て、恋人たちを別れさせる正に達人コンビであった。

今作はそんな彼女たちの別れさせ屋としての活動をコミカルに描き出していく。ある時は警察官の扮装をして夫の元へと妻の死を伝えに行ったり、ある時はアメフト観戦に来ている彼女に自分こそが本命の彼女だと喧嘩売りに行ったりetc。彼女たちがとにもかくにも関係性という関係性をブチ壊しにかかる様は最高としか形容しようがない。

別れさせ屋活動は好調に見えながらも、ある時から綻びが見え始める。彼女たちはジョーダン(James Rolleston)という青年から恋人と別れさせて欲しいという依頼を受け、メルが彼の浮気相手のフリをするのだが、彼女はジョーダンに徐々に惹かれていく。一方で彼女たちは警官としてアンナ()という女性の関係性をブッ壊したはいいが、思わぬ所でバッタリ再会、嘘に嘘を塗り重ねるうち事態はどんどん悪化していく。

今作の核となるのはやはり主人公2人の化学反応である。ジーンはかなりの堅物女で15年前の愛を引きずりに引きずり、その不満を別れさせ屋の活動にぶつけまくる。メルは楽天家のバイセクシャル女性で、30代だが挙動は10代のそれであり、実際に10代の青年に惹かれヤバい目に遭う。そんなダメ人間2人は、監督も兼任するBeek&Samiのコメディエンヌぶりも相まって、笑いの化学反応をこれでもかと炸裂させていく。

さて、この作品はいわゆる女子の友情ものと言えるだろう。アホに弾けた不謹慎なロマンシスで観客をバカ笑いさせに関わってくる。その様は例えばブライズメイズなどテン年代序盤からアメリカに俄に現れ始めた女子コメディを彷彿とさせる。更に2人の風体がそれぞれ老けたクリステン・ウィグと若めのティナ・フェイ(Samiはインドの血も入ってるのでミンディ・カリングっぽさもある)に見えたりするので、そういう意味でもアメリカン・コメディの潮流を汲んでいるように思われる。

しかしそれだけでは勿論ない。今作の製作はタイカ・ワイティティ、言わずと知れたニュージーランド界のコメディ番長である。この繋がりからか彼の盟友ジェマイン・クレメントカメオ出演。この顔触れから近年における大当たりニュージーコメディ「シェアハウス・ウィズ・バンパイア」を思い出さない方がおかしいが、やはり今作にもニュージーランド特有の笑いにリズム感が刻印されているのだ。そんな訳でこの国の風土や文化を反映しながら産まれた“The Breaker Upperers”は、世界へ飛び立つだろう新たなコメディエンヌたちをも誕生させた訳である。

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私の好きな監督・俳優シリーズ
その201 Yared Zeleke&"Lamb"/エチオピア、男らしさじゃなく自分らしさのために
その202 João Viana&"A batalha de Tabatô"/ギニアビサウ、奪われた故郷への帰還
その203 Sithasolwazi Kentane&"Woman Undressed"/ Black African Female Me
その204 Victor Viyuoh&"Ninah's Dowry"/カメルーン、流れる涙と大いなる怒り
その205 Tobias Nölle&"Aloys"/私たちを動かす全ては、頭の中にだけあるの?
その206 Michalina Olszańska&"Já, Olga Hepnarová"/私、オルガ・ヘプナロヴァはお前たちに死刑を宣告する
その207 Agnieszka Smoczynska&"Córki dancingu"/人魚たちは極彩色の愛を泳ぐ
その208 Rosemary Myers&"Girl Asleep"/15歳、吐き気と不安の思春期ファンタジー!
その209 Nanfu Wang&"Hooligan Sparrow"/カメラ、沈黙を切り裂く力
その210 Massoud Bakhshi&"Yek khanévadéh-e mohtaram"/革命と戦争、あの頃失われた何か
その211 Juni Shanaj&"Pharmakon"/アルバニア、誕生の後の救いがたき孤独
その212 済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!
その213 アレクサンドラ・ニエンチク&"Centaur"/ボスニア、永遠のごとく引き伸ばされた苦痛
その214 フィリップ・ルザージュ&「僕のまわりにいる悪魔」/悪魔たち、密やかな蠢き
その215 ジョアン・サラヴィザ&"Montanha"/全てはいつの間にか過ぎ去り
その216 Tizza Covi&"Mister Universo"/イタリア、奇跡の男を探し求めて
その217 Sofia Exarchou&"Park"/アテネ、オリンピックが一体何を残した?
その218 ダミアン・マニヴェル&"Le Parc"/愛が枯れ果て、闇が訪れる
その219 カエル・エルス&「サマー・フィーリング」/彼女の死の先にも、人生は続いている
その220 Kazik Radwanski&"How Heavy This Hammer"/カナダ映画界の毛穴に迫れ!
その221 Vladimir Durán&"Adiós entusiasmo"/コロンビア、親子っていうのは何ともかんとも
その222 Paul Negoescu&"O lună în Thailandă"/今の幸せと、ありえたかもしれない幸せと
その223 Anatol Durbală&"Ce lume minunată"/モルドバ、踏み躙られる若き命たち
その224 Jang Woo-jin&"Autumn, Autumn"/でも、幸せって一体どんなだっただろう?
その225 Jérôme Reybaud&"Jours de France"/われらがGrindr世代のフランスよ
その226 Sebastian Mihăilescu&"Apartament interbelic, în zona superbă, ultra-centrală"/ルーマニアと日本、奇妙な交わり
その227 パス・エンシナ&"Ejercicios de memoria"/パラグアイ、この忌まわしき記憶をどう語ればいい?
その228 アリス・ロウ&"Prevenge"/私の赤ちゃんがクソ共をブチ殺せと囁いてる
その229 マッティ・ドゥ&"Dearest Sister"/ラオス、横たわる富と恐怖の溝
その230 アンゲラ・シャーネレク&"Orly"/流れゆく時に、一瞬の輝きを
その231 スヴェン・タディッケン&「熟れた快楽」/神の消失に、性の荒野へと
その232 Asaph Polonsky&"One Week and a Day"/イスラエル、哀しみと真心のマリファナ
その233 Syllas Tzoumerkas&"A blast"/ギリシャ、激発へと至る怒り
その234 Ektoras Lygizos&"Boy eating the bird's food"/日常という名の奇妙なる身体性
その235 Eloy Domínguez Serén&"Ingen ko på isen"/スウェーデン、僕の生きる場所
その236 Emmanuel Gras&"Makala"/コンゴ、夢のために歩き続けて
その237 ベロニカ・リナス&「ドッグ・レディ」/そして、犬になる
その238 ルクサンドラ・ゼニデ&「テキールの奇跡」/奇跡は這いずる泥の奥から
その239 Milagros Mumenthaler&"La idea de un lago"/湖に揺らめく記憶たちについて
その240 アッティラ・ティル&「ヒットマン:インポッシブル」/ハンガリー、これが僕たちの物語
その241 Vallo Toomla&"Teesklejad"/エストニア、ガラスの奥の虚栄
その242 Ali Abbasi&"Shelly"/この赤ちゃんが、私を殺す
その243 Grigor Lefterov&"Hristo"/ソフィア、薄紫と錆色の街
その244 Bujar Alimani&"Amnestia"/アルバニア、静かなる激動の中で
その245 Livia Ungur&"Hotel Dallas"/ダラスとルーマニアの奇妙な愛憎
その246 Edualdo Williams&"El auge del humano"/うつむく世代の生温き黙示録
その247 Ralitza Petrova&"Godless"/神なき後に、贖罪の歌声を
その248 Ben Young&"Hounds of Love"/オーストラリア、愛のケダモノたち
その249 Izer Aliu&"Hunting Flies"/マケドニア、巻き起こる教室戦争
その250 Ana Urushadze&"Scary Mother"/ジョージア、とある怪物の肖像
その251 Ilian Metev&"3/4"/一緒に過ごす最後の夏のこと
その252 Cyril Schäublin&"Dene wos guet geit"/Wi-Fi スマートフォン ディストピア
その253 Alena Lodkina&"Strange Colours"/オーストラリア、かけがえのない大地で
その254 Kevan Funk&"Hello Destroyer"/カナダ、スポーツという名の暴力
その255 Katarzyna Rosłaniec&"Szatan kazał tańczyć"/私は負け犬になるため生まれてきたんだ
その256 Darío Mascambroni&"Mochila de plomo"/お前がぼくの父さんを殺したんだ
その257 ヴィルジル・ヴェルニエ&"Sophia Antipolis"/ソフィア・アンティポリスという名の少女
その258 Matthieu Bareyre&“l’Epoque”/パリ、この夜は私たちのもの
その259 André Novais Oliveira&"Temporada"/止まることない愛おしい時の流れ
その260 Xacio Baño&"Trote"/ガリシア、人生を愛おしむ手つき
その261 Joshua Magar&"Siyabonga"/南アフリカ、ああ俳優になりたいなぁ
その262 Ognjen Glavonić&"Dubina dva"/トラックの棺、肉体に埋まる銃弾
その263 Nelson Carlo de Los Santos Arias&"Cocote"/ドミニカ共和国、この大いなる国よ
その264 Arí Maniel Cruz&"Antes Que Cante El Gallo"/プエルトリコ、貧しさこそが彼女たちを
その265 Farnoosh Samadi&"Gaze"/イラン、私を追い続ける視線
その266 Alireza Khatami&"Los Versos del Olvido"/チリ、鯨は失われた過去を夢見る
その267 Nicole Vögele&"打烊時間"/台湾、眠らない街 眠らない人々
その268 Ashley McKenzie&"Werewolf"/あなたしかいないから、彷徨い続けて
その269 エミール・バイガジン&"Ranenyy angel"/カザフスタン、希望も未来も全ては潰える
その270 Adriaan Ditvoorst&"De witte waan"/オランダ映画界、悲運の異端児
その271 ヤン・P・マトゥシンスキ&「最後の家族」/おめでとう、ベクシンスキー
その272 Liryc Paolo Dela Cruz&"Sa pagitan ng pagdalaw at paglimot"/フィリピン、世界があなたを忘れ去ろうとも
その273 ババク・アンバリ&「アンダー・ザ・シャドウ」/イラン、母という名の影
その274 Vlado Škafar&"Mama"/スロヴェニア、母と娘は自然に抱かれて
その275 Salomé Jashi&"The Dazzling Light of Sunset"/ジョージア、ささやかな日常は世界を映す
その276 Gürcan Keltek&"Meteorlar"/クルド、廃墟の頭上に輝く流れ星
その277 Filipa Reis&"Djon África"/カーボベルデ、自分探しの旅へ出かけよう!
その278 Travis Wilkerson&"Did You Wonder Who Fired the Gun?"/その"白"がアメリカを燃やし尽くす
その279 Mariano González&"Los globos"/父と息子、そこに絆はあるのか?
その280 Tonie van der Merwe&"Revenge"/黒人たちよ、アパルトヘイトを撃ち抜け!
その281 Bodzsár Márk&"Isteni müszak"/ブダペスト、夜を駆ける血まみれ救急車
その282 Winston DeGiobbi&"Mass for Shut-Ins"/ノヴァスコシア、どこまでも広がる荒廃
その283 パスカル・セルヴォ&「ユーグ」/身も心も裸になっていけ!
その284 Ana Cristina Barragán&"Alba"/エクアドル、変わりゆくわたしの身体を知ること
その285 Kyros Papavassiliou&"Impressions of a Drowned Man"/死してなお彷徨う者の詩
その286 未公開映画を鑑賞できるサイトはどこ?日本からも観られる海外配信サイト6選!
その287 Kaouther Ben Hania&"Beauty and the Dogs"/お前はこの国を、この美しいチュニジアを愛してるか?
その288 Chloé Robichaud&"Pays"/彼女たちの人生が交わるその時に
その289 Kantemir Balagov&"Closeness"/家族という名の絆と呪い
その290 Aleksandr Khant&"How Viktor 'the Garlic' Took Alexey 'the Stud' to the Nursing Home"/オトンとオレと、時々、ロシア
その291 Ivan I. Tverdovsky&"Zoology"/ロシア、尻尾に芽生える愛と闇
その292 Emre Yeksan&"Yuva"/兄と弟、山の奥底で
その293 Szőcs Petra&"Deva"/ルーマニアとハンガリーが交わる場所で
その294 Flávia Castro&"Deslemblo"/喪失から紡がれる"私"の物語
その295 Mahmut Fazil Coşkun&"Anons"/トルコ、クーデターの裏側で
その296 Sofia Bohdanowicz&"Maison du bonheur"/老いることも、また1つの喜び
その297 Gastón Solnicki&"Introduzione all'oscuro"/死者に捧げるポストカード
その298 Ivan Ayr&"Soni"/インド、この国で女性として生きるということ
その299 Phuttiphong Aroonpheng&"Manta Ray"/タイ、紡がれる友情と煌めく七色と
その300 Babak Jalali&"Radio Dreams"/ラジオには夢がある……のか?
その301 アイダ・パナハンデ&「ナヒード」/イラン、灰色に染まる母の孤独
その302 Iram Haq&"Hva vil folk si"/パキスタン、尊厳に翻弄されて
その303 ヴァレスカ・グリーゼバッハ&"Western"/西欧と東欧の交わる大地で
その304 ミカエル・エール&"Amanda"/僕たちにはまだ時間がある
その305 Bogdan Theodor Olteanu&"Câteva conversaţii despre o fată foarte înaltă"/ルーマニア、私たちの愛について
その306 工藤梨穂&「オーファンズ・ブルース」/記憶の終りは世界の終り
その307 Oleg Mavromatti&"Monkey, Ostrich and Grave"/ネットに転がる無限の狂気
その308 Juliana Antunes&"Baronesa"/ファヴェーラに広がるありのままの日常
その309 Chloé Zhao&"The Rider"/夢の終りの先に広がる風景
その310 Lola Arias&"Teatro de guerra"/再演されるフォークランド紛争の傷痕

Marcelino Islas Hernadez&"Clases de historia"/心を少しずつ重ねあわせて

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男女もしくは男性2人の関係性を描き出す映画は多い。だが女性2人というとどうだろう。例えばイングマール・ベルイマン「ペルソナ」リドリー・スコットテルマ&ルイーズなどがあるが、前者に比べると挙げられる数は少ないだろう。私はそういう映画が好きな故に、少なさには悲しくなるのだが、メキシコ人監督マルセリーノ・イスラス・エルナンデス Marcelino Islas Hernandez監督の第3長編「ヒストリー・レッスン」(原題:Clases de historia)は正にそんな関係性を描き出した、美しい1作だ。

今作の主人公は70代の歴史教師ベロニカ(ベロニカ・ランガー)だ。彼女はガンに苦しみながら生きる日々を送っていた。そんなある日彼女は転校生のエバ(レナータ・ヴァカ)と出会う。エバは反抗的な態度を取り続け、遂に2人は喧嘩を繰り広げるまでになってしまう。しかしベロニカの家にエバが謝りにきたことから、事態が少しずつ動き始める。

「ヒストリー・レッスン」はそんな2人の関係性の移り変わりを描き出した作品だ。最初は喧嘩をするなど関係はぎこちないものだが、交流が始まってからはだんだんと仲良くなっていき、コーラを一緒に飲んだり、逆にベロニカがエバの家に赴くなど少しずつ関係が進展していく。その様子をエルナンデス監督は淡々とした筆致で描き出していく。

そして監督はその関係性を描くにあたって、背景として登場人物たちの身体性に焦点を当てる。この映画が人々の身体に向ける視線はとても優しいものだ。例えばベロニカが足の毛を剃る場面、白かった髪を鮮やかに染め直す場面、後半におけるエバの背中をベロニカが掻く印象的な場面。この映画は日常を生きる身体、日常の中の身体性を暖かく描いている。この傾向は同じメキシコ出身の作家Natalia Almada“Todo los demas”やブラジルのクレベール・メンドンサ・フィーリョ監督によるアクエリアスなどにも見られる。今ラテンアメリカ映画界における1つのブームなのかもしれない。

エルナンデス監督の前作“La caridad”は30年連れ添った夫婦が直面する危機を描き出した作品で、シリアスな雰囲気の中に真顔のユーモアが差し込まれる独特の一作だった。今作はもっとストレートに明るく喜びに溢れた作品となっている。2人の交流には心が暖められるような魅力が備わっており、中でも遊園地ではしゃぎ回る彼女たちの姿には多幸感すら宿っている。

物語が進展していくにつれ、そんな関係性は複雑さを増していく。エバは年上の恋人の子供を妊娠しているが、中絶するつもりだという。そんな彼女に親類のふりをして付き添うのだが、そこから彼女はエバの世界に深く潜り込んでいく。彼女の友人である若者たちと交流を深め、その文化を垣間見、憧れを抱くうち、ベロニカの中にエバへのある思いが募っていく。

ここにおける関係性は言葉に表すことは困難なものだろう。友情でもなければ愛情でもないような、その中間地点に存在している曖昧な感情。ベロニカはそんな感情を抱えながら、エバと距離を深めていく。そんな姿を描き出す監督の手捌きは息を呑むほどに機微微妙なものであり、彼はひどく難しいだろうこの技を巧みに披露している。

こういった感触の数々を強化していくのが、主演の2人を演じる俳優たちだ。まずエバ役のレナータ・ヴァカ、彼女は演技初体験というが(本業はYoutuber/Instagramerらしい)その存在感は素人離れしており、思春期の複雑な心を見事に捉えている。だがMVPはベロニカ役のベロニカ・ランガー(脚本段階から彼女に当て書きしたそうで、名前が同じなのもその名残)だろう。老いや死の恐怖に晒されながらも、残り少ない人生の中に存在する新たな可能性を探り続ける姿はとても美しい。終盤における告白場面はその意味で頗る胸をうつような感動を誇っている。

「ヒストリー・レッスン」は2人の全く違う女性たちの交流を通じて老いと若さ、生と死の交錯を鮮やかに描き出す作品だ。ここにはこの世界で生きること、生き続けることの喜びが深く深く滲み渡っている。

さて、ここからは監督の話を。「ヒストリー・レッスン」観賞後、私はマルセリーノ監督と会って一緒に昼食を食べた。実は彼とは友人関係なのである。きっかけはFestival Scopeで彼の第2長編“La caridad”を観たことだ。いつものようにレビューを書いてサイトに載せると、何と監督本人からメールが届いたのである。メール上で色々話した後、彼は日本で何か進展があったらまた連絡するよと言ってくれた。

それから1年後である。東京国際映画祭のホームページで上映作品を眺めていた所、私は彼の名前を見つけたのだ。最初は見間違えたかと思ったが、調べると確かにあのエルナンデス監督である。この喜びをTwitterで呟いたら、フォローしてくれていた彼から再びメッセージが届いた。“やあ、という訳で今度会わないかい?”監督は約束を忘れていなかったのである。そして私は彼から頼まれ予告編の字幕翻訳を行ったり、映画祭での感想を英訳して伝えたりした後、とうとう映画館で彼と出会いを果たしたのである。

それは、いやはや素晴らしい経験であったことは全く言うまでもない。ベロニカさんやスタッフ陣、通訳さんも交えて昼ご飯を食べながら、私が待ち時間に書いたレビューについて、メキシコ映画界の現在と過去について(様々なメキシコ人作家について喋ったが、ミシェル・フランコの名前を出したら表情が曇ったのは笑った)東京観光について話すなど楽しい時間を過ごした。更に六本木から渋谷まで行って東急ハンズアップリンクにも赴いた。いやいや本当に素晴らしい経験で、私は彼と再会を約束して帰路についた訳である。

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メキシコ!メキシコ!メキシコ!
その1 Elisa Miller &"Ver llover""Roma"/彼女たちに幸福の訪れんことを
その2 Matias Meyer &"Los últimos cristeros"/メキシコ、キリストは我らと共に在り
その3 Hari Sama & "El Sueño de Lu"/ママはずっと、あなたのママでいるから
その4 Yulene Olaizola & "Paraísos Artificiales"/引き伸ばされた時間は永遠の如く
その5 Santiago Cendejas&"Plan Sexenal"/覚めながらにして見る愛の悪夢
その6 Alejandro Gerber Bicecci&"Viento Aparte"/僕たちの知らないメキシコを知る旅路
その7 Michel Lipkes&"Malaventura"/映画における"日常"とは?
その8 Nelson De Los Santos Arias&"Santa Teresa y Otras Historias"/ロベルト・ボラーニョが遺した町へようこそ
その9 Marcelino Islas Hernández&"La Caridad"/慈しみは愛の危機を越えられるのか
その10 ニコラス・ペレダ&"Juntos"/この人生を変えてくれる"何か"を待ち続けて
その11 ニコラス・ペレダ&"Minotauro"/さあ、みんなで一緒に微睡みの中へ
その12 アマ・エスカランテ&「よそ者」/アメリカの周縁に生きる者たちについて
その13 アマ・エスカランテ&「エリ」/日常、それと隣り合わせにある暴力
その14 Betzabé García&"Los reyes del pueblo que no existe"/水と恐怖に沈みゆく町で、生きていく
その15 Natalia Almada&"Todo lo demás"/孤独を あなたを わたしを慈しむこと
その16 Diego Ros&"El Vigilante"/メキシコシティ、不条理な夜の空洞
その17 Dariela Ludlow Deloya&"Esa era Dania"/物語全部がハッピーエンドな訳じゃない、けど
その18 Lindsey Cordero&"Ya me voy"/ニューヨーク、冬のように染み入る孤独

Lindsey Cordero&"Ya me voy"/ニューヨーク、冬のように染み入る孤独

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さる10月20日からメキシコではモレリア国際映画祭が開催されている。この国において1,2を争うほど大きな映画祭であり、様々なメキシコ映画が上映されたり国内外からゲストが招聘されるなどして活気を呈している。そんなモレリア国際映画祭だが、日本にいる私たちでもその熱気を味わう方法がある。

このサイトでは毎度お馴染みな映画配信サイトFestival Scopeにおいて、実はこの映画祭で上映される作品が毎年配信されているのだ。しかも無料。今回はドキュメンタリー部門で上映される7本の作品が配信されており、もちろん私は全て観るつもりである。という訳で今回から私が気に入った作品を少しずつ紹介していきたいと思う。まず今回はLindsey Cordero&Armando Crodaという、ニューヨークを拠点に活躍する監督タッグによる作品“Ya me voy”を紹介していこう。

青い闇に包まれた暁頃のニューヨーク、1人の男がゴミ袋の山を載せたカートを押しながら街を彷徨い歩いている。あてどなく街をふらつくかと思えば、時おりゴミ箱から様々なものを掴み取りカートに載せ、再び街へと出ていく。それを朝方にずっと続ける男の姿にはどこか侘しさが漂う。

今作の主人公はフェリペという中年男性、彼はメキシコ人の不法移民であり今はアメリカに住みながら、生計を立てている。愛すべき家族は今もメキシコに残したままで、かれこれ16年もの歳月が既に経ってしまっている。そんな中でフェリペの心にある想いが浮かび始める。人生の多くを過ごしたこの地から出て、家族の待つ故郷メキシコへと帰ろうかという想いが。

まず監督たちはフェリペの日常を余計な装飾なしに綴っていく。夜はカートを押してゴミ漁り、昼はホテルでトイレ掃除や洗濯に明け暮れる。その合間には行きつけのレストランへと赴き、友人たちと喋ったりタコスを食べるなどする。そして暇が出来るとなると、彼はその時間を家族への電話にあてる。妻や子供たちと会話を繰り広げ、異国の地に暮らす侘しさをまぎらわせようとするのだ。12月にはメキシコに帰るつもりだ、今度は本気だよ、もうチケットも買ってある……

そんな彼の姿には父親としての複雑な立ち位置が見て取れる。フェリペは子供たちが小さな頃にアメリカへ移民してしまった故、自分の顔など覚えていないのではないかと不安に感じている。実際に子供の1人は“父さん”と呼ぶより“フェリペさん”と呼ぶ方がしっくりくると、母親を通じて彼に伝える。フェリペは彼らに対して父親としての威厳を見せようとする。例えば長男が店の経営に失敗し借金を負った際には、キチンと叱りつけ道を正そうとする。それでもこの借金を払うため、メキシコ行きを断念せざるを得なくなった時は、それを自分からは伝えられず妻に託けを頼むなど、その立ち振舞いは微妙だ。物理的な距離は心の距離となり、彼の存在を揺るがすのである。

“Ya me voy”はフェリペの姿と共に、ニューヨークの多面性をも描き出している。この街は様々な人種を受け入れる懐の深さがある。中にはメキシコ人コミュニティも形成されており、フェリペもそこに属している。気の置けない友人たちが多くいる暖かい雰囲気は彼にとってとても居心地がよく、何より英語を喋る必要もない。スペイン語で友人と談笑し、スペイン語で歌を紡ぐ。ある意味で彼は小さなメキシコで生を謳歌しているとも言えるかもしれない。

しかしそこはメキシコではない、確かにアメリカの一都市であるニューヨークである。そこには寒々しいものも存在している。雪が降り積もる街でフェリペが独り歩く風景には切実な寂しさが満ちている。そして家族と電話越しに会話しながらも、やはり独りで狭苦しい部屋にいる風景からは厳しい冬のように荒涼とした孤独が伺いしれるだろう。

そんな中で荒涼たる孤独に背を向けようとして、フェリペは人肌の愛を求め始める。彼は同じく故郷に家族を置いてきた女性と逢瀬を重ねて親密な雰囲気に包まれる。伝統衣装を纏いながら公園でデートをしたり、部屋で膝枕をしてもらったりと、不倫ではありながらもそんな愛の光景、孤独な魂が癒されていく光景は微笑ましく思える。それでもメキシコを想いながらも、段々とニューヨークに埋没していくフェリペの姿にはそこはかとない悲哀が漂う。

劇中において、彼がスペイン語の歌を唄うという場面が多くある。故郷を想う歌、文化を語る歌、愛を囁く歌。その響きは太陽の光さながら朗らかで明るいものだ。しかし同時にそこには彼の抱く孤独をも結いこまれていく。故に歌には2つの故郷に心を引き裂かれるフェリペの苦悩が滲み渡るのだ。

今現在トランプ大統領はメキシコとアメリカの国境に壁を作ると宣言している。そしてメキシコ移民の数が過去最大級のものとなっているという報道もある。彼らはまさしく岐路に立たされていると言えるだろう。そんな中で1人の中年男性の何気ない日常からメキシコ移民たちの現在を眺める“Ya me voy”には重要な意味があるのだ。そしてフェリペは苦悩の末にどこへと辿り着くのか、その旅路は過酷な今に対する切実な問いかけとなっている。

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メキシコ!メキシコ!メキシコ!
その1 Elisa Miller &"Ver llover""Roma"/彼女たちに幸福の訪れんことを
その2 Matias Meyer &"Los últimos cristeros"/メキシコ、キリストは我らと共に在り
その3 Hari Sama & "El Sueño de Lu"/ママはずっと、あなたのママでいるから
その4 Yulene Olaizola & "Paraísos Artificiales"/引き伸ばされた時間は永遠の如く
その5 Santiago Cendejas&"Plan Sexenal"/覚めながらにして見る愛の悪夢
その6 Alejandro Gerber Bicecci&"Viento Aparte"/僕たちの知らないメキシコを知る旅路
その7 Michel Lipkes&"Malaventura"/映画における"日常"とは?
その8 Nelson De Los Santos Arias&"Santa Teresa y Otras Historias"/ロベルト・ボラーニョが遺した町へようこそ
その9 Marcelino Islas Hernández&"La Caridad"/慈しみは愛の危機を越えられるのか
その10 ニコラス・ペレダ&"Juntos"/この人生を変えてくれる"何か"を待ち続けて
その11 ニコラス・ペレダ&"Minotauro"/さあ、みんなで一緒に微睡みの中へ
その12 アマ・エスカランテ&「よそ者」/アメリカの周縁に生きる者たちについて
その13 アマ・エスカランテ&「エリ」/日常、それと隣り合わせにある暴力
その14 Betzabé García&"Los reyes del pueblo que no existe"/水と恐怖に沈みゆく町で、生きていく
その15 Natalia Almada&"Todo lo demás"/孤独を あなたを わたしを慈しむこと
その16 Diego Ros&"El Vigilante"/メキシコシティ、不条理な夜の空洞
その17 Dariela Ludlow Deloya&"Esa era Dania"/物語全部がハッピーエンドな訳じゃない、けど

Lola Arias&"Teatro de guerra"/再演されるフォークランド紛争の傷痕

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1982年、アルゼンチンから500キロ南西に位置するマルビナス・フォークランド諸島で紛争が勃発することとなる。この世に言うフォークランド紛争はこの地の領有権を巡って、アルゼンチンとイギリスが対立した末に起こった物であった。約70日間の闘争の末、イギリスが勝利しながらも両者合わせて1000人もの犠牲者が出る結果となった。しかも36年経った今でも領有権の所属は決まっていない。つまりは今でも遺恨が残るこの紛争、それを新たなる視点から語り直そうとする作品が現れた。その作品こそ今回紹介するLola Arias監督作“Teatro de guerra”だ。

私たちは、ホワイトスクリーンの前に立ちカメラに向かって言葉を紡ぐ中年男性たちの姿を目撃することになる。彼らが伝えるのは名前や階級、現在就いている仕事、そしてフォークランド紛争時に起こった出来事についてだ。あるイギリス人男性はこんなことを語る。ある時自分は腹を怪我したアルゼンチン人兵士を見つけた、彼は英語で自分に話しかけてきたんだ、イングランドを旅した経験についてを、しかし話し終わった後に彼は死んでしまった……

序盤において私たちはそんな彼らの語りを静かに聞くこととなる。そこには様々な語りがある。例えばカメラに向かって言葉だけで滔々と語り続ける者、映画のスタッフを巻き込みながら演技と共に語る者、言葉すらも伴わずに持参したナイフを振りかざす姿で当時の激戦を語る者。それぞれのやり方で以てフォークランド紛争について語る元兵士たちの姿を、Ariasは静かに映し出していく。

そしてアルゼンチン人とイギリス人が出会う瞬間がやってくる。まず彼らは過去の紛争など無かったように和気藹々と友人に接する如く互いに接する。例えば片言の英語/スペイン語で意思疏通を行おうとしたり、楽器を弾ける者たちについては即席バンドを組んで演奏を行ったり、撮影の裏側でも片方が片方に対してボクシングを指導したり、戦争で負った怪我について語り合ったりとその交流は徐々に深まっていく。

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とはいえそこにはやはり遺恨も残ってはいる。ある時両者は地図を目の前にして口論を始める。フランスやスペインの占領下にもあったという複雑な歴史を持つフォークランド諸島だが、それ故にそれぞれの歴史認識についても齟齬がかなり存在しているのだ。互いにかなり話し合った後にも微妙な表情は消えることがない。序盤においても“この島はアルゼンチンのもの”というシャツを着た人物がそれをカメラに主張したりと、未だにこの紛争は終わらない問題なのだということが分かってくる。

その中でも両者に刻まれた傷跡は共鳴していく。あるアルゼンチン人は戦争の後に、仕事に恵まれない故に麻薬中毒に陥ってしまった過去を赤裸々に語る。あるイギリス人は先にも紹介した、腹を怪我したアルゼンチン人兵士について何度も語り、彼の亡霊に囚われ続けているかのような素振りを見せる。戦争は非情だ。誰彼構わずに等しく傷跡を残していく。その残虐性は今作の節々から明らかになっていく。

それ故だろう、今作にも出演する元兵士たちにもこの忌まわしい経験を後世に伝えていこうという姿勢は通低している。彼らは子供たちに戦争の頃に恐ろしかった物の存在を語るし、自分がフォークランド諸島だけでなく様々な場所で戦争に参加してきたことを語る。教室では生徒たちの質問に答えていく。そして自分たちと同じく軍隊に所属する若者たちを教え諭す。その過程を通じて彼らは、彼らと眼差しを重ねていく私たちは過去を見据え直していく。

そして元兵士たちは見据え直した過去を再演することになる。叫びや恐れ、大地に突き立てた銃、その傍らに横たわる死、そういった物を再現していくのだ。更に同時に若者たちにもその光景を演じさせる。元兵士たちはそれを体操座りで眺めていく姿はとても穏やかなものだ。セラピーにおいてトラウマを演じたり外から眺めたりすることでその脅威を軽減するという療法があるが、これは正にそんな癒しの過程が捉えられているのだ。

“Teatro de guerra”フォークランド紛争という忌まわしい過去に新たな光を当てる作品だ。そして監督はどんな傷跡にもいつかは癒しの時がやってくるのだと、静かに語る。

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私の好きな監督・俳優シリーズ
その201 Yared Zeleke&"Lamb"/エチオピア、男らしさじゃなく自分らしさのために
その202 João Viana&"A batalha de Tabatô"/ギニアビサウ、奪われた故郷への帰還
その203 Sithasolwazi Kentane&"Woman Undressed"/ Black African Female Me
その204 Victor Viyuoh&"Ninah's Dowry"/カメルーン、流れる涙と大いなる怒り
その205 Tobias Nölle&"Aloys"/私たちを動かす全ては、頭の中にだけあるの?
その206 Michalina Olszańska&"Já, Olga Hepnarová"/私、オルガ・ヘプナロヴァはお前たちに死刑を宣告する
その207 Agnieszka Smoczynska&"Córki dancingu"/人魚たちは極彩色の愛を泳ぐ
その208 Rosemary Myers&"Girl Asleep"/15歳、吐き気と不安の思春期ファンタジー!
その209 Nanfu Wang&"Hooligan Sparrow"/カメラ、沈黙を切り裂く力
その210 Massoud Bakhshi&"Yek khanévadéh-e mohtaram"/革命と戦争、あの頃失われた何か
その211 Juni Shanaj&"Pharmakon"/アルバニア、誕生の後の救いがたき孤独
その212 済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!
その213 アレクサンドラ・ニエンチク&"Centaur"/ボスニア、永遠のごとく引き伸ばされた苦痛
その214 フィリップ・ルザージュ&「僕のまわりにいる悪魔」/悪魔たち、密やかな蠢き
その215 ジョアン・サラヴィザ&"Montanha"/全てはいつの間にか過ぎ去り
その216 Tizza Covi&"Mister Universo"/イタリア、奇跡の男を探し求めて
その217 Sofia Exarchou&"Park"/アテネ、オリンピックが一体何を残した?
その218 ダミアン・マニヴェル&"Le Parc"/愛が枯れ果て、闇が訪れる
その219 カエル・エルス&「サマー・フィーリング」/彼女の死の先にも、人生は続いている
その220 Kazik Radwanski&"How Heavy This Hammer"/カナダ映画界の毛穴に迫れ!
その221 Vladimir Durán&"Adiós entusiasmo"/コロンビア、親子っていうのは何ともかんとも
その222 Paul Negoescu&"O lună în Thailandă"/今の幸せと、ありえたかもしれない幸せと
その223 Anatol Durbală&"Ce lume minunată"/モルドバ、踏み躙られる若き命たち
その224 Jang Woo-jin&"Autumn, Autumn"/でも、幸せって一体どんなだっただろう?
その225 Jérôme Reybaud&"Jours de France"/われらがGrindr世代のフランスよ
その226 Sebastian Mihăilescu&"Apartament interbelic, în zona superbă, ultra-centrală"/ルーマニアと日本、奇妙な交わり
その227 パス・エンシナ&"Ejercicios de memoria"/パラグアイ、この忌まわしき記憶をどう語ればいい?
その228 アリス・ロウ&"Prevenge"/私の赤ちゃんがクソ共をブチ殺せと囁いてる
その229 マッティ・ドゥ&"Dearest Sister"/ラオス、横たわる富と恐怖の溝
その230 アンゲラ・シャーネレク&"Orly"/流れゆく時に、一瞬の輝きを
その231 スヴェン・タディッケン&「熟れた快楽」/神の消失に、性の荒野へと
その232 Asaph Polonsky&"One Week and a Day"/イスラエル、哀しみと真心のマリファナ
その233 Syllas Tzoumerkas&"A blast"/ギリシャ、激発へと至る怒り
その234 Ektoras Lygizos&"Boy eating the bird's food"/日常という名の奇妙なる身体性
その235 Eloy Domínguez Serén&"Ingen ko på isen"/スウェーデン、僕の生きる場所
その236 Emmanuel Gras&"Makala"/コンゴ、夢のために歩き続けて
その237 ベロニカ・リナス&「ドッグ・レディ」/そして、犬になる
その238 ルクサンドラ・ゼニデ&「テキールの奇跡」/奇跡は這いずる泥の奥から
その239 Milagros Mumenthaler&"La idea de un lago"/湖に揺らめく記憶たちについて
その240 アッティラ・ティル&「ヒットマン:インポッシブル」/ハンガリー、これが僕たちの物語
その241 Vallo Toomla&"Teesklejad"/エストニア、ガラスの奥の虚栄
その242 Ali Abbasi&"Shelly"/この赤ちゃんが、私を殺す
その243 Grigor Lefterov&"Hristo"/ソフィア、薄紫と錆色の街
その244 Bujar Alimani&"Amnestia"/アルバニア、静かなる激動の中で
その245 Livia Ungur&"Hotel Dallas"/ダラスとルーマニアの奇妙な愛憎
その246 Edualdo Williams&"El auge del humano"/うつむく世代の生温き黙示録
その247 Ralitza Petrova&"Godless"/神なき後に、贖罪の歌声を
その248 Ben Young&"Hounds of Love"/オーストラリア、愛のケダモノたち
その249 Izer Aliu&"Hunting Flies"/マケドニア、巻き起こる教室戦争
その250 Ana Urushadze&"Scary Mother"/ジョージア、とある怪物の肖像
その251 Ilian Metev&"3/4"/一緒に過ごす最後の夏のこと
その252 Cyril Schäublin&"Dene wos guet geit"/Wi-Fi スマートフォン ディストピア
その253 Alena Lodkina&"Strange Colours"/オーストラリア、かけがえのない大地で
その254 Kevan Funk&"Hello Destroyer"/カナダ、スポーツという名の暴力
その255 Katarzyna Rosłaniec&"Szatan kazał tańczyć"/私は負け犬になるため生まれてきたんだ
その256 Darío Mascambroni&"Mochila de plomo"/お前がぼくの父さんを殺したんだ
その257 ヴィルジル・ヴェルニエ&"Sophia Antipolis"/ソフィア・アンティポリスという名の少女
その258 Matthieu Bareyre&“l’Epoque”/パリ、この夜は私たちのもの
その259 André Novais Oliveira&"Temporada"/止まることない愛おしい時の流れ
その260 Xacio Baño&"Trote"/ガリシア、人生を愛おしむ手つき
その261 Joshua Magar&"Siyabonga"/南アフリカ、ああ俳優になりたいなぁ
その262 Ognjen Glavonić&"Dubina dva"/トラックの棺、肉体に埋まる銃弾
その263 Nelson Carlo de Los Santos Arias&"Cocote"/ドミニカ共和国、この大いなる国よ
その264 Arí Maniel Cruz&"Antes Que Cante El Gallo"/プエルトリコ、貧しさこそが彼女たちを
その265 Farnoosh Samadi&"Gaze"/イラン、私を追い続ける視線
その266 Alireza Khatami&"Los Versos del Olvido"/チリ、鯨は失われた過去を夢見る
その267 Nicole Vögele&"打烊時間"/台湾、眠らない街 眠らない人々
その268 Ashley McKenzie&"Werewolf"/あなたしかいないから、彷徨い続けて
その269 エミール・バイガジン&"Ranenyy angel"/カザフスタン、希望も未来も全ては潰える
その270 Adriaan Ditvoorst&"De witte waan"/オランダ映画界、悲運の異端児
その271 ヤン・P・マトゥシンスキ&「最後の家族」/おめでとう、ベクシンスキー
その272 Liryc Paolo Dela Cruz&"Sa pagitan ng pagdalaw at paglimot"/フィリピン、世界があなたを忘れ去ろうとも
その273 ババク・アンバリ&「アンダー・ザ・シャドウ」/イラン、母という名の影
その274 Vlado Škafar&"Mama"/スロヴェニア、母と娘は自然に抱かれて
その275 Salomé Jashi&"The Dazzling Light of Sunset"/ジョージア、ささやかな日常は世界を映す
その276 Gürcan Keltek&"Meteorlar"/クルド、廃墟の頭上に輝く流れ星
その277 Filipa Reis&"Djon África"/カーボベルデ、自分探しの旅へ出かけよう!
その278 Travis Wilkerson&"Did You Wonder Who Fired the Gun?"/その"白"がアメリカを燃やし尽くす
その279 Mariano González&"Los globos"/父と息子、そこに絆はあるのか?
その280 Tonie van der Merwe&"Revenge"/黒人たちよ、アパルトヘイトを撃ち抜け!
その281 Bodzsár Márk&"Isteni müszak"/ブダペスト、夜を駆ける血まみれ救急車
その282 Winston DeGiobbi&"Mass for Shut-Ins"/ノヴァスコシア、どこまでも広がる荒廃
その283 パスカル・セルヴォ&「ユーグ」/身も心も裸になっていけ!
その284 Ana Cristina Barragán&"Alba"/エクアドル、変わりゆくわたしの身体を知ること
その285 Kyros Papavassiliou&"Impressions of a Drowned Man"/死してなお彷徨う者の詩
その286 未公開映画を鑑賞できるサイトはどこ?日本からも観られる海外配信サイト6選!
その287 Kaouther Ben Hania&"Beauty and the Dogs"/お前はこの国を、この美しいチュニジアを愛してるか?
その288 Chloé Robichaud&"Pays"/彼女たちの人生が交わるその時に
その289 Kantemir Balagov&"Closeness"/家族という名の絆と呪い
その290 Aleksandr Khant&"How Viktor 'the Garlic' Took Alexey 'the Stud' to the Nursing Home"/オトンとオレと、時々、ロシア
その291 Ivan I. Tverdovsky&"Zoology"/ロシア、尻尾に芽生える愛と闇
その292 Emre Yeksan&"Yuva"/兄と弟、山の奥底で
その293 Szőcs Petra&"Deva"/ルーマニアとハンガリーが交わる場所で
その294 Flávia Castro&"Deslemblo"/喪失から紡がれる"私"の物語
その295 Mahmut Fazil Coşkun&"Anons"/トルコ、クーデターの裏側で
その296 Sofia Bohdanowicz&"Maison du bonheur"/老いることも、また1つの喜び
その297 Gastón Solnicki&"Introduzione all'oscuro"/死者に捧げるポストカード
その298 Ivan Ayr&"Soni"/インド、この国で女性として生きるということ
その299 Phuttiphong Aroonpheng&"Manta Ray"/タイ、紡がれる友情と煌めく七色と
その300 Babak Jalali&"Radio Dreams"/ラジオには夢がある……のか?
その301 アイダ・パナハンデ&「ナヒード」/イラン、灰色に染まる母の孤独
その302 Iram Haq&"Hva vil folk si"/パキスタン、尊厳に翻弄されて
その303 ヴァレスカ・グリーゼバッハ&"Western"/西欧と東欧の交わる大地で
その304 ミカエル・エール&"Amanda"/僕たちにはまだ時間がある
その305 Bogdan Theodor Olteanu&"Câteva conversaţii despre o fată foarte înaltă"/ルーマニア、私たちの愛について
その306 工藤梨穂&「オーファンズ・ブルース」/記憶の終りは世界の終り
その307 Oleg Mavromatti&"Monkey, Ostrich and Grave"/ネットに転がる無限の狂気
その308 Juliana Antunes&"Baronesa"/ファヴェーラに広がるありのままの日常
その309 Chloé Zhao&"The Rider"/夢の終りの先に広がる風景

ジョセフィン・デッカー&"Madeline's Madeline"/マデリンによるマデリン、私による私

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演劇というメディアはよく映画でも題材にされる。それは俳優という核、演技という核がそこにおいて共通しているからだろう。そしてそんな作品の数々は、俳優たちの人生と劇が重なりあい虚構と現実の狭間へと導かれていく……といった筋道を辿ることが多い。Josephine Deckerの最新長編“Madeline’s Madeline”も正にそういった作品だ。しかし今作は他とは全く違う景色を私たちに見せてくれる。

主人公となるのは16歳の少女マデリン(Helena Howard)、彼女はエヴァンジェリン(「スモール・クライム」モリー・パーカー)という女性が率いる劇団に所属し、稽古に励む日々を送っていた。しかし母親であるレジーナ(「ザ・フューチャー」ミランダ・ジュライ)はのめり込みすぎるマデリンを余りよく思っていない。それでも彼女は自分の道を行き続ける。

まず今作から伝わってくるのは舞台に満ち渡る熱気だ。そこでは叫び声や囁き声、笑い声が縦横無尽に響き、俳優たちが思い思いの躍動に身を委ねている。その中でマデリンもまた伸び伸びと演技をする。悪戯な猫に変わるかと思えば、砂浜を這いずり回る海亀になる。彼女は舞台の熱気を身に纏いながら、自由自在に姿を変えていくのだ。

マデリンは俳優として、いわゆる憑依型気質と言えるだろう。猫になる時は身ぶり手振り全てを模倣して真に猫になりきろうとする。喉を鳴らす音まで完璧だ。そして豚の被り物をした後には、興奮したテンションのままに豚の真似をしながら、ニューヨークの雑踏を駆け回る。その才能を目の当たりにしたエヴァンジェリンは、彼女を認め始める訳である。

だがそういった風に演劇へと身を委ねる故に、マデリンは母親であるレジーナと衝突が絶えない。彼女は神経質で保守的であるので活動に色々と文句をつけてきたり、普段の態度すらも咎め立てる。全体的に過保護な印象を与えるのだ。それに対してマデリンは当然のごとく反発し、その対立は激化の一途を辿ることになってしまう。

そんな中でエヴァンジェリンはマデリンが話した夢を題材にして劇を製作しようと計画し始める。内容は母と娘の愛憎劇という対立を直に反映したものだ。マデリンは主演に祭り上げられて劇にのめり込んでいく。だが自身の心を着想源とした劇に身を浸すうち、彼女の精神は震えを見せだす。そして影響されたマデリンの行動は常軌を逸脱していく。

さて、ここからは少しJosephine Deckerという監督について紹介していこう。彼女は私が思うポスト・マンブルコア世代の筆頭である。テン年代において最も重要な米インディー作家の1人とも言っていいだろう。彼女はまずマンブルコアの旗手ジョー・スワンバー作品で俳優として出演し頭角を現し始めた。そして2014年には映画監督として“Butter on the Latch”“Thou Wast Mild and Lovely”の2作を同時に発表、インディー界を席巻することとなる。前者は山奥で開かれる音楽フェスを舞台に、2人の女性の友情がひび割れていく姿を幻想的な筆致で追った作品、後者は人里離れた場所に位置する牧場で繰り広げられる男女の不気味な愛憎劇を描いた作品だった。その後はオムニバス短編集“Collective: Unconscious”に参加、自身の恋愛関係を題材にしたドキュメンタリー“Flames”を元恋人のZefrey Throwellと共同で監督をする。そして2018年に待望の単独長編として作られた作品が“Madeline’ Madeline”だったという訳である。

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そんなDecker監督の特色は神経を揺らす幻惑的映像美にある。撮影監督であるAshley Connorと共に、彼女は狂気に震える心の錯綜をそのまま映像に反映させるスタイルを確立している。まるで登場人物の脳内を見せつけられるような感覚だ。それは万華鏡さながら瞬き、私たちを不穏でありながらも崇高な世界に誘う。今作においてもそれは健在だ。

その意味でこの映画は感覚の映画だと言えるかもしれない。クロースアップで以て登場人物の肌に肉薄するような映像が劇中では頻出する。若々しく瑞々しい肌、年相応の老いに襲われ斑が浮かぶ肌、この質感を私たちは目の当たりにするのだ。ここを頼りにして、監督はこれらを観る観客自身の感覚を研ぎ澄ましていくのだ。視覚や触覚だけではなく聴覚などの感覚すらも。その内私たちはふと全てが開けるような感慨に襲われるかもしれない。しかしそこからが今作の真骨頂だ。

この作品においては俳優陣も監督の期待に応える熱演を見せてくれる。作家や映画監督に留まらず幅広くアーティストとして活躍を見せるミランダ・ジュライはここにおいて過保護な母親をピリピリするような緊張感を以て演じきり、彼女のセルフイメージとは真逆の人物像を浮かび上がらせていく。様々な作品で名脇役として活躍するモリー・パーカーは理知的かつ強権的な指導者を演じており、頗る印象的だ。

そんな2人には共通する要素が存在する。マデリンを庇護する母親/のような存在でありながらも、実は彼女を支配し搾取しようとする人物であるという点だ。レジーナは自分の枠内から外れようとする娘を都合のいい鋳型に押し込めようとして、彼女から反発される。そしてエヴァンジェリンはマデリンの才能を認める素振りを見せながらも、実際には彼女の魂の悶えを簒奪して自分の作品へと変えようとしている。ある意味で直接的な前者よりもたちの悪い存在とも言える。

そんな中で輝きを放つのはマデリンを演じるHelena Howardのカリスマ性だ。最初は演技に対して野性的な勘を見せる獣のような存在として彼女は立ち現れる。しかしその内に反発や束の間の愛着を経て、感情の機微を学びとり、狂気を御する術をも学びとることとなる。その果てに正真正銘のマデリンによるマデリンが私たちの眼前に現れる。その瞬間こそ今作は辿り着くことの稀有な高みへと飛翔することになるのだ。

くすぐられる嗅覚、澄まされる味覚、撫でられる触覚、爆ぜる聴覚、瞬く視覚。1人の少女の精神をめぐる旅路は五感をこじ開けられる鮮烈な映画体験へ昇華される。新鋭Helena Howardの熱気に全てが呑み込まれた末に至る終局の感動といったら圧倒的だ。"Madeline's Madelune"は彼女の輝きによって唯一無二の美しさを誇る。

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ポスト・マンブルコア世代の作家たちシリーズ
その1 Benjamin Dickinson &"Super Sleuths"/ヒップ!ヒップ!ヒップスター!
その2 Scott Cohen& "Red Knot"/ 彼の眼が写/映す愛の風景
その3 デジリー・アッカヴァン&「ハンパな私じゃダメかしら?」/失恋の傷はどう癒える?
その4 Riley Stearns &"Faults"/ Let's 脱洗脳!
その5 Gillian Robespierre &"Obvious Child"/中絶について肩の力を抜いて考えてみる
その6 ジェームズ・ポンソルト&「スマッシュド〜ケイトのアルコールライフ〜」/酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい…
その7 ジェームズ・ポンソルト&"The Spectacular Now"/酒さえ飲めばなんとかなる!……のか?
その8 Nikki Braendlin &"As high as the sky"/完璧な人間なんていないのだから
その9 ハンナ・フィデル&「女教師」/愛が彼女を追い詰める
その10 ハンナ・フィデル&"6 Years"/この6年間いったい何だったの?
その11 サラ=ヴァイオレット・ブリス&"Fort Tilden"/ぶらりクズ女子2人旅、思えば遠くへ来たもので
その12 ジョン・ワッツ&"Cop Car"/なに、次のスパイダーマンの監督これ誰、どんな映画つくってんの?
その13 アナ・ローズ・ホルマー&"The Fits"/世界に、私に、何かが起こり始めている
その14 ジェイク・マハフィー&"Free in Deed"/信仰こそが彼を殺すとするならば
その15 Rick Alverson &"The Comedy"/ヒップスターは精神の荒野を行く
その16 Leah Meyerhoff &"I Believe in Unicorns"/ここではないどこかへ、ハリウッドではないどこかで
その17 Mona Fastvold &"The Sleepwalker"/耳に届くのは過去が燃え盛る響き
その18 ネイサン・シルヴァー&"Uncertain Terms"/アメリカに広がる"水面下の不穏"
その19 Anja Marquardt& "She's Lost Control"/セックス、悪意、相互不理解
その20 Rick Alverson&"Entertainment"/アメリカ、その深淵への遥かな旅路
その21 Whitney Horn&"L for Leisure"/あの圧倒的にノーテンキだった時代
その22 Meera Menon &"Farah Goes Bang"/オクテな私とブッシュをブッ飛ばしに
その23 Marya Cohn & "The Girl in The Book"/奪われた過去、綴られる未来
その24 John Magary & "The Mend"/遅れてきたジョシュ・ルーカスの復活宣言
その25 レスリー・ヘッドランド&"Sleeping with Other People"/ヤリたくて!ヤリたくて!ヤリたくて!
その26 S. クレイグ・ザラー&"Bone Tomahawk"/アメリカ西部、食人族の住む処
その27 Zia Anger&"I Remember Nothing"/私のことを思い出せないでいる私
その28 Benjamin Crotty&"Fort Buchnan"/全く新しいメロドラマ、全く新しい映画
その29 Perry Blackshear&"They Look Like People"/お前のことだけは、信じていたいんだ
その30 Gabriel Abrantes&"Dreams, Drones and Dactyls"/エロス+オバマ+アンコウ=映画の未来
その31 ジョシュ・モンド&"James White"/母さん、俺を産んでくれてありがとう
その32 Charles Poekel&"Christmas, Again"/クリスマスがやってくる、クリスマスがまた……
その33 ロベルト・ミネルヴィーニ&"The Passage"/テキサスに生き、テキサスを旅する
その34 ロベルト・ミネルヴィーニ&"Low Tide"/テキサス、子供は生まれてくる場所を選べない
その35 Stephen Cone&"Henry Gamble's Birthday Party"/午前10時02分、ヘンリーは17歳になる
その36 ネイサン・シルヴァー&「エレナ出口」/善意の居たたまれない行く末
その37 ネイサン・シルヴァー&"Soft in the Head"/食卓は言葉の弾丸飛び交う戦場
その38 ネイサン・シルヴァー&"Stinking Heaven"/90年代の粒子に浮かび上がるカオス
その39 Felix Thompson&"King Jack"/少年たちと"男らしさ"という名の呪い
その40 ジョセフィン・デッカー&"Art History"/セックス、繋がりであり断絶であり
その41 Chloé Zhao&"Songs My Brothers Taught Me"/私たちも、この国に生きている
その42 ジョセフィン・デッカー&"Butter on the Latch"/森に潜む混沌の夢々
その43 Cameron Warden&"The Idiot Faces Tomorrow"/働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない
その44 Khalik Allah&"Field Niggas"/"Black Lives Matter"という叫び
その45 Kris Avedisian&"Donald Cried"/お前めちゃ怒ってない?人1人ブチ殺しそうな顔してない?
その46 Trey Edwards Shults&"Krisha"/アンタは私の腹から生まれて来たのに!
その47 アレックス・ロス・ペリー&"Impolex"/目的もなく、不発弾の人生
その48 Zachary Treitz&"Men Go to Battle"/虚無はどこへも行き着くことはない
その50 Joel Potrykus&"Coyote"/ゾンビは雪の街へと、コヨーテは月の夜へと
その51 Joel Potrykus&"Ape"/社会に一発、中指ブチ立てろ!
その52 Joshua Burge&"Buzzard"/資本主義にもう一発、中指ブチ立てろ!
その53 Joel Potrykus&"The Alchemist Cookbook"/山奥に潜む錬金術師の孤独
その54 Justin Tipping&"Kicks"/男になれ、男としての責任を果たせ
その55 ジェニファー・キム&"Female Pervert"/ヒップスターの変態ぶらり旅
その56 Adam Pinney&"The Arbalest"/愛と復讐、そしてアメリカ
その57 Keith Maitland&"Tower"/SFのような 西部劇のような 現実じゃないような
その58 アントニオ・カンポス&"Christine"/さて、今回テレビで初公開となりますのは……
その59 Daniel Martinico&"OK, Good"/叫び 怒り 絶望 破壊
その60 Joshua Locy&"Hunter Gatherer"/日常の少し不思議な 大いなる変化
その61 オーレン・ウジエル&「美しい湖の底」/やっぱり惨めにチンケに墜ちてくヤツら
その62 S.クレイグ・ザラー&"Brawl in Cell Block"/蒼い掃き溜め、拳の叙事詩
その63 パトリック・ブライス&"Creep 2"/殺しが大好きだった筈なのに……
その64 ネイサン・シルヴァー&"Thirst Street"/パリ、極彩色の愛の妄執
その65 M.P. Cunningham&"Ford Clitaurus"/ソルトレーク・シティでコメdっjdjdjcjkwjdjdkwjxjヴ
その66 Patrick Wang&"In the Family"/僕を愛してくれた、僕が愛し続けると誓った大切な家族
その67 Russell Harbaugh&"Love after Love"/止められない時の中、愛を探し続けて
その68 Jen Tullock&"Disengaged"/ロサンゼルス同性婚狂騒曲!
その69 Chloé Zhao&"The Rider"/夢の終りの先に広がる風景

結局マンブルコアって何だったんだ?
その1 アーロン・カッツ&"Dance Party, USA"/レイプカルチャー、USA
その2 ライ・ルッソ=ヤング&"You Wont Miss Me"/23歳の記憶は万華鏡のように
その3 アーロン・カッツ&"Quiet City"/つかの間、オレンジ色のときめきを
その4 ジョー・スワンバーグ&"Silver Bullets"/マンブルコアの重鎮、その全貌を追う!
その5 ケイト・リン・シャイル&"Empire Builder"/米インディー界、後ろ向きの女王
その6 ジョー・スワンバーグ&"Kissing on the Mouth"/私たちの若さはどこへ行くのだろう
その7 ジョー・スワンバーグ&"Marriage Material"/誰かと共に生きていくことのままならさ
その8 ジョー・スワンバーグ&"Nights and Weekends"/さよなら、さよならグレタ・ガーウィグ
その9 ジョー・スワンバーグ&"Alexander the Last"/誰かと生きるのは辛いけど、でも……
その10 ジョー・スワンバーグ&"The Zone"/マンブルコア界の変態王頂上決戦
その11 ジョー・スワンバーグ&"Private Settings"/変態ボーイ meets ド変態ガール
その12 アンドリュー・ブジャルスキー&"Funny Ha Ha"/マンブルコアって、まあ……何かこんなん、うん、だよね
その13 アンドリュー・ブジャルスキー&"Mutual Appreciation"/そしてマンブルコアが幕を開ける
その14 ケンタッカー・オードリー&"Team Picture"/口ごもる若き世代の逃避と不安
その15 アンドリュー・ブジャルスキー&"Beeswax"/次に俺の作品をマンブルコアって言ったらブチ殺すぞ
その16 エイミー・サイメッツ&"Sun Don't Shine"/私はただ人魚のように泳いでいたいだけ
その17 ケンタッカー・オードリー&"Open Five"/メンフィス、アイ・ラブ・ユー
その18 ケンタッカー・オードリー&"Open Five 2"/才能のない奴はインディー映画作るの止めろ!
その19 デュプラス兄弟&"The Puffy Chair"/ボロボロのソファー、ボロボロの3人
その20 マーサ・スティーブンス&"Pilgrim Song"/中年ダメ男は自分探しに山を行く
その21 デュプラス兄弟&"Baghead"/山小屋ホラーで愛憎すったもんだ
その22 ジョー・スワンバーグ&"24 Exposures"/テン年代に蘇る90's底抜け猟奇殺人映画
その23 マンブルコアの黎明に消えた幻 "Four Eyed Monsters"
その24 リチャード・リンクレイター&"ROS"/米インディー界の巨人、マンブルコアに(ちょっと)接近!
その25 リチャード・リンクレイター&"Slacker"/90年代の幕開け、怠け者たちの黙示録
その26 リチャード・リンクレイター&"It’s Impossible to Learn to Plow by Reading Books"/本を読むより映画を1本完成させよう
その27 ネイサン・シルヴァー&「エレナ出口」/善意の居たたまれない行く末
その28 ネイサン・シルヴァー&"Soft in the Head"/食卓は言葉の弾丸飛び交う戦場
その29 ネイサン・シルヴァー&"Uncertain Terms"/アメリカに広がる"水面下の不穏"
その30 ネイサン・シルヴァー&"Stinking Heaven"/90年代の粒子に浮かび上がるカオス
その31 ジョセフィン・デッカー&"Art History"/セックス、繋がりであり断絶であり
その32 ジョセフィン・デッカー&"Butter on the Latch"/森に潜む混沌の夢々
その33 ケント・オズボーン&"Uncle Kent"/友達っていうのは、恋人っていうのは
その34 ジョー・スワンバーグ&"LOL"/繋がり続ける世代を苛む"男らしさ"
その35 リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる?
その36 ジョー・スワンバーグ&「ハッピー・クリスマス」/スワンバーグ、新たな可能性に試行錯誤の巻
その37 タイ・ウェスト&"The Roost"/恐怖!コウモリゾンビ、闇からの襲撃!
その38 タイ・ウェスト&"Trigger Man"/狩人たちは暴力の引鉄を引く
その39 アダム・ウィンガード&"Home Sick"/初期衝動、血飛沫と共に大爆裂!
その40 タイ・ウェスト&"The House of the Devil"/再現される80年代、幕を開けるテン年代
その41 ジョー・スワンバーグ&"Caitlin Plays Herself"/私を演じる、抽象画を描く
その42 タイ・ウェスト&「インキーパーズ」/ミレニアル世代の幽霊屋敷探検
その43 アダム・ウィンガード&"Pop Skull"/ポケモンショック、待望の映画化
その44 リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で
その45 ジョー・スワンバーグ&"Autoerotic"/オナニーにまつわる4つの変態小噺
その46 ジョー・スワンバーグ&"All the Light in the Sky"/過ぎゆく時間の愛おしさについて
その47 ジョー・スワンバーグ&「ドリンキング・バディーズ」/友情と愛情の狭間、曖昧な何か
その48 タイ・ウェスト&「サクラメント 死の楽園」/泡を吹け!マンブルコア大遠足会!
その49 タイ・ウェスト&"In a Valley of Violence"/暴力の谷、蘇る西部
その50 ジョー・スワンバーグ&「ハンナだけど、生きていく!」/マンブルコア、ここに極まれり!
その51 ジョー・スワンバーグ&「新しい夫婦の見つけ方」/人生、そう単純なものなんかじゃない
その52 ソフィア・タカール&"Green"/男たちを求め、男たちから逃れ難く
その53 ローレンス・マイケル・レヴィーン&"Wild Canaries"/ヒップスターのブルックリン探偵物語!
その54 ジョー・スワンバーグ&「ギャンブラー」/欲に負かされ それでも一歩一歩進んで
その55 フランク・V・ロス&"Quietly on By"/ニートと出口の見えない狂気
その56 フランク・V・ロス&"Hohokam"/愛してるから、傷つけあって
その57 フランク・V・ロス&"Present Company"/離れられないまま、傷つけあって
その58 フランク・V・ロス&"Audrey the Trainwreck"/最後にはいつもクソみたいな気分
その59 フランク・V・ロス&"Tiger Tail in Blue"/幻のほどける時、やってくる愛は……
その60 フランク・V・ロス&"Bloomin Mud Shuffle"/愛してるから、分かり合えない
その61 E.L.カッツ&「スモール・クライム」/惨めにチンケに墜ちてくヤツら
その62 サフディ兄弟&"The Ralph Handel Story”/ニューヨーク、根無し草たちの孤独
その63 サフディ兄弟&"The Pleasure of Being Robbed"/ニューヨーク、路傍を駆け抜ける詩
その64 サフディ兄弟&"Daddy Longlegs"/この映画を僕たちの父さんに捧ぐ
その65 サフディ兄弟&"The Black Baloon"/ニューヨーク、光と闇と黒い風船と
その66 サフディ兄弟&「神様なんかくそくらえ」/ニューヨーク、這いずり生きる奴ら
その67 ライ・ルッソ=ヤング&"Nobody Walks"/誰もが変わる、色とりどりの響きと共に
その68 ソフィア・タカール&「ブラック・ビューティー」/あなたが憎い、あなたになりたい
その69 アンドリュー・バジャルスキー&"Computer Chess"/テクノロジーの気まずい過渡期に
その70 アンドリュー・バジャルスキー&「成果」/おかしなおかしな三角関係
その71 結局マンブルコアって何だったんだ?(作品リスト付き)
その72 リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ?
その73 リン・シェルトン&「不都合な自由」/20年の後の、再びの出会いは
その74 リン・シェルトン&「ラブ・トライアングル」/三角関係、僕と君たち
その75 リン・シェルトン&"Touchy Feely"/あなたに触れることの痛みと喜び
その76 リン・シェルトン&「アラサー女子の恋愛事情」/早く大人にならなくっちゃなぁ
その77 アンドリュー・バジャルスキー&"Support the Girls"/女を救えるのは女だけ!