鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

Matjaž Ivanišin&"Oroslan"/生きることへの小さな祝福

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さて、今私の中でスロヴェニア映画がアツい。きっかけはスロヴェニア映画界の巨匠Boštjan Hladnikの作品を観る機会があって、それでド嵌りしてしまったのである。それからスロヴェニアの映画評論家にインタビューを敢行し、スロヴェニア映画史について学んでいる訳であるが、2010年代を代表する作品について問うと誰もが名前を挙げる作品があったのだ。それこそが今回紹介する作品、スロヴェニア映画界期待の新鋭Matjaž Ivanišinの監督作"Oroslan"である。

舞台はスロヴェニアのとある田舎町、ここでひっそりと1人の老人が亡くなった。オロスランという名前の男性だ。普段なら運ばれている弁当箱が玄関にそのまま残されていたことから、不審に思った住人たちが家へ赴き、変わり果てた彼を発見したのであった。突然の喪失に、町は悲しみに包まれることとなる。

まず今作は田舎町の日常を描き出していく。例えば町の住民が繊維工場で働く姿、精肉工場で豚肉を勢いよく裁断する姿、弁当の配達人が車で町をめぐっていく姿。そういったのどかな風景の数々が淡々と綴られていく。そこにはどこか安堵させられるような平穏が宿っている。

それと同時に私たちは映画から何か崇高な雰囲気をも感じることになるだろう。それは町を取り囲む雄大なる自然が源だ。鬱蒼と茂る深緑色の森、それを覆いつくす濃厚な霧、鈍い灰色を湛え続ける空。スロヴェニアの自然は独特の崇高さを宿しており、それが安らかな日常と重なりあうことで謎めいた空気感が生まれることとなる。

そしてそれらを見据える監督の眼差しも印象的だ。撮影監督Gregor Bozic(彼は以前紹介したスロヴェニア映画"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"の監督でもある)のカメラは目睫の光景を明晰にして厳然たる面持ちで眺め続ける。そうすることでのどかな日常と崇高な自然のあわいに唯一無二の聖性が現れることとなる。ただ柔らかな泥の上を歩く足のショットが、得も言われぬ感動を喚起するのだ。

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そんな中で監督たちはある2人の男を追うことになる。彼らはサッカーや故郷についての無駄話を繰り広げながら、車を運転して何処かへ向かう。仕事を済ませた後に彼らは酒場へと赴くのだが、そこでも意味のないように思える会話は続く。そうして会話は重なり続け、時はゆったりと進んでいく。

だがある時、片方の男がとうとうあの話を始める。オロスランの死についてだ。弁当運び、残された弁当を目撃した女性、彼の死に様、救急隊員に運ばれる死体。そういった細部が紡がれる中で浮かぶのは、オロスランという死者がいかに愛されていたかということだ。彼らの声と言葉には死者への親密さと哀惜が滲んでいるのだ。直接は語られない言葉、つまりは"あなたがいなくて寂しいよ"というその言葉がその軽やかなお喋りには込められているのだ。

そして監督はオロスランの死の後に広がる風景というものを丹念に描き出していく。表面上は何ら変わったところは存在しない。だが先ほどと同じようにのどかな日常と崇高な自然が重なりあう中で、目には見えない喪失が、冬の寒々しくも静謐に覆われた風のように通るのが分かるだろう。何かが決定的に変わってしまったという切ない予感が心によぎるのだ。

さらに喪失の後に、住民たちがオロスランについてのそれぞれの思い出をカメラに語り始める。生前の彼の様々な逸話が語られていき、涙どころか笑いすら絶えない幸福な時間が続いていく。その語りは複層的で、一言には纏められない人間のパーソナリティというものが浮かびあがる。観客はそれぞれの心の中で、住民たちの言葉を手掛かりにそれぞれのオロスランを想うことになるだろう。

こうした意味で、本作はドキュメンタリー的な構築が成されていると言える。だが本作はスロヴェニアの小説家であるZdravko Dušaの短編作品が基になっている。つまりは巧妙に仕組まれたフィクション作品なのである。ゆえに今作はドキュメンタリーとフィクションのあわいを漂うような不思議な浮遊感を持ち合わせているのだ。これが今作の抗いがたい魅力だと断言できる。

スロヴェニアの田舎町、1人の老人が亡くなり人々は悲しみに包まれながら、それぞれの思い出を紡いでいく。その言葉の数々からは死者への哀惜と親密さが溢れだし、生きることへの小さな、切実な祝福が齎される。2010年代スロヴェニア映画界の最後を飾る、輝ける奇跡のような優しさがこの"Oroslan"なのだ。

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私の好きな監督・俳優シリーズ
その361 Mona Nicoară&"Distanța dintre mine și mine"/ルーマニア、孤高として生きる
その362 Siniša Gacić&"Hči Camorre"/クリスティーナ、カモッラの娘
その363 Vesela Kazakova&"Cat in the Wall"/ああ、ブレグジットに翻弄されて
その364 Saeed Roustaee&"Just 6.5"/正義の裏の悪、悪の裏の正義
その365 Mani Haghighi&"Pig"/イラン、映画監督連続殺人事件!
その366 Dmitry Mamulia&"The Climinal Man"/ジョージア、人を殺すということ
その367 Valentyn Vasyanovych&"Atlantis"/ウクライナ、荒廃の後にある希望
その368 Théo Court&"Blanco en blanco"/チリ、写し出される虐殺の歴史
その369 Marie Grahtø&"Psykosia"/"私"を殺したいという欲望
その370 Oskar Alegria&"Zumiriki"/バスク、再び思い出の地へと
その371 Antoneta Kastrati&"Zana"/コソボ、彼女に刻まれた傷痕
その372 Tamar Shavgulidze&"Comets"/この大地で、私たちは再び愛しあう
その373 Gregor Božič&"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"/スロヴェニア、黄昏色の郷愁
その374 Nils-Erik Ekblom&"Pihalla"/フィンランド、愛のこの瑞々しさ
その375 Atiq Rahimi&"Our Lady of Nile"/ルワンダ、昨日の優しさにはもう戻れない
その376 Dag Johan Haugerud&"Barn"/ノルウェーの今、優しさと罪
その377 Tomas Vengris&"Motherland"/母なる土地、リトアニア
その378 Dechen Roder&"Honeygiver among the Dogs"/ブータン、運命の女を追って
その379 Tashi Gyeltshen&"The Red Phallus"/ブータン、屹立する男性性
その380 Mohamed El Badaoui&"Lalla Aïcha"/モロッコ、母なる愛も枯れ果てる地で
その381 Fabio Meira&"As duas Irenes"/イレーニ、イレーニ、イレーニ
その382 2020年代、期待の新鋭映画監督100!
その383 Alexander Zolotukhin&"A Russian Youth"/あの戦争は今も続いている
その384 Jure Pavlović&"Mater"/クロアチア、母なる大地への帰還
その385 Marko Đorđević&"Moj jutarnji smeh"/理解されえぬ心の彷徨

Marko Đorđević&"Moj jutarnji smeh"/理解されえぬ心の彷徨

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いわゆる"コミュ障"という言葉が日本語にはある。内に引きこもるばかりで他者との交流の仕方を知らず、孤独をこじらせていく悪循環に陥る人々のことだ。日本ではこの言葉がカジュアルに使われているが、実際問題この障害によって実生活に悪影響が及んでいる人々も少なくないだろう。今回紹介するのはそんな人物を描き出したセルビア映画、Marko Đorđević監督のデビュー長編"Moj jutarnji smeh"を紹介していこう。

今作の主人公はデヤン(Filip Đurić)という28歳の男だ。彼には友人も恋人もおらず、さらに実家で母ラディツァ(Jasna Đuričić)と祖父ライコ(Bratislav Slavkovic)と3人で暮らしている。その性格は良いものとは言えない。ある朝、冷蔵庫を覗いたデヤンは怒りを覚える。ライコが自分のパンケーキを食べたからだ。彼は激高した後、癇癪でガラス戸を破壊してしまう。そんな日々が続いていた。

設定としてはアメリカのコメディ作品にあってもいいものだ。だがそこにあるべき過剰で下品なユーモアは今作にはない。あくまでも監督の演出はすこぶる冷徹なものだ。撮影監督Stefan Milosavljevicはカメラを一か所に固定したまま、眼前の光景を厳然と映し続ける。世界は鈍い青色など寒色に包まれており、ひどく寒々しい印象を与える。

ある日、デヤンはラディツァに付き添われ精神科医のもとに赴くことになる。だが医師は心に寄り添うどころか、彼の臆病さや弱さを"女々しい"と非難し、さらには性愛の経験がないことが精神不調の原因であると詰るのだ。そんな言説に対して、デヤンはすごすごと待合室へと引き返すしかできない。

今作はそんな孤独な男の魂の彷徨を映し出していく。デヤンの生活にはどこまでも淀んだ鬱屈と性的な不満が存在している。彼はこの負の感情をどう処理していいのか分からず、何か行動に移すことが全くできないでいる。それが人生の停滞を引き起こし、負の螺旋を描き出しいくのだ。田舎町の雪の風景にはそんな彼の痛切な思いが滲んでいる。

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さらに際立つのは母であるラディツァの存在だ。彼女は親として過保護な傾向が見られ、どうしても身の回りの世話を焼いてしまう。そしてその傾向を精神科医に見抜かれて、デヤンが独立できない原因は彼女だと名指しで非難される存在だ。

そんな母と息子の関係性はとても微妙なものである。怪我をしたデヤンを労わるラディツァの姿には親としての愛が感じられるが、その愛こそが2人を共依存という罠に導いていくことが監督の演出からは如実に感じることができる。そして彼らはこの共依存から逃れられないまま、ズブズブと沼に嵌っていく。

だがその関係性に一石を投げかける存在が現れる。カツァ(Ivana Vuković)という女性はデヤンが勤務する学校で教師として働いている。彼女はデヤンを信頼しており、原因不明の痛みに襲われた際には付き添ってもらったりする仲だ。そうして彼女たちの関係性はゆっくりと親密なものへと変わっていく。ここにおいて物語の主軸となるのはデヤンがカツァと結ばれ、性的な不満が解消されるかどうかだと思われるかもしれない。一面的にはそうかもしれないが、作品を観るうちまた違う可能性が存在することにも気づくかもしれない。

デヤンの姿を眺める最中に気づくのは、彼が本当に通俗的な性的不満を抱いているのかどうかということだ。確かに彼は恋人はおらず、童貞であることも明言される。だがそれを彼が苦にしているかと言えば、劇中の描写だけではそうとも断言できないのが実情である。そこである可能性が浮かんでくる。彼はいわゆるアセクシャルな人物であり、性欲といった概念を持たないのかもしれないと。

その観点から今作を観ていくと物語のもう1つの側面が見えてくる。精神科医はデヤンの性愛への関わりのなさを"女々しい"と非難するが、アセクシャルとするならその言説は全く意味を成さないことになる。むしろその言葉はアセクシャルへの社会の無理解を象徴していると言える。

主演であるFilip Đurićはそんな複雑な男の肖像を静かに、しかし熱意たっぷりに描き出している。普段は表情を表に出すことはないが、世界と相いれない寂しさや悲哀はその身体から濃厚なまでに滲み出ている。その解消の鍵はカツァとの関係性であるかもしれないが、可能性が曖昧で複雑微妙な地点へと至る起点となる終盤の展開は圧巻という他ないだろう。徹底した長回しで紡がれるそれは生命力に満ち溢れている。"Moj jutarnji smeh"はひどく荒涼たるもすこぶる繊細な心の機微を描き出した圧巻の作品だ。

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広大たるスロヴェニア映画史その2~Interview with Ana Šturm

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さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フランス語から翻訳された批評本やフランスで勉強した批評家の本には簡単に出会えるが、その他の国の批評については全く窺い知ることができない。よくてアメリカは英語だから知ることはできるが、それもまた英語中心主義的な陥穽におちいってしまう訳である(そのせいもあるだろうが、いわゆる日本未公開映画も、何とか日本で上映されることになった幸運な作品の数々はほぼフランス語か英語作品である)

この現状に"本当つまんねえ奴らだな、お前ら"と思うのだ。そして私は常に欲している。フランスや英語圏だけではない、例えばインドネシアブルガリア、アルゼンチンやエジプト、そういった周縁の国々に根づいた批評を紹介できる日本人はいないのか?と。そう言うと、こう言ってくる人もいるだろう。"じゃあお前がやれ"と。ということで今回の記事はその1つの達成である。

今回インタビューしたのはスロヴェニア映画批評家Ana Šturm アナ・シュトラムである。歴史学者社会学者であるとともに、批評家として映画雑誌Ekranに記事を執筆しながら、スロヴェニア最大のアニメーション映画祭であるアニマテカ映画祭のプログラマーとしても活躍している。前回は同じスロヴェニアの映画評論家Petra Metercにインタビュー(その記事はこちら)をしており、質問内容はほぼ同じながらも、また新たな角度からスロヴェニア映画界を俯瞰できる内容ともなっている。ということで、東欧映画好き、スロヴェニア映画好きはぜひ読んでいってください。それではどうぞ。

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済藤鉄腸(TS):まずあなたはなぜ映画評論家になろうと思ったんですか? どのようにそれを叶えましたか?

アナ・シュトラム(AS):ある記事を書いている時、ちょうどそのことについて考えていました。それは映画雑誌Ekranの編集長であったNika Bohinc ニカ・ボヒンツについての記事です。10年前にフィリピンで不慮の死を遂げましたが、私が映画批評家になるまでの旅において重要な人物の1人です。彼女は映画雑誌に記事を寄稿する最初の機会をくれたんです。そして私にとってマントラのような言葉を残してくれました。"私たちが映画批評を書くのは映画を愛しているから、映画が世界を理解する助けになるから"。とてもシンプルなものです。

映画批評家になったのは意図的というより偶然からです。本当に追求したかったキャリアではなかったです。5歳の時から医者や消防士、映画批評家になりたいという人もいますが、私は違いました。それとは真逆で、映画が私を見出したんです。刺激的な冒険は徐々に素晴らしい友情に、深い愛になっていきました。執筆についてだけではありません。もちろん、映画について書くのは好きです。でも映画について語るのも好きなんです。だからスロヴェニア初の映画を語るポッドキャストFilmFlowを作るのを手伝いました。それから映画のために働いてもいます。イベントや映画祭を企画し、人々が素晴らしい映画を観られるようにしています。素晴らしい映画の発見をシェアすることは仕事をするうえで素晴らしい見返りです。最近、私は大学で映画・TV番組制作を学ぶ修士課程に入ることを決めました。冒険は続き、友情は成長し、愛情はさらに花開いていくというわけです。

TS:映画に興味を持った際、どのような映画を観ていましたか? 当時のスロヴェニアではどういった映画を見ることができましたか?

AS:学生の時、ビデオライブラリーや映画館で働いていたので、映画を無料で観ることができて最高でした。ですがその頃はスロヴェニアシネコンがメジャーになってきた時期なので、観ることができたのはハリウッド映画ばかりで、時折デザートのようにヨーロッパの文芸映画を観ることができました。

ですが私が映画のラビットホールに落ちたのはリュブリャナに引っ越して、シネマテークで働きだしてからです。そこでは多くの古典やインディーズ映画、実験映画を観ることができました。チャップリンからスクリューボール・コメディドイツ表現主義からルーマニアの新しい波、パウエル&プレスバーガーからベルイマンフェリーニ、全てを愛していました。特に古典は大好きで、シネマテークは私が映画を学ぶ上で重要な場所であり、映画に深く嵌ったきっかけなんです。

もし映画への愛を規定した映画作家の名前を3人あげるならフレデリック・ワイズマンジョナス・メカスアニエス・ヴァルダになるでしょう。ジャンル映画やB級映画、特にいわゆる"酷ければ酷いほど最高"映画も同じように好きですね。

TS:最初に観たスロヴェニア映画はなんですか? どんな感想を覚えましたか?

AS:初めて観たスロヴェニア映画はBojan the Bearというキャラクターを描いた短編のアニメーションです。彼は面白い帽子を被った画家で、自身の世界を3つの色で描き出すんです。Bojan the Bearスロヴェニアでも最も有名なアニメーションで、大好きだったのを覚えています。Živ-Žavという日曜日に国営放送でやっていた、朝の子供番組の一部として放送されていて、父と一緒にいつも観ていました。彼も大好きだったと思いますよ。

子供の頃、大好きで何度も観るスロヴェニア映画がいくつかありました。ナチスに反抗するパルチザンを描いたFrance Štiglic フランツェ・シュティグリッツ"Ne joči, Peter"(1964)に Jože Gale ヨジェ・ガレによる"Kekec"(1951)と"Srečno Kekec"(1963)と"Kekčeve ukane"(1968)のKekec三部作などですね。それから1番好きだったスロヴェニア映画の1つがTugo Štiglic トゥゴ・シュティグリツ"Poletje v školjki"(1985)です。トマシュという少年と彼の友達に家族、ヴェディという頼れるコンピューターをめぐる物語です。明るく、滑稽で、色彩に溢れ、夏の匂いに満ち満ちた作品でした。私が生まれた時に作られた作品で、舞台はセチョヴリェ・サリナ国立公園やピランにポルトロシュという町、そこにある牧歌的なスロヴェニアの海岸でした。今まで語った作品はとても人気なスロヴェニアの古典作品です。

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TS:スロヴェニア映画の最も際立った特徴は何でしょう? 例えばフランス映画は愛の哲学、ルーマニア映画は徹底したリアリズムと黒いユーモアなど。なら、スロヴェニア映画はどうでしょう?

AS:この類の質問はいつだって難しいものです。なぜなら特徴の1つや2つで国全体の映画を総括することなど無理だとわかっているからです。それでも言えるのは私たちの映画は小規模で、パーソナルな日常についての物語を描いているということです。映画において私たちは大規模で叙事詩的、歴史的な物語を持たないんです。それは予算が足りない中で何とか映画を作らなくてはならないからです。ジャンル映画も少ないですね。スロヴェニア映画において私が欠けていると思う部分です。そういった映画業界が興っていないことは自明のことです。それでも私たちには素晴らしい自然があります。美しい山や谷、湖に観客は感心することでしょう。スロヴェニア映画の際立った特徴の1つはその忍耐なんです。スロヴェニアのように小さな国が、少しの予算だけで毎年いくつもの素晴らしい作品を作れるのは小さな奇跡なのです。

TS:スロヴェニアの外側から見ると、世界のシネフィルにとって最も有名な映画作家Boštjan Hladnik ボシュチャン・フラドニクです。彼の作品"Ples v dežju"はその抒情性と新鮮さにおいて最も有名なスロヴェニア映画でしょう。彼はスロヴェニアにおいてどのように評価されていますか?

AS:Hkadnikの"Ples v dežju"は最も偉大なスロヴェニア映画の1つとして数えられています。Matjaž Klopčič マティアシュ・クロプチッチら同時代の作家――彼らはよくスロヴェニア映画の"恐るべき子供"と呼ばれます――とともにスロヴェニア映画界の重要人物と評価されています。例えば"Maškarada"(1971)などの過激な映画で論争を巻き起こしました。KlopčičとHladnikは両者ともヌーヴェルヴァーグ時代のフランスで映画を勉強しており、映画史において最も重要な潮流に関する考えをスロヴェニア映画に輸入したんです。個人的には彼のポップでエロティックな、犯罪コメディ"Sončni krik"(1968)が好きですね。

TS:スロヴェニア映画史において最も重要なスロヴェニア映画はなんですか? その理由もぜひ教えてください。

AS:スロヴェニア映画史にはとても重要な作品がたくさんあります。既にBošjan HladnikMatjaž Klopčičという最も際立った2人の映画作家について語りましたね。それからFrantišek Čap フランチシェスク・チャプがいます。彼の作品は最も愛されている作品ですね。他にもさらに印象的な映画監督としてJože Babič ヨジェ・バビッチVojko Duletič ヴォイコ・ドゥレティッチが挙げられます。

ですが私としては"Na svoji zemlji"(1948, France Štiglic)を挙げたいですね。今作はスロヴェニア映画においてはじめてのトーキー映画と見做されています。この映画を作るため、先駆者たちはどのように映画を作るか学んでいったんです。最近リストアされたのですが、私はリュブリャナのCongress Squareで行われた野外上映で観ました。今でも観られる価値のある作品ですね。2019年にはŠtiglicの生誕100周年であり、疑いなくスロヴェニア映画史で最も重要な人物として祝福されました。

それからあと2作挙げたいと思います。私たちがユーゴスラビアから独立して初めて作られた映画がVinci Vogue Anžlovar ヴィンチ・ヴォグ・アンチロヴァル"Babica gre na jug"(1991)です。今作は本当の意味で最初のスロヴェニア映画なんです。つまり独立してから初めて作られた映画という訳ですね。今作は86歳の老女が老人ホームから抜け出し、2人のミュージシャンを拾って、新しい人生のために南へ向かうというロードムービーです。今作は日本の資本も入っています。それからMaja Weiss マヤ・ワイス"Varuh meje"(2002)は女性監督によってはじめて作られたスロヴェニア映画です。コルパ川をカヌーで旅する女子生徒を描いたとても勇気ある映画でした。

TS:あなたの最も好きなスロヴェニア映画はなんですか? その理由もお聞かせください。

AS:"Poletje v školjki""Sončni krik""Varuh meje"など既にいくつか名前を挙げていますが、私にとってとても大切です。ほかにも Janez Lapajne ヤネス・ラパイネ"Šelestenje"(2002)も好きです。素晴らしい場面や主演俳優の見事な演技が印象的です。それから私の最も好きなスロヴェニアの映画監督がMatjaž Ivanišin マチャシュ・イヴァニシンです。"Karpopotnik"(2013), "Hiške"(2013), "Playing Men"(2017), "Vsaka dobra zgodba je ljubezenska zgodba"(2017), "Oroslan"(2019)はとても美しい作品です。

それから短編作品についても言及したいと思います。Karpo Godinaの実験映画、例えば"Zdravi ljudje za razvedrilo"(1971)や"Gratinirani možgani Pupilije Ferkeverk"(1970)は最高の作品です。それから私はMako Sajko マコ・サイコの短編作品のファンです。彼の存在はスロヴェニア映画でも独特です。それから最近感銘を受けた作品はDamjan Kozole ダミヤン・コゾレ"Meje"(2016)です。スロヴェニアを行く移民たちの姿を描いた作品でした。

TS:2010年代が数日前に終わりました。そこで聞きたいのは2010年代の最も重要な作品はなんでしょう。例えばRok Biček ロク・ビチェク"Razredni sovražnik"Vlado Škafar ヴラド・シュカファルの"Mama"Gregor Božič グレゴル・ボジッチ"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"……あなたの意見は?

AS:思うにこの10年が重要なのは、全く新しい世代の映画作家が現れていたからです。若い映画監督が自身のビジョンとありあまる才能で映画界を牽引していったんです。Rok Biček"Razredni sovražnik"はまず筆頭でしょう。それからSonja Prosenc ソーニャ・プロセンツ"Drevo"(2016)やŽiga Virc ジガ・ヴィルツ"Houston, imamo problem!"(2016)、Urša Menart ウルシャ・メナルト"Ne bom več luzerka"(2018)に、頂上のチェリーもしくは栗としてGregor Božič グレゴル・ボジッチ"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"(2019)を挙げたいと思います。

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TS:スロヴェニアにおける映画批評の現状はどのようなものでしょう? 日本においてはその実情をほとんど窺い知ることができません。なので日本の映画好きもその現状を知りたがっています。

AS:思うに私たちの映画批評は比較的強固なものです。とても溌溂とした状況なんです。他の国と同じように、新聞は芸術に関するレビューの欄を小さくしています。雑誌を刊行するにはよくない時代で、悪い意味で全てがオンラインで見られてしまいます。この国には2つの映画雑誌Kino!とEkranがあります。映画に関するラジオ番組もありますが、TV番組にはありません。しかし熱意と映画への愛で経営されている2つの映画ポッドキャストがあります。Filmflowは女性評論家で構成されたポッドキャストで、文芸映画を主に特集しています。O.B.O.D.は逆にジャンル映画を特集するポッドキャストです。

この国の映画評論家の多くは独学です。最近までスロヴェニアでは映画理論を勉強することができなかったんです。しかし映画教育が学校のシステムにおいて徐々に重要になってきており、今では万事快調です。若い映画評論家のための素晴らしいワークショップもたくさんあります。Maja Kranc マヤ・クランツは自身の計画Ostrenje pogledaで映画批評界に大きな影響を与えました・外国の映画批評も読んでいますが、私たちはその中でも最高だと言うべきでしょう。もっと多くの人がスロヴェニア語を理解できればいいのにと思います。そうすれば私たちの批評を読んでもらえるんですから。とても小さな共同体ですが、素晴らしいんです。

TS:あなたはアニマテカという映画祭のプログラマーだと聞きました。アニマテカ映画祭とはどんな映画祭でしょう? スロヴェニアの映画産業においてどのような役割を果たしているでしょうか?

AS;はい。アニマテカに参加できることは私にとっては特権です。学生映画コンペティションの選定を担当していて、毎年数々の映画を観るのは本当に喜ばしいことです。

アニマテカ映画祭は疑いなくスロヴェニアで最も素晴らしい映画祭の1つで、この地域でも随一のアニメーション映画祭でもあります。スロヴェニアの人々にアニメーション映画を紹介し、宣伝するのに一役買っています。アニマテカは映画のプロフェッショナルにとっては国際プロダクションへの重要な洞察を提供してもくれます。ここ数年、特に新しいアニマテカのプログラムによって、ここはスロヴェニアのアニメーション界にとって重要なプラットフォームになっています。スロヴェニアのアニメーターたちはここ数年で注目すべき作品を何本も制作しています。例えばDušan Kastelic ドゥシャン・カステリツ"Celica"Leon Vidmar レオン・ヴィドマル"Nočna ptica""Slovo"です。ええ、もしスロヴェニアに来たら、アニマテカ映画祭には絶対に来るべきですね。

TS:あなたにとって、スロヴェニア映画の最も注目べき新たな才能は誰でしょう? 例えば外部の人間としてはPeter Cerovšek ペテル・チェロシェクIvana Vogrinc Vidali イヴァナ・ヴォグリンツ・ヴィダリの名前を挙げたいです。両者は親密なリアリズムや神々しい抒情性によってドキュメンタリーの規範を破る作品を作っています。

AS:私は現在長編映画を制作している3人の女性作家を挙げたいと思います。

まずMaja Prelog マヤ・プレロクです。彼女の短編"2045"は2016年最も好きだったスロヴェニア映画の1つだったんですが、彼女は今デビュー長編"Cent'anni"を制作しています。とてもパーソナルな物語をすこぶるユニークに語る作品です。彼女の恋人であるブラシュは2017年に重い白血病を患います。骨髄移植の後、彼はロードバイクでイタリアの有名な山脈を旅します。全てが始まった場所に帰るために。"今作は人生への頌歌であり、個人的な経験が映画という芸術に変わるまでの過程なんです"とはマヤの言葉です。

Sara Kern サラ・ケルンスロヴェニア生まれでオースラリアのメルボルンを拠点とする映画作家です。彼女の短編作品"Srečno, Orlo!"ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門でプレミア上映された後、トロントやシカゴ、シアトルやパーム・スプリングで上映され、多数の賞を獲得しました。現在はデビュー長編"Vesna"を準備中で、Screen AustraliaとFilm Victoriaから補助を受け、カンヌのCinéfondation ResidenceとTorino Script Labにも選出されました。

これらの作品の共同制作者はRok Bičekでもあります。

3人目はUrška Djukić ウルシュカ・ドゥキッチです。現在Cinéfondation Residenceで長編デビュー作"Good Girl"を準備途中です。プロとして最初の短編作品"Dober tek, življenje!"はスロヴェニア映画祭で最優秀短編賞を獲得しました。2018年に"SEE Factory"に参加しました。カンヌの監督週間とサラエボ映画祭主導の、南東ヨーロッパの若い作家たちによる作品群です。そこで彼女は"The Right One"という作品を共同監督し、カンヌで上映されました。

"Good Girl"のプロデューサーであるMarina Gumzi マリナ・グムジ"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"を制作してもいます。

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広大たるスロヴェニア映画史~Interview with Petra Meterc

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さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フランス語から翻訳された批評本やフランスで勉強した批評家の本には簡単に出会えるが、その他の国の批評については全く窺い知ることができない。よくてアメリカは英語だから知ることはできるが、それもまた英語中心主義的な陥穽におちいってしまう訳である(そのせいもあるだろうが、いわゆる日本未公開映画も、何とか日本で上映されることになった幸運な作品の数々はほぼフランス語か英語作品である)

この現状に"本当つまんねえ奴らだな、お前ら"と思うのだ。そして私は常に欲している。フランスや英語圏だけではない、例えばインドネシアブルガリア、アルゼンチンやエジプト、そういった周縁の国々に根づいた批評を紹介できる日本人はいないのか?と。そう言うと、こう言ってくる人もいるだろう。"じゃあお前がやれ"と。ということで今回の記事はその1つの達成である。

今回インタビューしたのはスロヴェニア映画批評家Petra Meterc ペトラ・メテルツである。彼女はポーランド語・英語の翻訳家として活動するとともに、映画雑誌Ekranなどに映画批評を執筆する、スロヴェニア期待の批評家である。そんな彼女に今回はスロヴェニア映画史、2010年代の最も重要なスロヴェニア映画、スロヴェニアにおける映画批評の現在などについて聞いてみた。日本では知ることのできなかった情報が勢ぞろいである。東欧映画好き、スロヴェニア好きにはぜひ読んでもらいたい。

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済藤鉄腸(TS):最初にどうして映画評論家になろうと思ったんですか? そしてどのようにそれを叶えましたか?

ペトラ・メテルツ(PM):自分はいつだって映画が好きでした。なのでラジオ局Radio Študentに勤め始めてから、地方の映画祭に参加しようと思ったんです。とても楽しいものでしたね。若い映画評論家を育成するBerlinale Talent PressやIFFR Trainee Programmeに参加した経験は、この仕事を続けようという意欲を刺激してくれました。映画を観ること、文章としてそれについて書くことは大好きでした。映画を観れば観るほど、書くのが興味深い行為になるんです。自分は映画についてではなく言語と文学を勉強しました。スロヴェニアには勉強する場がなかったからです。なので他の評論家と同様に独学で勉強してきました。

TS:映画に興味を持った頃、どんな映画を観ていましたか? 当時スロヴェニアではどのような作品を観ることができましたか?

PM:映画への興味がより強くなったのは、リュブリャナに引っ越した後、地方の映画祭やスロヴェニアシネマテークに行くようになった頃でしょうか。ここでは古典映画とともにたくさんのインディー映画や実験映画にも触れることができました。それから大学生の頃、2つ専攻していた科目のうちの1つがポーランド語と文学だったんですが、それはポーランドのドキュメンタリーに深く嵌っていたからです。クシシュトフ・キェシロフスキMarcel Łoziński マルツェル・ウォジンスキらの作品です。ウォジンスキの短編作品"Wizyta"(1974)を観た時、映画が私をいかに感動させるかを発見したんです。

TS:初めて観たスロヴェニア映画はなんですか? どのような感想を持ちましたか?

PM:子供の頃に何度も観たと思い出せる作品はFrance Štiglic フランツェ・シュティグリッツによるパルチザン映画"Ne joči, Peter"(1964)です。多くのスロヴェニアもしくはユーゴスラビア映画と同じく、今作は第2次世界大戦が舞台であり、3人のパルチザンが3人の子供をドイツ兵から匿いながら安全地帯へ連れていくという内容でした。様々に物語が展開するロードムービーでした。作品がどのように戦争を描くかに興味がありましたが、同時にとても笑えるものでした。今でも多くのスロヴェニア人がそのジョークを言えるほどです。自分はエンディングも好きです。旅の途中、あるパルチザンの男性が同じくパルチザンである女性に出会い、当然のように女なのに戦争で戦っているのかとからかい、彼女の能力に疑いの目を向けます。しかし最後、皮肉にも彼女が自身の新しい司令官だったと判明するんです。パルチザンという流れにおける女性への魅力的なオマージュでもありました。

TS:あなたにとってスロヴェニア映画の最も際立った特徴はなんですか? 例えばフランス映画における愛の哲学、ルーマニア映画における徹底したリアリズムと黒いユーモア……スロヴェニア映画についてはどうでしょう?

PM:1つの特徴だけでスロヴェニア映画については語ることは私にはできません。諺が言うように、トーンとしては少し鬱々としていますが、ある時期におけるスロヴェニア映画、特に90年代の民主主義への移行期にはそれが唯一の真実であると思います。それから……電車と駅! 思うに多くのスロヴェニア映画には電車か駅の場面があります。この場面が私たちについて語っているかは定かじゃありませんけどね(笑) 際立った能力といえばインディーズ映画によるこの国への固定概念や期待を否定する力でしょうか。

TS:スロヴェニアの外側から見ると、世界のシネフィルにとって最も有名な作家はBoštjan Hladnik ボシュチャン・フラドニクでしょう。彼の作品"Ples v dežju"はその抒情性や新鮮さにおいて最も有名なスロヴェニア映画でしょう。しかし、スロヴェニアにおいて彼はどのように評価されているでしょう?"

PM:Hladnikは疑いなくスロヴェニアの映画監督で最も重要な人物の1人です。彼の"Ples v dežju"は20世紀のスロヴェニア映画で最も力強い作品の1つであり、モダニズムを私たちの映画史に導入したんです。芸術家として、彼は"恐るべき子供"というべき人物であり続けました。常にタブーを破っていき、特に60年代には彼は雄弁で議論を巻き起こす人物と見做されていました。

TS:スロヴェニア映画史において最も重要なスロヴェニア映画はなんでしょう? そしてその理由は?

PM:意見は様々です。ある人はHladnikの"Ples v dežju"を挙げるでしょうし、2005年には映画評論家たちによって最も重要なスロヴェニア映画に選ばれました。そしてある人はFrantišek Čap フランチシェスク・チャプによる"Vesna""Ne čakaj na maj"などを挙げるでしょう。いつまでも色褪せないこの作品たちを老若男女誰もが楽しんでいます。それからKarpo Godina カルポ・ゴディナの実験的なテーマを持った"Splav Meduze"や、Živojin Pavlović ジヴォイン・パヴロヴィチの政治的作品"Nasvidenje v naslednji vojni"を挙げる人もいます。さらにもちろん最初のスロヴェニア映画であるFrance Štiglic監督の"Na svoji zemlji"や、彼のほかの作品"Dolina miru"もあります。どちらもパルチザン映画です。2019年にはŠtiglicの生誕100周年を迎えましたが、彼もまたスロヴェニア映画史において最も重要な映画作家と言えるでしょう。

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TS:最も好きなスロヴェニア映画はなんですか?その理由も教えてください。

PM:1つ選ぶのは難しいですね。先の質問で古典については答えたので、私の成長した時期である90年代に出てきた作品を挙げたいと思います。鬱々とした作品ではないですよ。 Maja Weiss マヤ・ワイス"Fant pobratim smrti"(1991)は最も好きなスロヴェニアのドキュメンタリーの1つです。映画はウクライナチェルノブイリからやってきた少年の境遇を描く共に、彼が直面するスロヴェニアの新たな政治的局面を描いてます。信じられないほど素晴らしいんです。Andrej Košak アンドレイ・コシャク"Outsider"(1997)は80年代のパンクシーンやユーゴスラビアが崩れていく前の時期を印象的に描いています。それからJanez Burger ヤネス・ブルゲル"V leru"(1999)は過去に生きていた学生たちが日々を無為に過ごす様を甘く描き出した魅力的な作品です。そしてDamjan Kozole ダミヤン・コゾレ"Rezervni deli"(1997)は密輸業者の視点から移民について鋭く描き出しています。ヨーロッパで問題になる遥か前に作られたんです。

TS:2010年代が数日前に終わりました。そこで聞きたいのは2010年代の最も重要な作品はなんでしょう。例えばRok Biček ロク・ビチェク"Razredni sovražnik"Vlado Škafar ヴラド・シュカファル"Mama"Gregor Božič グレゴル・ボジッチ"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"……あなたの意見は?

PM:思うにMatjaž Ivanišin マティヤシュ・イヴァニシンのドキュメンタリー"Playing men"(2017)と、最新のフィクション作品"Oroslan"はとても重要な作品です。それからNika Autor ニカ・アウトル"V deželi medvedov"(2012)やファウンド・フッテージものの"Obzornik 63"(2017)はヴェネチア国際映画祭で上映された重要作です。最も新鮮な作品の1つはDarko Štante ダルコ・シュタンテ"Posledice"でしょう。

TS:スロヴェニアにおける映画批評の現状はどのようなものでしょう? 日本においてはその実情をほとんど窺い知ることができません。なので日本の映画好きもその現状を知りたがっています。

PM:スロヴェニア映画批評家フリーランスがほとんどで、生計を立てるのはいつだって困難です。不幸なことに新聞は映画レビューを短くしてしまいました。それでも私たちの映画批評は鮮やかに輝いています! 私たちにはEkranとKino!という2つの映画雑誌があり、そこで批評を深めています。それから新しいメディアもたくさん登場していますーー例えば、女性評論家で構成された映画のポッドキャストFilmflowです。

若い批評家の厚い層もあって批評をたくさん書き、海外へ映画祭に参加しにいったり、新しい視点を導入しようと活動しています。私の同僚の多くも若手育成プログラムに参加しており、素晴らしい経験をしています。それからスロヴェニア映画批評連盟(国際映画批評家連盟スロヴェニア支部です)がとても活動的で、面白いアイデアと熱意に溢れた若者たちがたくさん参加しています。連盟がもたらしてくれるのは共同体です。仕事において互いに支えあっています。そのおかげで私は映画批評の未来に楽観や楽しさを感じています。

私たちの世代に大きな影響を与えたのはNika Bohinc ニカ・ブヒンツという人物です。10年前フィリピンで亡くなってしまい、個人的には知らないのですが、同僚の多くが自身に影響を与えた最も重要な人物と考えています。彼女は多くの知識や熱意を若い世代に残してくれたんです。

こんにち、私たちには映画雑誌Kino!の編集者であるMaja Krajnc マヤ・クランツの映画批評ワークショップもあります。彼女は次世代の映画評価を教育するため心血を注いでいます。

TS:前の質問に関連して、あなたは映画雑誌Ekranに記事を書いていますね。日本の読者にこの雑誌について説明していただけないでしょうか。スロヴェニアの映画批評においてはどのように機能しているのでしょうか。

PM:Ekranは2ヵ月に1度発売される雑誌で、メインストリームからインディーズ映画、実験映画まで幅広い映画を網羅しています。ここのために記事を書く批評家のグループがあって、興味を抱かせる物事について探求してるんです。だから編集者が仕事を与えるだけでなく、自分たちでも記事案を提案しながら相互的に作られているんです。

TS:現在のスロヴェニア映画はどんな状況にありますか? 外部から見ると好調のように思えます。新しい才能が有名な映画祭に現れているからです。例えばロカルノにはMatjaž IvanišinトロントにはGregor Božičです。しかし内部から見ると、現状はどのように見えるでしょう?

PM:スロヴェニア映画界にはたくさんの素晴らしい才能がいます、特に若い世代には。現状は、他の多くの国でもそうだと思いますが、いつも資金調達に苦労しています。若い世代やより独立的な作家たちが資金を調達するのは本当に難しいと感じます。ですがより多くの女性作家たちがサポートしあい、自身の映画を作るきっかけを作りあっている現状もあるんです。

TS:あなたにとって、スロヴェニア映画の最も注目べき新たな才能は誰でしょう? 例えば外部の人間としてはPeter Cerovšek ペテル・チェロシェクIvana Vogrinc Vidali イヴァナ・ヴォグリンツ・ヴィダリの名前を挙げたいです。両者は親密なリアリズムや神々しい抒情性によってドキュメンタリーの規範を破る作品を作っています。

PM:他にも、今はプラハのFAMUで映画について勉強しているLun Sevnik ルン・セウニクがいます。彼は2018年に"Voyage Voyage"スロヴェニア映画祭の学生映画部門で作品賞を獲得しました。それから今年、新作の"Igra"でカルロヴィ・ヴァリ映画祭のFuture Frames programmeに選ばれました。彼は今後も注目すべき才能だと思います。

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Jure Pavlović&"Mater"/クロアチア、母なる大地への帰還

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ユーゴ紛争が勃発してから約30年もの時が経つことになった。この頃に祖国から去らざるを得なかった若者たちも、今や中年世代となっている。そして故郷に残った親世代の人々は老いて、独りで行動することも難しくなったゆえに、彼らは自身の親を介護せざるを得ない時が来たのである。今回紹介する作品はそんな旧ユーゴ圏の現実を描き出した作品、Jure Pavlović監督のデビュー長編“Mater”である。

今作の主人公である中年女性ヤスナ(Daria Lorenci)はユーゴ紛争の際、故郷であるクロアチアを去りドイツへと移住してきた人物だ。彼女はそこで家族を作り幸せに暮らす一方で、故郷には戻ろうとしなかった。しかし母であるアンカ(Neva Rosic)が病床に倒れた時、彼女の介護をするためにヤスナは故郷へと戻らざるを得なくなる。そして彼女は数十年ぶりに母との再会を果たす。

故郷でのヤスナの生活は慌ただしいものだ。アンカの身の回りの世話を行わなくてはならないし、彼女の見舞いにやってきた友人たちをもてなす必要もある。さらには土地をめぐってご近所トラブルが巻き起こっており、それに対処する必要もある。その全てを引き受けなくてはならないヤスナは疲弊する他ない。

監督の演出は、ダルデンヌ兄弟を彷彿とさせるリアリズム指向だ。撮影監督であるJana Plecasが担当するカメラは常にヤスナの顔を映し続け、彼女の行動の1つ1つを克明に描き出していく。その閉所恐怖症的なカメラワークからは空間に満ちる淀んだ空気感が滲みだすとともに、ヤスナの抱く疲労感や鬱屈すらも饒舌に伝わってくるのだ。

さらに彼女はドイツに夫と2人の子供を置いてきている。彼らとはタブレットの液晶越しに、ドイツ語で話すのだが、子供たちは“ママはいつ帰ってくるの?”とねだるように問いかけてくる。“すぐに帰るから”と言葉では伝えながらも、母親であるアンカへの心配は尽きることなく1週間、2週間と期間はどんどん延長されていく。

今作にはクロアチアの現在が映し出されている。ヤスナはある時偶然幼馴染みに再会し、楽しい時を過ごすのであるが、自分たちの関係性は既に変容してしまったことをまざまざと認識させられることになる。その一方でアンカの周りでお喋りにかまける彼女の友人たちの姿は昔から変わらないようでいて、しかし彼らもまた老いてしまっていることは一目瞭然だ。

そして物語が進むにつれて、ヤスナの心の中でクロアチアと母親であるアンカの姿が重なり始めることになる。2つは今朽ちていく過程の最中にある。ヤスナは1度はそれに背を向けて新しい場所に自身を委ねながらも、彼らが黄昏の時に差し掛かったこの時、再び舞い戻ることになり、複雑な感情が現れるのを認識せざるを得なくなる。

私たちはヤスナの苦闘を目撃するうちに、思うかもしれない。彼女が本当に望んでいることはクロアチアという故郷に再び生きることなのかもしれないと。彼女が抱いていた疲労感はだんだんとクロアチアと母親への切実なる愛着へと変わっていくからだ。“Mater”はこの旧ユーゴに生きていた人々が今抱くことになった、余りにも繊細で微妙な愛の距離感についての物語なのだ。

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私の好きな監督・俳優シリーズ
その361 Mona Nicoară&"Distanța dintre mine și mine"/ルーマニア、孤高として生きる
その362 Siniša Gacić&"Hči Camorre"/クリスティーナ、カモッラの娘
その363 Vesela Kazakova&"Cat in the Wall"/ああ、ブレグジットに翻弄されて
その364 Saeed Roustaee&"Just 6.5"/正義の裏の悪、悪の裏の正義
その365 Mani Haghighi&"Pig"/イラン、映画監督連続殺人事件!
その366 Dmitry Mamulia&"The Climinal Man"/ジョージア、人を殺すということ
その367 Valentyn Vasyanovych&"Atlantis"/ウクライナ、荒廃の後にある希望
その368 Théo Court&"Blanco en blanco"/チリ、写し出される虐殺の歴史
その369 Marie Grahtø&"Psykosia"/"私"を殺したいという欲望
その370 Oskar Alegria&"Zumiriki"/バスク、再び思い出の地へと
その371 Antoneta Kastrati&"Zana"/コソボ、彼女に刻まれた傷痕
その372 Tamar Shavgulidze&"Comets"/この大地で、私たちは再び愛しあう
その373 Gregor Božič&"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"/スロヴェニア、黄昏色の郷愁
その374 Nils-Erik Ekblom&"Pihalla"/フィンランド、愛のこの瑞々しさ
その375 Atiq Rahimi&"Our Lady of Nile"/ルワンダ、昨日の優しさにはもう戻れない
その376 Dag Johan Haugerud&"Barn"/ノルウェーの今、優しさと罪
その377 Tomas Vengris&"Motherland"/母なる土地、リトアニア
その378 Dechen Roder&"Honeygiver among the Dogs"/ブータン、運命の女を追って
その379 Tashi Gyeltshen&"The Red Phallus"/ブータン、屹立する男性性
その380 Mohamed El Badaoui&"Lalla Aïcha"/モロッコ、母なる愛も枯れ果てる地で
その381 Fabio Meira&"As duas Irenes"/イレーニ、イレーニ、イレーニ
その382 2020年代、期待の新鋭映画監督100!
その383 Alexander Zolotukhin&"A Russian Youth"/あの戦争は今も続いている
その384 Jure Pavlović&"Mater"/クロアチア、母なる大地への帰還

Alexander Zolotukhin&"A Russian Youth"/あの戦争は今も続いている

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ロシア映画、特にソビエト時代の映画作品には戦争映画の傑作が多い。例えばロシアにおけるドイツ軍の凄惨な虐殺を描いた衝撃作「炎628」独ソ戦の脅威に立ち向かう少年の姿を描いた「ぼくの村は戦場だった」さらにはボリス・バルネットが監督した、第1次世界大戦をめぐる作品「国境の町」など枚挙に暇がない。今回紹介するのはそんなソ連映画の伝統を現代に引き継いだ1作、Alexander Zolotukhin監督作"A Russian Youth"(ロシア語原題"Мальчик русский")を紹介していこう。

今作の主人公はアレクセイ(Vladimir Korolev)という青年だ。彼は純朴な田舎青年であり、武勲を立てるために一兵卒として第1次世界大戦に参加することになった。彼は仲間たちとともに、時には幼さを笑われながら、戦争の荒野を行くのだったが……

まず本作を観た時、私たちは様々な違和感を抱くことだろう。例えばスクリーンの画角が四角ではなく丸くなっていることや、画面の色がデジタルともフィルムのそれとも異なるセピア色であることが特徴的だ。これらを目の当たりにする際、観客はこの映画が他の映画とは一線を画する存在であることを悟るはずだ。

そして監督は戦場の壮絶さを描き出していく。塹壕における爆撃はその最たるものだ。つかの間の休息に浸っていた兵士たちを、突然爆撃が襲うのだが、その時の音の響きは凄まじく、鼓膜すら爆裂させるほどだ。そして彼らは次々と爆撃と死の砂埃に呑みこまれていく。いとも容易く命は殲滅されていくのである。

そんな中で、ガス攻撃によってアレクセイは失明してしまう。盲目になった彼はキャンプ地を彷徨うのだったが、ここにおいて今作はサイレント映画の様相を呈する。手を伸ばして、まるでキョンシーのように進む姿には人生の数奇な可笑しみが滲み出てくる。そしてアレクセイは同僚に迷惑をかけ、上官を小馬鹿にしていく。それはもはやコメディの域にまで達している。

さて、そんな本作であるが、もう1つ印象的な要素が音楽である。劇中では随所にラフマニノフの曲が流れることになる。時には戦争の脅威に重なり不穏に響くこともあれば、時にはアレクセイの狂態に重なって笑いにすら転じることになる。監督は彼の曲が持つ様々な表情を、映画によって引き出していくのだ。

だが更に異色なのは、劇中にこのラフマニノフの曲を演奏するオーケストラの姿が挿入されることだ。例えば指揮者が指揮棒を優雅に振る姿、青年がバイオリンを弾く姿、しなやかな指がピアノの鍵盤を舞い踊る姿。そういったものが何の脈絡もなく挿入される。それはソ連時代の演奏風景を再現しているという訳ではない。現代を生きる演奏家が映画の劇伴となるラフマニノフを演奏する後継こそが挿入されるのである。

私たちは再現された第1次世界大戦の光景を目撃しながら、同時に現代に生きる指揮者がオーケストラに指示する言葉を聞くことになるだろう。ここでは過去を描くフィクションと現代を描くドキュメンタリーが交錯しているのである。そこで監督が叩きつけるのは、あの忌まわしき戦争が起きていた過去は私たちが今生きている現実と地続きなのであるという紛れもない真実である。この力強さは他の映画には到底達成しえないものだ。

"A Russian Youth"はソ連映画の伝統とロシアの現在を荒業で繋げる偉業だ。アレクセイの瞳に映る脅威はそのまま私たちにも降りかかりうる脅威として、今不気味な輝きを増している。

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私の好きな監督・俳優シリーズ
その361 Mona Nicoară&"Distanța dintre mine și mine"/ルーマニア、孤高として生きる
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その372 Tamar Shavgulidze&"Comets"/この大地で、私たちは再び愛しあう
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その376 Dag Johan Haugerud&"Barn"/ノルウェーの今、優しさと罪
その377 Tomas Vengris&"Motherland"/母なる土地、リトアニア
その378 Dechen Roder&"Honeygiver among the Dogs"/ブータン、運命の女を追って
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その380 Mohamed El Badaoui&"Lalla Aïcha"/モロッコ、母なる愛も枯れ果てる地で
その381 Fabio Meira&"As duas Irenes"/イレーニ、イレーニ、イレーニ
その382 2020年代、期待の新鋭映画監督100!

済藤鉄腸の2010年代ベスト100!!!!!

ということで、題名通りの記事。私のブログを読んでる方にはお解りの通り、あまりにも未公開映画が多すぎるので、表記は全部英語に統一してある。もう面倒臭いので、邦題があるのを知りたい方は各自でググってください。それからよくベストを選ぶ時、1監督1本という制限をする人が多いが、ぶっちゃけ意味が分からない。同じ監督の作品とかが偏りまくってこそ、個人のベストなんではないか。そういうのを恐れないで極個人的であってこそ初めてベストになるんじゃないだろうか。そういう思いでこのベストを書いた。ぜひとも検索して、未知の映画たちに触れて欲しい。

Neighboring Sounds (2012, Kleber Mendonça Filho)
Aquarius (2015, Kleber Mendonça Filho)
The Fits (2015, Ana Rose Holmer)
By the Time It Gets Dark (2016, Anocha Suwichakornpong)
Brawl in Cell Block 99 (2017, S. Craig Zahler)
Dragged Across Concrete (2018, S. Craig Zahler)
The Phenom (2016, Noah Buschel)
Sacred Hearts (2016, Radu Jude)
I Do Not Care If We Go Down in History as Barbarians (2018, Radu Jude)
Pays (2017, Chloe Robichaud)

Aurora (2010, Cristi Puiu)
Sierranevada (2016, Cristi Puiu)
El futuro perfecto (2016, Nele Wohlatz)
Das merkwürdige Kätzchen (2014, Ramon Zürcher)
Godless (2016, Ralitza Petrova)
Comets (2019, Tamar Shavgulidze)
Manta Ray (2018, Phuttiphong Aroonpheng)
Todo lo demas (2016, Natalia Alamada)
La idea de un lago (2016, Milagros Mumenthaler)
Dreissig (2019, Simona Kostova)

The Criminal Man (2019, Dmitry Mamuliya)
Cure: The Life of Another (2015, Andrea Staka)
Cocote (2017, Nelson Carlo de Los Santos Arias)
Queen of Earth (2015, Alex Ross Perry)
Her Smell (2018, Alex Ross Perry)
Fort Buchanan (2015, Benjamin Crotty)
El auge del humano (2016, Eduardo Williams)
Mouton (2013, Marianne Pistone&Giles Deroo)
Maryland (2015, Alice Winocour)
Manana a esta hora (2016, Lina Rodriguez)

Historia del miedo (2014, Benjamin Naishtat)
Pharmakon (2012, Joni Shanaj)
Monsters (2019, Marius Olteanu)
The Summer of Giacomo (2011, Alessandro Comodin)
Baden Baden (2015, Rachel Lang)
Beauty and the Dogs (2017, Kaouther Ben Hania)
John From (2016, João Nicolau)
4 Days in France (2016, Jérôme Reybaud)
El futuro (2013, Luis Lopez Carrasco)
Treasure (2016, Corneliu Porumboiu)

Kamen Rider Zi-o The Movie Over Quatzer (2019, Ryuta Tazaki)
Avengers: Infinity War (2018, Russo Brothers)
Domino (2018, Brian de Palma)
Come on Irene (2018, Keisuke Yoshida)
Let the Corpses Tan (2017, Hélène Cattet&Bruno Forzani)
Patriot Day (2017, Peter Berg)
Tower (2017, Keith Maitland)
10 Clover Field Lane (2016, Dan Trachtenberg)
Digging for Fire (2016, Joe Swanberg)

Entertainment (2015, Rick Alverson)
Prejudice (2015, Antoine Cuypers)
3/4 (2016, Ilian Metev)
Minotauro (2015, Nicolas Pereda)
Take Me Somewhere Nice (2019, Ena Sendijarevic)
Bad Hair (2013, Mariana Rondon)
Familia sumergida (2018, María Alché)
End of Season (2019, Elamar Imanov)
The Children of Sarajevo (2012, Aida Begić)
Prevenge (2017, Alice Lowe)

Fixeur (2016, Adrian Sitaru)
Catch Me Daddy (2013, Daniel Wolfe)
The Gambler (2013, Ignas Jonynas)
Meteors (2017, Gürcan Keltek)
Code Blue (2011, Urszula Antoniak)
Sophia Antipolis (2018, Virgil Vernie)
Just 6.5 (2019 Saeed Roustayi)
The Wounded Angel (2015, Emil Baigazin)
Orphan's Blues (2018, Riho Kudo)
Scary Mother (2017, Ana Urshadze)

MacGruber (2010, Jorma Tacone)
Sabotage (2014, David Air)
The Summer of Sangaile (2013, Alante Kavaite)
Maniac (2012, Franck Khalfoun)
Universal Soldier: Day of Reckoning (2012, John Hyams)
Mad Max: Fury Road (2015, George Miller)
Duke of Burgundy (2015, Peter Strickland)
Obvious Child (2014, Gillian Robespierre)
Grand Piano (2013, Eugenio Mira)
Wolf of Wall Street (2013, Martin Scorsese)

Autumn, Autumn (2016, Jang Woo-Jin)
Girl Asleep (2016, Rosemary Myers)
Appropriate Behavior (2014, Desiree Akhavan)
Leones (2014, Jasmin Lopez)
Zero Motivation (2015, Talya Lavie)
Adios enthusiasm (2016, Vladimir Duran)
Die einsiedler (2015, Ronny Trocker)
Young and Wild (2012, Marialy Rivas)
Tharlo (2014, Pema Tseden)
Dark Skull (2015, Kiro Russo)
Jose (2018, Li Cheng)

And Everything is Going Fine (2010, Steven Soderbergh)
Contagion (2011, Steven Soderbergh)
Haywire (2012, Steven Soderbergh)
Magic Mike (2012, Steven Soderbergh)
Side Effects (2013, Steven Soderbergh)
Logan Lucky (2017, Steven Soderbergh)
Unsane (2018, Steven Soderbergh)
High Flying Bird (2019, Steven Soderbergh)
The Laundromat (2019, Steven Soderbergh)