鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

ギリシャ映画

Stathis Apostolou&“The Farmer”/2つの国、1つの肉体

まずある1人の俳優との出会いについて語らせてほしい。先日、私はロッテルダム映画祭でプレミア上映された“Broadway”というギリシャ映画を観た。詳しくはレビューを書いたのでそれを読んでもらいたいが、少し内容を書くと、今作は家父長制に挑む反逆者たちの…

Christos Massalas&“Broadway”/クィア、反逆、その生き様

ギリシャ映画には連綿たるクィア映画の系譜がある。最近でいえば日本ではキワモノZ級映画と見なされている「アタック・オブ・ザ・ジャイアント・ケーキ」とその監督パノス・H・コートラスはギリシャにおけるクィア映画史の重要人物でもある。彼の1世代後に現…

Angeliki Papoulia&“Patchwork”/彼女が内に秘めたる炎

まずこの文章を書くにあたって、ある俳優に関する個人的な思い出から始めさせてほしい。彼女を初めてスクリーンで観たのは2012年に日本で上映された、ヨルゴス・ランティモス監督作「籠の中の乙女」でだった。まずこの映画が提示する異常な世界観に驚かされ…

ギリシャのバルコニーから見えるもの~Interview with Aris Kaplanidis & Elias Roumeliotis

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

悲しい週末にさよならを~Interview with Lida Vartzioti & Dimitris Tsakaleas

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

家父長制、ルージュの反乱~Interview with Kostis Theodosopoulos

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Ektoras Lygizos&"Boy eating the bird's food"/日常という名の奇妙なる身体性

ヨルゴス・ランティモス監督作「籠の中の乙女」において、観客の度肝を抜くシーンは余りにも多すぎて枚挙に遑がないが、特に脳髄をブチ震わされた場面を1つ挙げるとするなら、私は終盤での奇妙過ぎるダンスを選びたい。ギターの音色に合わせて最初は割と普通…

Syllas Tzoumerkas&"A blast"/ギリシャ、激発へと至る怒り

さて、いわゆる“ギリシャの奇妙なる波”はこの国が直面した経済危機に端を発して巻き起こった潮流と言うべきものだ。危機的状況において自分たちはどう映画を作れば良いのか?という苦悩の元に映画作家たちは団結し、低予算で勝負するために全くもって奇妙な…

Sofia Exarchou&"Park"/アテネ、オリンピックが一体何を残した?

東京でのオリンピック開催が2020年に決定してから、おもてなしやら共謀罪やら会場建設費やら日本ではクソみたいなことが多々起こっている。今の時点でこのザマなのだから、マジで2020年になったらどうなってしまうのかと今から戦々恐々で「AKIRA」の世界が実…

アティナ・レイチェル・ツァンガリ&"Chevalier"/おおチンポ お前の心に聳えるチンポよ

アティナ・レイチェル・ツァンガリ&"Attenberg"/あなたの死を通じて、わたしの生を知る アティナ・レイチェル・ツァンガリの経歴及び彼女の第2長編"Attenberg"についてはこの記事参照さて“ギリシャの奇妙なる波”がテン年代を代表するムーブメントとなって久…

Argyris Papadimitropoulos&"Suntan"/アンタ、チンコついてんの?まだ勃起すんの?

さて"ギリシャの奇妙なる波"についてはこのブログで何度も紹介しているが、その奇妙さの中で奇妙に際立つ要素に"男性性の崩壊"という物がある。まず「籠の中の乙女」とAlexandros Arvanasの"Miss Violence"は男性性の権化としての父を頂点として家族という最…

Elina Psykou&"The Eternal Return of Antonis Paraskevas"/ギリシャよ、過去の名声にすがるハゲかけのオッサンよ

先日ヨルゴス・ランティモス監督の最新作「ロブスター」を観た。"Kinetta"(この紹介記事を読んでね)から「籠の中の乙女」そして"Alpeis"(この紹介記事も読んでね)を経て今作ときた訳だが、今までの集大成として彼が扱ってきた様々なテーマが絡み合いあのロマ…

「籠の中の乙女」あるいは"ギリシャの奇妙なる波"について

2009年のカンヌ国際映画祭、ある視点部門で上映された1本のギリシャ映画が批評家たちを賛否両論の激しき渦へと巻き込むこととなる。テオ・アンゲロプロスやジョルジ・スカレナキスなどギリシャにおける過去の巨匠たちとは全く違う、いやギリシャどころか世界…

ヨルゴス・ランティモス&"Alpeis"/生きることとは演じることならば

余りにも大きすぎる成功は、映画監督に"次回作"という名のプレッシャーをもたらす。私たちはその圧力に耐えられず砕け散る才能をいくつも見てきたはずだ。ではヨルゴス・ランティモス監督はどうだったか?2011年、彼はヴェネチア国際映画祭ーー「籠の中の乙…

ヨルゴス・ランティモス&"Kinetta"/人生とは、つまり映画だ

男と女と、そしてカメラマン。3人が空き地に集い、始まるのは何かのリハーサルだ。"女は男の頬に平手打ちを喰らわせる"という声が響くと、女は男の頬に平手打ちを喰らわせる。"男が女を掴み揉み合いになる"という声が響くと、男が女を掴み揉み合いになる。"…

アティナ・レイチェル・ツァンガリ&"Attenberg"/あなたの死を通じて、わたしの生を知る

少し前Julia Solomonoff "El último verano de la Boyita"(この記事を読んでね)を取り上げ、"わたしのからだ"を眼差すことについての考えを巡らせていった。あちらは、肉体はここにあり心はそれをどう受け止めていくかという物語だったが、今回はもっと奥へ…

ヨルゴス・ゾイス&"Interruption"/ギリシャの奇妙なる波、再び

ギリシャ、財政破綻を迎えたこの国で、それでも映画を作ろうとする者たちが世界に衝撃を与えることとなる――グリーク・ウィアード・ウェーブ、Athina Rachel Tsangari監督の長編デビュー作"Attenberg"から始まったこの奇妙な波は、ヨルゴス・ランティモス監督…