鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

ブラジル映画

Iuli Gerbase&"A nuvem rosa"/コロナ禍の時代、10年後20年後

さて、世界中の誰もがこのコロナ禍によって未曽有の状況に追いこまれている。容易く人とは会えなくなり、部屋に閉じこもらざるを得ない閉塞した状況は一体いつまで続くのだろうか。そんな苦悩を抱えている人々は今回紹介する映画を観るべきではないかもしれ…

Luciana Mazeto&"Irmã"/姉と妹、世界の果てで

今現在ブラジル映画界が空前の活気を見せていることはこのブログでも何度もお伝えしているが、その1つの動向としてジャンル映画的な要素を駆使しながらアートハウス映画を作るという技巧派の台頭がある。例えばホラー映画やSF映画などそういった要素を人間ド…

Eduardo Morotó&"A Morte Habita à Noite"/ブコウスキーの魂、ブラジルへ

さて、チャールズ・ブコウスキーといえばアメリカで最も有名な無頼小説家だ。彼の破天荒な作品群や人生は幾度となく映画化されてきた。例えばバーベット・シュローダーの「バーフライ」やマルコ・フェレーリの「ありきたりの狂気の物語」などである。だが202…

Maria Clara Escobar&"Desterro"/ブラジル、彼女の黙示録

ボルソナーロ政権発足以後、ブラジル映画界は危機に立たされている。現在の映画界のトップをひた走るクレベール・メンドンサ・フィーリョは映画製作を弾圧され、映画製作庁であるAncineは移転を余儀なくされた。財政サポートもいくつか潰されてしまい、映画…

Fabio Meira&"As duas Irenes"/イレーニ、イレーニ、イレーニ

同じ名前を持つ、そこには奇妙な絆が生まれることになる。不快さを感じるにしろ、心地よさを感じるにしろ、私たちは名前の奇妙な重力に引き込まれていくのだ。クシシュトフ・キェシロフスキ監督作「ふたりのベロニカ」など、その魔力を描き出した芸術作品は…

私の身体、私の言葉~Interview with Camila Kater

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Beatriz Seigner&"Los silencios"/亡霊たちと、戦火を逃れて

近現代のラテンアメリカ地域では、大規模な内戦や武力紛争などが頻発している。例えばコロンビアでは政府軍と反政府ゲリラの対立によって50年以上に渡る内戦が起こるなどしている。それによって国を離れることを余儀なくされた離散民は数えきれないだろう。…

Juliana Antunes&"Baronesa"/ファヴェーラに広がるありのままの日常

ブラジルのスラム街ファヴェーラは犯罪の温床として悪名高い地域だ。それ故に「シティ・オブ・ゴッド」や「エリート・スクワッド」など、この地を舞台として犯罪や暴力を扇情的に描き出していく作品がゼロ年代に多く作られていた。だがJuliana Antunes監督に…

Flávia Castro&"Deslemblo"/喪失から紡がれる"私"の物語

60年代から80年代にかけて、ブラジルは軍事政権下におかれていた。1964年、クーデターによってカステロ・ブランコ将軍が大統領に就任した後から約20年の間、その時代は抑圧と粛清の嵐が吹き荒れ、突如行方不明となる人物が続出することとなる。一体何故彼ら…

André Novais Oliveira&"Temporada"/止まることない時の流れはただ

さて、ここで現代ブラジル映画界の趨勢を振り返っていこう。ゼロ年代においてブラジルには暴力映画の嵐が吹き荒れた。フェルナンド・メイレレスの「シティ・オブ・ゴッド」や、ジョゼ・パヂーリャによる「エリート・スクワッド」二部作はその過激さや容赦の…

クレベール・メンドンサ・フィリオ&「アクエリアス」/あの暖かな記憶と、この老いゆく身体と共に

クレベール・メンドンサ・フィリオ&「ネイバリング・サウンズ」/ブラジル、見えない恐怖が鼓膜を震わす クレベール・メンドンサ・フィリオ監督の略歴ひいては長編デビュー作「ネイバリング・サウンズ」のレビューはこちら参照飽きもせずただひたすらに映画…

クレベール・メンドンサ・フィリオ&「ネイバリング・サウンズ」/ブラジル、見えない恐怖が鼓膜を震わす

2016年夏季オリンピックが目前に控えながら、ブラジルは前代未聞の危機に見舞われている。世界的な石油会社ペトロプラスが政府に数億ドル規模の資金を横流ししているという大規模汚職が発覚したのである。更にはその資金が2014年度のジルマ・ルセフ大統領が…

Sergio Oksman&"O Futebol"/ブラジル、父と息子とワールドカップと

2014年、サッカーの本場ともいうべきブラジルでワールドカップが開催された。国民は熱狂しブラジルの優勝を願ったが、準決勝のドイツ戦において7-1の大惨敗を喫することとなった。これはワールドカップ決勝トーナメント史上最多失点での敗北であり、ブラジル…

Juliana Rojas&"Trabalhar Cansa"/ブラジル、経済発展は何を踏みにじっていったのか?

ゼロ年代ブラジル映画界を席巻したのは苛烈なる暴力の嵐だった。スラム街に蔓延る凄まじいまでの暴力を忌憚なく描き出したフェルナンド・メイレレス「シティ・オブ・ゴッド」そして実在するブラジル特殊部隊BOPEを中心に据え激烈な狂気と暴力の構図を描き出…

アナ・ミュイラート&"Que Horas Ela Volta?"/ブラジル、母と娘と大きなプールと

さて、ブラジル映画である。ガブリエル・マスカロを紹介した際(この記事を読んでね)、ブラジルの経済状況について記したが、現在進行形でこの国に現れ始めているのが階級差である。中流階級と貧困層の格差が目に見えて克明となりゆく過渡期、マスカロはそれ…

Julia Murat &"Historia"/私たちが思い出す時にだけ存在する幾つかの物語について

私にとってブラジル映画といったら、少し前まではエログロのカリスマキチガイ貴公子コフィン・ジョー一択だった。いやだって取り敢えずこの動画観てみてよ、アレだろ!……しかしここ最近、現代ブラジル映画を何本か観てきて、新しい才能現れ始めてるなあと思…

アニタ・ロチャ・ダ・シルヴェイラ&"Mate-me por favor"/思春期は紫色か血の色か

今まで11本のオリゾンティ部門&ビエンナーレ・カレッジ出品作を観てきたが、そこで分かったのは今年のトレンドは“少年少女の不穏な青春”だということだ。詳しくは総括記事に書くつもりだが、クバ・チュカイ"Baby Bump"、アナ・ローズ・ホルマー"The Fits"、…

ガブリエル・マスカロ&"Boi Neon"/ブラジルの牛飼いはミシンの夢を見る

ちょっと前から三大映画祭の1つヴェネチア国際映画祭が始まった。今年もいつものように英米の評論家が流す映画評を読んで疑似的に映画祭を楽しもうかと思っていたら、なんとヴェネチア国際映画祭はオリゾンティ部門で公開される15作品が配信され、家でも観れ…