鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

ポスト・マンブルコア世代の作家たち

Kris Avedisian&"Donald Cried"/お前めちゃ怒ってない?人1人ブチ殺しそうな顔してない?

さて、ロカルノ映画祭である。スイスのイタリア語圏に位置する都市ロカルノで8月に行われるこの映画祭は新人映画作家の登竜門として、毎年輝かしい才能を輩出している。私自身この映画祭とはウマが合うようで例えばこのブログで最初期に紹介したスイスの映画…

Khalik Allah&"Field Niggas"/"Black Lives Matter"という叫び

"Black Lives Matter"という言葉を知っているだろうか。"黒人の命だって大切だ!"……この言葉は2012年、フロリダ州で起こった1人の黒人青年の死に端を発している。10代のトレイヴォン・マーティンが自称自警団の男性に射殺されるという事件が起こった。これを…

Cameron Warden&"The Idiot Faces Tomorrow"/働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない

クズ野郎を描いた映画は枚挙に暇がない。私が好きな作品で言えばマーティン・スコセッシの「タクシードライバー」に、フランク・カルフンの「マニアック」(ウィリアム・ラスティグ版も好きだが個人的にはこちらに軍配)、リック・アルヴァーソンの"Entertainm…

ジョセフィン・デッカー&"Butter on the Latch"/森に潜む混沌の夢々

ジョセフィン・デッカー&"Art History"/セックス、繋がりであり断絶であり ジョセフィン・デッカーの略歴、および俳優デビュー作"Art History"についてはこちら参照。2014年12月、アメリカの高名な映画評論家リチャード・ブロディがこんな題名の記事をニュ…

Chloé Zhao&"Songs My Brothers Taught Me"/私たちも、この国に生きている

昨今、アメリカにおいて人種の多様性が叫ばれているのだが、よくよく見てみるとそれは白人と黒人の問題に矮小化されており、その他の人々が蚊帳の外に置かれた状況が広がっている。アメリカに住んでいるのは2つの人種だけではない、ヒスパニックにアジア人が…

ジョセフィン・デッカー&"Art History"/セックス、繋がりであり断絶であり

さて前回は何度か続けて、ポスト・マンブルコア世代を代表する監督の1人ネイサン・シルヴァーを連続して取り上げ、それを通じていかにマンブルコアが咀嚼され、新たな表現はどのように生まれていったのかを見てきた。そして今回紹介するのはマンブルコアと直…

Felix Thompson&"King Jack"/少年たちと"男らしさ"という名の呪い

最近インディー映画で名を上げた映画作家がいきなりビッグバジェットの大作に起用されるというトレンドが形成されてきているが、特に今はいわゆるカミング・オブ・エイジ映画の作り手が青田買いの対象になっている状況が顕著になっている。"The King of Summ…

ネイサン・シルヴァー&"Stinking Heaven"/90年代の粒子に浮かび上がるカオス

ネイサン・シルヴァー&「エレナ出口」/善意の居たたまれない行く末 ネイサン・シルヴァー&"Soft in the Head"/食卓は言葉の弾丸飛び交う戦場 ネイサン・シルヴァー&"Uncertain Terms"/アメリカに広がる"水面下の不穏" ネイサン・シルヴァーの略歴と彼の第…

ネイサン・シルヴァー&"Soft in the Head"/食卓は言葉の弾丸飛び交う戦場

ネイサン・シルヴァー&「エレナ出口」/善意の居たたまれない行く末 ネイサン・シルヴァーの略歴と彼の第2長編「エレナ出口」についてはこの記事参照。家族にしろ、親戚一同にしろ、同じような境遇の友人たちにしろ、時には名前すら知らない赤の他人とにしろ…

ネイサン・シルヴァー&「エレナ出口」/善意の居たたまれない行く末

ゼロ年代の米インディー映画界に広がっていたのは"居心地の良い閉塞感"と言うべきものだった。ロクに仕事もしないで、仲間たちと何となくずるずると日々を過ごして、その日常がマンブルコアというムーブメントに結実するも、やっぱりそのまま何となくずるず…

Stephen Cone&"Henry Gamble's Birthday Party"/午前10時02分、ヘンリーは17歳になる

このブログでは何度かアメリカにおいて、いわゆるキリスト教啓蒙映画が台頭し始めていると書いてきた。そんな状況で5〜7月の3ヶ月連続でキリスト教啓蒙映画が日本でも公開決定という頭抱えたくなる事態が起こった。レイバーデイを狙って週間興業収入1位を強…

ロベルト・ミネルヴィーニ&"Low Tide"/テキサス、子供は生まれてくる場所を選べない

ロベルト・ミネルヴィーニ&"The Passage"/テキサスに生き、テキサスを旅する ロベルト・ミネルヴィーニのデビュー長編についてはこの記事参照デビュー長編"The Passage"においてロベルト・ミネルヴィーニ監督は1つの目的のためにテキサスを旅する3人の姿を…

ロベルト・ミネルヴィーニ&"The Passage"/テキサスに生き、テキサスを旅する

映画はテキサスをどう描いてきたのか?「悪魔のいけにえ」は原題Texas Chainsaw Massacreと正にその名が冠された映画だが、この地に住む食人一家の存在はテキサスひいては南部に対する恐怖を凄まじい形で象徴するものだった。タイトルにその名が付いてると言…

Charles Poekel&"Christmas, Again"/クリスマスがやってくる、クリスマスがまた……

クリスマス、小さな頃は確かに待ち遠しい日だったが、大人になってからはただただ孤独を噛み締めるための日になっている。何か最近クリスマスの思い出なんかあったか?って何もない、強いて言うなら人の家に行ってその人と夜通し映画でも観ようかと思ったが…

ジョシュ・モンド&"James White"/母さん、俺を産んでくれてありがとう

クズを描いた映画は枚挙に暇がない、その一方で最後までクズがクズのままでいる映画というのは意外と少ない。そんな中で印象に残っている映画がレスリー・ヘッドランドの「バチェロレッテ〜あの娘が結婚するなんて!」だ。今まで見下していたデブの友人が自…

Gabriel Abrantes&"Dreams, Drones and Dactyls"/エロス+オバマ+アンコウ=映画の未来

この前、リンカーン・センターで"American Friends"という特集が行われた。この特集は、世界を股にかけ活躍する4人のアメリカ人監督Gabriel Abrantes, Daniel Schmidt, Benjamin Crotty, Alexander Carverの作品を上映するもので、彼らが共同で作り上げた短…

Perry Blackshear&"They Look Like People"/お前のことだけは、信じていたいんだ

「ベルフラワー」という作品がある。今作は「マッドマックス2」のヒューマンガスに憧れるボンクラ2人の姿を凄まじい熱気で以て描いた作品で、全編に満ちるミソジニー(女性嫌悪)など問題がないこともないのだが、主人公たちの切実な友情の光景には心ブチ抜か…

Benjamin Crotty&"Fort Buchnan"/全く新しいメロドラマ、全く新しい映画

時折、この映画は全てにおいて"新しい"としか形容できない作品に出会ってしまうことがある。例えばRamon Zürcherの"Das merkwürdige Kätzchen"(詳しくはこの紹介記事を読んでね)、今作はある家族の日常の風景をシャンタル・アケルマンの禁欲性とジャック・…

Zia Anger&"I Remember Nothing"/私のことを思い出せないでいる私

No Badgeというサイトがある。ここは今、米インディー界で八面六臂の活躍を見せるKentucker Audleyという人物が経営しているサイトで、毎週火曜日に彼が選んだ選りすぐりのインディー映画を無料配信している。このブログを楽しんでくれている読者なら是非と…

ジェームズ・ポンソルト所感〜酒が飲みたくてしょうがないのは何で?

ジェームズ・ポンソルト&「スマッシュド〜ケイトのアルコールライフ〜」/酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい… ジェームズ・ポンソルト&"The Spectacular Now"/酒さえ飲めばなんとかなる!……のか? ポンソルト監督の経歴、および個々の作品…

S. クレイグ・ザラー&"Bone Tomahawk"/アメリカ西部、食人族の住む処

2015年11月、日本でイーライ・ロス監督の食人族映画「グリーン・インフェルノ」が公開された。製作のゴタゴタや日本では予告編大騒動など紆余曲折あってやっとの公開だったが、大満足の人もいれば期待し過ぎたという人もいるとこういう映画としては理想的な…

レスリー・ヘッドランド&"Sleeping with Other People"/ヤリたくて!ヤリたくて!ヤリたくて!

それは12年前のこと、ある所にジェイクとレイニーという名前の大学生がいました。2人にはあるコンプレックスがありました、それは1回もセックスをしたことがないことです。しかし何の因果か1人の童貞と1人の処女は大学寮で運命的な出会いを果たし、寮の屋上…

John Magary & "The Mend"/遅れてきたジョシュ・ルーカスの復活宣言

2015年残り20日を切った時にこんな話もなんだが、2014年のアメリカ映画界流行語大賞を挙げるなら"俳優+renaissance"以外にはないだろう。キャリアが低迷していた俳優がある作品をきっかけにキャリアが復調する様を表していて、例えばマシュー・マコノヒーが…

Marya Cohn & "The Girl in The Book"/奪われた過去、綴られる未来

今年、空前絶後のアクション映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は1つのメッセージを高らかに叫んだ――We Are Not Thing! このメッセージに強く勇気づけられた人々は多い筈だ。さてさて今回紹介したい作品も、マッドマックスよりはこじんまりとしてい…

Meera Menon &"Farah Goes Bang"/オクテな私とブッシュをブッ飛ばしに

女子だけのロードムービー映画は「大人になる前に……」から「テルマ&ルイーズ」にクリス・スワンバーグの"It Was Great, But I Was Ready to Come Home"までちょくちょく作られてきて、その度に楽しんできたのだが、この頃はヒップスターな女子たちが下品に…

Whitney Horn&"L for Leisure"/あの圧倒的にノーテンキだった時代

あなたは90年代という時代に何を思い浮かべるだろうか。私はやはり映画を中心に考えるのだが、90年代は何を置いてもマジで一番ダサかった時代だと思っていて、それはこの時代を考える時真っ先に頭に思い浮かぶのがロジャー・エイヴァリー監督作「キリング・…

Rick Alverson&"Entertainment"/アメリカ、その深淵への遥かな旅路

Rick Alverson &"The Comedy"/ヒップスターは精神の荒野を行く Rick Alverson&"Entertainment"/アメリカ、その深淵への遥かな旅路 Rick Alversonの略歴と前作"The Comedy"についてはこちら参照もし、もしだ、今まで観たアメリカ映画の中で最も題名と内容の解…

Anja Marquardt& "She's Lost Control"/セックス、悪意、相互不理解

セックス・サロゲイトという職業、映画ファンにとってはジョン・ホークス&ヘレン・ハントの「セッションズ」で親しみあるものかもしれない。ポリオが原因で"鉄の肺"に繋がれ体の不自由なホークスが、セックス・サロゲイトであるハントとの交流を通じて生きる…

ネイサン・シルヴァー&"Uncertain Terms"/アメリカに広がる"水面下の不穏"

まず映るのは少女の後ろ姿だ、赤毛を三つ編みにした彼女は、森の中の道筋をふらふらと歩く、カメラはその姿を追い続け、ふと彼女は携帯電話を取りだし、歩みは止めないまま何処かへ電話をかける、呼び出し音、呼び出し音、彼女はふらふらと歩く、呼び出し音…

Mona Fastvold &"The Sleepwalker"/耳に届くのは過去が燃え盛る響き

ブラディ・コーベット、この名にピンとこなくともミヒャエル・ハネケ監督作「ファニーゲームUSA」の不愉快甚だしいガキ2人の中で、マイケル・ピットではない方と言えば分かる人も多いのではないだろうか。俳優として「サーティーンズ」やグレッグ・アラキ監…