鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

レビュー

ベン・ウィートリー&「フリー・ファイヤー」/銃なんてロクなもんじゃねえや

ベン・ウィートリーの「フリーファイヤー」を観た。いやいや予想を越える、というか予想外な方向で素晴らしかった。私が思うに、この映画は今世紀最低の銃撃戦映画であり、今世紀最高のアンチ銃撃戦映画であり、今世紀最高の“銃はとても危ないから使っちゃい…

火星のロビンソン・クルーソー「オデッセイ」

1964年アメリカで「火星着陸第1号」というSFが公開された。とある事故から宇宙船が火星へと不時着、何とか生き延びた宇宙飛行士の命を懸けたサバイバルが描かれるのだが、謎の鉱物を燃やすと酸素が出てきたり、探検途中に偶然水場を発見したかと思えば、そこ…

この地獄を語り継ぐために「サウルの息子」

耳に聞こえてくるのは鳥たちの囀ずり、見えてくるのはぼんやりとした森の風景。そして何処からともなく緑の色彩から現れるのは、瞳に深き影を宿した男。「始めるぞ」との同僚の言葉に男はまた歩きだすと、ひどく唐突に世界は残酷さを帯びていく、野太い絶叫…

癒えないトラウマを抱えて「イット・フォローズ」

「イット・フォローズ」を観た。そのクオリティの高さにも驚いたが、描いているテーマにも驚いたので少し書いてみる。まずは少しあらすじを。主人公はジェイ(「ザ・ゲスト」マイカ・モンロー)、ある日彼女は新しい恋人であるヒュー(「ゾンビーバー」ジェイク…

Rick Alverson&"Entertainment"/アメリカ、その深淵への遥かな旅路

Rick Alverson &"The Comedy"/ヒップスターは精神の荒野を行く Rick Alversonの略歴と前作"The Comedy"についてはこちら参照もし、もしだ、今まで観たアメリカ映画の中で最も題名と内容の解離が激しい映画は何かと聞かれたなら。もし今まで観たアメリカ映画…

ヨルゴス・ランティモス&"Alpeis"/生きることとは演じることならば

余りにも大きすぎる成功は、映画監督に"次回作"という名のプレッシャーをもたらす。私たちはその圧力に耐えられず砕け散る才能をいくつも見てきたはずだ。ではヨルゴス・ランティモス監督はどうだったか?2011年、彼はヴェネチア国際映画祭ーー「籠の中の乙…

ヨルゴス・ランティモス&"Kinetta"/人生とは、つまり映画だ

男と女と、そしてカメラマン。3人が空き地に集い、始まるのは何かのリハーサルだ。"女は男の頬に平手打ちを喰らわせる"という声が響くと、女は男の頬に平手打ちを喰らわせる。"男が女を掴み揉み合いになる"という声が響くと、男が女を掴み揉み合いになる。"…

死にたい…死にたい…一緒に死のう…"Amour Fou"

ヴェロニカ・フランツ"Ich Ser Ich Ser"、Lukas Valenta Rinnerの"Parabellum"など、今オーストリアの新鋭たちの活躍は目覚ましい物だ。彼らの存在は映画界に"オーストリアの新たなる戦慄"という言葉を生み出し、その潮流を世界へと広げていく。そんな中、戦…

私たちは私たちのために立ち上がる「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への戦い」

止まれ、危ない、撃たれるぞ!……ダメだ、もう死んでる……響き渡る銃声、倒れた者の姿……僕はさっき死体を運んだんだ……もう血だまりを歩くのにも慣れた……そっちへ行くな!……革命に尽くしたい、これはウクライナの革命なんだ……2014年2月20日、マイダン革命の始ま…

リサ・ラングセット&「ホテルセラピー」/私という監獄から逃げ出したくて

リサ・ラングセット& "Till det som är vackert"/スウェーデン、性・権力・階級 リサ・ラングセット監督の略歴、デビュー作についてはこの記事を参照。私とは一体何なのだろう。私とはあなたの心から湧きあがる物によって構成されるのだろうか、それとも私と…

I LOVE 女子×女子バディ・コメディ「キューティ・コップ」

バディ・アクションものと言えば男&男が普通で、ときどき男&女があり、しかし女&女という組み合わせはあまり見当たらない。アクションといえば男性が中心で、女性は彼らの添え物か恋愛を絡めりゃ客来んだろ!って意図で出てくるだけの存在でしかなかった訳だ…

朝起きる、基地に行く、席につく、ボタンを押す「ドローン・オブ・ウォー」

トーマス・イーガン(「ゲッタウェイ スーパースネーク」イーサン・ホーク)は朝起きる、1階に降りる、朝食を食べる、車を運転する、基地につく、席に座る、液晶を見る、液晶を見る、ドリンクを飲む、液晶を見る、ボタンを押す、10数える、爆発する、死体を数…

この世界で女性が老いるということ「アドバンテージ〜母がくれたもの」

年をとった女性に対して“劣化”だとか“BBA”だとかいう言葉がぶつけられる様を見てしまった度、私は吐き気と、怒りを覚える。そしてそんな言葉に傷つかないよう自分から“BBA”と言う女性を見ると、やりきれなくて涙が出そうになる。日本は特にそうだと思うが、…

思い出という色とりどりの死骸たち「EDEN エデン」

冬と、枯れ木と、霧と、そして海。ミア・ハンセン=ラブ監督の最新作「EDEN エデン」が最初に映し出す、そして主人公のポール(「5月の後」フェリックス・ド・ジヴリ)が最初に見る風景は既に彼の挫折を予告している。90年代パリの音楽シーンを1人のDJの青春に…

「わたしに会うまでの1600キロ」を観たよ(ネタバレ)

「わたしに会うまでの1600キロ」鑑賞。旅路の過酷さ、リース・ウィザースプーンの熱演、編集の絶妙さ、母と娘の関係性など色々あったが私にとって一番印象的だったのは、彼女が“私”に辿り着くまでの旅路に横たわる、この社会で女性であること、ただそれだけ…

クソったれポリティカル・コレクトネス!というスタンス「クーデター」

ポリティカル・コレクトネス(以下PC)、人種・性別・政治的・社会的に中立であり差別や偏見の含まれない言葉や表現をあらわす言葉だ。最近では「ベイマックス」や「マッドマックス 怒りのデス・ロード」など作品にPCが組み込まれていっている現状があり、もう…

今すぐに貴方を殺せば、誰にも知られることはないでしょう"Queen of Earth"

彼女の瞳、恨みがましい視線、涙を含んだアイシャドウ、目元には闇を塗りつけられたかのようなドス黒さ。怒りに歪みきった彼女の顔をカメラは執拗に撮し出す。彼女は罵倒の言葉をいくども口にしながら、何故自分はこんな仕打ちを受けなくてはならないのかと…

ぜんぶ彼女のハンドルに託して「しあわせへのまわり道」

“中年女性がひょんなことから人生の半ばで道に迷ってしまうも、また新たな道を見つけて笑顔を浮かべながらその道を歩みはじめる”そんなキュートな映画が公開されるたび私は嬉しくてたまらなくなる。ただでさえ中年女性が主人公の映画なんて日本では公開され…

2012年は女子の友情サイコー!な年「ダイヤルはン〜フ〜/フォー・ア・グッド・タイム・コール」

2012年はアメリカン・コメディにとって1つの転機と言える年だったかもしれない。前年、クリステン・ウィグやメリッサ・マッカーシーがそのコメディセンスを存分に発揮した「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」のを皮切りに、今年やっと日本でも…

「ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション」を観たよ、すごい面白かったよ(ネタバレしかない)

ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション(以下インポロネイション)を観た。が、お盆を舐めていた。午後1時の回を見るはずが午後1時起床、まあ次があるから良いやとゆっくり身支度を整え、にんにくの効きまくったペペロンチーノを優雅に啜りながら午後…

これもある意味才能なのか「ピエロがお前を嘲笑う」

“全てを覆すラスト10分!”“誰も予想しえない衝撃の結末!”“このどんでん返し”……こういう宣伝を見るたび、自分がどうしようもないド腐れ脳味噌扱いされているような気分になる。この映画にはどんでん返しがありますよ!と忠告されて自分はどうすればいい、あ…

カン・ヘジョンが過去最高にキュートなのだけど「キム家の結婚狂騒曲」

韓国には、赤ちゃんが満一歳を迎えると行う“トルチャビ”という儀式がある。めかしこんだ赤ちゃんの前に筆、お金、茶碗にもったご飯を置く。もし赤ちゃんが筆を触ったら将来は学者、お金を触ったら将来は大富豪、ご飯を触ったら一生食いっぱぐれることもなく…

ソ連の誇りはアイスホッケーに託される「レッド・アーミー〜氷上の熱き冷戦〜」

“ソ連”についてあなたは何を知っているだろう?“冷戦”についてあなたは何を知っているだろう?そして“アイスホッケー”についてあなたは何を知っているだろう?……「レッド・アーミー〜氷上の熱き冷戦〜」は“ソ連”“冷戦”“アイスホッケー”という3つを描きだして…

凍てつくほどの、愛の地獄へと「ベルヴィル・トーキョー」

「話さなきゃいけないことがある」「……一体なに?」「もう黙っているのは無理だって分かった。俺、実は……浮気してるんだ……」駅のホームで繰り広げられるのはメロドラマ的な会話の数々、カメラが撮すのはそんな2人の横顔。会話が湿り気を増していく頃、轟音を…

70年代の終わりに「スカイラブ」

家族4人仲良く連れだって、アルベルティーヌたちは電車に乗り込む。だけども向かい合わせの席が空いていない、列車の旅は長い、4人でカードゲームでもして遊びたいのだが。「すみません、あの、私たち家族4人で座りたくて、もし宜しかったら対面席、譲ってく…

映画が好きで良かった「ラブコメ処方箋〜甘い恋のつくり方」

イラン系アメリカ人でバイセクシャルな女性の声をすくいとり、更に失恋の痛みが癒えていくプロセスを丁寧に描いたデジレー・アッカヴァン監督作「ハンパな私じゃダメかしら」そして中絶というテーマを軽やかに描き出したGillian Robespierre監督作"Obvious C…

誇りを語る前に物語をマトモに語れ「ふたつの名を持つ少年」

雪の降りしきる野原、遠くに見えるのは小さな影、ゆっくり、ゆっくりと雪原を横切る孤独な影。そのうち白く濁った空に映し出されるのは"Run Boy Run"という文字列だ、しかし影はスピードを早めることはない、凍えるような孤独を抱いてゆっくりと進んでいく。…

愛の迷宮「青の寝室」

「さすらいの女神たち」が日本でも公開されたことで、俳優マチュー・アマルリックが映画監督としても活躍しているのを知った方は多いだろう。しかし実はアマルリック、この時点で長編4作目とキャリアは長い(短編・TV映画を入れると本数は15本以上にものぼる)…

貴方は誰?「私はゴースト」

私たちがまず目にする物、それは青空のもと不気味に聳え立つ洋館だ。観る者の心を波立たせるような、ひどく不穏な雰囲気をまとった場所。そしてカットが切り替わるごとに、カメラは洋館の内部へと入り込んでいくこととなる。玄関のドアに描かれている紋様は…

"You Are Not Thing"「残酷で異常」

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…… 数をかぞえる男の声がどこからか聞こえてくる。その響きには焦りが滲んでいる。そして現れるのは必死に心臓マッサージを施す男の姿だ。死なないでくれ、死なないでくれ、床に倒れた女に対し彼は何度もその言葉を繰り返すが…