鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

私の好きな監督・俳優

Beatriz Seigner&"Los silencios"/亡霊たちと、戦火を逃れて

近現代のラテンアメリカ地域では、大規模な内戦や武力紛争などが頻発している。例えばコロンビアでは政府軍と反政府ゲリラの対立によって50年以上に渡る内戦が起こるなどしている。それによって国を離れることを余儀なくされた離散民は数えきれないだろう。…

César Díaz&"Nuestras madres"/グアテマラ、掘り起こされていく過去

ラテンアメリカの一国であるグアテマラ、この国においては血腥い内戦が30年にも渡って行われていた。それは軍内の親米派と反米派及び左派勢力などの間で1960年から1996年まで続いたのである。現在、内戦に加担した戦争犯罪人の裁判が行われており、被害者た…

Marios Piperides&"Smuggling Hendrix"/北キプロスから愛犬を密輸せよ!

さて、皆さんは北キプロス・トルコ共和国という国の存在を知っているだろうか。その名の通りキプロスの北に位置しており、ギリシャ系住民とトルコ系住民の紛争を契機として、後者が軍事制圧を行った後でできた自治国家だ。その成り立ちからトルコにしか認め…

María Alché&"Familia sumergida"/アルゼンチン、沈みゆく世界に漂う

今、アルゼンチン映画界は空前の活況に至っている。例えばこの国のインディー映画界の代表的存在Matías Piñeiro マティアス・ピニェイロは“Hermia & Helena”などコンスタントに作品を発表、その一方で新人Eduardo Williamsは異形の作品“El auge del humano”(…

Tonia Mishiali&"Pause"/キプロス、日常の中にある闘争

さて、ギリシャでは“ギリシャの奇妙なる波”が叫ばれるほどに奇妙な映画が台頭し始めているが、その奇妙さを取っ払ってみると見えてくる共通のテーマがある。それが現代における家父長制だ。例えばヨルゴス・ランティモス監督の「籠の中の乙女」は強権的な父…

Marie Kreutzer&"Der Boden unter den Füßen"/私の足元に広がる秘密

ローラ(Valerie Pachner)はビジネス・コンサルタントとしてオーストリアとドイツを飛び回る日々を送っている。仕事の首尾も上々であり、今後これが続けばオーストラリアへの栄転もあるそうだ。上司のエリーゼ(Mavie Hörbiger)とは公私に渡るパートナーであり…

Abbas Fahdel&"Yara"/レバノン、時は静かに過ぎていく

日本語には“ほのぼの”という言葉がある。英語で言えば“peaceful”だとか“heartwarming”だとか、そんな意味になるのではないか。しかしそれよりもっと緩やかで心地よいといったニュアンスがあることは日本語の分かる方ならご存知だろう。その微妙なニュアンス…

Ísold Uggadóttir&"Andið eðlilega"/アイスランド、彼女たちは共に歩む

そして、アイスランドである。この国はまず世界の歌姫ビョークの出身国であることがまず有名であるが、最近は映画の撮影地として重宝され、例えばクリストファー・ノーランの「インターステラー」などがこの地をロケ地として撮影されていることは有名だろう…

Gjorce Stavresk&"Secret Ingredient"/マケドニア式ストーナーコメディ登場!

いわゆるストーナーコメディというジャンルが存在する。マリファナ吸って気分よくなった連中が騒動を巻き起こすといったゆるゆるなコメディ群だ。しかし最近新機軸の作品が現れ始めている。例えばイスラエル映画“”は息子の死をマリファナで乗り越えていくと…

Anja Kofmel&"Chris the Swiss"/あの日遠い大地で死んだあなた

アニメーションというのは目に見ることのできないはずの様々な感情を、私たちの目の前で鮮やかにかつ魔法のように描き出していくメディアだ。生の喜びや楽しみ、哀しみ、そしてその全てをうちに抱いた愛をもアニメーションは豊かな映像で以て描き出していく…

Robert Budina&"A Shelter Among the Clouds"/アルバニア、信仰をめぐる旅路

日本人は無宗教な人種だとよく言われる。しかしそれは少し間違っているのではないかと自分は思う。個人的には、日本人はそれ以前に宗教という概念をそもそも理解していないのが実際のところでは?と思っている。それは宗教的な事柄があまりにも世俗化されす…

Federico Atehortúa Arteaga&"Pirotecnia"/コロンビア、忌まわしき過去の傷

さて、コロンビアである。この地では60年代からつい最近まで政府軍と反政府軍による内戦が続いていた。それはコロンビアの大地に、コロンビアに生きる人々の心に深い傷を刻みつけていった。ゆえにこの国の映画作家たちは様々な形でこのテーマについて扱って…

Marius Olteanu&"Monștri"/ルーマニア、この国で生きるということ

さて、ルーマニアである。東欧に位置しながらもスラブ民族ではなくラテン民族で構成された異端の国、EUに所属する中では最貧国の1つとして数えられながらもITなどの面で経済は急成長を遂げている急進国家。そんな過渡期にある国で生きることにはどんな意味が…

Miko Revereza&"No Data Plan"/フィリピン、そしてアメリカ

いわゆる紀行映画(トラヴェログ)というジャンルがある。ある人物がめぐる旅路の中で見る風景や体験する出来事を捉えていくことで紡がれていく映画のことだ。こういった作品を観ていると、自分たちも語り手と同じく旅をしているような、そんな心地を味わうこ…

Ena Sendijarević&"Take Me Somewhere Nice"/私をどこか素敵なところへ連れてって

旧ユーゴ圏において血みどろの紛争が繰り広げられる中で、ユーゴスラビアの人々は平和を求めて世界各国へと離散することになる。その中でそれぞれの第2の故郷で成長を果たし、育っていった世代が映画作家として活躍する時代がやってきた。ロッテルダム国際映…

Simona Kostova&"Dreissig"/30歳、求めているものは何?

30歳という年齢は若くもなければ老いてもいない微妙な年代と言えるだろう。巷ではこの微妙さに翻弄される人々の危機的な状況を“クォーターライフ・クライシス”と言うそうだ。今回紹介するブルガリア映画界の新星Simona Kostovaによるデビュー長編“Dreissig”…

Katharina Mückstein&"L'animale"/オーストリア、恋が花を咲かせる頃

恋はいついかなる時間場所でも花を咲かせる。その恋の風景の数々は共通するところがあれば、異なる部分もある。それらについて映画などを通じて知っていくことは、芸術に触れる楽しみの1つでもあるだろう。今回紹介するKatharina Mückstein監督作“L’animale”…

Gabi Virginia Șarga&"Să nu ucizi"/ルーマニア、医療腐敗のその奥へ

ルーマニアの医療体制の腐敗は東欧でもかなり悪名高いものだ。患者が置かれる環境が劣悪であることはもちろん、医師や看護師たちの待遇もかなり悪く、優秀な人材が国外に流出しさらの体制が悪化するという悪循環を辿っていっている。ルーマニア映画界におい…

Agustina Comedi&"El silencio es un cuerpo que cae"/静寂とは落ちてゆく肉体

アルゼンチンの現代史は激動の歴史以外の何物でもないだろう。特に、俗に言う“汚い戦争”が繰り広げられた、7年にも渡る軍事政権は様々な形で人々を翻弄していった。例えば共産主義者などに対する弾圧は有名であるが、同時に同性愛者に対する弾圧も凄まじいも…

Csuja László&"Virágvölgy"/無邪気さから、いま羽ばたく時

子供の頃、私たちはただただ無邪気さの中に浸っていることができる。しかしいつかは、その生温くも心地よい無邪気さを捨て去って、世界へと羽ばたく必要があるだろう。その過程がどんなに辛くとも、どんなに奇妙なものだとしても。Csuja László監督のデビュ…

Blerta Zeqiri&"Martesa"/コソボ、過去の傷痕に眠る愛

さて、コソボである。他の旧ユーゴスラビア諸国のようにこの国もまた苛烈な紛争を経験し、数多の死と破壊に見舞われることとなった。その時代から約20年が経ち復興は確かに進みながらも、今にも癒えない傷や隠された忌まわしき過去というものはコソボの人々…

Suba Sivakumaran&“House of the Fathers”/スリランカ、過去は決して死なない

さて、スリランカである。近年ではカンヌでパルムドールを獲った「ディーパンの戦い」の主人公たちがスリランカ難民だったなどがある。しかしスリランカ自体の映画は余り多くないし、日本でもほとんど評判について聞くことはないだろう。という訳で今回はそ…

Teona Strugar Mitevska&"When the Day Had No Name"/マケドニア、青春は虚無に消えて

2012年、マケドニアで凄惨な殺人事件が起こった。首都スコピエの郊外に位置する湖で4つの死体が発見されたのだ。どれも10代の少年たちのものであり、頭部を撃ち抜かれていた。この事件はマケドニア全土に衝撃を巻き起こす。イスラム過激派の仕業など噂が全土…

Meryem Benm'Barek&"Sofia"/命は生まれ、人生は壊れゆく

さて、モロッコである。映画史に残る傑作「カサブランカ」の舞台として有名なこの国であるが、モロッコ自体の映画は少なくとも日本では余り知られていないというのが現状だろう。しかしコンスタントに映画が製作され、何本もの作品がカンヌ映画祭で上映され…

Olga Korotko&"Bad Bad Winter"/カザフスタン、持てる者と持たざる者

持てる者と持たざる者の対立、1%と99%の対立は世界各地で繰り広げられている。世界が不穏な方向へと傾くなかで、この闘争もまた複雑で熾烈なものとなっていっている。Olga Korotko監督作である“Bad Bad Winter”は、中央アジアの小国であるカザフスタンにおい…

Adrian Panek&"Wilkołak"/ポーランド、過去に蟠るナチスの傷痕

ホラーという映画ジャンルは、他のジャンルよりも多くかつ意識的に、この世に存在する恐怖を隠喩的に描いてきた。最近の映画でいえば「クワイエット・プレイス」はドナルド・トランプに代表される不寛容が台頭する世の中で親として子供を育てることの恐怖を…

Katherine Jerkovic&"Las Rutas en febrero"/私の故郷、ウルグアイ

さて、ウルグアイである。アルゼンチンの隣に位置する小国であるがゆえ、この国の有能な作家陣はアルゼンチンに行ってしまい、この国自体の映画産業が特に大きいということはない。それでも祖国への愛着を持つ人々は世界各地に存在している。という訳で今回…

Milko Lazarov&"Ága"/ヤクートの消えゆく文化に生きて

あなたはヤクートという人々のことを知っているだろうか。北東アジアに住んでいるテュルク系民族に属する人々であり、見た目は日本人にも似ている。彼らの中には未だに伝統を守りながら、氷原で自然と共に生活し続けているという者たちも多くいる。ブルガリ…

Hlynur Palmason&"Vinterbrødre"/男としての誇りは崩れ去れるのみ

芸術において男性性とは雄大な自然と結びつけられていくことが多い。例えば蒼窮へと向かって聳えたつ山々、地中深くに根を張りその葉を繁らせる大樹。しかし人間というものはちっぽけなものだ。実際に剥き出しにされたちっぽけな男性性は大自然に投げ出され…

Adina Pintilie&"Touch Me Not"/親密さに触れるその時に

私たちは精神や魂だけで生きているのではない。そこには否応なく身体というものが付いてまわる。身体とは人間にとって最も近しい存在の1つでありながら、最も遠い他者の1つでもあり、それを理解するのは余りにも難しい。ゆえにそれを探求する旅路はひどく険…