鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

Julio Hernández Cordón&"Cómprame un revolver"/メキシコ、この暴力を生き抜いていく

現在のメキシコの状況はお世辞にも良好とは言えない。カルテルの暴力が跋扈し、女性や子供たちなどの弱者が真先に踏み躙られる世界がそこには広がってしまっている。だがこんな世界に対して映画を以て立ち向かおうとする人々がいる。今回は現在のメキシコを…

Shahrbanoo Sadat&"The Orphanage"/アフガニスタン、ぼくらの青春

アフガニスタンと言えばアルカイダ、ビンラディン、テロリストなど良くないイメージが現在付き纏ってしまっている。だが私たちは煽情的で憎悪をあおるメディアから遠く離れた場所から、この国を見る必要があるだろう。そんな時に寄り添ってくれるのが芸術と…

済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!![2019 Edition]

まず、まずだ、このブログを何故始めたのかをここに書きたい。始まりは、海外サイト読み漁るうち、何か映画界の最前線で評価されている作品や監督について、海外と日本だと情報量に決定的な差があるなって思った所だった、日本語で読める情報が余りに少ない…

Juris Kursietis&"Oļeg"/ラトビアから遠く、受難の地で

東欧の国々は貧困に喘ぐ国が多く、よりよい未来を求めて国外へと移住する若者たちが後を絶たない。バルト三国の一国であるラトビアも今現在そんな現実に直面することとなっている。今回紹介する作品はそんな国外生活を送るラトビア移民の姿を描き出した、Jur…

Hilal Baydarov&"Xurmalar Yetişən Vaxt"/アゼルバイジャン、永遠と一瞬

さて、アゼルバイジャンである。旧ソ連の構成国であり、アジアとヨーロッパに跨るコーカサス山脈の傍らに位置している。首都バクーは新たな観光地として話題になり始めている。映画製作においては影の薄いこの国であるが、もちろんこの国独自の映画史は存在…

Alex Ross Perry&"Her Smell"/お前ら、アタシの叫びを聞け!

カリスマ性のあるロック歌手というのは、当然というべきか映画の題材になることが多い。最近でもQueenのフレディ・マーキュリーを描き出した伝記映画「ボヘミアン・ラプソディー」が話題になったことは記憶に新しいだろう。しかしニューヨーク・インディー映…

Beatriz Seigner&"Los silencios"/亡霊たちと、戦火を逃れて

近現代のラテンアメリカ地域では、大規模な内戦や武力紛争などが頻発している。例えばコロンビアでは政府軍と反政府ゲリラの対立によって50年以上に渡る内戦が起こるなどしている。それによって国を離れることを余儀なくされた離散民は数えきれないだろう。…

César Díaz&"Nuestras madres"/グアテマラ、掘り起こされていく過去

ラテンアメリカの一国であるグアテマラ、この国においては血腥い内戦が30年にも渡って行われていた。それは軍内の親米派と反米派及び左派勢力などの間で1960年から1996年まで続いたのである。現在、内戦に加担した戦争犯罪人の裁判が行われており、被害者た…

Marios Piperides&"Smuggling Hendrix"/北キプロスから愛犬を密輸せよ!

さて、皆さんは北キプロス・トルコ共和国という国の存在を知っているだろうか。その名の通りキプロスの北に位置しており、ギリシャ系住民とトルコ系住民の紛争を契機として、後者が軍事制圧を行った後でできた自治国家だ。その成り立ちからトルコにしか認め…

Rick Alverson&"The Mountain"/アメリカ、灰燼色の虚無への道行き

Rick Alverson &"The Comedy"/ヒップスターは精神の荒野を行く Rick Alverson&"Entertainment"/アメリカ、その深淵への遥かな旅路 Rick Alversonの略歴と諸作品についてはこちら参照ロボトミー手術とは前頭葉の一部を切除する手術法である。主に双極性障害や…

María Alché&"Familia sumergida"/アルゼンチン、沈みゆく世界に漂う

今、アルゼンチン映画界は空前の活況に至っている。例えばこの国のインディー映画界の代表的存在Matías Piñeiro マティアス・ピニェイロは“Hermia & Helena”などコンスタントに作品を発表、その一方で新人Eduardo Williamsは異形の作品“El auge del humano”(…

Sarah Daggar-Nickson&"A Vigilante"/破壊された心を握りしめて

DVとはただの暴力なのだろうか。いや、違うだろう。それはかつて愛していた者によって愛の名の下に行われるものであり、それは被害者の心と身体を深く深く破壊してしまう。そうして壊されてしまった人々は、ボロボロになった全てを引きずって生きていくこと…

Tonia Mishiali&"Pause"/キプロス、日常の中にある闘争

さて、ギリシャでは“ギリシャの奇妙なる波”が叫ばれるほどに奇妙な映画が台頭し始めているが、その奇妙さを取っ払ってみると見えてくる共通のテーマがある。それが現代における家父長制だ。例えばヨルゴス・ランティモス監督の「籠の中の乙女」は強権的な父…

Tim Sutton&"Donnybrook"/アメリカ、その暴力の行く末

アメリカ映画に欠かせないものとは何だろうか。世界を救うヒーロー、全てを包み込む家族愛、気持ちのよい爆発、どこまでも広がる果てしない大地、洒落た服に身を包んだ人々の小粋なジョーク。様々なものが挙げられるだろうが、もう1つ欠かせない大事なもの、…

Marie Kreutzer&"Der Boden unter den Füßen"/私の足元に広がる秘密

ローラ(Valerie Pachner)はビジネス・コンサルタントとしてオーストリアとドイツを飛び回る日々を送っている。仕事の首尾も上々であり、今後これが続けばオーストラリアへの栄転もあるそうだ。上司のエリーゼ(Mavie Hörbiger)とは公私に渡るパートナーであり…

Abbas Fahdel&"Yara"/レバノン、時は静かに過ぎていく

日本語には“ほのぼの”という言葉がある。英語で言えば“peaceful”だとか“heartwarming”だとか、そんな意味になるのではないか。しかしそれよりもっと緩やかで心地よいといったニュアンスがあることは日本語の分かる方ならご存知だろう。その微妙なニュアンス…

Ísold Uggadóttir&"Andið eðlilega"/アイスランド、彼女たちは共に歩む

そして、アイスランドである。この国はまず世界の歌姫ビョークの出身国であることがまず有名であるが、最近は映画の撮影地として重宝され、例えばクリストファー・ノーランの「インターステラー」などがこの地をロケ地として撮影されていることは有名だろう…

Gjorce Stavresk&"Secret Ingredient"/マケドニア式ストーナーコメディ登場!

いわゆるストーナーコメディというジャンルが存在する。マリファナ吸って気分よくなった連中が騒動を巻き起こすといったゆるゆるなコメディ群だ。しかし最近新機軸の作品が現れ始めている。例えばイスラエル映画“”は息子の死をマリファナで乗り越えていくと…

Anja Kofmel&"Chris the Swiss"/あの日遠い大地で死んだあなた

アニメーションというのは目に見ることのできないはずの様々な感情を、私たちの目の前で鮮やかにかつ魔法のように描き出していくメディアだ。生の喜びや楽しみ、哀しみ、そしてその全てをうちに抱いた愛をもアニメーションは豊かな映像で以て描き出していく…

Robert Budina&"A Shelter Among the Clouds"/アルバニア、信仰をめぐる旅路

日本人は無宗教な人種だとよく言われる。しかしそれは少し間違っているのではないかと自分は思う。個人的には、日本人はそれ以前に宗教という概念をそもそも理解していないのが実際のところでは?と思っている。それは宗教的な事柄があまりにも世俗化されす…

Federico Atehortúa Arteaga&"Pirotecnia"/コロンビア、忌まわしき過去の傷

さて、コロンビアである。この地では60年代からつい最近まで政府軍と反政府軍による内戦が続いていた。それはコロンビアの大地に、コロンビアに生きる人々の心に深い傷を刻みつけていった。ゆえにこの国の映画作家たちは様々な形でこのテーマについて扱って…

Marius Olteanu&"Monștri"/ルーマニア、この国で生きるということ

さて、ルーマニアである。東欧に位置しながらもスラブ民族ではなくラテン民族で構成された異端の国、EUに所属する中では最貧国の1つとして数えられながらもITなどの面で経済は急成長を遂げている急進国家。そんな過渡期にある国で生きることにはどんな意味が…

Miko Revereza&"No Data Plan"/フィリピン、そしてアメリカ

いわゆる紀行映画(トラヴェログ)というジャンルがある。ある人物がめぐる旅路の中で見る風景や体験する出来事を捉えていくことで紡がれていく映画のことだ。こういった作品を観ていると、自分たちも語り手と同じく旅をしているような、そんな心地を味わうこ…

Ena Sendijarević&"Take Me Somewhere Nice"/私をどこか素敵なところへ連れてって

旧ユーゴ圏において血みどろの紛争が繰り広げられる中で、ユーゴスラビアの人々は平和を求めて世界各国へと離散することになる。その中でそれぞれの第2の故郷で成長を果たし、育っていった世代が映画作家として活躍する時代がやってきた。ロッテルダム国際映…

Simona Kostova&"Dreissig"/30歳、求めているものは何?

30歳という年齢は若くもなければ老いてもいない微妙な年代と言えるだろう。巷ではこの微妙さに翻弄される人々の危機的な状況を“クォーターライフ・クライシス”と言うそうだ。今回紹介するブルガリア映画界の新星Simona Kostovaによるデビュー長編“Dreissig”…

Katharina Mückstein&"L'animale"/オーストリア、恋が花を咲かせる頃

恋はいついかなる時間場所でも花を咲かせる。その恋の風景の数々は共通するところがあれば、異なる部分もある。それらについて映画などを通じて知っていくことは、芸術に触れる楽しみの1つでもあるだろう。今回紹介するKatharina Mückstein監督作“L’animale”…

Gabi Virginia Șarga&"Să nu ucizi"/ルーマニア、医療腐敗のその奥へ

ルーマニアの医療体制の腐敗は東欧でもかなり悪名高いものだ。患者が置かれる環境が劣悪であることはもちろん、医師や看護師たちの待遇もかなり悪く、優秀な人材が国外に流出しさらの体制が悪化するという悪循環を辿っていっている。ルーマニア映画界におい…

Agustina Comedi&"El silencio es un cuerpo que cae"/静寂とは落ちてゆく肉体

アルゼンチンの現代史は激動の歴史以外の何物でもないだろう。特に、俗に言う“汚い戦争”が繰り広げられた、7年にも渡る軍事政権は様々な形で人々を翻弄していった。例えば共産主義者などに対する弾圧は有名であるが、同時に同性愛者に対する弾圧も凄まじいも…

Csuja László&"Virágvölgy"/無邪気さから、いま羽ばたく時

子供の頃、私たちはただただ無邪気さの中に浸っていることができる。しかしいつかは、その生温くも心地よい無邪気さを捨て去って、世界へと羽ばたく必要があるだろう。その過程がどんなに辛くとも、どんなに奇妙なものだとしても。Csuja László監督のデビュ…

Blerta Zeqiri&"Martesa"/コソボ、過去の傷痕に眠る愛

さて、コソボである。他の旧ユーゴスラビア諸国のようにこの国もまた苛烈な紛争を経験し、数多の死と破壊に見舞われることとなった。その時代から約20年が経ち復興は確かに進みながらも、今にも癒えない傷や隠された忌まわしき過去というものはコソボの人々…