さてリトアニア映画界である。2010年代後半、リトアニア映画史の巨人であるシャルナス・バルタスがセクシャルハラスメントで訴えられ、世界に衝撃が走った。現在もその真偽は有耶無耶のままであり、微妙な状況が続いている。だが例え巨星が堕ちようとも、新…
先日、ティム・インゴルドの「ラインズ 線の文化史」という本を読んだ。人類学者である著者が楽譜や筆跡など、文字通りの線の歴史を探っていくという作品でなかなか興味深く読んだ。今後、小説執筆などにうまくこの知識を活用できないかと思っている。だがこ…
最近、私が建築や都市デザインにまつわる映画に興味があるのは、直近の記事を読んでくれたりTwitterを見てくれている方ならご存知だろうと思う。クローン病と診断された後に開き直って大量の本を読み始めたのだが、そこで最も惹かれたものの1つが建築と都市…
ブリュノ・デュモンの"France"を観た。最初はすわコメディ版「ハデウェイヒ」か?と思ったが、最終的にはそれ以上の作品に思えた。ある人間存在の精神というものが一線を越える。これはデュモン映画のお約束だが、今回はふてぶてしさとグチャグチャさを行き…
ということで"2020年代、未来の巨匠との対話"のコーナーである。今回インタビューした新人作家はドイツ映画界から現れた新鋭Hannah Dörr ハンナ・デールだ。彼女のデビュー長編"Das Massaker von Anröchte"は、アンレヒテというドイツの地方都市で巻き起こ…
私は今、ルーマニア映画界の新人の動向に2つの潮流を見ている。片方に"ルーマニアの新しい波"以降の、例えば長回しや徹底的なリアリズム描写など、いわば新しい伝統を継承し、新しい局面へ進めていく存在がいる。例えば今年のカンヌ批評家週間に出品された"I…
2021年、ただでさえ凄まじいルーマニア映画界が更なる躍進を遂げている。まずベルリンでRadu Jude ラドゥ・ジュデの最新作"Babardeală cu bucluc sau porno balamuc"が金熊賞を獲得、カンヌには5作のルーマニア映画が出品され、ヴェネチアでは新人監督Monica…
コソボ映画界がアツいというのは毎度のことこの鉄腸マガジンで言ってきているだろう。が、色々とコソボの最新映画を紹介してきたが、実を言えば私がコソボ映画に嵌ったキッカケの人物を紹介していなかった。そんな中、彼が新作映画を作った訳で、とうとう紹…
さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…
今、個人的にマジにモンテネグロがアツい。以前からモンテネグロには注目しており、この鉄腸マガジンでも何作かレビューを書いたり、モンテネグロの映画批評家にインタビューを行っていたりはした。そしてつい先日、Svetlana Kana Radević スヴェトラーナ・…
ペルーに住むインディオに、ウイトト人と呼ばれる人々がいる。ヨーロッパ人入植者が来る前まで彼らは平穏な暮らしを送っていたが、20世紀初めより彼らは入植者によってゴム栽培の労働力として搾取され、その人口は劇的に減少することになる。それでも独自の…
最近、建築学に嵌まっており、建築や都市計画という面から映画を観たりしているのだが、そういった意味でかなりしっくり来る映画に映画館で2本連続出会った。「イン・ザ・ハイツ」と「映画クレヨンしんちゃん謎メキ!花の天カス学園」だ。まず「イン・ザ・ハイ…
さてさて"2020年代、未来の巨匠との対話"のお時間である。今回インタビューしたのはアメリカ実験映画界に颯爽と現れた新鋭監督Jonathan Davies ジョナサン・デイヴィスだ。彼のデビュー長編"Topology of Sirens"は正に驚きの1作だ。亡くなった叔母の家に引っ…
さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…
Twitterで"ユーゴスラビア映画とかになると、もう何を見ていいかわからないな"という呟きを見かけた。映画批評家がそう途方に暮れるくらいなのだから、普通の映画好きはもう何が何だかという感じだろう。なので1つくらいユーゴスラビア映画を観るための指針…
“何で裸足なの?”と「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」を観た人々が言っているのを、驚くほど頻繁にTwitter上で見た。もしこれを監督に実際尋ねたとしたなら、観客が理解できるにしろできないにしろ、彼は即答するだろうという妙な確信がある。そういう…
いくら理由をつけたとしても、結局、究極的にはただ暴力が振るいたいだけ。それでも知りたい、なぜ自分は暴力に惹かれるのか、なぜ社会に暴力は存るのか。「Mr. ノーバディ」はある映画監督が暴力について理解しようと試みる、その終ることなき過程なのだと私…
さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…
さて、Jack Nicholson ジャック・ニコルソンである。俳優としての彼を知らない映画好きはいないだろうが、では作り手としての彼はどうだろう。Roger Corman ロジャー・コーマンの下で多くの作品に出演していた彼は60年代から脚本も書き始めるのだが、ここに…
"天才? 詐欺師? 誇大妄想狂? 異端者? ある者たちからは映画の天才、フェミニスト、アメリカ映画界の純なる異端者と呼ばれる一方、ある者たちからは覗き魔で誇大妄想狂の'世界サイテーの監督'と侮られる。そんな中でこの男は執拗に、執拗なまでに人生と芸…
現在、カザフスタン映画界がアツいというのはこの鉄腸マガジンで何度も書いている。この前もまだ詳細は書けないのだが、カザフスタンの友人から"新作ができたから、意見を聞きたい"と作品を送られ、これがまた素晴らしかった。今作が映画祭でプレミアを迎え…
ということでリチャード・フライシャー作品を観続けている。1984年制作の「キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2」/ "Conan the Destroyer"にはマジで感動した。いや、絶対午後のロードショーで観てたとは思うんだけど、こんなにも豊穣な作品だったのか…
リチャード・フライシャー、あまり興味がない。ぶっちゃけ日本で過大評価されてる気しかしない。それでアメリカ含め海外で過小評価されていると被害者意識を抱いてる感じだ。個人的に何本か観ているが、あまり思い入れはない。ミア・ファローの「見えない恐…
インドネシアの東ジャワ州にはウシン人という少数民族が住んでいる。元々はヒンドゥー教徒の国で会ったブランバンガン王国の住民だったが、18世紀に東インド会社によってイスラム教に改宗させられ、今はジャワ島の最東端であるバニュワンギ県に居住している…
私は2020年の映画界を制する国の1つはコソボだと常々言っているが、2021年は正にコソボ映画界が大躍進を果たしそうだ。まず年間の長編制作数が5本ほどのこの国から既に1作がサンダンス映画祭、1作がロッテルダム映画祭に選出されるという快挙を成し遂げた。…
さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…
さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…
さて、世界中の誰もがこのコロナ禍によって未曽有の状況に追いこまれている。容易く人とは会えなくなり、部屋に閉じこもらざるを得ない閉塞した状況は一体いつまで続くのだろうか。そんな苦悩を抱えている人々は今回紹介する映画を観るべきではないかもしれ…
最近はそうでもなかったが、前はこの鉄腸マガジンで"文芸エロ映画"というジャンルを紹介していた。TSUATAYAなどのレンタル店にある外国映画の棚、その端に煽情的なタイトルの、ポルノではないけども限りなくポルノに近そうな題名の映画が多々置いてあること…
ウクライナ・クリミア侵攻をきっかけとして、旧ソ連諸国においてロシアへの危機感が再燃している。その中の1国であるリトアニアは脅威に備えて徴兵制を設置、若い男性たちに兵役を課している。そして義務ではないが、少数の女性たちが志願兵として兵役を行っ…