鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

はてなダイアリーのサービスが終了ということで、はてなブログで鉄腸野郎Z-SQUAD!改め鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!へ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。

ルース・オゼキと残虐メカ帝国の逆襲

“ルース・オゼキ”という名前をお聞きになったことはあるでしょうか? おそらく外国文学が好きな方は聞き覚えがあるのではと思います。ええそうです、先月邦訳が出ました「あるときの物語」(早川書房 訳者:田中文)の作者がルース・オゼキ氏なのです。カナダ在住の日系アメリカ人であるオゼキ氏は1998年、メディア・食糧汚染・環境ホルモン・DVなどの様々な問題を扱った「MY YEAR OF MEATS(邦訳:イヤー・オブ・ミート 訳者:佐竹史子)」でデビュー、2003年にはアイダホのジャガイモ農場を舞台とした「ALL OVER CREATION(こちらは邦訳なし)」を発表、その後、東日本大震災を経て2013年に「あるときの物語」を発表、マン・ブッカー賞では最終候補作にも選ばれました。

あるときの物語(上)

あるときの物語(上)

あるときの物語(下)

あるときの物語(下)

 ですが勿論、このサイトではその小説に関して語る訳がありません。と言います事で、ではそんな高名な小説家の方がどうZ級映画と関わりがあるのか?という話になります。実を言いますと、“ルース・オゼキ”という名前を聞きました時、私の脳裏には小説よりも映画が思い浮かんだのですよね。何かこの名前に既視感あるなぁ……と。
 どうしても何かが思い浮かばない時のあの気持ち悪いとしか形容し難い心地が彼女の名前にはありました。そんな心地でRuth OzekiとIMDBで検索してみました。そると検索結果の一番上にRuth Ozeki lounsburyという名前出てきますでしょう。その人物が美術監督をしましたという「Robot Holocaust」をallcinemaの検索欄にブチ込んで検索してみましょう。

そして現れたのがこのページです。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=1665

Youtubeで検索した際に出ましたのがこの動画でした。

 何て心躍る動画でしょうか。壁から現れる、腕にストッキングを被せて指の先に何らかの破片をくっつけただけのクリーチャー、何かすっごいボロい布を被っただけのゾンビ、コロコロころりんと地を転がりゆく生首、ただの廃墟にしか見えないアンドロイド軍団の超硬要塞、アンドロイド軍団自体の造型も1986年を鑑みると何とも言えない味があります。ちょいちょい見るだけでも解る方は解りますでしょうしAllcinemaの解説を読んでも明らかですが、ロボットが反乱起こしてN.Y.支配されたので、奴隷の人間が頑張ってN.Y.を救うヘッポコポコピンなZ級SF映画なのです。ということでこの80年代においては「ブレードランナー」「コナン・ザ・グレート」に続けと二十番煎じ当たり前で量産された有象無象SFファンタジーの1つでしかなかったのですよね。そんな「アンドロイド・バスターズ/残虐メカ帝国の逆襲」の美術監督が、かのルース・オゼキ氏という訳であります。
 正直全く信じられませんでしたが、オゼキ氏の名前と「Robot holocaust」を繋げてググってみますと、オゼキ氏公式サイトのLong bioが出てきます。ですのでその一部を見てみましょう。その前後は自力で読んで下さい。

In 1985, Ozeki returned to New York City and started a film career as an art director, designing sets and props for low-budget horror movies, including little-known classics such as Mutant Hunt, Breeders, Necropolis and Robot Holocaust.

1985年、オゼキ氏はニューヨークに戻り、美術監督として映画界に入る。「Mutant Hunt」「Breeders」「Necropolis」「Robot Holocaust」など知名度のあまりない低予算ホラー映画でセットや小道具をデザインしていた(私の逐語訳)

http://www.ruthozeki.com/about/long-bio/ から引用


 何と驚きました事に、オゼキ氏を一時期Z級ホラー映画の美術監督をしていたのです。私は大いに感動をせき止められず、Bioに載っている原題をYoutubeで検索していきました。さあ、此処からはルース・オゼキ氏、Z級映画美術監督の軌跡を見て行きましょう。多分、本人はあまり突かれたくないと思うのですけど、私はそんなこと知りません。

「ブリーダーズオゼキ氏、Z級映画美術監督の軌跡その2(その1は正に前述の「アンドロイド・バスターズ/残虐メカ帝国の逆襲」調べる限りはこの美術監督が映画デビューのようです。Long Bioに載っている順番とは違いますが)昆虫型変態宇宙人が処女の生血を狙う、という時点である程度お察しくださいという内容のSF映画。ですけど昆虫型宇宙人が姿を現す際のグロテスク描写は「スキャナーズ」や「戦慄!呪われた夜」に匹敵する凄まじさがあるのでとても宜しいんですよ。是非VHSを探してご鑑賞下さい。

「ミュータント・ハント」オゼキ氏、Z級映画美術監督の軌跡その3。目的も解らず生み出された殺人サイボーグと白ブリーフのハンサムなメンズ+αが戦うアクション映画のようです。しかし http://www.youtube.com/watch?v=f5De9wc9O7I (何故かこの動画はちゃんと組み込まれません)このアクションシーンは酷い、勿論美術監督であるオゼキ氏の管轄外ですが、このアクションシーンはものすごく酷く、故に私はゾクゾクします。どういう気持ちで、このブリーフアクションを彼女は観ていたのでしょうか。

「エネミー・テリトリー」オゼキ氏、Z級映画美術監督の軌跡その4。おそらく「真夜中の処刑ゲーム」などの系譜にあるヴァイオレンス映画で、ジャン=マイケル・ヴィンセントといういつか懐かしき俳優も出て居らっしゃいます。これは結構面白そうですよね、私観てないのですけど。

「妖獣伝説ネクロポリスルース・オゼキ氏美術監督の軌跡その5。邦題からして凄さムンムンですが内容につきましても、パンクファッションに身を包んだ魔女との壮絶なN.Y.決戦を描くアクションだそうです。はっちゃけてます。しかも「トータル・リコール」の三つ乳を越える六つ乳まで出てくるのですから、とてもとっても凄い。ちなみにAmazonでVHSが売買されていますが「あるときの物語」上下巻合わせた値段よりも高値で売買されていることを此処にお知らせしておきます。


超パンキッシュな魔女。予告中の六つ乳はおそらくエド・ゲインの影響。


 この後オゼキ氏は映画界から姿を消し(あともう一作「殺しのイリュージョン」という作品があるのですがYoutubeにまともな映像が見つかりませんで割愛)、TV界でいくつかのドキュメンタリーを制作しながら、1996年「Halving the Bones」というドキュメンタリー作品によってインディー映画の祭典であるサンダンス映画祭で高い評価を受けるのですが、それはまた別
の話です。私たちはZ級映画の話をしましょう。

 上述した5作品全てに関わっている方が御二方いらっしゃってそれが監督・製作者のティム・キンケイド、製作担当のシンシア・デ・パウラです。まずティム・キンケイド、彼は「アンドロイド・バスターズ/残虐メカ帝国の逆襲」「ミュータント・ハント」「ブリーダーズ」の監督、「エネミー・テリトリー」「妖獣世紀ネクロポリス」の製作を務めているのですが、元々はティム・キンケイドasジョー・ゲイジ監督は、70〜80年代に活躍したゲイ・ポルノ界の革命児であり、80年代後半は妻の勧めでSF映画をつくるようになったそうです。その妻がシンシア・デ・パウラでした。

 で、実はもう一方5作品すべてに関わってらっしゃる大物がいるのですが、その人物こそチャールズ・バンド。80年代にZ級映画を凄まじい勢いで量産して今現在もボコスカ作りまくるZ級映画界の重鎮、そして彗星の如く輝きを放ちそして早めに倒産したエンパイア・ピクチャーズの総帥でもありました。この頃はエンパイア・ピクチャーズ、配給権を買いました「死霊のしたたり」が爆当たりして、スチュアート・ゴードンを招聘して「フロム・ビヨンド」「ドールズ」撮って結構イケイケだった時期なのでして、そのノリでどんどん映画を作っていった時期でした。そんな時期のエンパイアに、おそらくオゼキ氏は何らかの形で関わってあの低予算ホラー映画群を作っていったと見られます。


ルース・オゼキとチャールズ・バンドの名前は必ず覚えて帰って下さい。

 ルース・オゼキ氏とエンパイア・ピクチャーズの関係、外国文学好き且つZ級映画好きの方はこの関係性に、何か夢を感じないでしょうか。この繋がる筈のなかった二つがこうやって点と線で繋がる瞬間は何にも替え難い快感がありますね。ですがこの後エンパイア・ピクチャーズはパシフィック・リムの先駆けでもある巨大ロボ決戦映画「ロボ・ジョックス」の製作や何やかんやで色々なゴタゴタがあり資金難、そして倒産の憂き目に遭ってしまい、それと期を同じくしてオゼキ氏は映画界から姿を消してしまったのですが。

 最大の謎は、何故オゼキ氏がエンパイア・ピクチャーズで仕事をしていたのか、どうして働くことになったのか?でしょう。でもそういうのは解りません、こっちが聞きたいです。今度東京国際文芸フェスティバルにオゼキ氏が来日するらしいので誰か聞いて下さい。お願いします。


ルース・オゼキ氏近影。来日した彼女に著書ではなく「アンドロイド・バスターズ/残虐メカ帝国の逆襲」や「妖獣伝説ネクロポリス」のVHSを持っていきましたら、サインくれるのでしょうか(持ってないですけど)