鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

性の解放とは何だったのか「ザ・ギャル狩り〜ターゲットは7月の女〜」


「えー、前Z級映画を特集したのはいつだったろう……」
「何かスイスのZ級映画を語ると言って、もう……2年ですか」
「ああ『ナチ女親衛隊 全裸大作戦』か、あれか、ああ、まあ……長かった……」
「長かったですね……」
「長かった、ああ、長かったが、しかし、Z級映画レビュー復活をここに宣言する! ということで前置きは全て抜きだ、早速行ってみよう! 復活第1回目で取り上げる映画はこれだ!」

「ザ・ギャル狩り〜ターゲットは7月の女〜」!!!!


あらすじ
潔癖症のサイコ殺人鬼が、雑誌の袋とじカレンダーで裸体を晒す“淫らな”モデルたちをその手にかけていく。

「と、いうことでどうだったろう」
「これ1974年製作でしたっけ、だからこう、70年代ヒッピー文化が濃厚な、そんな俗悪映画という感じですか。何か、最初の話に出てきたヒッピー集団ってモロにマンソン・ファミリーだったじゃないですか、ああだからそんな時代の真っ只中に作られたZ級映画だったんだな、と。何か時期的に『インヒアレント・ヴァイス』とか、いやインヒアレントZ級じゃないですよ、ないんですけど、何か思い出しましたね」
「ああ、確かに。私は冒頭で『ロング・グッドバイ』を思い出した」
「へえ、それは何故でしょう」
「冒頭、殺人鬼が死骸を引きずりながら、海岸を彷徨うだろう。70年代、アメリカ、夜の海岸、そして死! それが記憶を繋げてくれたんだ……」
「要素挙げたらそれっぽいですが、どこも似てる所ありませんけどね。大体あのシーン、本当に殺人鬼が死体引っ張ってるだけで、OPでこれってこの先どうなるんだ、というかOPなげえ……としか思えませんでしたよ」
「それがZ級映画の醍醐味! それに私はあのシーンが大好きだ。死体を引っ張る男の姿、死体を引っ張る男の姿、死体を引っ張る男の姿、死体を引っ張る男の姿……あの荒涼感はなかなか出せない、というかこの監督は海岸を侘しく映し出すのがものすごく上手い、殺人鬼の心証風景とリンクした描き方がものすごく上手いんだ、私は冒頭で心を掴まれたよ」
「殺人鬼、クレメント・ダンでしたっけ。カレンダーで裸を披露するモデルたちに対して“君の淫らで汚らわしい肉体は男を惑わせるんだ……僕はそんな君を助けたい、助けたいんだ”」
「そう言ってモデルたちをカミソリで殺害」
「何と言うか、“夜に襲われるのは、男を挑発するような格好で歩いている女の方が悪い、自衛しろ、自衛を”とか何とか言う人いますけど、そういう悪意が受肉したかのようなキャラでしたね」
「見た目、どことなく『サン・ローラン』のギャスパー・ウリエルに似てなかったか?」
「はあ? どこが?」


この画像は……あんまり似てない。


「で3月、5月、7月と奇数月のカレンダーに載ったモデルが……というか原題の“The Centerfold Girls”というのはそのモデルたちを表す言葉なんですね……あー、えーっと、そのモデルたちが殺される、それをオムニバス形式でテイストを変えながら、展開していくのは結構印象的でした。全部そんな面白くないですけど」
「どれが一番面白かったろうか?」
「はっ? 全部そんなに、って言った自分にそれ聞くんですか?…………、んまあ、強いて言うなら5月のジャッキーパートですかね。何か妙に人間関係がネチネチしている撮影クルーが孤島に赴いて、ネチネチなメロドラマを繰り広げながら、一人一人ブチ殺されていくっていうのは、まあホラーとかサスペンスで良く見るかもですが、結構、まあ」
「あのパート観た時、おいおいこの妙に人間関係がアレな感じは『愛欲の魔神島・謎の全裸美女惨死体』そっくりじゃあないか!と思ったよ、私は」
「……いや、そのタイトルに突っ込む気はないですが、こう、主人公のジャッキーが友人誤射って絶叫アンギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜からの頸動脈切断、そしてカットが変わって、別荘を映すカメラが右にゆっくりパンして、芝生の上に布をかけられた5つの死体が現れる、この一連のシークエンスは私もおおっ、とか思ったり」


5月の部は、洋館舞台のスラッシャー映画。


「私は3月のリンダパートが好きだな。あのリンダと恋人を待ちぼうけする少女の会話シーンはお気に入りだ。“今何時ですか”“2時半ですけど………どうしたの?”“恋人が来ないんです、もう2時間くらい待ってて”“車が故障したのかも”etcetcetcetc……そんな会話をグダグダグダグダ続けるあの感じ! ランタイム水増し感が何て露骨なあの感じ! 素晴らしい! 素晴らしい!」
「何かその合間に、空き地で車同士がガコーンゴコーンとぶつかり合う謎のシーン挿入されるじゃないですか、あの、アレ……ジョン・マッケンジーの『長く熱い週末』のラスト辺り、スタジアムで車がぶつかり合う謎の競技あったじゃないですか、アレみたいなんですよ、アレ一体何なんですか?」
「分からん」
「はあ」
「分からん」
「…………」
「で、あの後少女がマンソン・ファミリーの一員であるのがハッキリして、ドンチャン騒ぎが始まる」
「殺人鬼どこ行ったんだよって感じでした」
「でな、主人公が逃走するだろう、あの時のな、何かな、あれだよ、その音楽が、こう……ギョワァ〜〜〜〜〜ンワウィィィィィンギュイ〜〜〜〜〜〜〜ンウォ〜〜〜〜〜〜〜ンワウォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンって脱力感満載なのが良い、『陰獣の森の』の、あのお吸い物に入ってるおふ的シンセサイザー音楽も良かったが、この緊張感もクソもないファンク音楽! これを演奏しているのはwheezesというバンドらしいが、詳細は全く分からず! そういう所もまたZ級映画らしい!」


スチールでは窓にドレッシングかかったくらいにしか見えないが、実際の映像観るとかなりCOOLな出来。

「で、7月パートですが」
「ここは映画のテーマを絡めながら語っていこう、この『ザ・ギャル狩り』は70年代ヒッピー文化を背景に作られたというのはさっき言ってくれた通りだが、この映画を観て思うのは……性の解放とは一体何だったのかということだ。まず、スッチーのヴェラが……」
キャビン・アテンダント
「……スッチーのヴェラがあるパーティに参加するが、まあそこはジャグジーで男女が普通にセックスしているようなパーティで、こういうのが性の解放、男性も女性も気軽にセックスしまくろう楽しもう、カレンダーに裸写真を載せよう! エロを解放しよう!とそういう」
「で、こういうことのバックラッシュ、って言うんですか、逆張りとして潔癖症でサイコな殺人鬼が現れて“いやらしい女たちを救うんだ!”とか言って殺しまくる」
「女性が抑圧から解放されるという状況が生まれると、それに連動して男性側から暴力的な反発が生じるのは悲しいことだが、往々にしてあり得る」
「ああ、ドゥニ・ヴィルヌーヴが“Polytechnique”で描いたモントリオール理工科大学虐殺事件とかは、女性が大学に行く必要はない!女性に教育は必要ない! と銃を持った男が女子大学生14人を殺害、とそういう風に」

「そう。しかしここで言いたいのは、教育は抑圧からの解放に繋がると断言できるが、そもそも性の解放とはイコール女性の抑圧からの解放となり得たのか? ということだ。ヴェラは殺人鬼から逃げるため車を走らせるが、敢えなく故障し、2人の水兵に助けられる。しかしヴェラは飲み物に薬を仕込まれ彼らにレイプされてしまう、まるで俺たちについてきたお前が悪いとでもいう風にだ。ここで考えたいのはつまり、性の解放というのは、自身の性欲を好きなだけ発散したい男性社会が、ヒッピー文化に乗じて仕立てあげた虚構なのではないかということだ」

「ああ……何だか日本でもそういうのありましたよね。こう、学生運動の最中、ほぼ『ザ・ギャル狩り』の時代と被りますよね、その頃、男が性の解放が最先端のトレンドだとか女を言いくるめて、セックスを謳歌しといて、裏では○○スケだとか、つまり○○のオンナって感じで性処理機、モノ扱いしてたってそういう」

「この『ザ・ギャル狩り』はだ、そういう性の解放という建前の裏側で男性社会に知らず知らず搾取され、そして時には命すら奪われる女性たちの姿を描き、時代の暗部を切り取った作品とも言える。つまりはグロリア・グイダとリリ・カラーチがダブル主演した『大人になる前に…』やダイアン・キートン主演の『ミスター・グッドバーを探して』と通ずるテーマを持っているとも言える。しかし、そういうテーマをエクスプロイテーション映画の方法論で描いてしまい、女性搾取を描く映画自体が女性の裸をバンバン出して女性を搾取している映画になってしまってた、それが『ザ・ギャル狩り』がZ級映画になってしまっている由縁の1つでもある」

「じゃあ駄目じゃないですか……」

「正直、Z級映画はPCという概念と対極の存在であるからして、そこは仕様がない。だが現在のPC的観点を持ちながら、当時のZ級映画を観ていく、それには意味があると私は思う。でだ、このラスト、ヴェラはその手で殺人鬼を殺す。性の解放という虚構が生んだ怪物、今まで殺されていった女性たちの代わりに、彼女がその息の根を止める。しかし全てが終わった後、ヴェラは呆然として泣き叫ぶ。今のは男性社会の尻拭いを押し付けられたに他ならない、そうして何か変わったか、何も変わっていない、彼を殺してもこの社会は何も変わっていないし、変わることなでと分かってしまったからだ。そんな彼女を取り残し、カメラは後ろへと引いていき、クレジットが流れ、物語は幕を閉じる……」



「ということで、『ザ・ギャル狩り』いかがだったろうか。次回に何を取り上げるかは全く未定、いつやるかも全くの未定だ。だが多分すぐ私たちは帰ってくるだろう、Z級映画にかけて誓って帰ってくる! それではサヨナラ、サヨナラ、サヨナラ……」



1950〜60年代に活躍したセクシー&アメリカン・タフガイなアルド・レイも出演。この後「殺戮伝説・少女蘇生」というド級Z級映画に出演。