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映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

ジェームズ・ポンソルト&「スマッシュド〜ケイトのアルコールライフ〜」/酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい…

ああ、酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい……酒、酒が、飲みたい酒、酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい………酒が飲みたい、酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい、酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたいもう絶対酒が飲みたい、酒が飲みたい飲みたい飲みたい、酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい、でも飲んだらヤバい……という、ある種切実な人々ばかりを描く監督がアメリカにいる。それが今回するジェームズ・ポンソルト監督な訳である。

ジェームズ・ポンソルト監督は1978年ジョージア州アセンズに生まれた。父ジェームズはジョージア大学の元法律学教授、母のスーザンはUnitarian Universalist Fellowship of Athensでケアサービスに携わっているという。幼少時代は映画よりも音楽に囲まれて育ったらしく、それが監督作での選曲センスに繋がったのだという。シダー・ショールズ高校を卒業後、イェール大学で学士号を取得、そしてコロンビア大学ではディレクティングを学び美術学修士号(MFA)を得ることとなる。映画界に入ったのは2002年のこと、「フェリシティの青春」エイリアスで製作を手掛けていたローレンス・トリリングが監督を務めたTVM"Porn'n Chicken"、ポンソルトは製作を担当すると共に俳優としてカウボーイ役も演じたらしい。2003年には短編"Coming Down the Mountain""Rush Tickets"で監督デビュー、2004年には短編3作目"Junebug and Hurricane"を経て、2006年初監督作"Off the Black"を手掛ける。

レイ(「48時間」ニック・ノルティ)の人生は惨めなものだった。廃車場でぼんやりと働き、家に帰れば酒浸り、時々草野球へ審判としてボランティアにいけばその判定を野次られる日々だ。この日も草野球から帰り、レイはビールをかっくらっていた。そんな時外で物音がする、銃を携え外に出ると、マスクを被った少年が家にトイレットペーパーをブン投げていた。その少年デイヴ(トレヴァー・モーガン)は自分のせいで敗北投手になったピッチャーだった。

と、ここまで書けば分かるかもしれないが、この作品はオーソドックスな疑似父子映画で、そういうジャンルが好きな方にはお奨めな作品ではある。まあつまり、私はそんなに好きじゃない。

その後2008年には、1930,40年代にWeeki Wacheeというテーマパークで“人魚”として活躍した女性たちを描いた短編ドキュメンタリー"We Saw Such Things"を共同監督(もう一人の監督はマンブルコアで活躍したエイミー・サイメッツ)するも、4年間もの空白期間がある。その間なにをしていたかと言えば、イラストレータDanica Novgorodoff & 作家Benjamin Percyと共に"Refresh, Refresh"という漫画を執筆、イラクへと派兵された父親を待つ3人の少年を描いたカミング・オブ・エイジものだという。更に2010年には結婚するなど結構充実していた。2012年、デビュー長編から6年の歳月を経てポンソルト監督は2作目の長編「スマッシュド〜ケイトのアルコールライフ〜」を監督する。そして前作では少ししか描かれなかったアルコール中毒が前景化することとなる。

ケイト(このサイト的には記事も書いた"Faults"出演のメアリー・エリザベス・ウィンステッド)は夫チャーリー(ニード・フォー・スピード」アーロン・ポール)と共に幸せな結婚生活を送っていた、のだがが、一つだけ問題もあった、つまりお酒の問題だ。この日もシーツと夫の顔を軽くおねしょで濡らして起床、しかし悪びれることなくシャワーを浴びながらビールを飲み、仕事場である小学校の駐車場で気つけにウィスキーをひと啜りふた啜り。ハイテンションで子供たちに英単語を教えていたのだが、調子に乗りすぎて盛大にゲボをブチ撒ける羽目に。うろたえるケイトに生徒が一言「先生、妊娠したの?」「……あー、そう、妊娠したの」こんな嘘バレたらヤバい、マジにヤバいと思いながらも夜にはチャーリーとビールで泥酔、更には成り行きでヤクを吸い、ヤクを吸わせてもらった相手に「うちクソ貧乏だったから、ママがマックの特売日にチーズバーガー上限20個買ってきて、そのせいで高校時代の私クソデブだった!」とシャウト、その後は何故か路上に倒れている自分に気付く。ヤバいヤバいこれはヤバいとは思いながら、翌日にはそんなこと忘れて酒を飲む日々、酒を飲む、酒を飲む酒を飲む酒を飲む酒を飲む飲む飲む飲む酒を飲む酒酒酒酒、そして……

「ハイ、私はケイトです…ってこういう自己紹介初めてで何か……
「私は、アルコール中毒です……
「いや、でも、中毒とかじゃなくただ多く飲むとかそういう……
言葉を重ねていくごとにケイトの目には涙が溜まっていく。
「でも、もう、何か……
「酔っ払って毎日色々、やらかすんですけど……
「もう恥ずかしいっていうか、私、もう怖いんです……」

アルコール中毒患者の自助会AA(Alcoholic Anonymous)でのスピーチの後、ケイトは断酒に臨むこととなる。最初の3ヶ月は地獄だと、自分を自助会に導いてくれたデイヴ("Perks and Recreation"ニック・オファーマン)が言う。だが意外とケイトは簡単に酒を飲まずにいられるし、その姿を見る観客も意外と禁酒って楽なの?と思い始めるかもしれない。だが禁酒で辛いのは酒が飲めないことではなく、酒に溺れていた時の偽りと不誠実を直視させられることなのだとポンソルト監督は笑いと悲しみが奇妙に交じり合うトーンでもって描いていく。


生徒の前でゲボをブチ撒く小学校教師の図。

“自滅的なアルコール中毒患者を描く素晴らしい映画は多くあります。ですがそういう映画を観るときはいつも、出来もいいし演技もいいんですけど、はぁー……そうなのと思う自分に気づくんです「見ろよこの何か(チャールズ・)ブコウスキーみたいな、自分の人生、自分でブッ壊そうとしてるキャラ!」……演技は良いんですよ、ですが共感はしない。(中略)私たちは笑えて共感できる物語を作りたかったんです。描かれるのはアルコールについてです。ヘロインとか麻薬ではありません(中略)笑えるのに哀しくて、観る人が物語に自分を見つけられるようなそんな映画を作ろうと思ったんです。”

夫チャーリーとの幸せな結婚生活、それって本当の幸せだった?一緒に酒を飲みまくり好きなバンドの演奏を聞きながら騒いだ日々、シラフになってそんな日々とこの現実の本質が見えてくる。音楽ライターとは名ばかりで弟や友人とただフラッフラしてるチャーリー、断酒に協力するとか言いながらその実ヘラっヘラ自分は酒ばっか飲んでるチャーリー、夫との絆は泥酔が見せた幻だったんだろうか……だけど自分はどうだ、あの時ついた妊娠という姑息な嘘が巡りめぐってデカい事件になり、あの時の自分を恥じて全てをやり直そうとすればするほど痛烈なしっぺ返しを喰らう羽目になる。こんなの酒飲まなくちゃやってらんないわ……と無間地獄がケイトの前に広がる。そんな中で誠実さを貫きとおせるのか、それが作品のテーマでもある。その誠実さの代償はかなり苦いものだが、監督はそれを偽ることなく真摯に描き出すからこそ「スマッシュド〜ケイトのアルコールライフ〜」は切実で素晴らしいのだ。


泥酔の果て、カメラのピントすら合わなくなる変顔ケイト

ということで、次はジェームズ・ポンソルトが一躍スターダムを駆け上がるキッカケになった"The Spectacular Now"を紹介するべきなのだが、もう既にかなり記事が長くなってしまったので、その2に続くということで……(いつ書くかは分かりません)

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その2 Scott Cohen& "Red Knot"/ 彼の眼が写/映す愛の風景
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その5 Gillian Robespierre &"Obvious Child"/中絶について肩の力を抜いて考えてみる