2012年はアメリカン・コメディにとって1つの転機と言える年だったかもしれない。前年、クリステン・ウィグやメリッサ・マッカーシーがそのコメディセンスを存分に発揮した「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」のを皮切りに、今年やっと日本でも公開されたアナ・ケンドリック主演のアカペラ・コメディ「ピッチ・パーフェクト」そしてクズ女子3人1夜の大暴走を描いた「バチェロレッテ―あの子が結婚するなんて!―」という作品が立て続けに公開された訳だが、この3作に共通するテーマは“何だかんだ色々あるけど、やっぱ女子の友情って最高!”だった。今までは男子の友情は最高!!!でも女子に友情なんて存在しないだろ、するとしても裏じゃネチネチネチネチ互いの悪口言い合ってんだろ*1とか馬鹿にされ続けてきたけども、女子の友情だって男子の友情と同じくらい複雑で、同じくらい素晴らしいんだ!という高らかな叫びが響き渡る、アメコメ界の2012年はそんな年だった。そんな2012年にもう一作品、女子の友情を描き出す日本においては知られざる快作コメディがあって、それが今回紹介する配信スルー作品「ダイヤルはン〜フ〜/フォー・ア・グッド・タイム・コール」だ。
主人公のローレン(「スーパーバッド 童貞ウォーズ」ローレン・ミラー)はある日恋人のチャーリーからこんなことを言われてしまう。「君とのセックスはただペニスと避妊具が摩擦してるだけなんだよ!」チャーリーは彼女への愚痴を連ねた末に、君って人間は退屈なんだ!という言葉を残してイタリアへと出張に行ってしまい、ローレンは住む家を失ってしまう。同じ頃、ケイティ(「ピンチ・シッター」アリ・グレイナー)も家賃の値上げで部屋を追い出される危機に直面していた。そんな2人を引き合わせたのは共通の友人ジェシー(「カジノをぶっつぶせ! -僕と彼女のド田舎生活- 」ジャスティン・ロング)だった。しかし2人は大学時代ケイティがローレンの顔面にオシッコをブチ撒けるオシッコ事件がきっかけでずっと犬猿の仲、性格だって堅物ローレンと奔放ケイティで全くの正反対、それでも背に腹は変えられないと共同生活を始める2人だが、喧嘩の絶えない日々が続く。
そんなある日、ローレンはケイティが夜のバイトでテレフォン・セックスをやっていることを知る。そこにビジネス・チャンスを見出だし彼女は2人だけの固定回線“ダイヤルはン〜フ〜”を設置、ローレンは経理を、ケイティはイエーーースイエーーーーーースアンアンア〜〜〜〜〜〜〜〜ンを担当、あれよあれよと事業は軌道に乗って、2人の元には大金が舞い込んでくるようになるのだが……
性格も何もかも正反対な2人がある出来事をきっかけに友情を深めていく、「ダイヤルはン〜フ〜」においてはその“ある出来事”というのがテレフォン・セックスなのが面白い。アナルに金玉、ナメナメヌメヌメ、題材が題材なのでどうかしてるほど下ネタが連発されて脳神経が麻痺するほどだ。だけどもそんな下ネタが頑なだったローレンとケイティの心をほどいていく。自分が電話に出るのをアレほど嫌がっていたローレンがある事件をきっかけに、自分もテレフォン・セックスやる!退屈な自分とはオサラバ!と言い出し、ケイティもそうこなくっちゃ!とロッキーばりの喘ぎ声&淫語発音トレーニングが始まったりする。そしてローレンが3Pでテレフォンデビューを果たす時、ものすごくキュートな展開が訪れるのだ。そんなステキな瞬間からこの作品はお下品なエロコメからスウィートなロマンティック・コメディへと姿を変えていく。ここから先は観てのお楽しみだが、女子の友情とロマコメ好きにはたまらない展開が待っている。
「ダイヤルはン〜フ〜/フォー・ア・グッド・タイム・コール」もまた女子の友情の色々を良いトコ悪いトコ引っくるめて描き出すアメコメの快作だ。前に挙げた「ブライズメイズ」「ピッチ・パーフェクト」「バチェロレッテ」と合わせて、大切な友人と一緒に、好きなモン食べて好きなモン飲んで夜通し騒ぎながら観るには正にうってつけの作品なのだ。[B+]