鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

I LOVE 女子×女子バディ・コメディ「キューティ・コップ」

バディ・アクションものと言えば男&男が普通で、ときどき男&女があり、しかし女&女という組み合わせはあまり見当たらない。アクションといえば男性が中心で、女性は彼らの添え物か恋愛を絡めりゃ客来んだろ!って意図で出てくるだけの存在でしかなかった訳だ。

しかしそんな状況に風穴を開けたのが「リゾーリ&アイルズ」「デンジャラス・バディ」だった。前者は男勝りな刑事リゾーリと変わり者解剖医アイルズが事件を追うという連続ドラマで現在シーズン6まで放送中でシーズン7放送も既に決定済みと大人気(とか書きながら、この沼にハマったら私はどうなってしまうのか……という理由で実は観てない)、後者はオスカー俳優ながらデンジャラス・ビューティーなどでコメディセンスをも爆発させるサンドラ・ブロックブライズメイズ〜史上最悪の結婚式」"Spy"で現在アメコメ界の最先端をひた走るメリッサ・マッカーシーのバディ・コメディで、いやもう、これが最高に素晴らしい出来だったし、更にアクション・コメディ部門で2013年全米興収NO.1の座に輝いた。この2作が、女&女なバディものを求めている人々はいっぱい居るんだよ!ということを証明した訳だが、そんな流れで今年作られた女子女子バディ・コメディがアン・フレッチャ監督作「キューティ・コップ」だった、出来はどうだったかって?そりゃ最高に決まってる!

物語はパトカーの後部座席に座る赤ちゃんの笑顔から始まる。おもちゃの銃で遊び、友人と一緒に笑いあったり、プロムの相手である少年と後部座席に並ぶ少女、そして運転席にはいつも警察官の父がいた……十数年の時が経ち、かつての少女クーパー(「連鎖犯罪/逃げられない女」リース・ウィザースプーン)も彼と同じ道を歩み警察官となったのだが、頭が固くて融通のきかない性格なもので、とんでもない失敗をやらかし、証拠保管係でくすぶる日々を送っていた。ある日上司のエメット(「プリティ・ワン たったひとつの恋とウソ。」ジョン・キャロル・リンチ)から、麻薬王コルテス(「キャシーのbig C」マイケル・レイ・エスカミーリャ)を逮捕するための重要参考人であるリバとその妻ダニエラ(「ワタシにキメテ」ソフィア・ベルガラ)を護衛せよとの命令が下る。張り切って彼らの住む邸宅へと赴くクーパーだったが、準備にもたつくダニエラにイライラしていると、早速銃撃戦が発生、クーパーの同僚とリバが射殺されてしまい大ピンチ!命からがら家から脱出したクーパーとダニエラは決死の逃避行を繰り広げるハメになる。

クーパーの子供時代を描き出すOPからアン・フレッチャー監督の演出は絶好調、「私はあなたのムコになる」(そういえばこの作品の主演はサンドラ・ブロック!)や「人生はノー・リターン 〜僕とオカン、涙の3000マイル〜」などアメコメに定評のある彼女だが、おカタいクーパーのキャラを魅力的に綴りながら観客の興味を引っ張り、テンポよく銃撃戦&逃走をさばき、バディ・コメディへと雪崩れ込んでいく。

クーパーのバディとなるのがダニエラだ。真面目一筋でチビ可愛いクーパーとはもう全く正反対、ラテンの訛りとメイクの濃さが強烈で、グラマラスでダイナマイトなボディの持ち主、そんな2人が上手く行くかって言ったら上手く行く訳ないじゃない!クーパーは早口でまくしたてたかと思うと、ダニエラはウーーーーララーーーー!!!と絶叫、iPhoneは車に轢かれてブチ砕けるわ、コカインという名の白い粉が爆発四散するは行く先々で騒動は巻き起こり、証拠保管室で女だからって自分をバカにしてきた2人組の刑事が裏切り者になって追ってきたり、コルテスの刺客っぽい奴も追ってくるし、もう!マジで!なんか大変だ!!!

全編メタクソくだらないネタやらアレな下ネタ(生理ネタがひどくて最高)が散りばめられているが、特に様々なアクションで笑わせてくれるのが良い。元々ダンサーで初監督作がチャンタム主演の「ステップ・アップ」フレッチャー監督、「私はあなたのムコになる」でのライアン"デッドプール"レイノルズの風呂上がりギリギリ男根死守アクションも素晴らしかったが、今回はコミカル・カーアクションに加え、ウィザースプーンの低身長を活かした便所脱出アクション、さらにクーパーVSダニエラのホテルで拳銃争奪戦なんかフレッチャー監督の才覚が存分に発揮されたシークエンスだ。

でもバディ・コメディで何が一番重要かって言ったら2人の関係性の変化だ。性格だとか身長だとか色々違うクーパーとダニエラの凸凹コンビ、最初は面白いほどウマが合わずに喧嘩ばっかで微笑ましく、それでも助け合おうってことで、私たちカップルなんです!とイチャイチャイチャオチャイチャイチャして危機を切り抜けたり、ダニエラの膝にちょこんとクーパーが座って大型バス運転したりして、だんだん仲良くなり互いの抱えている物を打ち明けあったりする、そんな関係性の変化はもうバディものの定石通りだが、だから良いんだよ、というか女子女子バディは数が少ないんだからそういうの観れるだけですっごい嬉しいんだよ!

そして2人を演じるリース・ウィザースプーンソフィア・ベルガラ、2人のコンビネーションはバッチリで、ベルガラの肝っ玉ラテン女子っぷりも素晴らしいながら今回のMVPはやっぱりウィザースプーンだ。この前ジャン=マルク・ヴァレ監督作「わたしに会うまでの1600キロ」を観た時は過去と現在を行き交いながら、救済への道を一人歩み続けるシェリル・ストレイドという女性の姿を完璧に体現したウィザースプーンに本気で泣かされたのだが、もう「キューティ・コップ」はもう全然別人、以前から「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」やらキューティ・ブロンドやらでキレッキレのコメディセンスを披露してきたが、早口カタブツ警察官役も似合う似合う、今回はコカインでラリって白パンツ丸出しにしたかと思うと、Youtubeのコメント欄でコイツをブチ殺したいと書かれるランキング堂々No1な某有名アメリカ人歌手っぽい男装もしたりとウィザースプーンファンは観て損無し!

あなたが女子女子バディものを期待して「キューティ・コップ」を観たなら、きっと期待以上の面白さを噛み締めることが出来る。エンドロールにはもちろんNG集も付いてくるので後味も爽やかで最高、ということで、もっと増えろ女子女子バディ・コメディ![A-]