鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

John Magary & "The Mend"/遅れてきたジョシュ・ルーカスの復活宣言

2015年残り20日を切った時にこんな話もなんだが、2014年のアメリカ映画界流行語大賞を挙げるなら"俳優+renaissance"以外にはないだろう。キャリアが低迷していた俳優がある作品をきっかけにキャリアが復調する様を表していて、例えばマシュー・マコノヒーがキャリア低迷&ボンゴ事件を経てリンカーン弁護士」「MUD マッド」「キラー・ジョーから「ダラス・バイヤーズ・クラブ」でオスカーを受賞したのをMcConaissanceジェイク・ジレンホープリズナーズ」「複製された男」ヴィルヌーヴ2連発にダメ押しナイトクローラーGyllenaissance、そしてマイケル・キートンバードマン」keatonaissanceなどなど。なのに2015年に入った途端、評論家陣が一斉に飽きてこの言葉は使われなくなってしまった。

だが今、敢えてこの言葉を使って称えたい俳優がいる。その俳優の名はジョシュ・ルーカスアメリカン・サイコメラニーは行く!」「J・エドガーそして私のオールタイムワースト「ステルス」にも出演しているが、何かイマイチパッとしないキャリアを歩んでいたが、来たよ、来たよコレは……L・U・K・A・N・A・I・S・S・A・N・C・E、ルーカネッサンス!!!ということで今回は"The Mend"とその監督John Magaryについて紹介していこう。

John Magaryは1978年シカゴに生まれた。父と兄の影響で小さな頃から映画に親しんでいたが、最初に目指していたのは俳優だったのだという。だが大学卒業後、監督になって長編映画を手掛けたいとの夢が芽生える。ブエノスアイレスで英語教師として働いて金を稼いだのち、コロンビア映画学校に入学し、監督を目指すこととなる。

監督デビュー作は2004年の"Site in Fishkill Creek"、翌年には"Our National Parks"を手掛けエディンバラ国際映画祭で上映される。だが転機になったのはハリケーンカトリーナアメリカに上陸した時のことだった。彼は兄や恋人のMyna Josephと共にニューオリーンズへボランティアへと赴く。その経験がニューオリーンズを舞台とした第3短編"The Second Line"へと繋がることとなる。2人のアフリカ系アメリカ人の青年が辿る暴力への道筋を描いた作品はエディンバラリオ・デ・ジャネイロ、タリン、そしてサンダンスやトライベッカ映画祭などで上映され、コロンビア大学映画祭、メンフィス国際映画祭、ダラス国際映画祭で作品賞を獲得するなど話題になる。

そしてサンダンス監督ラボに参加し、7人の子供を持つ母である主人公の45年間を描く"Blood Abundance"に取り組むのだが脚本執筆がかなり難航、編集技師としては"Monkeywrench"(2010)や"Rolling on the Floor Laughing"(2011)などに関わるが長い間監督作が作られることはなかった。

"The Mend"の着想が湧いたのは"Blood Abundance"の執筆が煮詰まっていた頃だ。余りにも構想が大きくなりすぎていたので、今の自分の手に負える作品を手掛けようと、前々から作りたかった"兄弟もの"と"舞台がニューヨーク"という要素を合わせた脚本をJosephや当時のルームメイトRussell Harbaughと協力して執筆、とんとん拍子で計画が展開していき、2014年初長編である"The Mend"を完成させる。

カートゥーンに良くある奴、あれだよ、あれ、何か真ん中にだけ丸い穴が空いてて、周りは真っ黒になってる感じのアレ、名前なんだっけ、アイリス・ショット? そんな奴、この映画の始まりは完全にそれだよ、そして黒みがパっと晴れて、出てくるのは我らのジョシュ・ルーカス、いやここではマットって役名、髭ボウボウで宿無し野郎って感じのマットがガキと遊んでる、で、そこにガキの母親アンドレア(Lucy Owen)が帰ってくる、そしたらヤるんだよ、これが。寝室入ってイチャイチャしてヤる、かと思ったらジャンプカット?って言うの、アンドレア滅茶苦茶ブチ切れてて「ドたまブチ抜いて脳髄ブチ撒けろやコラ!」って叫んで、マットが逃げる、何だ、一体何だよこれは。

いやホント何だよって思うじゃん、そしたらOP始まってハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!の大合唱、ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!スイスのパンクバンドLiLiPUT"Split"って曲?ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!……

「アンタ、顔に精子ブッカケんなっつったじゃん!」「そうしたくてそうした訳じゃないんだよ!」なんて口論を繰り広げているのはアランとファラの倦怠期カップル、精液を顔にブッカケるっていうのは日本が産んだ最低最悪の文化の1つだねホント、ファラはアレだ、米インディー映画ファンには「フランシス・ハ」グレタ・ガーウィグの親友役だった彼女って言えば分かるミッキー・サムナースティングの娘だっけ、まあいいや、アランって中年は初めて見た顔だよ、Stephen Plunkettだってさ、知ってるかよ?

2人はパーティーに戻るんだけど、何だパーティーの間にセックスしてブッカケたのか、早打ちだなって、まあ何事も無かったフリしてパーティー来てる友人と色々喋るんだけど、妙にカメラがズームアップ&ダウンを繰り返す、デュプラス兄弟とかホン・サンスとかとはまた違う謎ズーム、カメラの動き方が何か楽しいんだよ、そんでヘリコプターの音が響く、ブブッブビブブブブブ、それに来賓大興奮だ、窓に集まって夜空を眺める、何やってんだよバカどもがって感じでアランが部屋見てたらいるんだよそこに、誰がって、ジョシュ・ルーカスがさ!

アランとマットは兄弟だったんだ、どっちが兄かは分からん、英語ってそこんとこハッキリさせないよな、で3か月ぶりの再会、ちょいちょい険悪ムード、これならアレだろ、デコボコ兄弟が色々やって元サヤとかだろって思うけど、パーティーが無駄に続くんだ、皆が意味わかんないことベラベラ喋って、マリファナ吸って、セックスして、ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!してから、兄弟の叔父さんと韓国人の映画監督が来て、兄弟の親父が「このワキガが俺なんだ!俺を嗅いでくれ!」って叫んだワキガ記念日エピソード語って、クラシックが流れ始める。監督、何したいのか分かんないんだよな、でも良いんだよコレが。あと個人的には「ハンパな私じゃダメかしら?」の主人公と税務署プレイやってた元カノ出てたよ、顔から出る殺気が凄いから一発で分かった、あんま出演時間長くないけど、キャストしたってだけでナイスだよな。

パーティー終わったら、アランがファラとカナダに旅出掛けたからマット勝手にそこ自分の部屋にして、喧嘩してたっぽいアンドレアと息子ロニーがベッドにシラミヤバい!っていうから招き入れてセックスして、そしたらアランが帰ってきて、奇妙な同居生活、ただただテンションが高い、ストーリーが脱線に次ぐ脱線で何処へ向かっているのか全く分からない、酩酊って二字熟語をまんま映画として顕現させちゃったってそういうさ、いきなり爆走し始めたかと思ったら、躓いてゲロブチ撒けながら床這いずり回って、立ち上がってまた爆走したと思ったら、ゲロブチ撒けながら躓いてゲロ引き摺りながら這いずり回るってその繰り返しにプラスハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!ハラキリ!

何かさ、監督はこれが長編デビュー作だけど、小説の世界では良くさ、"デビュー作にはその小説家の全てが詰まっている"とか良く言うじゃん、言うんだよ、個人的にはデビュー作の所を処女作とか言っちゃうキメェ奴らは死ねって思ってんだけど、まあそれはどうでも良くて、何て言うか、とにかくやりたいこと全部詰めるって意気込み感じる訳、この"The Mend"には、しかもそれが独特のヴィジョンとして結実してる、たぶんこの先2作目、3作目作っていって、それを監督名知らずに観たとしても、あっ、これ絶対あの"The Mend"の監督の奴だろ!って一発で分かるってさ、独特の空気感あるよ、ホント。

でさ、でもやっぱ最後の方はこれだなってテーマがある訳だよ、さっきも言ったけど兄弟愛って奴、いや愛じゃないな、もっとトゲトゲした感じの何らかのもの、彼女に見捨てられて自棄っぱちの中年と、破滅願望まみれの自称ウェブデザイナージョシュ・ルーカス、最後辺りの感情のぶつかり合いは凄いよ、剥き出しになった愛憎のスペクタクル、この野郎ボケが、バカが死にやがれ、バンドエイド持ってんなら早く持ってこいやクソダボが、ってさ。これにはカメラの動きもあるよね、手振れっていうのでもないけど、後半になってくると何でそんな動きすんのってそういうことやりまくって、自然と臨場感生まれる、音楽も、監督の挿入歌のセンスも良いんだけど、こんな変な映画にミニマルな、フィリップ・グラス?とかがやりそうな反復&不愉快な感じ、神経がヤスリで研がれて脳髄の中に削りカスが貯まるってさ、そういうのが全部合わさって、ジュシュ・ルーカスのアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああアアアアアアアアアアアアアアになる訳、凄いよ、この映画は。

ということで"The Mend"よかった、兄弟のアレコレを滅茶苦茶遠回りで描き出してる作品、もうキレまくってくるよね、キレてるよこりゃ、これをつまりはパンクって言うってそうって分かったよ、あんまパンクとか聞いたことないけど、つまりはそういうことなんだってことをさ。


参考文献
http://www.filmmakermagazine.com/archives/issues/summer2008/25faces_3.php(監督プロフィール)
http://www.filmcomment.com/blog/interview-john-magary/(監督インタビューその1)
http://filmmakermagazine.com/95331-memories-of-afterdevelopment-john-magary-on-making-the-mend/(監督インタビューその2)

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