鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!![2016 Edition]

まず、まずだ、このブログを何故始めたのかをここに書きたい。始まりは、海外サイト読み漁るうち、何か映画界の最前線で評価されている作品や監督について、海外と日本だと情報量に決定的な差があるなって思った所だった、日本語で読める情報が余りに少ないのだ。マンブルコア受容とか本国でもうマンブルコアって言うの終わり終わり!とか言われていた後だし、"ギリシャの奇妙なる波"も籠の中の乙女がちょっと公開されただけで何の情報もないまま2016年突入って感じだし、周回遅れ感をものすごく抱いていた、マジで。

マジでそういうのとか色々日本語で最新情報教えてくれとずっと思ってたけども、ほぼそんなこともなく、もう既に語られている情報を違う言葉で語り直すってだけのクソどうでもいい文ばっかでウンザリしてる内にね、思ったんですよ、じゃあこれは自分で書くしかないかっていうことを。で、そういう意思を以て書いたのが、カナダの新鋭Chloé Robichaud監督と"Sarah préfère la course"についての記事だったが、書いて感じたのが、こういうこと自分では出来ないと思ったけどいやいや出来るじゃんということ。それでアンドレア・シュタカだとか、マンブルコア以降の作家にはこういう人がいるだとか、今イスラエル映画界がマジで面白いだとか、ヴェネチア国際映画祭を家でも観る方法あるよだとか、色々書いてましたら100人/本以上の日本で全く知られていない監督/作品を紹介してました、何かあっという間。

いや、自分でもこれはなかなかの達成じゃないかと思うんだけども、だけどももっとあるのは私のブログをこう、踏み台にして欲しい、私のブログを読んで日本未公開映画にはこんな映画があるのか!と思ってもらって、どんどん日本未公開映画の大海原に飛び込んで欲しいって思いがものすごくある。昔と違って今は映画館だけでしか映画を観れない時代じゃない、本当に選択肢が増えましたよ。未公開映画を観る方法だって、輸入盤買ったり、MUBIに入会したり、北米版iTunesに入ったり、本当に自由に観れる時代だ。

だけどいやいや海原広すぎて、何を観ればいいのかなんて分からないよって方は多いだろう。と、いうことでその指針として欲しいがために、そしてブログを一区切りつけるという意味もあり"済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!"というのを作ってみた。内容は題名通りである、2010年代に頭角を表し始めた映画作家たちをランキング形式で紹介という訳だ。でも1つだけルールがあり、それはこのランキングで紹介する作家は日本で1本も作品が通常公開されていない作家に限った(映画祭上映・ソフトスルーになった作家は皆殆ど知らないので入れてます)だって通常公開されてるなら他の人がどうせ紹介しているし、わざわざ私が紹介するなんて徒労だし。なのでミア=ハンセン・ラブマイケル・フランコヨルゴス・ランティモスといった作家は私もスゲーなこの才能とは思っているけど、ランキングには入っていないのであしからず。

まあ御託はここまでにして、早速ベスト100行ってみよう!このブログで紹介記事を書いた監督についてはページを張っているので詳しく知りたかったらそれを読んで下さい。全部合わせると20万字くらいは軽く超えていると思うので、正月の読み物にはピッタリだ!ということで未公開映画の大海原へと漕ぎ出せ!!!

100.Rebecca Cremona レベッカ・クレモナ
デビュー作"Simshar"は、アフリカとヨーロッパの間に広がる地中海、そこに位置するマルタ共和国を舞台に、移民たちの直面するシビアな現実とこの世界で生き抜くことの苦しみを容赦なく映し出した作品。
記事→Rebecca Cremona& "Simshar"/マルタ、海は蒼くも容赦なく

99.Jaak Kilmi ヤーク・キルミ
第二次世界大戦後、ソ連に併合され共産主義の波に晒されたエストニア、立ち上がるのはTVの液晶に煌めくエマニエル夫人……という奇妙な冷戦模様を描き出したドキュメンタリー"Disko ja tuumasõda"が評判なエストニア気鋭の作家。
記事→ Jaak Kilmi&"Disko ja tuumasõda"/エストニア、いかにしてエマニエル夫人は全体主義に戦いを挑んだか

98.Victor Viyuoh ヴィクトル・ヴィヨウ
カメルーン出身。デビュー長編“Nina’s Dowry”は実際の事件を元にして、家父長制社会に抵抗を繰り広げる女性の姿を描き出したスリラー作品。1つの映画の中に様々な要素が織り込まれ破綻スレスレを行きながら、弱き者を踏みにじる社会への怒りによって、まるで韓国映画のような生の力強さを得た稀有な一作となっている。
記事→Victor Viyuoh&"Ninah's Dowry"/カメルーン、流れる涙と大いなる怒り

97.Nathan Silver ネイサン・シルヴァー
マンブルコア以降、アメリカのインディー映画界に広がる"水面下の不穏さ"という物を体現するのがこの作家、21世紀の「白い肌の異常な夜」と言うべき"Uncertain Terms"の静かな腐敗と言いましたら。
記事→ネイサン・シルヴァー&"Uncertain Terms"/アメリカに広がる"水面下の不穏"

96.Nana Ekvtimishvili ナナ・エクチミシヴィリ
90年代初頭のジョージア、2人の少女が紡ぐ友情とそれを引き裂く忌まわしき因習を描き出した長編デビュー作「花咲く頃に」はフィルメックスでも最高賞獲得してましたね、公開しましょう、公開を。
記事→ナナ・エクチミシヴィリ&「花咲くころ」/ジョージア、友情を引き裂くもの

95.Pedro Peralta ペドロ・ペラルタ
2016年のベルリンで短編金熊賞を獲得したLeonor Telesや後に紹介するGabriel Abrantesに並んで、短編が高く評価されているポルトガル映画作家の一人。“Ascensão”は一人の青年が死と生のあわいを行き交う様を、まるでカスパー・ダーウィド・フリードリヒの絵画さながらの崇高さによって描き出す様は言葉など寄せ付けない凄味に溢れている。
記事→Pedro Peralta&"Ascensão"/ポルトガル、崇高たるは暁の再誕

94.Valerie Massadian ヴァレリー・マサディアン
主人公は何処にでもいる4歳の少女ナナ、私たちは彼女の姿を見つめるうち、死と生についての答えなき問いへと迷い混んでいく。徹底した固定&長回し撮影が美しく瞑想的な「ナナ」はここ数年のフランス映画界で最も完成度の高いデビュー長編の1つではと。
記事→ヴァレリー・マサディアン&"Nana"/このおうちにはナナとおもちゃとウサギだけ

93.Julia Solomonoff フリア・ソロモノフ
わたしのからだはわたしのもの、あなたのからだはあなたのもの。性分化疾患に悩む青年の心を主人公の無邪気な温もりが解きほぐしていく物語"El último verano de la Boyita"が本当に素晴らしく。アルゼンチン出身で制作者・脚本家としては長く映画に携わりながら、長編はこれが2作目。リサンドロ・アロンソやルクレシア・マルテルなど才能豊かなアルゼンチン映画界でも、今後がとても楽しみな作家の1人。
記事→Julia Solomonoff &"El último verano de la Boyita"/わたしのからだ、あなたのからだ

92.Salomé Lamas サロメ・ラマス
ポルトガル出身のドキュメンタリー作家。長編作品“Eldorado XXⅠ”はペルーの鉱山に広がる寒々しい現実を描いた一作。欠点もかなり多い作品だが前半1時間にも渡る固定長回しによって夢の輝き、その果ての厳しさ、ペルーの現状など様々な要素を提示する類を見ない大胆さを買いたい。
記事→Salomé Lamas&"Eldorado XXI"/ペルー、黄金郷の光と闇

91.Partho Sen-Gupta パルト・シェン=グプタ
インド出身。彼の名を一躍有名にしたのが2014年の第2長編“Sunrise”、インドにおける深刻な児童売春の実態を背景として、忽然と消え去った娘を探して終らない闇を彷徨い続ける刑事の姿を描き出した一作だ。迷宮としての精神世界、闇に琥珀色の光が不気味に混ざりあう中で夜明けは未だ遠い。アンバーノワールとも言うべき独特の世界を作り上げた彼はインド映画界期待の新人作家だ。

90.Amelia Umuhire アメリア・ウムヒレ
ベルリンに生きるアフリカ系ヨーロッパ人の若者が夢と現実の狭間で揺れ動くWebシリーズ"Polyglot"が話題となった、動画サイトを舞台とした新世代の映画作りを担うだろうルワンダ出身の映画作家
記事→Amelia Umuhire & "Polyglot"/ベルリン、それぞれの声が響く場所

89.Adrian Sitaru アドリアン・シタル
ルーマニアの新たなる波”において個人の倫理と社会の倫理の拮抗をテーマにし続ける映画作家。バカンス地における観光客とロマとの微妙な関係性、愛したペットを食べたい衝動を抑えられない家族たち、家族という小さくも大いなる繋がりが宿す混沌、仕事も私生活もダメダメなジャーナリストが抱く倫理への懊悩など描く範囲はかなり広い。筆者がルーマニア語で初めて話した人物でもある。
記事→アドリアン・シタル&「フィクサー」/真実と痛み、倫理の一線

88.Lukas Valenta Rinner ルカス・ファレンタ・リンネル
"オーストリアの新たなる戦慄"と"ギリシャの奇妙なる波"がアルゼンチンの密林地帯で混ざりあったら……という妙にシュールな中産階級×世紀末映画"Parabellum"で奇妙すぎるデビューを飾ったオーストリア映画作家がこの方です。
記事→Lukas Valenta Rinner &"Parabellum"/世界は終わるのか、終わらないのか

87.Argyris Papadimitropoulos アルギリス・パパディミトロポロス
ギリシャの奇妙なる波”の主要メンバーの一人。波の幕開けを用意した“Wasted Youth”を経て、2015年には第3長編“Suntan”を製作する。バカンス地で孤独な日々を過ごす島医者が、若いブロンド女性に入れ込んでセックスや若さに惨めにしがみつき、最後にはヤバい領域にまで踏み込んでいく様を描いた、厭すぎる一作。
記事→Argyris Papadimitropoulos&"Suntan"/アンタ、ペニスついてんの?まだ勃起すんの?

86.Maja Miloš マヤ・ミロシュ
「フィッシュ・タンク」「リリア4-ever」とタメを張る、荒廃したセルビアの街並みの中、徐々に窒息していく少女のドス黒い青春を描いた「思春期」ロッテルダム映画祭最高賞を獲得、セルビア映画界期待の星。
記事→マヤ・ミロス&「思春期」/Girl in The Hell

85. Lisa Langseth リサ・ラングセット
舞台演出家から映画監督へと転身したスウェーデン映画界期待の新鋭。"Till det som är vackert"「ホテルセラピー」は自身のアイデンティティーという物を性・階級・権力といった側面から切り込んでいく意欲作。アリシア・ヴィキャンデルをスターダムへと駆け上がらせた人物でもあり。
記事→Lisa Langseth & "Till det som är vackert"/スウェーデン、性・権力・階級

84. Kiro Russo キロ・ルッソ
ボリビア出身の若手映画作家。長編デビュー作“Viejo Calavera”ボリビアの鉱山で働く人々の息詰まる現実を描き出した作品。何と言っても特徴的なのはこの世界を満たす闇だ。必死に生きていこうとする底辺の人々をも容赦なく呑み込んでいく全き黒を、彼は崇高なタッチで捉えることで、世界を底知れない地獄として綴る。ラテンアメリカ映画界注目の新人。
記事→ Kiro Russo&"Viejo Calavera"/ボリビア、黒鉄色の絶望の奥へ

83.Boris Despodov ボリス・デスポドフ
初長編"Corridor #8"は建設が予定されている巨大道路の進路に沿って自身の出身国ブルガリアマケドニアアルバニアというバルカン半島3国を巡る旅路を描いたドキュメンタリー作品。新作の劇長編"Twice upon in a Time in West"クラウディア・カルディナーレクラウディア・カルディナーレ役で出演する異色の西部劇。
記事→Boris Despodov& "Corridor #8"/見えない道路に沿って、バルカン半島を行く

82.Ion de Sosa イオン・デ・ソサ
「マジカル・ガール」といい後述の“El futuroといい、スペインのインディー映画界に満ちるどん詰まりの感覚には凄まじいものがある。彼の作り出したデビュー長編“Sueñan los androides”「電気羊はアンドロイドの夢を見るか?」を原作としているがブレードランナーとは似ても似つかぬ作品となっており、希望が踏みにじられる様を“ギリシャの奇妙なる波”以後のシュールな感覚で描く印象的な一作となっている。
記事→Ion De Sosa&"Sueñan los androides"/電気羊はスペインの夢を見るか?

81. Ana Muylaert アナ・ミュイラート
新興中産階級の家庭で住み込みのメイドとして働く母と、大学受験のため彼女の元を訪れた娘、2人の交流を通じてブラジルの階級差を描き出す"Que Horas Ela Volta?"はオスカー外国語映画賞ブラジル代表に。
記事→アナ・ミュイラート&"Que Horas Ela Volta?"/ブラジル、母と娘と大きなプールと

80.Felipe Guerrero フェリペ・ゲリロ
ラテンアメリカ映画界の急成長組コロンビアから、彼のドキュメンタリー"Corta"はサトウキビ畑で働く人々を真っ正面からただただ見据える、情報量を究極的に削ぎ落とした素晴らしき瞑想的作品。
記事→フェリペ・ゲレロ& "Corta"/コロンビア、サトウキビ畑を見据えながら

79.Jim Hosking
英国随一の狂人ベン・ウィートリーにも認められた変態一番星。彼のデビュー長編“The Greasy Strangler”は脂ギトギト首絞め殺人鬼に怯える街を舞台に、自分の父親がその殺人鬼なのではないか?と疑う息子の姿を脂ギトギト色彩バキバキな映像美で描く作品。親離れのテーマはウィートリーにも顕著だが、変態性の方向が違えば描かれ方もこうまで違うかと驚かされるだろう。
記事→ジム・ホスキング&"The Greasy Strangler"/戦慄!脂ギトギト首絞め野郎の襲来!

78.Nanouk Leopold ナヌーク・レオポルド
実はオランダ産文芸エロ映画、3本ほど日本に来ているのですがその中でもこの監督が一番評価されているのではと。男性患者たちと関係を重ねる医師の心の彷徨いを描き出した「裸の診療室」は彼女の才気を伺える1本。

77.Laura Amelia Guzman & Israel Cardenas
ドミニカ共和国&メキシコの映画作家コンビ、最新作"Dólares de arena"はヨーロッパ人旅行客と現地の少女の愛の道筋を通じ、ドミニカ共和国の現在を描く映像詩。
記事→ Laura Amelia Guzmán&"Dólares de arena"/ドミニカ、あなたは私の輝きだったから

76.João Nicolau
ポルトガル映画界はやはり注目の才能に恵まれている。彼の第2長編“John From”は序盤気だるげな夏休みを過ごす少女の姿を描く、まあ普通にジャック・リヴェット好きなのかなみたいな内容だが、少女の恋が世界を変えてしまう様を滅茶苦茶なやり方で描いていく後半の衝撃はすごい。後述のAlessandro Comodinとは何度も仕事を共にしており、テン年代最高の映画作家コンビと言えるかもしれない。
記事→João Nicolau&"John From"/リスボン、気だるさが夏に魔法をかけていく

75.Ilinca Călugăreanu イリンカ・カルガレアヌ
ルーマニア出身のドキュメンタリー作家。ネトフリスルーの一作チャック・ノリスvs共産主義チャウシェスク独裁政権時代、人々に希望を繋いだVHSソフトの存在とそれにまつわる驚きの物語を世に伝える素晴らしい一作。チャック・ノリスを熱く語る人々の顔に浮かび上がる表情の数々といったら、こっちまで泣けてくるほどだ。
記事→イリンカ・カルガレアヌ&「チャック・ノリスVS共産主義」/チャック・ノリスはルーマニアを救う!

74.John Magary
ジョシュ・ルーカス!ハラキリ!ジュシュ・ルーカス!ハラキリ!ジュシュ・ルーカス!ハラキリ!ジュシュ・ルーカス!ハラキリ!な初長編"The Mend"は兄弟愛なんて古いテーマでも描き方1つでどうとでもなることを、異常なテンションで証明したケッサク!
記事→John Magary & "The Mend"/遅れてきたジョシュ・ルーカスの復活宣言

73.Mirjana Karanović
エミール・クストリッツァやヤスミナ・ジュバニッチなど旧ユーゴ圏の名高い監督と仕事を共にしてきた俳優だが、今年初の長編映画“Dobra žena”を監督した。ベオグラードに住む一人の主婦が夫の秘密を知ってしまったのをきっかけに、自分の人生を見直さざるを得なくなるという作品で、自分への老いゆく身体への慈しみがセルビアの傷を乗り越えるための導となることを力強く語っている。
記事→ミリャナ・カラノヴィッチ&"Dobra žena"/セルビア、老いていくこの体を抱きしめる

72.Desiree Akhavan デジリー・アッカヴァン
「ハンパな私じゃダメかしら?」はロマコメ新時代を飾る1本、イラン系バイセクシャルな女性の失恋と新たな旅路を描き出した作品で、下ネタ凄いけど最後にはホロッとさせられる逸品。
記事→デジリー・アッカヴァン&「ハンパな私じゃダメかしら?」/失恋の傷はどう癒える?

71.Sergio Oksman
ブラジルで長年ドキュメンタリーを製作してきた映画作家だが、彼が世界的に有名となるきっかけとなった作品が“O futebol”だ。2014年ブラジル・ワールドカップを機に再会した父と子が少しずつ昔の絆を取り戻していく姿を描いた一作だが、物語が進むにつれ予想しなかった情感が溢れてくる様は切ない。
記事→Sergio Oksman&"O Futebol"/ブラジル、父と息子とワールドカップと

70. Anna Odell アンナ・オデル
スウェーデン1のお騒がせアーティストが一転、初長編「同窓会/アンナの場合」は"いじめた奴はすぐ忘れるが、いじめられた奴は一生忘れない"という真理をネチネチと描いてスウェーデンアカデミー賞作品賞を獲得というまさかのスターダムへ。
記事→ アンナ・オデル&「同窓会/アンナの場合」/いじめた奴はすぐ忘れるが、いじめられた奴は一生忘れない

69.Julia Murat
ブラジル映画界で個人的にとても好きな作家。デビュー長編"Historia"は死にすら忘れ去られた村を舞台にした、記憶と時についての懐かしく謎めいた寓話として永遠の美しさを湛えるだろう作品。
記事→Julia Murat &"Historia"/私たちが思い出す時にだけ存在する幾つかの物語について

68.Ignas Jonynas
バルト三国ではおそらく最も世界的に有名なリトアニアから現れた新星。デビュー長編“Lošėjasはギャンブル狂いの救急隊員の姿を通じて、病院組織の腐敗とモラルの崩壊を一切の忌憚なしに描き出す衝撃的な作品。少なくとも新年早々に観るべきではないへヴィーな一作で、2014年のリトアニア映画賞を作品賞含め総なめにした。
記事→Ignas Jonynas & "Lošėjas"/リトアニア、金は命よりも重い

67.Annemarie Jacir
パレスチナという国への複雑な思いを描き続ける作家で、第2長編"Lamma shoftak"は故郷に対する登場人物それぞれの郷愁を結い合わせたドラマ作品。パレスチナ映画を世界に広めるリーダー的存在としても活躍。
記事→Annemarie Jacir &"Lamma shoftak"/パレスチナ、ぼくたちの故郷に帰りたい

66.Whitney Horn&Lev Kalman
デビュー長編"L for Leisure"は何か変だ、90年代を舞台に金持ちボンボンが世界をフラフラ旅するんですが、ポワポワしてて圧倒的にノーテンキという独特のヴィジョンがすごい。
記事→Whitney Horn&"L for Leisure"/あの圧倒的にノーテンキだった時代

65.Elina Psykou
ギリシャの奇妙なる波”はランティモスやツァンガリだけではない。籠の中の乙女のあの父親を演じた俳優を主演に据えた彼女のデビュー長編“The Eternal Return of Antonis Paraskevas”は朽ちた名声にしがみつく惨めたらしいハゲ親父にギリシャの惨めな現在を重ねる試みに満ちながら、それなら私たちはその現状をどう乗り越えればいいのか?という問いを胸に肥大した自意識を解体していく凄味をも持った驚きの一作。
記事→Elina Psykou&"The Eternal Return of Antonis Paraskevas"/ギリシャよ、過去の名声にすがるハゲかけのオッサンよ

64. Carlos Marques Marcet
デビュー長編"10000km"は濃密な20分の長回しと、それ以後の恐ろしいほどぶっきらぼうな編集が印象的な遠距離恋愛「ブルー・バレンタイン」愛は10000kmを越えられるか?

63.ハナ・ユシッチ Hana Jušić
クロアチア出身の若手作家。東京国際映画祭で上映された「私に構わないで」クロアチアの田舎町で家族の呪縛から逃れられない女性の悲喜こもごもを、息詰まるほど登場人物へと肉薄するカメラワークで描き出すミニマルな一作。だが内容を極力切り詰めた先にこそ、人生が宿す豊かな真実は浮かび上がるのだと今作は証明している。
記事→ハナ・ユシッチ&「私に構わないで」/みんな嫌い だけど好きで やっぱり嫌い

62.Hadar Morag ハダル・モラグ
デビュー作"Why hast thou forsaken me?"イスラエルに住むアラブ人青年と年老いユダヤ人研師の交流を描く作品ですが、2人が手を重ね合わせている最中、灰色の火花が散る様はエロティック。
記事→ハダル・モラグ&"Why hast thou forsaken me?"/性と暴力、灰色の火花

61. 彭三源
ピーター・チャン「最愛の子」そろそろ公開ですが、この"失孤"も我が子を誘拐された父親の旅路を描き出した作品で、これでもかこれでもかと涙腺に泣きの一発を叩きつけてくる絶妙なストーリーテリングはさすが。
記事→彭三源&"失孤"/見捨てられたなんて、言わないでくれ

60.Lina Rodriguez
長編デビュー作“Señoritas”はコロンビアにレナ・ダナムが現れた!と評判だったが、とある家族の何気ない日常に焦点を当てた第2長編“Mañana a esta hora”は例えばミア=ハンセン・ラブなどを思わす時への感覚によって、過ぎ去る人生が私たちにもたらす悲しみと喜びが豊かに溢れ出す一作。コロンビアは「大河の抱擁」シロ・ゲーラだけじゃないぞ!
記事→Lina Rodríguez&"Mañana a esta hora"/明日の喜び、明日の悲しみ

59.Eduardo Williams
群雄割拠のアルゼンチン映画界でも異彩を放つ新人監督。短編“”は世界の終わりに世界の果てへと旅を始める青年たちの姿を描き出した謎めいた一作。2016年にデビュー長編“El auge del humano”を製作、全く別の世界で生きる若者たちの怠惰な日々がある瞬間に繋がりあうという作品で、ロカルノ映画祭の新人監督部門で作品賞を獲得するなど最高のスタートを切った。
記事→Eduardo Williams&"Pude ver un puma"/世界の終りに世界の果てへと

58.Jennifer Phang ジェニファー・ファン
デビュー作「アドバンテージ〜母がくれたもの」はSFとは未来ではなく現在を描くものだと教えてくれる、この世で女性が老いることについての痛烈な寓話です。
記事→この世界で女性が老いるということ「アドバンテージ〜母がくれたもの」

57.Bakur Bakuradze
ジョージア出身、スポーツ選手としての未来を絶たれた男が犯罪に走る様を徹底した冷淡さと共に描き出すデビュー作"Shultes"の、あの全てが通りすぎて行く感覚は今の映画界にこそ必要な感覚ではと。
記事→Bakur Bakuradze& "Shultes"/ロシア、全てが彼を過ぎ去っていく

56.パスカルブルトン Pascal Breton
フランス映画界で長らく脚本家として活躍してきたが、2015年に第2長編“Suite Armoricaine”を監督しMOMAの“New Directors/New Films”に選出されるなど話題になる。過去を忘れたくないと願う大学教授と過去に縛られ続ける大学生の日々が淡々とした筆致で綴られる中、今作はこんなことを語る。人生は悲しみや痛み、苦しみや喪失に満ちている。だからこそ私たちは人生を生きる価値があるのだと。
記事→パスカル・ブルトン&"Suite Armoricaine"/失われ忘れ去られ、そして思い出される物たち

55.Cecile Emeke
ヨーロッパに生きるアフリカ系の若者たちの声を掬いとるWebシリーズ"Scrolling"に、親友2人がダベダベする日常系コメディ"Ackee & Saltfish"が注目のブリテン諸島期待の新鋭。
記事→Cecile Emeke & "Ackee & Saltfish"/イギリスに住んでいるのは白人男性だけ?

54.Veiko Õunpuu ヴェイコ・オウンプー
無限にまで引き伸ばされた時間の中で、終末の予感を肌に感じながら、自分では死を選ぶことも出来ず疲弊していく、そんな乾いた地獄の風景を映像詩的に描き出す「ルクリ」のこの素晴らしさ。
記事→ヴェイコ・オウンプー&「ルクリ」/神よ、いつになれば全ては終るのですか?

53.Ronny Trockerヨーロッパに横たわる大いなるアルプス山脈、この地を拠点に国を跨ぎながら活躍する新世代の作家。ヴェネチア国際映画祭でプレミアム上映されたデビュー長編“”はアルプスの大いなる自然に生きる親と子の、凄まじいまでの孤独を描き出した作品。観ているとこの大地において人間という存在は余りにもちっぽけすぎるというのを痛感させられる。
記事→Ronny Trocker&"Die Einsiedler"/アルプス、孤独は全てを呑み込んでゆく

52.Gillian Robespierre
中絶について肩の力を抜きながらも真摯に考えること、とってもスウィートでロマンティックなコメディ映画を作ること、この2つを同時にやってのけた長編デビュー作"Obvious Child"は米ロマコメの1つの達成。
記事→Gillian Robespierre &"Obvious Child"/中絶について肩の力を抜いて考えてみる

51.Rachel Lang
フランス出身、短編2作とデビュー長編“Baden Baden”を合わせたアナ三部作で世界にその名を轟かせることとなる。アナという女性の人生を連なりとして描き出した三部作には、若さを持て余すゆえに、軍隊に入ったり恋人と別れたり祖母の風呂場をリフォームしたり恋人とよりを戻したりとフラフラな姿が描かれる。だがその等身大の迷いは切なさや愛おしさとして、私たちの胸に迫ってくる。
記事→Rachel Lang&"Baden Baden"/26歳、人生のスタートラインに立つ

50.Urszula Antoniak
ポーランド出身ながらオランダで活躍する映画作家。第2長編"Code Blue"は秘密裏に患者を安楽死させ続ける看護師の精神が、捻れた性欲の中で崩壊していく様を表現主義的な演出で描き出す捻れたドラマ。
記事→Urszula Antoniak& "Code Blue"/オランダ、カーテン越しの密やかな欲動

49.Sophie Schoukens ソフィー・ショーケン
文芸エロ映画の犠牲になったベルギー出身映画作家、子供の頃に亡くなった父の記憶を追う女性を描いた「Unbalance -アンバランス-」は静かな感動を呼ぶんですよ、本当なんですよ。
記事→ソフィー・ショウケンス&「Unbalance-アンバランス-」/ベルギー、心の奥に眠る父

48.Min Bahadur Bham ミン・バハドゥル・バム
最初は少年たちの絆を描いていたのに、2人の間に隔たるカーストという壁やネパールの不穏な情勢が色濃い影を投げ掛けるデビュー作「黒い雌鳥」が素晴らしい。ネパール映画がもっと観たくなります。
記事→ミン・バハドゥル・バム&「黒い雌鶏」/ネパール、ぼくたちの名前は希望って意味なんだ

47.Perin Esmer ペリン・エスメル
今活気あるトルコ映画界で最も私が好きな作家が彼女。デビュー作"Gözetleme Kulesi"はトルコの緑深き山々で2つの果てしなき孤独が衝突する重厚なドラマ作品です、是非一見を。
記事→ペリン・エスメル&"Gözetleme Kulesi"/トルコの山々に深き孤独が2つ

46. Nele Wohlatz
ドイツ出身ながらアルゼンチンへと移住し作家活動を開始、初の単独長編“El futuro perfecto”は家族と共に言葉も知らないままアルゼンチンへと移住してきた中国人の少女が、スペイン語を学ぶ過程で世界が開いていく……という内容の作品。新しい言語を学ぶ時の不安と喜びがこれ以上ない瑞々しさで描かれていて、今ルーマニア語を学んでる自分も大感動。
記事→Nele Wohlatz&"El futuro perfecto"/新しい言葉を知る、新しい"私"と出会う

45.Dastin Simien
"Dear White People"アメリカに広がる人種やセクシュアリティへの問いをマシンガンのように観客へと投げつけて投げつけて投げつけまくる作品で、その手捌きに圧倒されます。

44. Mariana Rondon
1人の少年の髪の悩みが、ベネズエラに内在するジェンダー規範がいかにして人々を抑圧するかという問題定義に繋がる"Pelo Malo"は観るのが辛いながらも、必見の作品。
記事→Mariana Rondón & "Pelo Malo"/ぼくのクセっ毛、男らしくないから嫌いだ

43.Rosemary Myers
オーストラリア出身。一人の少女が思春期の吐き気と当惑に満ちたカラフルキャンディの中に閉じ込められ、凄まじい勢いで下り坂を転げ落ちていくような青春映画“Girl Asleep”長編映画デビュー、舞台仕込みの箱庭世界では苦虫潰しまくってる少女の表情が炸裂しながら、なけなしの勇気をかき集め、その拳で新しい世界へ突き抜けろ!という強いメッセージにこっちも拳を握るという。
記事→Rosemary Myers&"Girl Asleep"/15歳、吐き気と不安の思春期ファンタジー!

42.Maxime Giroux
ハシディズムという名の抑圧から解放されることを願う女性の姿を描いた"Felix et Meira"は"メロドラマにこそ人間の真実は宿る"という言葉を証明する作品、ケベック映画界はやはり凄い。
記事→Maxime Giroux &"Felix & Meira"/ユダヤ教という息苦しさの中で

41. Harry Macqueen
リチャード・リンクレイターアンドレア・アーノルドピーター・ストリックランドの私淑を受けたブリテン映画界の若き新鋭、デビュー作"Hinterland"の切なみ、切なみな、この切なみな。
記事→Harry Macqueen&"Hinterland"/ローラとハーヴェイ、友達以上恋人以上

40.Gabriel Abrantes
ミゲル・ゴメスジョアン・ペドロ・ロドリゲスなどなどポルトガル映画界の才能は枚挙に暇がないが、個人的に最も才能を買っている“恐るべき子供”というべき人物がAbrantesだ。とにもかくにも自由自在、ニヤけ面で世界各地に神出鬼没な撮影スタイルは類を見ない。内容もふざけているとしか言い様のないものばかりだが、オバマにべドウィン族にテロリストにと様々に強烈なキャラが入り乱れる艶笑劇“Dreams, Drones and Dactyls”は最高の一言。
記事→Gabriel Abrantes&"Dreams, Drones and Dactyls"/エロス+オバマ+アンコウ=映画の未来

39.Anne Émond アンヌ・エモン
文芸エロ映画の犠牲者ケベック編。「ある夜のセックスのこと」は題名に騙されてはいけません、寒々しさの片隅で孤独が融け合う切実なドラマとして胸にジーンとくる一作。
記事→アンヌ・エモン&「ある夜のセックスのこと」/私の言葉を聞いてくれる人がいる

38.Daniel Wolfe
パキスタン移民による"名誉の殺人"を軸として、父と娘の余りにも壮絶な愛憎を描き出す"Catch Me Daddy"で以てブリテン諸島において最も凄まじき才能であると証明した映画監督。ここに広がるのは乾ききった地獄だ。
記事→Daniel Wolfe&"Catch Me Daddy"/パパが私を殺しにくる

37. Aida Begić アイダ・ベジッチ
内戦の傷が色濃いサラエボの町で、必死に生きようとする姉弟の姿を独特の視点から描き出した"Djeca"イスラム映画祭で上映して欲しい珠玉の一作。
記事→アイダ・ベジッチ&"Djeca"/内戦の深き傷、イスラムの静かな誇り

36.Benjamin Naishtat
昨今台頭著しいアルゼンチン映画界を担う新世代その2。長編デビュー作“Historia del Miedo”中産階級に属する人々が抱く不安と破滅の予感をモザイク画のように浮かび上がらせる不穏なる一作、そして第2長編“El Movimento”はその不穏なる現代の源を、アルゼンチンの血塗られた誕生の中にこそ幻視するという試みを持った作品で、彼はこの国の200年の歴史を見据え続けている。
記事→Benjamín Naishtat&"Historia del Miedo"/アルゼンチン、世界に連なる恐怖の系譜

35.Ronit Erkabetz ロニ・エルカベッツ
ユダヤ教において女性が離婚をするのが如何に難しいかを描き出す、カフカ的不条理に満ちた離婚調停版「マッドマックス怒デス」とも言うべき"Gett"の破壊力の凄まじさたるや。
記事→ロニ・エルカベッツ&"Gett, le procès de Viviane Amsalem"/イスラエルで結婚するとは、離婚するとは

34.Jonas Carpignano
ブルキナファソからイタリアへと希望を胸にやってきた不法移民たちが暴力に呑み込まれていく絶望の物語"Mediterranea"は今こそ観られるべき作品。
記事→Jonas Carpignano&"Meditrranea"/この世界で移民として生きるということ

33.Vetri Maaran ヴェトリ・マーラン
武骨なエネルギー溢れる70年代風刑務所映画と、敵は個でなくシステムであるというボーン三部作以降のポリティカル・スリラーが、踏みにじられる人々の怒りによって繋がる驚きのタミル映画"Visaaranai"に心ブチ抜かれました、私。
記事→ヴェトリ・マーラン&"Visaaranai"/タミル、踏み躙られる者たちの叫びを聞け

32.Antoine Cuypers
どこからともなく現れたベルギー人映画作家。デビュー長編“Prejudice”にはこの世に生まれたことへの憎しみが凄まじいほどの濃密さで描かれる“絶望の箴言家”シオラン的な映画だが、それ以上に異様なのは、またこの憎しみをなかったことにしようとすう社会の圧力がいかに強大な物であるかを更なる悍ましさによって描き出そうとする試みに他ならない。
記事→Antoine Cuypers&"Préjudice"/そして最後には生の苦しみだけが残る

31.Talya Lavie
イスラエル、砂漠のド真ん中、クソったれな兵役の日々をやる気ゼロを合言葉にやりすごそうとする女性兵士たちの姿を描いたブラックコメディ"Zero Motivation"でデビュー、題名がまあ最高ですね。
記事→Talya Lavie & "Zero Motivation"/兵役をやりすごすカギは“やる気ゼロ”

30.ニコラス・ペレダ Nicolas Pereda
アメリカでマンブルコアが最盛期を迎えているその頃、メキシコで同じように親密で実験的な作品を作り続けていた、いわばラテンアメリカジョー・スワンバーグというべき映画作家。第2長編“Juntos”はこの人生を変えてくれる何かが来ると信じ続ける若者たちの鬱屈を描き出した最もマンブルコア的作品、その姉妹作である最新作“Minotauro”はそこにアピチャッポンの幻影が混じり合う相当な異色作。
記事→ニコラス・ペレダ&"Juntos"/この人生を変えてくれる"何か"を待ち続けて

29. Liu Jiayin
シャンタル・アケルマン「ジャンヌ・ディエルマン」という作品の精神、世界にその精神を受け継ぐ者の名を一人だけ挙げるとすらなら自分は真っ先に彼女の名前を挙げるだろう。第2長編「オクスハイドⅡ」は約2時間半の間、1つの家族が夕飯に餃子を作る姿を20分以上も続く長回しの連続によって描き出した一作だ。この異様なまでに切り詰められた世界に中国の寒々しい現状や家族の一筋縄ではいかない絆が浮かび上がる様は圧巻としか言いようがない。
記事→リュウ・ジャイン&「オクスハイドⅡ」/家族みんなで餃子を作ろう(あるいはジャンヌ・ディエルマンの正統後継)

28.Pema Tseden ペマ・ツェテン
時代の波に取り残されていく中年の羊飼いの悲哀を描き出すチベット映画「タルロ」は序盤コミカルなカフカ、中盤リサンドロ・アロンソ、終盤は唯一無二のペマ・ツェテンへと結実する素晴らしさ。
記事→ペマ・ツェテン&"Tharlo"/チベット、時代に取り残される者たち

27.Alessandro Comodin
イタリア映画界に輝く、時と太陽に祝福された映画作家。長編デビュー作“L' estate di Giacomoは難聴の青年が過ごすとある夏の日を淡々と描き出す一作、第2長編"I tempi felici verranno presto"はある山の中を舞台に2人の脱走兵と病弱な女性の人生が交錯する一作。だがこの2作には言葉を越えた、魔術的としか言い様のない瞬間が存在する。その時私たちはこの映画作家を魔術師ではなく、魔術そのものだと驚くしかない。
記事一覧
Alessandro Comodin&"L' estate di Giacomo"/イタリア、あの夏の日は遥か遠く
Alessandro Comodin&"I tempi felici verranno presto"/陽光の中、世界は静かに姿を変える

26.マリアリー・リバス Marialy Rivas
チリ出身デビュー長編「ダニエラ 17歳の本能」は性に奔放な少女VSキリスト教福音主義、薄紫の苦い抵抗を描いた作品。ポップアート演出にブログやらフェイスブックが掛け合わさると途端に作風が軽薄になりがちな所を、フィルム風の粒子荒めな撮影と思慮深い編集で、窓際で頬骨ついてるようなアンニュイさが生まれる巧みさ。チリ映画と言えばな映画作家パブロ・ララインも製作で参加、"あなたが居なかったら私は無のままだった"ってエンドクレジットの賛辞にチリ映画界の更なる隆盛を見ました。頑張れチリ映画界。
記事→マリアリー・リバス&「ダニエラ 17歳の本能」/イエス様でもありあまる愛は奪えない

25.Alex Ross Perry アレックス・ロス・ペリー
ピンチョン、ロス、デリーロらハロルド・ブルーム言う所のポストモダン文学四天王の作風を取り込みながら日々進化続ける米インディー映画界の鬼才。最新作"Queen of Earth"イングマール・ベルイマンすら内包した異形の傑作!
記事→今すぐに貴方を殺せば、誰にも知られることはないでしょう"Queen of Earth"

24.Benjamin Hisenberg ベンヤミンハイゼンベルク
もし貴方が一度でも、この世界から見放されてしまったという絶望を感じたことがあるなら、そんな貴方にこそ捧げられるべき作品が彼の第2長編"Der Räuber"です。
記事→ベンヤミン・ハイゼンベルク&"Der Räuber"/私たちとは違う世界を駆け抜ける者について

23.Athina Rachel Tsangali アティナ・レイチェル・ツァンガリ
あなたの体を通じてわたしの体を知る、あなたの死を通じて私の生を知る。デビュー作"Attenberg"によってヨルゴス・ランティモスと共に"ギリシャの奇妙なる波"の立役者となった奇想の映画作家
記事
アティナ・レイチェル・ツァンガリ&"Attenberg"/あなたの死を通じて、わたしの生を知る
アティナ・レイチェル・ツァンガリ&"Chevalier"/おおチンポ お前の心に聳えるチンポよ

22.Hugo Vieira da Silva
ポルトガル映画界色々言われていますけれど、私が最も評価する作家が彼です。デビュー作"Body Rice"はここに広がる紫色の退屈さは映画史に残る荒涼たる様。
記事→ Hugo Vieira da Silva &"Body Rice"/ポルトガル、灰の紫、精神の荒野

21.Hannah Fidell ハンナ・フィデル
先述のアメリカに広がる"水面下の不穏"を体現するもう1人の存在。「女教師」「6年愛と共に未熟な愛がジワジワと崩壊していく様を冷徹に見据え続ける作風は癖になります。
記事→ハンナ・フィデル&「女教師」/愛が彼女を追い詰める

20.Chaitanya Tamhane チャイタニヤ・タームハネー
ミア=ハンセン・ラブに並んで、何もかもが人々を過ぎ去っていく諸行無常の感覚を持ち合わせたインドの若き天才作家。デビュー作「裁き」は貴方が今まで絶対に観たことのない裁判映画と断言出来る。
記事→チャイタニヤ・タームハーネー&「裁き」/裁判は続く、そして日常も続く

19.Diasteme ディアステム
国民戦線の台頭著しいフランスの現状を背景として、極右思想に傾倒する一人の青年がめぐる20年を90分の中に凝縮した渾身の一作「フレンチ・ブラッド」は、ミア=ハンセン・ラブ「EDEN/エデン」と共にフランスの現代史を個人の目から語り直す一作。ここに宿る余りに深い虚無感は、この時代が私たちにもたらすそれと同じだ。
記事→ディアステム&「フレンチ・ブラッド」/フランスは我らがフランス人のもの

18.Cristi Puiu クリスティ・プイウ
ルーマニアの新たなる波”という大いなる潮流の頂点に君臨するルーマニア映画界の巨人。医療制度の腐敗と死の惨めすぎる真実を描く「ラザレスク氏の最期」、とある平凡な中年男性が殺人を犯す姿を徹底したリアリズムで描く禍々しいエピック“Aurora”、そして法要に集まった親族たちの姿に混沌たる小宇宙を見出だす大いなる一作「シエラネバダに比肩する映画はどこにも存在しないだろう。
記事一覧
クリスティ・プイウ&"Marfa şi Banii"/ルーマニアの新たなる波、その起源
クリスティ・プイウ&「ラザレスク氏の最期」/それは命の終りであり、世界の終りであり
クリスティ・プイウ&"Aurora"/ある平凡な殺人者についての記録

17.Nadav Lapid ナダヴ・ラピド
イスラエル、ひいては国家という存在に不可避的に内在する闇を描き出すことを使命とした映画作家。デビュー作"Ha-Shoter"は祖国を愛する者と憎む者の致命的な相互不理解を映した極限の絶望の物語。
記事→Nadav Lapid &"Ha-shoter"/2つの極が世界を潰す

16.Benjamin Crotty ベンジャミン・クロッティ
先に紹介したGabriel Abrantesと共に世界を股にかけ変な映画を作り続けるテン年代の“恐るべき子供たち”の1人。初長編“Fort Buchanan”は派兵された軍人をパートナーに持つ人々が共同で生活する基地で繰り広げられる、内容についても演出についても余りにも自由すぎるメロドラマ。ここまでクィアで自由な精神を持ち合わせた作品そうはお目にかかれない!
記事→Benjamin Crotty&"Fort Buchnan"/全く新しいメロドラマ、全く新しい映画

15.Rick Alverson リック・アルヴァーソン
果てしない倦怠、重すぎる徒労感、全てが無駄、何もかも全てが虚無感に支配されてしまっている……そんな絶望を冷たく焼き付けた"Entertainment"アメリカという名の精神の荒野を描き出した唯一無二の芸術。
記事→Rick Alverson &"The Comedy"/ヒップスターは精神の荒野を行く

14.Amy Seimetz エイミー・サイメッツ
マイアミ出身、マンブルコアで俳優として頭角を表した後、そこで出会った仲間と初長編“Sun Don't Shine”を監督、南部を舞台とした熱気漂うノワールに幼い子供が夢に見るような詩情がかけ合わさり、ここには観たことのない光景が浮かぶ。更にスティーブン・ソダーバーグに見出だされドラマ版ガールフレンド・エクスペリエンスのクリエイターに抜擢、他に類を見ない作品を作り上げた。米インディー映画界で最も期待される作家の一人。
記事→エイミー・サイメッツ&"Sun Don't Shine"/私はただ人魚のように泳いでいたいだけ

13.Chloe Robichaud クロエ・ロビショー
私がブログを書くきっかけとなったケベック映画作家。1人の女性のセクシュアリティの探求を描いた"Sarah préfère la course"ケベックに生きるレズビアンのライフスタイルを描く"FEMININ/FEMININ"と全てが素晴らしい。
記事→Chloé Robichaud &"Sarah préfère la course"/カナダ映画界を駆け抜けて

12.Luis Lopez Carrasco ルイス・ロペスカラスコ
1982年、フランコ将軍の死を越えて真の民主主義を勝ち取った選挙前夜、何となく浮き足だった若者たちがパーティーを繰り広げる姿を描いたデビュー長編“El Futuroは、しかしこの年が今へと続く深い絶望の始まりであると私たちに提示する一作。かなり実験的な作風で人を選ぶかもしれないが、その実験性に凄まじく重い意味が宿る虚無の終盤は言葉を越えていく。
記事→Luis López Carrasco&"El Futuro"/スペイン、未来は輝きに満ちている

11.Marianne Pistone&Gilles Deroo マリアンヌ・ピストーヌ&ジル・デルー
デビュー長編"Mouton"は点と点の集積によって青年の日常を描きながらも、後半から全く別の物語に変わってしまう本当に、本当に言葉すら失ってしまう作品。フランス映画界随一の才能でしょう、彼女たちこそ。
記事→Marianne Pistone& "Mouton"/だけど、みんな生きていかなくちゃいけない

10.Joni Shanaj ユニ・シャナイ
東欧はアルバニア出身。デビュー長編“Pharmakon”は、この世に産まれた時点で虚無は宿命付けられている、それでも人と人とは致命的なまでに理解しあうことは出来ない、唯一確かに存在していると言えるものは究極的な孤独のみである、そういった世界に生まれることに否応なく付き纏う絶望を突き詰めた、ある種の極致に位置する恐ろしい作品。
記事→Juni Shanaj&"Pharmakon"/アルバニア、誕生の後の救いがたき孤独

9. アリス・ウィノクール Alice Winocour
日本では裸足の季節の共同脚本として有名、しかし彼女自身もまた優れた映画作家だ。一人の少女の苦しみが社会によって搾取され、今後悪辣な形で女性を規定する“ヒステリー”という概念がいかに仕立てあげられたかを忌憚なく描き出すデビュー長編「博士と私の危険な関係に、PTSDを患った元兵士の荒涼たる心象風景が不気味な予感と暴力的なまでに神々しい轟音と共に描き出されるスリラー「ラスト・ボディーガード」は、世界という名の牢獄への痛烈な一撃ともなる。
記事一覧
アリス・ウィンクール&「博士と私の危険な関係」/ヒステリー、大いなる悪意の誕生
アリス・ウィノクール&「ラスト・ボディガード」/肉体と精神、暴力と幻影

8.Kelly Reichardt ケリー・ライヒャルト
米インディー映画界における孤高の存在。第2長編“Old Joy”を皮切りに「ウェンディ&ルーシー」“Meek’s Cutoff”など社会の周縁にいる旅人たちの悲痛な彷徨いを描き続ける作家。彼女の最新作“Certain Women”は4人の女性たちの日常を通じて、些細な瞬間の中に宿る人生の真実を綴る試みに満ちた切なくも優しく美しい一作。
記事一覧
ケリー・ライヒャルト&"River of Grass"/あの高速道路は何処まで続いているのだろう?
ケリー・ライヒャルト&"Ode" "Travis"/2つの失われた愛について
ケリー・ライヒャルト&"Old Joy"/哀しみは擦り切れたかつての喜び
ケリー・ライヒャルト&「ウェンディ&ルーシー」/私の居場所はどこにあるのだろう
ケリー・ライヒャルト&"Meek's Cutoff"/果てなき荒野に彼女の声が響く
ケリー・ライヒャルト&「ナイト・スリーパーズ ダム爆破作戦」/夜、妄執は静かに潜航する

7. Andrea Štaka アンドレア・シュタカ
ユーゴスラビアという血塗られた故郷への思いを"Das Fräulein"では希望として、"Cure: The Life of Another"では絶望として描き出した移民2世のスイス人作家。これから先、彼女はこの思いといかに向き合うのだろう……
記事→アンドレア・シュタカ&“Das Fräulein”/ユーゴスラビアの血と共に生きる

6.Natalia Almada ナタリア・アルマダ
メキシコの映画作家、長年ドキュメンタリー作品を製作してきたが今年初の劇長編“Todo lo demás”を監督、虚ろな孤独を抱える中年女性のの日常が救いがたいほどの淡々さで描かれる中で、自身の老いゆく身体への慈しみが生まれ、それが他者への愛へと至り、そして最後にはこのかけがえない人生を受け入れる導となる。そんな姿を描き出した余りに美しい一作。
記事→Natalia Almada&"Todo lo demás"/孤独を あなたを わたしを慈しむこと

5.クレベール・メンドンサ・フィリオ Kleber Mendonca Filho
ブラジル・レシフェを拠点とする映画作家。この地に広がる不穏な死の予感を音によって紡ぎ出す驚異のデビュー長編「ネイバリング・サウンズ」と、老いゆく身体への愛と暖かな郷愁と共に前へ前へと進もうとする中年女性の姿を力強く描いた第2長編アクエリアスによって一躍映画界のトップランナーに躍り出た期待の新鋭。保守政権が力を握る現在のブラジルに抵抗を続ける気骨の人でもある。
記事一覧
クレベール・メンドーサ・フィーリョ&「ネイバリング・サウンズ」/ブラジル、見えない恐怖が鼓膜を震わす
クレベール・メンドンサ・フィリオ&「アクエリアス」/あの暖かな記憶と、この老いゆく身体と共に

4.Ramon Zürcher ラモン・ツュルヒャー
シャンタル・アケルマンの禁欲性+ジャック・タチの過剰さ=映画の未来!1つの家族の日常を私たちが全く観たことのない視点から描き出す"Das merkwürdige Kätzchen"は驚異のデビュー長編です。
記事→Ramon Zürcher&"Das merkwürdige Kätzchen"/映画の未来は奇妙な子猫と共に

3.Anocha Suwichakornpong アノーチャ・スイッチャーゴーンポン
足の自由を失った青年と彼をケアする介護士の心の交流が、何処までも自由な語りによって、宇宙的スケールで誕生の喜びを高らかに歌い上げる"Mundane History"は奇跡と呼ぶに相応しい作品。

2.Noah Buschel ノア・ブシェル
米インディー映画界ひいては世界を見渡したとて彼に似た人物はどこにも存在しない、真の意味で孤高を貫き続ける唯一無二の映画作家。彼ほど映画に拘り、映画にしか出来ない表現を探し求める作家はいない。“The Missing Person”においてマイケル・シャノンが体現する孤独、“Glass Chin”における主人公に肉薄するサイレンの輝き、“The Phenomにおける肉体の世界と精神の世界を自由に行き交うその手捌き、そして“Sparrows Dance”のあの息を呑むほど美しいダンスシーンを観た時の衝撃と感動は一生忘れることが出来ない。彼こそ不世出の天才だ。
記事一覧
Noah Buschel&"Bringing Rain"/米インディー映画界、孤高の禅僧
Noah Buschel&"Neal Cassady"/ビート・ジェネレーションの栄光と挫折
Noah Buschel&"The Missing Person"/彼らは9月11日の影に消え
Noah Buschel&"Sparrows Dance"/引きこもってるのは気がラクだけれど……
Noah Buschel&”Glass Chin”/持たざる者、なけなしの一発

1.Ana Rose Holmer アナ・ローズ・ホルマー
青春、スポ魂、ホラー、SF……そのどれでもありどれでもない、私たちが居るべき場所を見つけ出す旅路についての物語"The Fits"は奇跡すら越えた何かとして一生私の心に残り続ける作品です。
記事→アナ・ローズ・ホルマー&"The Fits"/世界に、私に、何かが起こり始めている

ということで、このサイト経由以外で知っていた映画監督は何人いたかな?5人以上知っていたあなたは、日本の映画評論家を引き摺り下ろしてあなたが次世代の映画評論家になった方がいいぞ!もしくはあなたが映画関係者だったら、私に仕事を下さい、お願いします。ということで以上"済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!"でした。みんな、いっぱい映画観ようぜ!!!


ベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ……