鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

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リン・シェルトン&"Touchy Feely"/あなたに触れることの痛みと喜び

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リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる?
リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で
リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ?
リン・シェルトン&「ラブ・トライアングル」/三角関係、僕と君たち
リン・シェルトン&「不都合な自由」/20年の後の、再びの出会いは
リン・シェルトンの経歴および長編作についてはこちらの記事参照

この世界で女性が生きていくということ、男性同士の間で紡がれる友情について、2人の女性と1人の男性をめぐる三角関係……リン・シェルトン監督は自身の作品で以て様々なテーマを描き出してきたが、その傍らには他のマンブルコア映画と同じように肉体性とも言うべき要素が併置されてきた。しかし今回紹介するシェルトン監督の第5長編“Touchy Feely”はその肉体性を傍らではなく中心に据えた、初めての作品となっている。

この作品には2人の主人公がいる。まず1人目がアビー(「私だけのハッピー・ウェディング」ローズマリー・デウィット)という中年女性だ。彼女はマッサージ・セラピストとして活躍している人物で、ジェシー(「デッドライン 境界線」スクート・マクネイリー)という恋人と順調だったりと人生も順調だ。だがジェシーと一緒に住もうという提案によって人生の段階が1つ進もうとしていた時に事件が起こる。何の脈絡もなしに感覚が過度に敏感なものとなり、人の肌に拒否反応を起こし触れられなくなってしまったのである。

2人目の主人公はアビーの兄であるポール(ジーサンズ はじめての強盗」ジョシュ・パイス)だ。彼は娘のジェニー(「賢く生きる恋のレシピ」エレン・ペイジ)を助手として歯医者を経営しているのだが、もはや仕事はルーティン作業も同じで情熱も何もかもが消え去り、病院も閑古鳥が鳴くような始末になっていた。しかしその現状に対して危機感を抱いたジェニーが行動を起こしたことから、事態は大きく動き出すこととなる。

冒頭、産毛が静かに揺れる肌に1つの手のひらが触れるという場面がある。この映像と題名が象徴するように“Touchy Feely”は誰かに触れることについて、皮膚感覚についての映画だと表現できる。アビーがマッサージ師として誰かの肌に手を乗せる瞬間、もしくは恋人としてジェシーと唇を重ね合わせる瞬間、そういった他者に触れることの数々がとても繊細に、撮影監督ベンジャミン・カサルキーのカメラに捉えられていく訳である。しかし時に彼はカメラを顕微鏡並に皮膚へと肉薄させることでそこに宿る不気味な側面をも捉えていくのである。

そのコントラストは正に物語そのものにも影響していく。事態がうねりを見せる頃、ポールはブロンウェン(「カウボーイ・ウェイ/荒野のヒーローN.Y.へ行く」アリソン・ジャネイ)という女性と出会う。彼女は精神的なパワーである“Reiki”(つまり日本語の“霊気”である)の使い手であり、それに興味を抱いたポールは彼女に教えを請うことになる。こうして霊気の鍛練を通じて他者に触れる方法を学びとったポールはそれを治療の際にも駆使し、患者たちを癒していく。これが評判を呼び病院はいつにも増して満杯、彼は他人に触れる喜びを知り始めるのだ。

逆にアビーは誰かに触れることの恐ろしさに直面することとなる。触れようとすると嘔吐してしまうほどの拒否反応が出てくる中で、彼女はジェシーにすら触れられなくなり、これがきっかけで2人は離ればなれになってしまう。他者に触れるということは他者の人生をも変えることなのだ。今までもそれは知っていながらも真剣に向き合うことはなかったアビーは、人生が急転しようとしていたこのタイミングで以てその重圧に耐えきれなくなる限界へと辿り着いてしまったのである。

さて前作「ラブ・トライアングル」の時点でその片鱗は見せていたが、今作で監督は大量に有名俳優を起用、形式的にマンブルコアから距離を置こうとする傾向が顕著になっている。前作から続投のデウィットは勿論、この中で最も知名度が高いだろうエレン・ペイジ、知る人ぞ知る曲者俳優スクート・マクネイリー、先日「アイ・トーニャ」でアカデミー助演女優賞を獲得したアリソン・ジャネイ「アドベンチャー・ランドへようこそ」「女性鬼」など脇役としてお馴染みなジョシュ・ペイス、彼らに加えてシンガーソングライターとして活躍する日系アメリカ人のトモ・ナカヤマがジェニーに片想いする青年役で出演、“奇跡”と呼ばれる歌声も披露している。こうした有名俳優陣による巧みな演技のアンサンブルが物語を引き締めると共に、今までのシェルトン作品とはまた違う質感を宿していることは間違いないだろう。

そして監督とアビーは彼らの力を借りて、触れることについての探求を深めていく。その旅路の行き着く先にある思い出に触れた時、アビーは愛おしげに語る。“私の身体とあなたの身体、1つだった時のこと、完全に1つだった時のことを覚えてる”と。この言葉に代表されるように、“Touchy Feely”は誰かに触れることの痛みと喜びを描き出した美しい作品であり得る。こうして肉体性を中心に据えた本作はシェルトン監督にとって1つの区切りになったのだろうか、彼女は次回作においてマンブルコアから離れて、最もメインストリームへと肉薄することとなる。

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結局マンブルコアって何だったんだ?
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その68 ソフィア・タカール&「ブラック・ビューティー」/あなたが憎い、あなたになりたい
その69 アンドリュー・バジャルスキー&"Computer Chess"/テクノロジーの気まずい過渡期に
その70 アンドリュー・バジャルスキー&「成果」/おかしなおかしな三角関係
その71 結局マンブルコアって何だったんだ?(作品リスト付き)
その72 リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ?
その73 リン・シェルトン&「不都合な自由」/20年の後の、再びの出会いは
その74 リン・シェルトン&「ラブ・トライアングル」/三角関係、僕と君たち