鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

Malena Szlam&"Altiplano"/来たるのは大地の黄昏

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今まで自分はあまり実験映画とは縁がなかった。しかし最近はMUBIなどで実験映画界の俊英であるケヴィン・ジェロームエヴァーソン Kevin Jerome Eversonベン・リヴァース Ben Riversなどの作品が配信されており、そういった作品を観る機会がかなり増えた。ということで今回は数いる注目の実験映画作家の中から特に注目すべきだろう人物であるMalena Szlamと彼女の最新短編である“Altiplano”を紹介していこう。

題名になっているアルティプラーノとが何か。これは新生代に形成された山脈の間に広がっている標高の高い平坦な高原地域のことを指している。アンデス山脈の中でもペルー南部からボリビアやチリの北部までこの高原は広がっているという。荒涼かつ乾燥した厳しい気象ゆえ、草木はほとんど生えず赤茶けた大地がここには延々と広がっている。

まずカメラが映し出すのはそんな赤茶色の大地である。抜けるような青い空の下、果てしなく広がる寂漠たる風景は見る者にどこか畏敬の念を抱かせる類いの風景として映る。監督はこの赤茶色の大地の風景の数々を幾つも重ねては星のように瞬かせ、明滅させていく。その浮かんでは消える大地たちは私たちの心を掻き乱していくだろう。

それが繰り返されることで今作は段々と現実離れした感触を宿し始める。橙色に染まる大地は不穏なる雰囲気を纏い出すのだが、その光景は黙示録の光景を想起させるものだ。そして地表からは真っ白に染まった熱湯と水蒸気が禍々しく噴き出していく。まるで大地が終りを迎えようとしているかのように。

次に“Altiplano”が至る場所は地獄の季節だ。血の赤に染まった月は闇を彷徨い続け、冥界の隆盛を祝福している。色彩の反転した蒼白の大地は骨の蠢きを見せ、世界を濁りで満たしていく。生の証はどこにもほとんど存在していない。ただただ圧倒的な無限の死だけがそこには存在している。“Antiplano”はそんな世界の黄昏を描き出した幻惑的な実験映画だと言えるだろう。

他にネットで観られる彼女の作品に、カナダのサイケデリック・ロックバンドSuunsによる楽曲“Sunspot”のPVがある。濃密な青に塗り潰された森の風景から今作は幕を開ける。高速で移り変わる風景はひどく幻想的であり地球の青い黄昏を幻視させるものだ。一方でその色彩と競いあうような形で赤の彩りが映像に現れ始める。そして炎のような色彩の中で世界は燃え盛るのだ。これらの作品を観ると、Szlamは黙示録を宿命づけられた世界に捧げる挽歌を作り続けているように思われてならない。

Malena Szlamはチリ出身、モントリオールを拠点とする映像作家だ。アルテス・イ・シエンシアス・ソシアレス大学ではファイン・アートを、モントリオールコンコルディア大学では映画製作を学んでいた。実験映画やパフォーミング・アートなど多岐に渡って作品を製作する傍ら、実験映画のプログラマーとしても活躍している。そして2018年にはロサンゼルスで回顧展が行われた。そんな現在知名度急上昇中の作家Szlamの今後に期待。

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