鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Elisa Miller &"Ver llover""Roma"/彼女たちに幸福の訪れんことを

Elisa Miller監督は1983年メキシコに生まれる。メキシコシティーの映画学校the Centro de Capacitación Cinematográfica(CCCC)で映画について学んでいたのだが在学中の2006年、3年生だった彼女はメキシコのヤウペテックへと赴き、デビュー短編"Ver llover"を…

クソったれポリティカル・コレクトネス!というスタンス「クーデター」

ポリティカル・コレクトネス(以下PC)、人種・性別・政治的・社会的に中立であり差別や偏見の含まれない言葉や表現をあらわす言葉だ。最近では「ベイマックス」や「マッドマックス 怒りのデス・ロード」など作品にPCが組み込まれていっている現状があり、もう…

Kacie Anning &"Fragments of Friday"/酒と女子と女子とオボロロロロロオロロロ……

Thank God It's Friday!金曜日は良い日だ、明日は学校が休みだ、明日は仕事が休みだ、それじゃ何する?酒を飲むしかないだろ!酒が飲める!酒が飲める!酒が飲めるぞ!酒が飲める飲めるぞ、酒が飲めるぞ!……という人々は少なくないと思う。でもハメを外して…

Damian Marcano &"God Loves the Fighter"/トリニダード・トバゴ、神は闘う者を愛し給う

トリニダード・トバゴ、カリブ海に位置する2つの島から成る国家、人工133万人、面積5128km2、公用語は英語だが最も多く話されている言葉は英語系のクレオール語、首都はポートオブスペイン、アフリカ系、インド系、中国系、様々な国の混交した文化、カーニバ…

今すぐに貴方を殺せば、誰にも知られることはないでしょう"Queen of Earth"

彼女の瞳、恨みがましい視線、涙を含んだアイシャドウ、目元には闇を塗りつけられたかのようなドス黒さ。怒りに歪みきった彼女の顔をカメラは執拗に撮し出す。彼女は罵倒の言葉をいくども口にしながら、何故自分はこんな仕打ちを受けなくてはならないのかと…

雑記

ここ1ヶ月、毎日ブログを書いていたのだが、今日は何の映画も見ていないしネタがない。けどどうせだから○○日間継続中を保ちたい。ということでネタを探して、雑記。はてなブログだけなのか他の所でもそうなのか分からないのだが、私のブログ"鉄腸野郎Z-Movie…

ジョン・ワッツ&「COP CAR コップ・カー」/なに、次のスパイダーマンの監督これ誰、どんな映画つくってんの?

1ヶ月ほど前こんなニュースが流れた“スパイダーマンの再リブート作の監督がジョン・ワッツに決定”まず最初に思ったのは“アンドリュー・ガーフィールド可哀想……”だった。そして次に思ったのは“でもジョン・ワッツって誰だ?”調べてみるとニュースのちょっと前…

最近気になっている映画その5

"3000 Nights" チェンマイ・マスリ監督はパレスチナ人の父とアメリカ人の母の間に生まれ、サンフランシスコ州立大学で映画を学んだのち、自身の生まれ育ったベイルートで映画製作を始める。そして20年もの間ドキュメンタリーを作った後、彼女が初めて手掛け…

サラ=ヴァイオレット・ブリス&"Fort Tilden"/ぶらりクズ女子2人旅、思えば遠くへ来たもので

ジェームズ・フランコ、俳優として最近ではヴィム・ヴェンダースの"Every Thing Will Be Fine"に主演&ヴェルナー・ヘルツォークの"Queen of Desert"にも出演、映画監督としてコーマック・マッカーシー「チャイルド・オブ・ゴッド」、ウィリアム・フォークナ…

ぜんぶ彼女のハンドルに託して「しあわせへのまわり道」

“中年女性がひょんなことから人生の半ばで道に迷ってしまうも、また新たな道を見つけて笑顔を浮かべながらその道を歩みはじめる”そんなキュートな映画が公開されるたび私は嬉しくてたまらなくなる。ただでさえ中年女性が主人公の映画なんて日本では公開され…

セルハット・カラアスラン&"Bisqilet""Musa"/トルコ、それでも人生は続く

トルコ映画と聞いて、おそらく今真っ先に思い出される監督の名前はヌリ・ビルゲ・ジェイランだろう。2014年にパルムドールを獲得した「冬の轍」が6月に公開され、とうとうジェイラン受容が日本でも始まることとなった。が、ここでヌリ・ビルゲ・ジェイランを…

ハンナ・フィデル&「6年愛」/この6年間いったい何だったの?

ということで前回記事"ハンナ・フィデル&「女教師」/愛が彼女を追い詰める"からの続きである。フィデル監督は「女教師」がサンダンスでお披露目された時点で、イーディス・ウォートンの"The Custom of The Country"を下敷きとした、リアリティ番組を舞台に1…

ハンナ・フィデル&「女教師」/愛が彼女を追い詰める

とうとう、とうとうこの監督を紹介する機会がやってきた。映画監督ハンナ・フィデル、私が米インディー映画界で最も注目している監督のことを。いつ紹介しようかいつ紹介しようか迷っていたのだが、8月18日に彼女の新作"8 Years"が配信されたのである。観て…

ディートリッヒ・ブルッゲマン&「十字架の道行き」/とあるキリスト教徒の肖像

「神は死んだのか?」「サン・オブ・ゴッド」「天国は本当にある」……何故だか去年から妙にキリスト教啓蒙映画の公開が増えてきている。更にはニコラス・ケイジ主演の「レフト・ビハインド」やカリコレで上映された「ザ・リメイニング」などのパニック映画の…

2012年は女子の友情サイコー!な年「ダイヤルはン〜フ〜/フォー・ア・グッド・タイム・コール」

2012年はアメリカン・コメディにとって1つの転機と言える年だったかもしれない。前年、クリステン・ウィグやメリッサ・マッカーシーがそのコメディセンスを存分に発揮した「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」のを皮切りに、今年やっと日本でも…

「ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション」を観たよ、すごい面白かったよ(ネタバレしかない)

ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション(以下インポロネイション)を観た。が、お盆を舐めていた。午後1時の回を見るはずが午後1時起床、まあ次があるから良いやとゆっくり身支度を整え、にんにくの効きまくったペペロンチーノを優雅に啜りながら午後…

最近気になっている映画その4

"Chevalier"(以下、全て題名から予告に飛べます) グリーク・ウィアード・ウェーブの創始者でもあるAttina Rachel Tsangari監督、記念碑的作品"Attenberg"から5年、短編"The Capsule"や「ボルジア 欲望の系譜」を経てとうとうの長編新作である。正直予告を観…

Lisa Aschan &"Apflickorna"/彼女たちにあらかじめ定められた闘争

まず上の動画を見て欲しい。走り続ける馬の上で自由自在にポーズを取る選手たち、この凄まじいバランス感覚を伴った競技は“軽乗競技”もしくは英語で“アクロバット・ライディング”と呼ばれている。コトバンクの解説を引用すれば“調馬索で直径13m以上の輪線上…

Nikki Braendlin &"As high as the sky"/完璧な人間なんていないのだから

Nikki Braendlinはロサンゼルスを拠点とする映画作家だ。彼女はStella Adler Academy of Actingで演技について学び、最初は俳優として映画デビューを果たす。だが役柄は脇役ばかり、取り敢えずIMDBに載っている役を羅列してみるとドラマ"For Your Love"(2002…

David Wnendt&"Feuchtgebiete"/アナルの痛みは青春の痛み

さて、あなたは自身の人生をどれほどお尻の穴、つまりアナルに費やしたことがあるだろうか。いや、私は別に今までの人生で何回、排泄行為をおこなったかを聞いている訳ではない、あなたはどのくらいの時間、アナルに思いを馳せたかを聞いているのだ。それと…

これもある意味才能なのか「ピエロがお前を嘲笑う」

“全てを覆すラスト10分!”“誰も予想しえない衝撃の結末!”“このどんでん返し”……こういう宣伝を見るたび、自分がどうしようもないド腐れ脳味噌扱いされているような気分になる。この映画にはどんでん返しがありますよ!と忠告されて自分はどうすればいい、あ…

カン・ヘジョンが過去最高にキュートなのだけど「キム家の結婚狂騒曲」

韓国には、赤ちゃんが満一歳を迎えると行う“トルチャビ”という儀式がある。めかしこんだ赤ちゃんの前に筆、お金、茶碗にもったご飯を置く。もし赤ちゃんが筆を触ったら将来は学者、お金を触ったら将来は大富豪、ご飯を触ったら一生食いっぱぐれることもなく…

ソ連の誇りはアイスホッケーに託される「レッド・アーミー〜氷上の熱き冷戦〜」

“ソ連”についてあなたは何を知っているだろう?“冷戦”についてあなたは何を知っているだろう?そして“アイスホッケー”についてあなたは何を知っているだろう?……「レッド・アーミー〜氷上の熱き冷戦〜」は“ソ連”“冷戦”“アイスホッケー”という3つを描きだして…

凍てつくほどの、愛の地獄へと「ベルヴィル・トーキョー」

「話さなきゃいけないことがある」「……一体なに?」「もう黙っているのは無理だって分かった。俺、実は……浮気してるんだ……」駅のホームで繰り広げられるのはメロドラマ的な会話の数々、カメラが撮すのはそんな2人の横顔。会話が湿り気を増していく頃、轟音を…

ジェームズ・ポンソルト&"The Spectacular Now"/酒さえ飲めばなんとかなる!……のか?

さて前回のジェームズ・ポンソルト&「スマッシュド〜ケイトのアルコールライフ〜」/酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい酒が飲みたい…の続きである。ジェームズ・ポンソルト監督は長編デビュー作"Off the Black"ではニック・ノルティを、長編2作目「スマ…

70年代の終わりに「スカイラブ」

家族4人仲良く連れだって、アルベルティーヌたちは電車に乗り込む。だけども向かい合わせの席が空いていない、列車の旅は長い、4人でカードゲームでもして遊びたいのだが。「すみません、あの、私たち家族4人で座りたくて、もし宜しかったら対面席、譲ってく…

アンドレア・シュタカ&"Cure: The Life of Another"/わたしがあなたに、あなたをわたしに

アンドレア・シュタカ&“Das Fräulein”/ユーゴスラビアの血と共に生きる アンドレア・シュタカの経歴、及び長編デビュー作"Das Fräulein"については上記の記事を参照。"Das Fräulein"がロカルノ映画祭で金豹賞を獲得したのは2006年のことだ。しかしアンドレ…

映画が好きで良かった「ラブコメ処方箋〜甘い恋のつくり方」

イラン系アメリカ人でバイセクシャルな女性の声をすくいとり、更に失恋の痛みが癒えていくプロセスを丁寧に描いたデジレー・アッカヴァン監督作「ハンパな私じゃダメかしら」そして中絶というテーマを軽やかに描き出したGillian Robespierre監督作"Obvious C…

最近気になっている映画その3

"Dukhtar"(日本語で“娘”、題名から予告に飛べます) パキスタン人監督Afia Nathanielの長編デビュー作。パキスタンの山間にある村、10歳の少女は族長との結婚を翌日に控えていた。彼女の母はそれを苦に思い少女と共に村を逃げ出すが、追っては容赦なく迫って…

誇りを語る前に物語をマトモに語れ「ふたつの名を持つ少年」

雪の降りしきる野原、遠くに見えるのは小さな影、ゆっくり、ゆっくりと雪原を横切る孤独な影。そのうち白く濁った空に映し出されるのは"Run Boy Run"という文字列だ、しかし影はスピードを早めることはない、凍えるような孤独を抱いてゆっくりと進んでいく。…