鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Emre Yeksan&"Yuva"/兄と弟、山の奥底で

今年もヴェネチア国際映画祭が幕を開けた。今回はカンヌが世代交代を図って割りを喰ったとされる巨匠や鬼才がコンペティション部門に勢揃いし、今までにない盛り上がりを見せているが、ぶっちゃけ私はあんまり興味がない。それよりも、映画配信サイトFestiva…

アンドリュー・バジャルスキー&"Computer Chess"/テクノロジーの気まずい過渡期に

アンドリュー・ブジャルスキー&"Funny Ha Ha"/マンブルコアって、まあ……何かこんなん、うん、だよね アンドリュー・ブジャルスキー&"Mutual Appreciation"/そしてマンブルコアが幕を開けるアンドリュー・ブジャルスキー&"Beeswax"/次に俺の作品をマンブル…

Ivan I. Tverdovsky&"Zoology"/ロシア、尻尾に芽生える愛と闇

さてここ連続して、ブログでロシア映画の記事ばかり執筆しているのに皆さん気づいているだろうか。というのも最近Soviet and Russian Moviesという未公開映画配信サイトを見つけ、ここで新作を片っ端から観ているからなのだ。ここは名前の通りソ連/ロシア映…

Aleksandr Khant&"How Viktor 'the Garlic' Took Alexey 'the Stud' to the Nursing Home"/オトンとオレと、時々、ロシア

ロシアと言えばソ連時代から連綿と続くアート映画大国だろう。ジガ・ヴェルトフやアンドレイ・タルコフスキー、アレクサンドル・ソクーロフやアンドレイ・ズビャギンツェフなどなど文芸映画の担い手であった映画作家たちは枚挙に暇がない。だが今回はそうい…

Kantemir Balagov&"Closeness"/家族という名の絆と呪い

さて、ロシア連邦はその名の通り様々な国から成り立っている連合国家であるのだが、その中のカバルダ・バルカル共和国という国を皆さんは知っているだろうか。正直言って私なんかは全く知らなかった。しかし私たちが知らないだけで、そこでは様々な人々が人…

Chloé Robichaud&"Pays"/彼女たちの人生が交わるその時に

Chloé Robichaud &"Sarah préfère la course" /カナダ映画界を駆け抜けて Chloé Robichaud&"FÉMININ/FÉMININ"/愛について、言葉にしてみる Chloé Robichaud監督の略歴、および前作についてはこちら参照。さて、Chloé Robichaud監督である。彼女は私にとって…

Kaouther Ben Hania&"Beauty and the Dogs"/お前はこの国を、この美しいチュニジアを愛してるか?

以前、“À peine j'ouvre les yeux”というチュニジア映画をこのブログで紹介した。アラブの春直前を舞台に、バンド活動に明け暮れる少女の姿を通じて若者の未来への絶望感や家父長制社会からの抑圧を描き出した青春映画が本作だった。今回紹介するKaouther Be…

未公開映画を鑑賞できるサイトはどこ?日本からも観られる海外配信サイト7選!

さてTwitter上で“一体どうやって未公開映画を観ているんですか?”という問い合わせを頂いた。確かに私が何故にこんなにも凄まじい勢いで以て未公開映画を観ているのか、というか観られるのか疑問に思っている方は少なくないだろう。な訳でいい機会だしと、私…

Kyros Papavassiliou&"Impressions of a Drowned Man"/死してなお彷徨う者の詩

さて、キプロスである。地中海に浮かぶ、日本と同じく島国であるこの国はギリシャ語が公用語である、ことしか私は知らない。観光地としては結構有名、タックスヘイブンとして投資の拠点地となっていることも有名である。ニュースでは後者について聞いたこと…

Ana Cristina Barragán&"Alba"/エクアドル、変わりゆくわたしの身体を知ること

さて、エクアドルである。赤道上に位置することが国名の由来、ということしか知らない。調べてみるとジャングルやアンデス山脈、ガラパゴス諸島が有名らしい。そしてこの国で製作された映画は、正直1本も知らない。だがそんな国の映画こそ紹介しがいがある訳…

パスカル・セルヴォ&「ユーグ」/身も心も裸になっていけ!

あなたはポール・ヴェキアリ Paul Vecchialiというフランスの映画作家を知っているだろうか。ヌーヴェルヴァーグの影で個性的な作品を作り続けた映画団体ディアゴナール社のリーダー的存在であり、80代を越えても現役で映画を製作し続ける生ける伝説というべ…

Winston DeGiobbi&"Mass for Shut-Ins"/ノヴァスコシア、どこまでも広がる荒廃

さて、ノヴァスコシアである。カナダ東部の大西洋へ突き出た半島部に位置するこの州は幾度となく映画の舞台となっており、以前紹介したAshley Mackenzieの“Werewolf”も正にこの州にあるケープ・ブレトン島が舞台となっていた。 カナダにおいては田舎として扱…

Bodzsár Márk&"Isteni müszak"/ブダペスト、夜を駆ける血まみれ救急車

さて救急車映画である。私的にまず思いつくのはニコラス・ケイジ主演の「救命士」だ。名前の通りケイジ演じる救命士が眠らない街ニューヨークを、救いを求めて疾走する今作は個人的にマーティン・スコセッシ監督作でも1,2を争うほどお気に入りの作品だ。「ア…

Mariano González&"Los globos"/父と息子、そこに絆はあるのか?

映画史においてダメ親父映画というのは枚挙に暇がないほど膨大に作られてきた。えっ?じゃあその例を出せって?いやもう多すぎて例を出すのすら憚られるほどだよ。どうせすぐに思い付かないからだろって?何を馬鹿な、そんなのすぐ思い出せるし今までのブロ…

Tonie van der Merwe&"Revenge"/南アフリカ、アパルトヘイトを撃ち抜け!

「やあ、ご無沙汰だな!我々のこと覚えているかな?」 「全く以て覚えていないと思います。ワタシ自身、自分のこと忘れてましたからね」 「まあ、そうだろう。このブログに登場するのは3年ぶりだからな。私はZ級映画を教養として紹介してきた教授だ!Z級映画…

Travis Wilkerson&"Did You Wonder Who Fired the Gun?"/その"白"がアメリカを燃やし尽くす

さて、私はアメリカのインディペンデント映画界における才能を多数紹介する記事を多く書いている訳で、日本においていかに彼らが紹介されていないかが残念に思えてならない。だがアメリカのドキュメンタリー映画を愛する人々の悲しさは更に深いものだろう。…

Filipa Reis&"Djon África"/カーボベルデ、自分探しの旅へ出かけよう!

さて、カーボベルデ共和国である。まずカーボベルデって何処だよ?っていうと、北アフリカの西の沖に位置している。共和制の島国で、元々ポルトガルの植民地であった故にポルトガル語が公用語になっている(カーボベルデ・クレオール語も公用語)文化について…

Gürcan Keltek&"Meteorlar"/クルド、廃墟の頭上に輝く流れ星

さて、クルドである。クルド人は自分たちの国家を持たない世界最大の民族集団であり、トルコやイラク、イランやシリアなど中東の各国にその大多数が住んでいる。それ故に少数派として差別・抑圧される立場にあり、特にトルコ人との対立は有名なものだろう。…

Jen Tullock&"Disengaged"/ロサンゼルス同性婚狂騒曲!

同性婚がアメリカにおいて認められた後、その事実を背景として様々な作品が作られている。日本でも公開されたアイラ・サックス監督作「人生は小説よりも奇なり」やキャサリン・ハイグルが主演を飾った“Jenny’s Wedding”に、一風変わった作品としては結婚式を…

Salomé Jashi&"The Dazzling Light of Sunset"/ジョージア、ささやかな日常は世界を映す

たまに地方都市へと旅行に行く時、旅館の部屋でテレビなんか見ていると、何ともローカルとしか言い様がない平和でのどかなニュースが流れてくることがある。東京では殺人だとか詐欺だとかそういう不穏なニュースばかり流れてくるのになぁと、微笑みが自然と…

Vlado Škafar&"Mama"/スロヴェニア、母と娘は自然に抱かれて

さてスロヴェニアである。この国は……といつものように続けようとしたが、このブログにおいては既にスロヴェニア映画を紹介していた。ふう。実際レビューを書く時に一番苦労するのがこの序文なのである。レビューの幕開けとして、これから続く文章を包括的に…

ソフィア・タカール&「ブラック・ビューティー」/あなたが憎い、あなたになりたい

ソフィア・タカール&"Green"/男たちを求め、男たちから逃れ難く ソフィア・タカールの略歴、および第1長編"Green"についてはこちら参照。さて、ソフィア・タカール監督である。マンブルコアに参加することで演技力や演出力を養い、2011年には初の監督作“Gre…

ババク・アンバリ&「アンダー・ザ・シャドウ」/イラン、母にかかる黒い影

さて、イラン=イラク戦争の勃発はイランという国に大いなる傷を刻むことになる。ミサイルの応酬によって互いの都市は破壊され、崩壊し、多大な被害を被ってしまう。そしてそこで生まれた傷は今にもまだ続いているのだ。ということで今回はそんな状況を背景と…

Liryc Paolo Dela Cruz&"Sa pagitan ng pagdalaw at paglimot"/フィリピン、世界があなたを忘れ去ろうとも

Liryc Dela Cruzはフィリピン・ミンダナオ島の南コタバト州に生まれた。小さな頃から映画監督を志し、高校時代は学校のパソコンでYoutubeにアップされた映画の予告やクリップ動画を観て、想像を働かせる日々を送っていたのだという。2008年には大学に通うた…

Russell Harbaugh&"Love after Love"/止められない時の中、愛を探し続けて

死は誰の元にも平等にやってくる。あなたの元にも、そして信じたくはないだろうが、あなたの大切な人の元にも。あなた自身の後にあなたの人生は続くことはないが、しかしあなたの大切な人の死の後にはあなたの人生は否応なく続いていく。その時、あなたはそ…

Bogdan Mirică&"Câini"/荒野に希望は潰え、悪が栄える

今現在、世界から求められているルーマニア映画とは一体何か。チャウシェスク政権が現代に残した傷を見据える作品、もしくはチャウシェスク政権における抑圧を鋭く描き出した作品の数々と言える。そんな中でユニバーサルな感覚を持つルーマニア映画は国際映…

Dan Pița&"Duhul aurului"/ルーマニア、生は葬られ死は結ばれる

(注:これ結構前に書いた記事の練り直しなので、冒頭の文は結構の前の出来事です)ブログでも映画配信サイトMUBIの名は何度も出してきたが、このサイトは映画のデータベースという側面も持っており、それぞれのページにはユーザーの感想が記載されるなどして…

ヤン・P・マトゥシンスキ&「最後の家族」/おめでとう、ベクシンスキー

あなたはズジスワフ・ベクシンスキーという画家を知っているだろうか。名前は知らないかもしれないが、この絵を見たならば“ああ!”と恐怖と共に思い出すかもしれない。そう彼は3回見たら死ぬと言われる絵画など、おぞましい作品を多く描いてきた画家なのであ…

Adriaan Ditvoorst&"De witte waan"/オランダ映画界、悲運の異端児

世界的に見ると、オランダ映画界の存在感はあまり大きくないのかもしれない。というかこの国が産み出した残虐変態大将軍ポール・ヴァーホーヴェンの威光が鮮烈すぎて、他の作家たちがほぼ知られていないという状況にあるというのが正確かもしれない。最近の…

エミール・バイガジン&"Ranenyy angel"/カザフスタン、希望も未来も全ては潰える

さて、カザフスタンである。中央アジアに位置するこの国の有名人と言えば誰だろう。例えば今年急逝したフィギュアスケート選手デニス・タンや映画界においては去年「ベン・ハー」のリメイクという映画史の神に悖る行為をやらかしたティムール・ベクマンベト…