鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Siniša Gacić&"Hči Camorre"/クリスティーナ、カモッラの娘

カモッラはイタリア4大マフィアの1つと言われるほどに巨大な犯罪組織だ。彼らはナポリを拠点として麻薬の密売や、建設業や産廃ビジネスなどへの参入など様々な犯罪に深く関わっている。だが犯罪に加担し続ける者がいる中で、そこから逃れようとする者も確か…

Mona Nicoară&"Distanța dintre mine și mine"/ルーマニア、孤高として生きる

ルーマニア人女性と聞いて、あなたは誰を思い浮かべるだろうか。真先に思い出されるのは体操選手のナディア・コマネチだろう。体操選手として初めて満点を叩きだした偉業は広く語られている。私が好きなのは小説家であるSofia Nădejde ソフィア・ナデジュデ…

Basil da Cunha&"O fim do mundo"/世界の片隅、苦難の道行き

ポルトガル・リスボンのスラム街を描き続ける有名な映画作家としてペドロ・コスタが挙げられる。彼は「ヴァンダの部屋」や「コロッサル・ユース」「ホース・マネー」そして2019年にロカルノ映画祭で最高賞を獲得した"Vitalina Varela"において、一貫してスラ…

Hassen Ferhani&"143 rue du désert"/アルジェリア、砂漠の真中に独り

砂漠の真中で、たった独りだけで生き続けるのはどんな気分なのだろう。何もない風景をただただ見つめながら昼が過ぎ、夜が過ぎ、また明日が来て、何もない風景をただただ見つめ続ける。時々誰かがやってくるが、少しだけ立ち寄るだけで、しばしの会話の跡に…

Szabó Réka&"A létezés eufóriája"/生きていることの、この幸福

第2次世界大戦中、東欧の一国ハンガリーにおいても苛烈なユダヤ人弾圧・ホロコーストが行われていた。多くのユダヤ人がナチスの強制収容所に送られ、60万人以上が殺害されることとなった。生き残った数少ない人々は、ハンガリーでこの経験について若い世代に…

Radu Dragomir&"Mo"/父の幻想を追い求めて

中年男性と若い女性という組み合わせは映画に限らずとも芸術には溢れている。会いにしろ余りにも陳腐と思われようとも、主にヘテロの男性作家たちはこの組み合わせを延々と繰り返し、つまらない映画を創り出す。それでも才能ある作家はその陳腐さを逆に利用…

Ines Tanović&"Sin"/ボスニア、家族っていったい何だろう?

家族というのはとても微妙な概念だ。血の繋がりとは言いながらも、とてもそれだけでは成立しているとは言えない。そもそも夫と妻/父と母という関係に血の繋がりはないのだから。ならば、どのようにして家族というものは生まれるのだろうか、確かな形を持つの…

北マケドニアに生きる~Interview with Hanis Bagashov

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Ivana Mladenović&"Ivana cea groaznică"/サイテー女イヴァナがゆく!

ルーマニアが現在映画界の頂点にあるのは世界的に常識である。そんな場所に映画を学びに若い才能が来ないはずがないだろう。特に東欧、隣国のモルドバやハンガリーなどから移住してくる若者が多い。今回はそんな才能の中でもトップを行くだろうルーマニアの…

Tyler Taormina&"Ham on Rye"/楽しい時間が終わったその後

例えば友人たちとカラオケに行ったりパーティーに行ったりした時、こんなことを想ったことはないだろうか。こんな楽しい時間、いつまでも終らなければいいのにと。それでも終りのないものは存在しない。どんなものにも終焉はつきまとう。さて、今回紹介する…

Ruth Schweikert&"Wir eltern"/スイス、親になるっていうのは大変だ

反抗期の子供たちを描いた映画は世界に数多くあるはずだ。皆、世界に反旗を翻す若者たちが大好きなのだから。だが反旗を翻される親たちを描き出した作品はそんなに多くない。誰もが反抗的な子供だった時代がありながら、親になる人はそこまで多くないからだ…

Ivan Marinović&"Igla ispod plaga"/響くモンテネグロ奇想曲

映画を観ることの愉しみの1つとして、全く知らない国について知ることができる点が挙げられる。例えばグアテマラ、チュニジア、ラオス……そういった国々についてはニュースで流れることもなく、普通に生きているだけでは名前すら聞くことがないかもしれない。…

Julio Hernández Cordón&"Cómprame un revolver"/メキシコ、この暴力を生き抜いていく

現在のメキシコの状況はお世辞にも良好とは言えない。カルテルの暴力が跋扈し、女性や子供たちなどの弱者が真先に踏み躙られる世界がそこには広がってしまっている。だがこんな世界に対して映画を以て立ち向かおうとする人々がいる。今回は現在のメキシコを…