鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

Mariano González&"Los globos"/父と息子、そこに絆はあるのか?

映画史においてダメ親父映画というのは枚挙に暇がないほど膨大に作られてきた。えっ?じゃあその例を出せって?いやもう多すぎて例を出すのすら憚られるほどだよ。どうせすぐに思い付かないからだろって?何を馬鹿な、そんなのすぐ思い出せるし今までのブログでもダメ親父映画は多く取り上げてきた。ということでダメ親父映画は各自で思い出してもらうことにして、今回はラテンアメリカに属する遠きアルゼンチンにだってもちろんいるダメ親父を描き出した、Mariano González監督の初長編‘“Los globos”を紹介していこう。

更正施設で2年間もの時を過ごした後、今作の主人公である中年男性セサール(González監督が兼任)はブエノスアイレスへと戻ってきた。そして彼は郊外にある小さな風船工場で働き始め、黙々と勤勉に仕事をこなしていく。彼の残りの人生は、そんな何の変哲もない毎日がただただ過ぎていくだけのはずだった。

最初、この作品はセサールの起伏なき日常を淡々と描き出していく。ゴムを型につけ固まったそれを掴み取るとそんな機械的にこなされる風船製造、職場で行われる妙にハードなデスメタル体操、同僚との他愛ないお喋り。そういった場面の数々を撮影監督のFernando Lockettは手振れカメラ多用の、社会派リアリズム的演出で以て描写していくのだ。

だがある日、彼は義理の父から自分の息子であるアルフォンソ(Alfonso González Lesca)の面倒を見ろと押しつけられてしまう。嫌々ながらも彼を車に乗せて、郊外に広がる美しい森や湖へと赴き、父親らしくアルフォンソの探検に付き合ってあげるのだったが、セサールは彼に対して口には出来ないある思いを抱えていた。

正直、セサールは全く無責任な父親であると言わざるを得ない。車の中でアルフォンソが色々と話しているのに彼は生返事でまともに聞こうともしない。しかも遊んでる最中にバーへ寄って若い女性を口説くかと思えば、旧知の仲であるラウラ()という女性とカーセックスにしけこんでいく。そんな姿は見ていると本当にウンザリとしてくる類いのものばかりだ。

だがそんな行動の数には裏があった。セサールの妻でありアルフォンソの母であった女性が事故死した後、セサールは自分では子育ては出来ないと判断したのだ。そうして選んだ選択肢が、アルフォンソを養子に出すということ。故に彼は自身の子供に対してあんなにも雑な扱いを加えている訳だ。

ここで疑問に思えるのは、そんな責任感の欠片も存在しない父親についてをわざわざ映画として描き出す必要性があるのかという点だ。私も最初はそう感じた。そんな思いはセサールの不器用でぶっきらぼうな態度の数々が暴かれるにつれて、観客の中にますます募っていくだろう。

しかし終盤におけるセサールのある行動に、私は心を震わされてしまった。この苦しくも身勝手な、その癖に全く思い通りに行かない人生に対する彼の万感を端的に示したその行動、彼の複雑な胸のうちを言葉もなく表現する一場面の凄み。それは正にこの場面のためにこそ、この映画は存在しているのではないかと思わされるほどだ。私は監督と主演を兼ねるGonzálezの術中にまんまと嵌まってしまったらしい。その一歩間違えればただの駄作になりかねないものを、絶妙の匙加減で以て彼は魅力的な一作に変えたのである。

他の映画とはまた違うやり方で、父と息子の関係性について描いた作品がこの“Los globos”だ。66分という長編としてはタイトな作りで物語自体も意図的にスッパリと幕を閉じながら、その先に希望があることを願いたくなるような余韻が、エンドロールの美しい旋律からは滲み出ている。

アルゼンチン映画界を駆け抜けろ!
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その10 Edualdo Williams&"El auge del humano"/うつむく世代の生温き黙示録
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