ポスト・マンブルコア世代の作家たち
ジェントリフィケーションと呼ばれる都市の富裕化は世界的に問題となっている。先頃、渋谷の宮下公園において日本でもホームレスらを排除したうえで、商業施設であるミヤシタパークが建設されたことが批判の対象になった。都市の富裕化は社会の周縁に置かれ…
さて2010年代において、何と形容すべきだろう、"透明な黙示録"というべき作品が多く製作されているように思われる。それは黙示録の予感が濃厚に満ちながらも、実際の破壊と崩壊は延長され、延長され続け、ただただ禍々しい予感だけが永遠に引き延ばされてい…
例えば友人たちとカラオケに行ったりパーティーに行ったりした時、こんなことを想ったことはないだろうか。こんな楽しい時間、いつまでも終らなければいいのにと。それでも終りのないものは存在しない。どんなものにも終焉はつきまとう。さて、今回紹介する…
カリスマ性のあるロック歌手というのは、当然というべきか映画の題材になることが多い。最近でもQueenのフレディ・マーキュリーを描き出した伝記映画「ボヘミアン・ラプソディー」が話題になったことは記憶に新しいだろう。しかしニューヨーク・インディー映…
Rick Alverson &"The Comedy"/ヒップスターは精神の荒野を行く Rick Alverson&"Entertainment"/アメリカ、その深淵への遥かな旅路 Rick Alversonの略歴と諸作品についてはこちら参照ロボトミー手術とは前頭葉の一部を切除する手術法である。主に双極性障害や…
DVとはただの暴力なのだろうか。いや、違うだろう。それはかつて愛していた者によって愛の名の下に行われるものであり、それは被害者の心と身体を深く深く破壊してしまう。そうして壊されてしまった人々は、ボロボロになった全てを引きずって生きていくこと…
アメリカ映画に欠かせないものとは何だろうか。世界を救うヒーロー、全てを包み込む家族愛、気持ちのよい爆発、どこまでも広がる果てしない大地、洒落た服に身を包んだ人々の小粋なジョーク。様々なものが挙げられるだろうが、もう1つ欠かせない大事なもの、…
いわゆる紀行映画(トラヴェログ)というジャンルがある。ある人物がめぐる旅路の中で見る風景や体験する出来事を捉えていくことで紡がれていく映画のことだ。こういった作品を観ていると、自分たちも語り手と同じく旅をしているような、そんな心地を味わうこ…
この世界に映画として作られていない題材は一体あるのだろうか? 取り敢えず考えてみよう。前人未到の異郷に生きる原住民たちの物語、人間とは全く違う地球外生物についての物語、宇宙の深遠なる起源についての物語……米インディー映画界の恐るべき子供アレッ…
演劇というメディアはよく映画でも題材にされる。それは俳優という核、演技という核がそこにおいて共通しているからだろう。そしてそんな作品の数々は、俳優たちの人生と劇が重なりあい虚構と現実の狭間へと導かれていく……といった筋道を辿ることが多い。Jos…
Chloé Zhao&"Songs My Brothers Taught Me"/私たちも、この国に生きている Chloé Zhao監督の経歴とデビュー長編についてはこちら参照。例えば野球選手でも小説家でもいい、ある出来事がきっかけでその夢が潰えてしまった後、そこに広がる風景とはどういうも…
死は誰の元にも平等にやってくる。あなたの元にも、そして信じたくはないだろうが、あなたの大切な人の元にも。あなた自身の後にあなたの人生は続くことはないが、しかしあなたの大切な人の死の後にはあなたの人生は否応なく続いていく。その時、あなたはそ…
さて皆さん、アメリカのアジア系映画作家と言われて誰が思いつくだろうか。例えば「ドゥーム・ジェネレーション」の鬼才グレッグ・アラキや「SAW」シリーズに「死霊館」シリーズをブームに押し上げたホラー映画界の立役者ジェームズ・ワン、最新映画「クレイ…
最近このブログで紹介してきた奇妙な映画として(注:この記事は結構前に書いて放置していたので、実際は最近じゃない)挙げられるのは、ダミアン・マニヴェルによる愛の劇的な移ろいを描いた“Le parc”(レビュー記事読んでね) や、引きこもりの母親に振り回され…
ネイサン・シルヴァー&「エレナ出口」/善意の居たたまれない行く末 ネイサン・シルヴァー&"Soft in the Head"/食卓は言葉の弾丸飛び交う戦場 ネイサン・シルヴァー&"Uncertain Terms"/アメリカに広がる"水面下の不穏" ネイサン・シルヴァー&"Stinking He…
いわゆるPOV映画という奴は数多くあるがどこもこれもダメダメな作品ばかりだ。手振れカメラがグラグラ揺れるだけの奴に、最後の最後まで怪物出すのを勿体ぶる奴、いきがった若者がぺちゃくちゃ喋ってばっかの奴にと挙げればキリがない。そんな中で米インディ…
今作の主人公はブラッドリー(「サイコ」ヴィンス・ヴォーン)という男、彼は元ボクサーでありながら力を発揮できる場もなく、妻のローレン(「リミットレス」ジェニファー・カーペンター)と共に味気ない日々を送っている。そんなある日、彼は仕事をクビになり…
さて、ブログでは集中的にデヴィッド・ゴードン・グリーンという予測不能な映画作家を追っているのだが、彼は映画作家としてだけではなくプロデューサーとしても大いに活躍している。彼の一番の功績は「MUD」や「ミッドナイト・スペシャル」のジェフ・ニコル…
現在、絶賛サンダンス映画祭が開催中であるが、前々からこの映画祭にはこんな批判が投げ掛けられている。インディー映画の祭典だった筈なのに、いつの間にかメジャーの踏み台になってはいないかと。確かに「フルートベール駅で」のライアン・クーグラーや「…
さて、今年も米インディー映画の祭典であるサンダンス映画祭が開催されているが、去年の映画祭において話題になったトピックが1つあった。それはクリスティーン・チャバックという女性を描いた映画が二作品同時に公開されたことだ。1974年、生放送中に謎の拳…
テキサスタワー銃乱射事件、この痛ましい事件によって31名の負傷者と共に17名の尊い命が失われることになった。そしてアメリカの忌まわしい歴史として組み込まれた事件は何本もの映画、例えばカート・ラッセルが狙撃犯を演じたTV映画「パニック・イン・テキ…
2014年、アメリカの異端チャンネルAdult Swimが"Too Many Cooks"という短編映画をリリースした。最初は「フルハウス」などの良くあるファミリーコメディOPのパロディとして進んでいくのだが、それが異様な形で反復されるうち作品世界が歪みに歪み、スラッシ…
さて、マンブルコアはその規模の異様な小ささから作品作品に同じ俳優ばかり出ているというのがウンザリするほど良くある。ギャラは安く済む、気心知れた友人同士なので作品が作りやすいなどなど様々な利点があってこの方法を選び取っていた訳だが(それにして…
先日マジで信じられないことが起こった。マジでトランプが大統領になったって知った時は信じられなかった。その後から女性やアジア系やアフリカ系の人々、イスラム教徒、障害を持つ人々などマイノリティに対するヘイトクライムが多発した。海の向こうに生き…
Joel Potrykus&"Coyote"/ゾンビは雪の街へと、コヨーテは月の夜へと Joel Potrykus&"Ape"/社会に一発、中指ブチ立てろ! Joshua Burge&"Buzzard"/資本主義にもう一発、中指ブチ立てろ! Joel Potrykusの経歴及び短編"Gordon"&"Ape"のレビューはこちら参照…
Joel Potrykus&"Coyote"/ゾンビは雪の街へと、コヨーテは月の夜へと Joel Potrykusの経歴及び短編"Gordon"&"Ape"のレビューはこちら参照。よれよれのYシャツを着た青年、住宅街を突き進んでいく彼の背中を私たちは追っていく。その背中は頼りないように見え…
米インディーズ映画界ほど豊かな世界が広がる場所はないのではないか、私は日々インディー映画を観ながら思うのだ。孤高の禅僧として異色のジャンル映画を作り続ける“The Phenom”のノア・ブシェル Noah Buschel, 真にインディペンデントな作家として周縁を生…
さて、このブログでは"ポスト・マンブルコアの世代"と称してテン年代の米インディー作家を紹介している。この命名の由来は丁度このブログを始めた折り、大手映画情報サイトindiewireに"マンブルコアという言葉も、今年で10歳を迎えた。もうこの言葉使うの止…
さてアレックス・ロス・ペリーである。ポスト・マンブルコアの世代における米インディー映画界の申し子、既に世界的な名声を博し次回作を待望される大いなる存在。だが勿論のこと、日本ではほぼ受容が成されておらず、彼の長編1本すら日本では上映されていな…
何の前触れもなく、全く突然に、家族の元に長い間疎遠だった親/子供が現れ、平穏な暮らしを送っていた家族に波紋を投げかける。こういった筋立ての映画は枚挙に暇がない。だからこそ敢えてこのテーマを選んだ作家たちは"誰が失踪していたのか?" "なぜ失踪し…