鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

工藤梨穂&「オーファンズ・ブルース」/記憶の終りは世界の終り

このサイトでは数々の日本未公開映画を紹介してきたが、今まで1度も日本映画は紹介してこなかった。何故なら日本未公開の日本映画を観る機会は当然少ないからだ。ながらも先にぴあフィルムフェスティバル(PFF)が開催されたのだが、有難いことに青山シアター…

Bogdan Theodor Olteanu&"Câteva conversaţii despre o fată foarte înaltă"/ルーマニア、私たちの愛について

現在、ルーマニアでは同性婚禁止の動きが活発化している。政府が国民投票によって結婚についての憲法条項の改訂を決めたのである。もしこれによって本当に同性婚が禁止されてしまったならば恐ろしいことだ。LGBTQである人々の権利が著しく侵害されてしまうの…

ミカエル・エール&"Amanda"/僕たちにはまだ時間がある

死によってある人の生が終わりを告げてしまったとする。しかしその人にとっての大切な人の人生は未だ終わることなく続いていくはずだ。そんな時、人々はどうやって喪失の悲しみや苦しみと向き合えばいいのだろうか。ミカエル・エール Mikhaël Hers監督は第2…

ヴァレスカ・グリーゼバッハ&"Western"/西欧と東欧の交わる大地で

EUの発展によってますますヨーロッパの境界が緩やかになりながらも、いやだからこそと言うべきか西欧と東欧という地域の交わりを描き出そうとする作品が増えてきている。近年で最も話題になったのはマーレン・アーデ監督作「ありがとう、トニ・エルドマン」…

Iram Haq&"Hva vil folk si"/パキスタン、尊厳に翻弄されて

さて、このブログでは移民という立場から様々な物事を描き出す映画を多く紹介してきた。それは個人的理由から政治的理由、自発的なものから止むに止まれぬものまで、種々の理由で国から国へと移住する人々がこのテン年代においてどんどん増えてきているから…

アイダ・パナハンデ&「ナヒード」/イラン、灰色に染まる母の孤独

シングルマザーの苦境を描き出した作品は少なくない。社会の停滞や腐敗の影響をまず真っ先に受ける筆頭が周縁の中の更に周縁にいる彼女たちであり、日本でも彼女たちを見舞う苦境や悲劇についての報道が止むことがない。そして国が違えば彼女たちの直面する…

Babak Jalali&"Radio Dreams"/ラジオには夢がある……のか?

さて、皆さんはラジオをお聞きになられるだろうか。私の場合、昔はちょいちょい聞いていたのだが、今はもっぱら映画のPodcastばかり聞いている。テレビについてもそうなのだが、歳を取るにつれ、決まった時間に決まった番組がやるからその時間にラジオの前に…

Phuttiphong Aroonpheng&"Manta Ray"/タイ、紡がれる友情と煌めく七色と

さて、ヴェネチア国際映画祭はメキシコの映画作家アルフォンソ・キュアロンの最新作“Roma”が金獅子賞を獲得したことで、幕を閉じることとなった。だが私が興味あるのはメインのコンペティション部門よりもサイドのオリゾンティ部門である、とは前も言った。…

リン・シェルトン&「アラサー女子の恋愛事情」/早く大人にならなくっちゃなぁ

リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる? リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ? リン・シェルトン&「ラブ・トライアングル…

リン・シェルトン&"Touchy Feely"/あなたに触れることの痛みと喜び

リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる? リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ? リン・シェルトン&「ラブ・トライアングル…

Ivan Ayr&"Soni"/インド、この国で女性として生きるということ

最近ネット上でキャットコーリングという言葉が話題になった。この言葉は、その人の迷惑も考えずに男性が女性に対して声をかけたりナンパしたりするハラスメント行為を意味している。これらにウンザリしている女性たちは少なくないだろう。そしてそれは日本…

リン・シェルトン&「ラブ・トライアングル」/三角関係、僕と君たち

リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる? リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ? リン・シェルトン&「不都合な自由」/20年の…

Gastón Solnicki&"Introduzione all'oscuro"/死者に捧げるポストカード

皆さんはHans Hurchという人物を知っているだろうか。彼はオーストリア出身の映画ジャーナリスト兼ウィーン国際映画祭のアーティスティック・ディレクターも務めた人物だった。更に彼はドイツを拠点に活躍した偉大なる作家コンビであるストローブ=ユイレの作…

リン・シェルトン&「不都合な自由」/20年の後の、再びの出会いは

リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる? リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ? リン・シェルトンの経歴および長編作につい…

リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ?

リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる? リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ? リン・シェルトンの経歴および長編作につい…

Sofia Bohdanowicz&"Maison du bonheur"/老いることも、また1つの喜び

老いることは恐ろしいことなのだろうか?テレビCMや広告では若さこそが至上とするような内容が喧伝され、私たちに恐怖を撒き散らしていく。そして老いゆく人々、老いた人々には人生の終りがやってきたとばかり軽蔑の視線が向けられていく。だが果たして本当…

Mahmut Fazil Coşkun&"Anons"/トルコ、クーデターの裏側で

2016年、トルコで軍事クーデターが起こったことは記憶に新しいだろう。こちらは未遂に終わったが、そんな未遂のものを含めてトルコでは幾度となく軍事クーデターが巻き起こっている。今回紹介するMahmut Fazıl Coşkun監督によるトルコ映画“Anos”もそんな過去…

Flávia Castro&"Deslemblo"/喪失から紡がれる"私"の物語

60年代から80年代にかけて、ブラジルは軍事政権下におかれていた。1964年、クーデターによってカステロ・ブランコ将軍が大統領に就任した後から約20年の間、その時代は抑圧と粛清の嵐が吹き荒れ、突如行方不明となる人物が続出することとなる。一体何故彼ら…

Szőcs Petra&"Deva"/ルーマニアとハンガリーが交わる場所で

ルーマニアとハンガリーは長い間複雑な関係性を築いてきたが、それ故にルーマニア内にはハンガリー人コミュニティが存在している。「ルーマニアを知る60章」によれば、2002年の時点でハンガリー系住民はトランシルヴァニアを中心に約143万人おり、それはルー…

結局マンブルコアって何だったんだ?(作品リスト付き)

さて、マンブルコアである。ゼロ年代のアメリカ映画界を席巻したムーブメントである。今ブログで“結局マンブルコアって何だったんだ?”というシリーズ名でマンブルコア映画の特集記事を書いている訳だが、それを始めたのは2016年、とうとうマンブルコアを代…

アンドリュー・バジャルスキー&「成果」/おかしなおかしな三角関係

アンドリュー・バジャルスキー&"Funny Ha Ha"/マンブルコアって、まあ……何かこんなん、うん、だよね アンドリュー・バジャルスキー&"Mutual Appreciation"/そしてマンブルコアが幕を開ける アンドリュー・バジャルスキー&"Beeswax"/次に俺の作品をマンブ…