2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧
子供の頃、私たちはただただ無邪気さの中に浸っていることができる。しかしいつかは、その生温くも心地よい無邪気さを捨て去って、世界へと羽ばたく必要があるだろう。その過程がどんなに辛くとも、どんなに奇妙なものだとしても。Csuja László監督のデビュ…
さて、コソボである。他の旧ユーゴスラビア諸国のようにこの国もまた苛烈な紛争を経験し、数多の死と破壊に見舞われることとなった。その時代から約20年が経ち復興は確かに進みながらも、今にも癒えない傷や隠された忌まわしき過去というものはコソボの人々…
さて、スリランカである。近年ではカンヌでパルムドールを獲った「ディーパンの戦い」の主人公たちがスリランカ難民だったなどがある。しかしスリランカ自体の映画は余り多くないし、日本でもほとんど評判について聞くことはないだろう。という訳で今回はそ…
2012年、マケドニアで凄惨な殺人事件が起こった。首都スコピエの郊外に位置する湖で4つの死体が発見されたのだ。どれも10代の少年たちのものであり、頭部を撃ち抜かれていた。この事件はマケドニア全土に衝撃を巻き起こす。イスラム過激派の仕業など噂が全土…
さて、モロッコである。映画史に残る傑作「カサブランカ」の舞台として有名なこの国であるが、モロッコ自体の映画は少なくとも日本では余り知られていないというのが現状だろう。しかしコンスタントに映画が製作され、何本もの作品がカンヌ映画祭で上映され…
持てる者と持たざる者の対立、1%と99%の対立は世界各地で繰り広げられている。世界が不穏な方向へと傾くなかで、この闘争もまた複雑で熾烈なものとなっていっている。Olga Korotko監督作である“Bad Bad Winter”は、中央アジアの小国であるカザフスタンにおい…
ホラーという映画ジャンルは、他のジャンルよりも多くかつ意識的に、この世に存在する恐怖を隠喩的に描いてきた。最近の映画でいえば「クワイエット・プレイス」はドナルド・トランプに代表される不寛容が台頭する世の中で親として子供を育てることの恐怖を…
さて、ウルグアイである。アルゼンチンの隣に位置する小国であるがゆえ、この国の有能な作家陣はアルゼンチンに行ってしまい、この国自体の映画産業が特に大きいということはない。それでも祖国への愛着を持つ人々は世界各地に存在している。という訳で今回…
あなたはヤクートという人々のことを知っているだろうか。北東アジアに住んでいるテュルク系民族に属する人々であり、見た目は日本人にも似ている。彼らの中には未だに伝統を守りながら、氷原で自然と共に生活し続けているという者たちも多くいる。ブルガリ…
ラドゥ・ジュデ&"Cea mai fericită fată din ume"/わたしは世界で一番幸せな少女 Radu Jude&"Toată lumea din familia noastră"/黙って俺に娘を渡しやがれ! Radu Jude & "Aferim!"/ルーマニア、差別の歴史をめぐる旅 ラドゥ・ジュデ&"Inimi cicatrizate"…
この世界に映画として作られていない題材は一体あるのだろうか? 取り敢えず考えてみよう。前人未到の異郷に生きる原住民たちの物語、人間とは全く違う地球外生物についての物語、宇宙の深遠なる起源についての物語……米インディー映画界の恐るべき子供アレッ…
芸術において男性性とは雄大な自然と結びつけられていくことが多い。例えば蒼窮へと向かって聳えたつ山々、地中深くに根を張りその葉を繁らせる大樹。しかし人間というものはちっぽけなものだ。実際に剥き出しにされたちっぽけな男性性は大自然に投げ出され…
私たちは精神や魂だけで生きているのではない。そこには否応なく身体というものが付いてまわる。身体とは人間にとって最も近しい存在の1つでありながら、最も遠い他者の1つでもあり、それを理解するのは余りにも難しい。ゆえにそれを探求する旅路はひどく険…