鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

Morteza Farshbaf&"Tooman"/春夏秋冬、賭博師の生き様

最近のイラン映画がアツい。未だにキアロスタミ、パナヒ、ファルハーディといったイラン革命以後の巨匠たちの影響は濃厚ながら、その安全地帯から這い出て、新たなるイラン映画を作ろうとする映画作家たちが現れ始めている。例えばSaeed Roustaee サイード・…

Eugen Jebeleanu&"Câmp de maci"/ルーマニア、ゲイとして生きることの絶望

ルーマニアはLGBTQの権利という意味ではかなり保守的な部類に入る。それを象徴する事件が近年頻発している。例えばロマ文化研究者とロマ文化の担い手が恋に落ちる、ゲイ版"ロミオとジュリエット"と呼ばれるルーマニア映画"Soldații: Poveste din Fereastra"…

セルビア、湖に映る人生~Interview with Ivan Milosavljević

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

コソボ、羽音に乱されて~Interview with Donart Zymberi

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

これは疑いではなく、確信なんです~Interview with Jancsó Miklós by Michael Chanan

razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.com razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.comということでJancsó Miklós ヤンチョー・ミクローシュのインタビュー翻訳第3弾をお届けする。今回は1968年制作の"Fényes szelek"("輝ける風")がイギリスで上映された際、映画批…

長い間、私は世界を変えられると思っていた~Interview with Jancsó Miklós

razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.comということでJancsó Miklós ヤンチョー・ミクローシュのインタビューその2である。今回はハンガリーの雑誌Ügyvéd Világが行った、ヤンチョー生前最後のインタビューである。媒体が映画雑誌ではなく法律雑誌で且つイン…

私ではなく、世界が変わってしまった~Interview with Jancsó Miklós by Graham Petrie

現在、この鉄腸マガジンではハンガリー映画史を深堀りする企画を行っているが、ハンガリー映画史を語るうえで欠かせない人物こそJancsó Miklós ヤンチョー・ミクローシュだ。1950年代から映画を製作し始めた彼は、ハンガリーの歴史を異様な長回しとともに語…

Ruxandra Ghitescu&"Otto barbarul"/ルーマニア、青春のこの悲壮と絶望

どこの国にも、どの時代にもパンク野郎というものはいて、若く苦悶に満ちた音を響かせているものだ。だがルーマニアのパンク野郎についての芸術作品を、あなたは観たことがあるだろうか?無いのならばあなたはRuxandra Ghitescu監督による驚くべきデビュー長…

Ismail Safarali&"Sessizlik denizi"/アゼルバイジャン、4つの風景

私はこの鉄腸マガジン上で2020年代の映画界を担うのはアゼルバイジャンだと何度も発言している。故に私はアゼルバイジャンの新たなる才能に目を光らせている訳だが、そこで出会ったのである。彼の名はIsmail Safarali、彼の最新短編"I Still Must Watch You …

Paúl Venegas&"Vacio"/エクアドル、中国系移民たちの孤独

中国系移民たちはよりよい未来を求めて世界各地へと散らばることになるが、彼らの行く先の1つがラテンアメリカだった。彼らは南米の異国の地で身を寄せ合いながら暮らし、今ではブエノスアイレスやサンパウロなど大都市各地に大きな共同体が作られているほど…

誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいハンガリー・アニメーションのすべてについて教えましょう~Interview with Varga Zoltán (Part 2)

razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.comということでVarga Zoltánへのインタビュー後編です。ここでは2010年代における最も重要なハンガリー・アニメーション、この世界における最も偉大な巨匠であるJankovics MarcellとCsaba Vargaについて、そしてハンガリ…

誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいハンガリー・アニメーションのすべてについて教えましょう~Interview with Varga Zoltán (Part 1)

さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…

David Pérez Sañudo&"Ane"/バスク、激動の歴史と母娘の運命

2018年にバスク自由と祖国(ETA)が解散宣言を行ったことは記憶に新しい。しかしそれがバスク紛争の終りを告げたかと言えばそうではないし、人々の心には未だ過去が憑りついている。それはバスクの芸術家たちがこの長きに渡る紛争の時代を描き続けていることか…

Anna Cazenave Cambet&"De l'or pour les chiens"/夏の旅、人を愛することを知る

"De l'or pour les chiens"の始まりはいささか、いやかなり軽薄なものだ。制作会社のロゴが出る時点で男女の喘ぎ声が聞こえ、予想通りファーストショットから彼らが砂浜でセックスをする場面が映しだされる。カメラはある程度離れているが、女性の乳房が揺れ…

エストニア、駆け抜ける死と生~Interview with German Golub

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Pavol Pekarčík&"Hluché dni"/スロヴァキア、ロマたちの日々

東欧文化を語るうえでロマの存在は欠かせないだろう。東欧の人々は彼らの存在を否定する(私はルーマニア人と話すことが多いが、その傾向が多く見られる。"彼らはルーマニア人ではない"と)が、ロマの人々は確かに生きていて、独自の文化を築いている。最近注…

Esther Rots&"Retrospekt"/女と女、運命的な相互不理解

ゼロ年代も終りに近づいた2009年、1つの映画がオランダ映画界に激震を巻き起こした。それが新人監督Esther Rotsによるデビュー長編"Kan door huid heen"だった。精神的激動に見舞われた女性が救いを求める姿を描きだした本作は、オランダ最大の映画祭ロッテ…

Ameen Nayfeh&"200 Meters"/パレスチナ、200mという大いなる隔たり

パレスチナ人映画作家たちは魅力的な娯楽性を通じて、パレスチナの現状を語るのに長けた者たちが多い印象を受ける。例えばエリア・スレイマンは「D.I.」や「天国にちがいない」などにおいて知性に裏打ちされたユーモアと共に、パレスチナの現在を見据え続け…

Horvát Lili&"Felkészülés meghatározatlan ideig tartó együttlétre"/一目見たことの激情と残酷

一目惚れというものにはその人の人生を変貌させる、時には完膚なきまでに破壊し尽くす魔力が存在している。それは理論や倫理を越えた凄絶なる力を持ち合わせている。一度その魔力に憑りつかれた人間は抵抗も虚しく、その荒波のような勢力に呑みこまれ、愛へ…

Nora Martirosyan&"Si le vent tombe"/ナゴルノ・カラバフ、私たちの生きる場所

皆さんもニュースでご覧になられただろうが、今アルメニアとアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフという地域を巡って激しい紛争を繰り広げている。Twitterでは紛争の動画が流れ(日本人はまるでこの動画を一種の娯楽作品のように捉え、気軽にTwitterで共有し…

ナルシスとプシュケ、そしてハンガリー映画史~Interview with Csiger Ádám

さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…

Desiree Akhavan&"The Bisexual"/バイセクシャルとして生きるということ

デジリー・アッカヴァン&「ハンパな私じゃダメかしら?」/失恋の傷はどう癒える? - 鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!! Desiree Akhavan監督の経歴と彼女のデビュー作"Appropriate Behavior"についてはこちら参照。今、日本で上映されている作品の中では「エマ、愛の罠…

愛、ハンガリー映画史~Interview with Bátori Anna

さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…

「半沢直樹」とマスード・キミアイ、そして白色革命の時代

お世辞にも真剣な視聴者とは言えなかったが、未公開映画を観る間に私も「半沢直樹」のSeason 2を観ていた。先の最終回なんかはラストにおける堺雅人と香川照之の対峙場面などは男と男の意地のぶつかりあいが最高潮に達し、もはや噎せ返る官能性がマニエリス…

Visar Morina&"Exil"/コソボ移民たちの、この受難を

セルビアとの度重なる紛争や未だに国に蔓延する貧困故に、コソボの人々には自身の故郷に背を向け、ヨーロッパ各地で移民として生活する者たちも多い。そして彼らはそれぞれに深刻な問題と直面することとなっている。例えば2017年制作の"T'Padashtun"はオラン…

More Raça&"Galaktika e andromedës"/コソボ、生きることの深き苦難

コソボは2008年にセルビアから独立を宣言したばかりの、ヨーロッパで最も若い国だ。それ故に貧困は大きな問題であり、多くの人々が苦闘している状況が続く。今回紹介する作品はそんな貧困との闘いを続ける中年男性の姿を追ったコソボ映画、More Raça監督の長…

Merawi Gerima&"Residue"/ワシントンDC、ジェントリフィケーション

ジェントリフィケーションと呼ばれる都市の富裕化は世界的に問題となっている。先頃、渋谷の宮下公園において日本でもホームレスらを排除したうえで、商業施設であるミヤシタパークが建設されたことが批判の対象になった。都市の富裕化は社会の周縁に置かれ…

Ru Hasanov&"The Island Within"/アゼルバイジャン、心の彷徨い

日本ではあまり知られていないが、アゼルバイジャンはチェスの強豪国である。この国にはヴガル・ガシモフやガルリ・カスパロフといった数多くのチェス・チャンピオンがおり、例えば2019年には世界U-16チェスオリンピックでは幾つもの優勝候補を破り、アゼル…

Hilal Baydarov&"Səpələnmiş ölümlər arasında"/映画の2020年代が幕を開ける

映画批評家として映画を観続けてきたうえで、2020年代に台頭する国はどこかと聞かれたとするなら、私はこう答える。コソボ、スロヴェニア、カザフスタン、そしてアゼルバイジャンと。アゼルバイジャンに関してこう確信させてくれた映画作家がHilal Bydarov …

Adilkhan Yerzhanov&"Yellow Cat"/カザフスタン、映画へのこの愛

さて、2010年代はカザフ映画界において躍進の年だった。Emir Baigazin エミール・バイガジンのデビュー長編"Harmony Lessons"がベルリン国際映画祭で上映、撮影賞を獲得し、更に彼の第3長編"The River"はヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で監督賞を獲得する…