鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2019-01-01から1年間の記事一覧

済藤鉄腸の2010年代ベスト100!!!!!

ということで、題名通りの記事。私のブログを読んでる方にはお解りの通り、あまりにも未公開映画が多すぎるので、表記は全部英語に統一してある。もう面倒臭いので、邦題があるのを知りたい方は各自でググってください。それからよくベストを選ぶ時、1監督1…

2020年代、期待の新鋭映画監督110!

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Fabio Meira&"As duas Irenes"/イレーニ、イレーニ、イレーニ

同じ名前を持つ、そこには奇妙な絆が生まれることになる。不快さを感じるにしろ、心地よさを感じるにしろ、私たちは名前の奇妙な重力に引き込まれていくのだ。クシシュトフ・キェシロフスキ監督作「ふたりのベロニカ」など、その魔力を描き出した芸術作品は…

Mohamed El Badaoui&"Lalla Aïcha"/モロッコ、母なる愛も枯れ果てる地で

母なる愛は強靭で偉大だ。何物にも負けることはない。映画や小説などの芸術作品はそうして母の愛の素晴らしさというものを喧伝してきた。そんな作品が誰もが信じる愛の強さ、そこに立ちはだかるものは何もないように思えてくる。だが何物も永遠ではなく、い…

Radu Jude&"Îmi este indiferent dacă în istorie vom intra ca barbari"/私は歴史の上で野蛮人と見做されようが構わない!

ラドゥ・ジュデ&"Cea mai fericită fată din ume"/わたしは世界で一番幸せな少女 Radu Jude&"Toată lumea din familia noastră"/黙って俺に娘を渡しやがれ! Radu Jude & "Aferim!"/ルーマニア、差別の歴史をめぐる旅 ラドゥ・ジュデ&"Inimi cicatrizate"…

Tashi Gyeltshen&"The Red Phallus"/ブータン、屹立する男性性

さて、ブータンは敬虔な仏教国である。それに裏打ちされた迷信も未だに根強く信じられている。そしてこの状況が抑圧的な構造を創り上げることもまま存在する。今回紹介するのはそんなブータンの現状を描き出した意欲作、Tashi Gyeltshen監督の初長編"The Red…

Dechen Roder&"Honeygiver among the Dogs"/ブータン、運命の女を追って

さて、ブータンである。巷では世界一幸福な国と言われていたり、その言説に反するように真逆のことが語られたりと、日本ではその全容が定かではない。そんな国について知りたい時、一体何が役に立つかといえば、もちろん映画な訳である。ということで今回は…

ルーマニア、日常の中の美しさ~Interview with Letiția Popa

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

私の身体、私の言葉~Interview with Camila Kater

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Tomas Vengris&"Motherland"/母なる土地、リトアニア

1991年12月、ソビエト連邦は崩壊することとなった。それによってこの国に支配されていた属国群は独立を獲得することとなる。パルト三国の1国であるリトアニアもその内の1つだ。そして他の国と同じように、独立によって様々な激動を経験することになる。今回…

リトアニアの裏側にある狂気~Interview with Jurgis Matulevičius

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Dag Johan Haugerud&"Barn"/ノルウェーの今、優しさと罪

さて、ノルウェーである。この国を含め北欧諸国は福祉や教育などがキチンと整備されており、それに関する書籍も多く日本で出版されているので、日本人にもこの国々に羨望の視線を向ける人々が多い。だがそれはこの国に問題がないことを意味しない。むしろ問…

カザフスタンの男と女~Interview with Eldar Shibanov

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Atiq Rahimi&"Our Lady of Nile"/ルワンダ、昨日の優しさにはもう戻れない

さて、ルワンダである。この国で有名なのは哀しいが虐殺という痛ましい歴史だろう。現在は目覚ましい復興を遂げているが、その虐殺の前、ルワンダにどんな現実が広がっていたか知っている人は少ないのではないだろうか。今回はそんなルワンダの知られざるを…

ルーマニアの映画批評、世界の映画批評~Interview with Flavia Dima

さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…

Nils-Erik Ekblom&"Pihalla"/フィンランド、愛のこの瑞々しさ

さて、毎年冬に東京ではフィンランド映画祭が行われる。日本では未公開である現代のフィンランド映画を上映してくれる有り難い映画祭だ(個人的にはいつかルーマニア映画祭とかも上映されないかなと羨ましく思っている)という訳で今回はそれに合わせてフィン…

Gregor Božič&"Zgodbe iz kostanjevih gozdov"/スロヴェニア、黄昏色の郷愁

さて、スロヴェニアである。この国はイタリアと国境を接しており、歴史的にも大きな結びつきを見せていた。特にイタリアが枢軸国として侵略戦争を行っていた第2次世界大戦時代、2つの国の国境付近では静かなる激動が起こっていた。今回はそんな状況を極個人…

Tamar Shavgulidze&"Comets"/この大地で、私たちは再び愛しあう

昔から女性を愛し、女性に愛されてきた、いわゆるレズビアンという人々がいた。しかし彼女たちの愛と人生は平坦なものではあり得なかった。社会の同性愛者への不理解や偏見に晒され、そして個人的な苦悩にも苦しめられ、愛する者と別たれてきた人々も多いだ…

Antoneta Kastrati&"Zana"/コソボ、彼女に刻まれた傷痕

個人的な意見だが、最近のコソボ映画は頗る繊細な作品が多い。例えばBlerta Zeqiriの"Martesa"やLendita Zeqirajの"Shpia e Agës"など、静かに紡がれていく風景を背景として、登場人物たちの心情が丹念に描かれていく。そしてその中にはコソボ人としての壮絶…

Oskar Alegria&"Zumiriki"/バスク、再び思い出の地へと

良きにしろ悪しきにしろ、子供時代の思い出というのは人々にとって重要な意味を持つ。それは再現したり、修正したりすることができないからだ。だがそれでももう一度この思い出を再現しようとする者は確かに存在する。その過程では一体何が起こるのか。この…

Marie Grahtø&"Psykosia"/"私"を殺したいという欲望

自殺というテーマは、比較的若い芸術ジャンルである映画・ドラマでも多く描かれてきた。例えばルイ・マルの「鬼火」は人生への虚無と倦怠が自殺へと繋がる様を描き出した作品だったし、最近話題である「13の理由」は少女の自殺が高校生たちの心に波紋を広げ…

Théo Court&"Blanco en blanco"/チリ、写し出される虐殺の歴史

チリにはある黒歴史が存在している。それがセルクナム族の虐殺だ。19世紀、チリとアルゼンチンに跨る土地ティエラ・デル・フエゴには先住民族であるセルクナム族が住んでいた。しかしここに入植してきたチリ人たちは、アルゼンチン人やイギリス人たちと共に1…

Valentyn Vasyanovych&"Atlantis"/ウクライナ、荒廃の後にある希望

2019年9月7日、ロシアとウクライナは収監していた相手国の国民を釈放、拘束者を交換することになった。その中にはテロ活動の罪で禁錮20年の判決を受けたウクライナの映画監督オレグ・センツォフがいた。ジャン・リュック・ゴダールなど世界中の映画監督は彼…

ボスニアの大地に立つ2人~Interview with Maja Novaković

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Dmitry Mamulia&"The Criminal Man"/ジョージア、人を殺すということ

ジョージア映画は歴史を鑑みると絵画的な素養が根底にある作品が多かったように思われる。実在の画家の伝記映画である「放浪の画家ピロスマニ」に始まり、テンギズ・アブラゼの「祈り」、最近公開された作品でもザザ・ハルバシ監督の「聖なる泉の少女」は絵…

Mani Haghighi&"Pig"/イラン、映画監督連続殺人事件!

現代イラン映画と言えば、アスガー・ファルハディ作品に代表される重厚なドラマ作品だろう。イランの厳しい戒律に端を発する問題、更にそれらが呼び込む親族・友人間の軋轢、そういった要素が濃密な緊張感を以て描かれてきた。だが今回紹介する作品はそうい…

Saeed Roustaee&"Just 6.5"/正義の裏の悪、悪の裏の正義

さて、60年代から70年代にかけては骨太の刑事ものが流行った。例えば「ダーティ・ハリー」や「フレンチ・コネクション」など、アメリカではマチズモの塊である刑事たちが犯罪者たちを執念で追い続ける作品が多数制作された。イタリアでもそれを模倣した刑事…

Vesela Kazakova&"Cat in the Wall"/ああ、ブレグジットに翻弄されて

2016年、イギリスは国民投票によってEUからの離脱を決定した。通称ブレグジットである。これによって世界が激震を遂げたが、その中でも直接的に影響を受ける一団が東欧移民だった。ルーマニアやブルガリアなどの東欧には貧しい自国から逃れて、より豊かな西…

Amanda Kramer&"Ladyworld"/少女たちの透明な黙示録

さて2010年代において、何と形容すべきだろう、"透明な黙示録"というべき作品が多く製作されているように思われる。それは黙示録の予感が濃厚に満ちながらも、実際の破壊と崩壊は延長され、延長され続け、ただただ禍々しい予感だけが永遠に引き延ばされてい…

Siniša Gacić&"Hči Camorre"/クリスティーナ、カモッラの娘

カモッラはイタリア4大マフィアの1つと言われるほどに巨大な犯罪組織だ。彼らはナポリを拠点として麻薬の密売や、建設業や産廃ビジネスなどへの参入など様々な犯罪に深く関わっている。だが犯罪に加担し続ける者がいる中で、そこから逃れようとする者も確か…