フランス映画
ブリュノ・デュモンの"France"を観た。最初はすわコメディ版「ハデウェイヒ」か?と思ったが、最終的にはそれ以上の作品に思えた。ある人間存在の精神というものが一線を越える。これはデュモン映画のお約束だが、今回はふてぶてしさとグチャグチャさを行き…
"De l'or pour les chiens"の始まりはいささか、いやかなり軽薄なものだ。制作会社のロゴが出る時点で男女の喘ぎ声が聞こえ、予想通りファーストショットから彼らが砂浜でセックスをする場面が映しだされる。カメラはある程度離れているが、女性の乳房が揺れ…
死によってある人の生が終わりを告げてしまったとする。しかしその人にとっての大切な人の人生は未だ終わることなく続いていくはずだ。そんな時、人々はどうやって喪失の悲しみや苦しみと向き合えばいいのだろうか。ミカエル・エール Mikhaël Hers監督は第2…
あなたはポール・ヴェキアリ Paul Vecchialiというフランスの映画作家を知っているだろうか。ヌーヴェルヴァーグの影で個性的な作品を作り続けた映画団体ディアゴナール社のリーダー的存在であり、80代を越えても現役で映画を製作し続ける生ける伝説というべ…
2015年、ISによってパリは同時多発テロに見舞われ、多くの人々が傷つき命を落とした。そうしてパリはかつてない絶望感に覆い尽くされることになる。だがしかし、壱でもあっても世界には絶望を吹き飛ばすような希望を煌めかせる人々が確かに存在している。そ…
皆さんはフランスのソフィア・アンティポリスという都市を知っているだろうか?えっ、知らない?それならば偉大なる百科事典Wikipedia様にご登場願おう。“ソフィア・アンティポリス(Sophia Antipolis)はフランス・アルプ=マリティーム県にあるテクノポリス…
さてコンゴである。とはいえまず言うべきなのは、いわゆるコンゴという国はこの世界に2つ存在している、つまりコンゴ共和国とコンゴ民主共和国である。前者はフランスが、後者はベルギーが植民地化した故に公用語も同じフランス語で紛らわしいことこの上ない…
空港、絶え間なく人々が行き交う場所、様々な人生が交錯する場所。ここから新たな場所へと飛びたつ者がいれば、遥かな旅の末にここへと戻ってくる者がいる。そんな特別な場所ゆえに、空港を舞台とした作品はスティーヴン・スピルバーグの「ターミナル」や「…
芸術作品とは否応なくその時代を反映するものであるが、こと映画に関しては映像メディアという側面もあるがゆえ、もはやフィクションですらもある意味で時代を撮すドキュメンタリーのような役割を果たすことになる。その過程で否応なく問題となってくるのが…
心を引き裂くような悲しい事件が起こった時、特に誰か最愛の人を亡くしてしまった時、私たちは絶望感にうちひしがれながら、しかしその先にもっと深い絶望があることを知ることになる。つまりは最愛の人を失った先にも、自分たちの人生は続いていくという絶…
さて、ダミアン・マニヴェルである。去年彼の長編デビュー作である「若き詩人」が劇場公開されたり「息を殺して」の五十嵐耕平監督と共に青森を舞台とした作品を共同で製作していたりと、彼の存在は日本でも結構馴染みが深い。今回はそんなマニヴェル監督が2…
さてアニメーションである。この記事を書く前に調べてみたのだが、ブログで300本以上の映画をレビューしてきたのに、実は今まで1度もアニメーション映画を取り上げてこなかったらしい。別にアニメが嫌いな訳ではなく、映画にハマる10年以上前は超アニメを観…
例えば1つの物語があり、そこには1人のーー時には何人ものーー主人公がいて、物語を通じて私たちは彼/彼女と共に生きていくことになる。だから物語の終りは彼らとの旅の終りでもある。そうして別れを告げる時、名残惜しさと共にもっとこの物語が長く続けば良…
ルイ14世、ブルボン朝第3代のフランス王国国王であり別名"太陽王"。当時ヨーロッパ随一の国力を誇っていたフランスを指揮し、侵略戦争によって領土を広げ更に国力を増強、豪奢の限りを尽した末にあのベルサイユ宮殿を作り、フランス絶対王政の全盛期を謳歌し…
2001年9月11日アメリカ同時多発テロ事件が発生、それを受けジョージ・W・ブッシュ大統領はテロとの戦いを宣言した。タリバン政権の関与が示唆され、アメリカはイギリス、カナダ、ドイツなどと共同でアフガニスタン派兵を行うこととなるが、その中にはフラン…
先日"ギリシャの奇妙なる波"を代表する作家ヨルゴス・ランティモスの初英語作品「ロブスター」が上映された。コリン・ファレルやレイチェル・ワイズ、レア・セドゥーなど日本でも有名な実力派俳優が多く出演しているが、そんな中であのメイドを演じていた俳…
アリス・ウィンクール&「博士と私の危険な関係」/ヒステリー、大いなる悪意の誕生 アリス・ウィノクールの略歴、およびデビュー長編についてはこちら参照さて、アリス・ウィノクールである。先日彼女が共同脚本を手掛けたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監…
6月、トルコの新鋭作家デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの長編デビュー作「裸足の季節」が公開される。2016年度セザール賞の編集・音楽・初監督作・脚本賞を獲得した。が、もちろんここではエルギュヴェン監督を紹介する訳ではない。実は脚本賞はエルギュヴェ…
私に大学時代のことを余り聞かないで欲しい。何か思い出したくないことがある訳ではなく、だが思い出したいことがある訳でもない、つまりは大学時代、私には何だって起きることはなかった。それが辛いのだ。しかしそれはまだ私が若いからそう思っているのか…
何度か私はこのブログで配信サイトMUBIについて話している。このサイトは日本では観るのが難しい映画を鑑賞できる意味で本当に最高でマジみんな入りなよ、月額600円だよ!って感じだが、Twitterなどでは旧作が観れるのが有難いって声ばかりで、ここでしか観…
モデル業界を描いた映画は数知れない。まず思い浮かぶのはイタリアン・ホラー界の巨匠マリオ・バーヴァによる極彩ジャーロ「モデル連続殺人!」だ、題名の通りモデルがどんどんブチ殺されていく俗悪殺人ものジャーロの先駆的存在である。そして80年代にもジ…
さてマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2016の開催である。1月18日から2月18日までの間、日本未公開のフランス映画が配信上映される訳で、配信大好きな私としては勿論観ない訳がないのである。ということで今日からmyFFF特別編としてフランス語圏期待…
私はまだ観ぬ素晴らしき映画たちを探すため、日々ネットの海へと飛び込んでいるのだが、"これは面白そうだ"と気になって監督名をググった時、よく監督が黒と黄色の壁の前に立っている画像に鉢合わせる。上の画像もそうな訳だが、ここはスイス・ロカルノ映画…
「禁じられた遊び」「ポネット」「ハッシュパピー」「メイジーの瞳」最近ではM・ナイト・シャマランの「ヴィジット」や「ぼくたちの家路」などが日本でも公開されているが、子供たちの視点で物語を作るということにはどんな意味があるのだろう。私たちがかつ…
さて、あなたはベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞に輝いた"長編"作品をいくつ言えるだろう。私は今年の受賞作すら覚えてはいない(調べたらジャファール・パナヒ"Taxi"だった)。ではベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞に輝いた"短編"作品をいくつ言えるだ…
思春期とホラーというのは相性がいい。第二次性徴を迎え自分の体が変わっていくとそんな恐怖はグロテスクなボディホラーにとって格好のテーマだし、思春期の少年少女が抱く未熟さゆえの全能感と何もかもから見放されたかのような孤独や絶望は世界を歪めるに…