鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2023-01-01から1年間の記事一覧

Wendy Bednarz&“Yellow Bus”/その国の名は、アラブ首長国連邦

さて、アラブ首長国連邦(UAE)である。この国の映画を観たことある方は……実は意外と多いかもしれない。というのもUAEはカタールやルクセンブルクといった富裕国と同じく、他国の映画を共同製作しまくっている国ゆえだ。特に私のように未公開映画をよく観てい…

Niranjan Raj Bhetwal&“The Eternal Melody”/ネパール、生と死とそのあわいと

鉄腸野郎の直近記事を読んでもらえば分かる通り、今、私のなかでネパール映画界がアツい。去年の2022年からその兆候を徐々に感じ取っていたのだが、今年はネパール人監督の長編作品がヴェネチアとトロント国際映画祭に選出されるという破格の出来事があり、…

Sunil Gurung&“Windhorse”/ネパール、人生の道筋もまた険しく

ネパールの山岳地帯に位置する僧院の数々は日本でも有名な観光地だろう。しかし険しい高地を行くトレッキングは相当に過酷なものだ。この記事を書くにあたって色々検索すると、ある村からある僧院までトレッキングで数時間といった文言すら見掛け、運動神経…

Ayarush Paudel&“Helena”/ネパールより、遠く離れて

アラブ首長国連邦という国は中東に位置する連邦国家であるが、この国の人口比において自国民が占める割合がたった1割ほどなのだそうだ。つまり人口の約9割が移民などの外国籍住民で構成されているのである。驚くべき割合であるが、今回はそんな移民国家の日…

Kyros Papavassiliou&“Embryo Larva Butterfly”/過去も未来も、今すら虚しく

razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.com 監督の前作についてはこちら参照私はここ数年、キプロス映画界の動向に注目してきた。2010年代の映画界を席巻した国の1つがギリシャだったことは“ギリシャの奇妙なる波”と、例えばヨルゴス・ランティモスらギリシャ人…

Mouloud Aït Liotna&“La maison brûle, autant se réchauffer”/ふるさと、さまよい、カビール人たち

アルジェリアにはカビール人という民族が住んでいる。彼らはアルジェリア北部のカビリアに固有のベルベル人民族であり、 この国においてベルベル語を話す民族でも最大の人口を誇っている。だが経済的・歴史的理由によって、少なくない人々がフランスに移住し…

Amjad Al Rasheed&“Inshallah a Boy”/ヨルダン、法が彼女を縛るならば

さて、ヨルダンである。ヨルダン映画と聞いて何か作品が頭に思い浮かぶなら、あなたは相当のシネフィルだろう。ヨルダンの映画産業は未だ発展途上で、年間の長編製作本数も数本ほどらしい。だが今まで後塵を拝してきたヨルダン映画界が近年にわかに発展を遂…

Pascale Appora-Gnekindy&“Eat Bitter”/中央アフリカ共和国に生きるということ

さて中央アフリカ共和国である。文字通りアフリカ大陸の中央付近に位置しているこの国については、長きにわたり各地で激しい武力紛争が繰り返されているというニュースが頻繁に報道されている。その情勢によって世界最貧国の1つと呼ばれているほどだ。だがそ…

Brenda Akele Jorde&“The Homes We Carry”/ドイツとモザンビークの狭間で

ドイツとアフリカ大陸の間には負の現代史が横たわっている。欧米列強の1国として領土の拡大を目指し、ドイツは1884年から1915年に南西アフリカを植民地支配していた。ここに住んでいたヘレロ、ナマの両民族が1904年に反乱を起こすが“民族の絶滅”を旨として独…

陈冠&“深空”/2021年、ロックダウンを駆ける愛

さて、マカオである。中国の特別行政地区であり、かつてはポルトガルの植民地だったこともあり西洋と東洋の文化が入り交じる場所、もしくは“アジアのラスベガス”との異名でも有名かもしれない。だが映画という面ではかなり影の薄い地域でもあるだろう、私自…

Cyrielle Raingou&“Le spectre de Boko Haram”/カメルーン、学ぶことのままならなさ

日本でも数年前にボコ・ハラムというテロ組織が話題になっていたのを皆さんも覚えているだろう。イスラム法の施行とイスラム教育の実施を教義として、ナイジェリアで過激なテロ行為を繰り返していた彼らだが、その影響はナイジェリアと国境を接するカメルー…

姚志衞&“明天比昨天长久”/シンガポール、僕は大人になるしかなかった

さて、シンガポールである。マーライオン、経済急成長、“明るい北朝鮮”という異名、徴兵制度などなど注目すべきところは多々あるが、映画という面ではどうだろうか。例えば最近でも斎藤工主演の「家族のレシピ」が公開されたエリック・クーや「イロイロ ぬく…

Andres Rodríguez&“Roza”/グアテマラ、キチェの民のこの苦渋

中米はグアテマラ、この国にはキチェ族というマヤ人に属する民族が暮らしている。グアテマラ高地に住む彼らはマヤ語族であるキチェ語を話し、Wikipediaによればその“話者は現代のマヤ諸民族のうちではもっとも人口が多く、グアテマラ全人口の11%を占める”そ…