鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョー・スワンバーグ&"Kissing on the Mouth"/私たちの若さはどこへ行くのだろう

さてジョー・スワンバーグである。1981年8月31日デトロイト生まれ、学生時代はバスケットボール選手になりたかったそうだが、高校では新入生の選抜チームに入ることも出来ず意気消沈、そんな時に映画と出会ったのだ。特に印象的だったのはコーエン兄弟の「赤…

ケイト・リン・シャイル&"Empire Builder"/米インディー界、後ろ向きの女王

あなたがもし俳優として活躍し、様々な映画に出演を果たした末にその中でも自分が主演した渾身の一作、それを観た人物にこんな質問をされたならどう答えるだろう――あなたは"プロ"の俳優なんですか? ある意味で最大級の侮辱にも取れる質問だが、ある女優はこ…

Sergio Oksman&"O Futebol"/ブラジル、父と息子とワールドカップと

2014年、サッカーの本場ともいうべきブラジルでワールドカップが開催された。国民は熱狂しブラジルの優勝を願ったが、準決勝のドイツ戦において7-1の大惨敗を喫することとなった。これはワールドカップ決勝トーナメント史上最多失点での敗北であり、ブラジル…

ジョー・スワンバーグ&"Silver Bullets"/マンブルコアの重鎮、その全貌を追う!

さて、マンブルコアを語る上で最も重要な存在とは誰かと言えばジョー・スワンバーグと言わざるを得ない。今の所、マンブルコア記事の全てに何かしらの形で彼の名前を記しているが、彼はそれほどマンブルコアというムーブメントにその根を下ろしている訳だ。…

アーロン・カッツ&"Quiet City"/つかの間、オレンジ色のときめきを

アーロン・カッツ&"Dance Party, USA"/レイプカルチャー、USA アーロン・カッツの略歴、およびデビュー作"Dance Party, USA"についてはこちらの記事を参照。 今までの人生を変えてしまう1日の出会い、そんなトキメキを映画は様々な形で提供してきた。リチャ…

ライ・ルッソ=ヤング&"You Wont Miss Me"/23歳の記憶は万華鏡のように

マンブルコアは作り手・演じ手の人生と親密に関わりあっている性質上、俳優が主人公になる映画が結構多い。デュプラス兄弟の"Baghead"は売れない俳優4人が自分たちの手で傑作ホラーを物にしようとして巻き起こる騒動を描いた作品であり、ジョー・スワンバー…

アーロン・カッツ&"Dance Party, USA"/レイプカルチャー、USA

さて、このブログでは"ポスト・マンブルコア世代の作家たち"というタイトルでテン年代に頭角を表し始めた米インディー作家を多く紹介してきた。というのも「ハンナだけど、生きていく」が公開されマンブルコア受容がとうとう日本で始まった故に、マンブルコ…

ケリー・ライヒャルト&「ナイト・スリーパーズ ダム爆破作戦」/夜、妄執は静かに潜航する

ケリー・ライヒャルト&"River of Grass"/あの高速道路は何処まで続いているのだろう? ケリー・ライヒャルト&"Ode" "Travis"/2つの失われた愛について ケリー・ライヒャルト&"Old Joy"/哀しみは擦り切れたかつての喜び ケリー・ライヒャルト&「ウェンデ…

ケリー・ライヒャルト&"Meek's Cutoff"/果てなき荒野に彼女の声が響く

ケリー・ライヒャルト&"River of Grass"/あの高速道路は何処まで続いているのだろう? ケリー・ライヒャルト&"Ode" "Travis"/2つの失われた愛について ケリー・ライヒャルト&"Old Joy"/哀しみは擦り切れたかつての喜び ケリー・ライヒャルト&「ウェンデ…

ケリー・ライヒャルト&「ウェンディ&ルーシー」/私の居場所はどこにあるのだろう

ケリー・ライヒャルト&"River of Grass"/あの高速道路は何処まで続いているのだろう? ケリー・ライヒャルト&"Ode" "Travis"/2つの失われた愛について ケリー・ライヒャルト&"Old Joy"/哀しみは擦り切れたかつての喜び ケリー・ライヒャルトの前作につい…

Elina Psykou&"The Eternal Return of Antonis Paraskevas"/ギリシャよ、過去の名声にすがるハゲかけのオッサンよ

先日ヨルゴス・ランティモス監督の最新作「ロブスター」を観た。"Kinetta"(この紹介記事を読んでね)から「籠の中の乙女」そして"Alpeis"(この紹介記事も読んでね)を経て今作ときた訳だが、今までの集大成として彼が扱ってきた様々なテーマが絡み合いあのロマ…

ケリー・ライヒャルト&"Old Joy"/哀しみは擦り切れたかつての喜び

ケリー・ライヒャルト&"River of Grass"/あの高速道路は何処まで続いているのだろう? ケリー・ライヒャルト&"Ode" "Travis"/2つの失われた愛について ケリー・ライヒャルトのデビュー長編"River of Grass"及び短編"Ode"と"Travis"についてはこちらの記事…

ケリー・ライヒャルト&"Ode" "Travis"/2つの失われた愛について

ケリー・ライヒャルト&"River of Grass"/あの高速道路は何処まで続いているのだろう? ケリー・ライヒャルトのデビュー長編"River of Grass"についてはこちらの記事を参照1994年ケリー・ライヒャルトは初の長編映画"River of Grass"を監督、サンダンス映画…

ケリー・ライヒャルト&"River of Grass"/あの高速道路は何処まで続いているのだろう?

ケリー・ライヒャルト Kelly Reichardtという名前に聞き覚えのある方は、相当な米インディー映画好きだろう。もしかしたら偶然ミシェル・ウィリアムズの「ウェンディ&ルーシー」かジェシー・アイゼンバーグの「ナイト・スリーパーズ/ダム爆破計画」を観たこ…

Ion De Sosa&"Sueñan los androides"/電気羊はスペインの夢を見るか?

さて、スペインである。最近日本でも「魔法少女まどか⭐マギカ」リスペクトなノワール映画であるカルロス・ベルムト監督の「マジカル・ガール」が公開されたが、個人的には先に紹介したLuis Lopez Carrscoのデビュー長編"El Futuro"(紹介記事読んでね!)は今…

アリス・ウィンクール&「博士と私の危険な関係」/ヒステリー、大いなる悪意の誕生

6月、トルコの新鋭作家デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの長編デビュー作「裸足の季節」が公開される。2016年度セザール賞の編集・音楽・初監督作・脚本賞を獲得した。が、もちろんここではエルギュヴェン監督を紹介する訳ではない。実は脚本賞はエルギュヴェ…

Luis López Carrasco&"El Futuro"/スペイン、未来は輝きに満ちている

さて、いきなりだが少しスペインの現代史を振り返ってみよう。1975年11月、スペイン内戦での勝利以後、長年に渡ってスペインに君臨し続けたフランシスコ・フランコ総統が亡くなった。それは40年続いた軍事独裁政権が倒れることをも意味していた。そして国王…

ロベルト・ミネルヴィーニ&"Low Tide"/テキサス、子供は生まれてくる場所を選べない

ロベルト・ミネルヴィーニ&"The Passage"/テキサスに生き、テキサスを旅する ロベルト・ミネルヴィーニのデビュー長編についてはこの記事参照デビュー長編"The Passage"においてロベルト・ミネルヴィーニ監督は1つの目的のためにテキサスを旅する3人の姿を…

Marte Vold&"Totem"/ノルウェー、ある結婚の風景

恋人同士の同棲にしろ、結婚生活にしろ、もちろんシェアハウスでの生活にしろ、誰かと一緒に生きるというのは苦難の連続だ。人間2人以上が集まればそこには確実に摩擦が生まれる、トイレを綺麗に使ってない、服とか色々床に脱ぎっぱなし、何か起こるとすぐ人…

ロッジ・ケリガン&"Claire Dolan"/猜疑心と虚無感は、いつか狂気へと至る

「クリーン、シェーブン」という90年代を代表する電波映画がある。離れ離れになった娘に会いに行こうと旅する統合失調症の男の精神世界を凄まじく狂気に満ちた映像美で描き出す作品なのだが、これを観て魅了されたその時からずっと思っていることがあった、…

ロベルト・ミネルヴィーニ&"The Passage"/テキサスに生き、テキサスを旅する

映画はテキサスをどう描いてきたのか?「悪魔のいけにえ」は原題Texas Chainsaw Massacreと正にその名が冠された映画だが、この地に住む食人一家の存在はテキサスひいては南部に対する恐怖を凄まじい形で象徴するものだった。タイトルにその名が付いてると言…

Salomé Lamas&"Eldorado XXI"/ペルー、黄金郷の光と闇

世界史において黄金は数多の人々を魅了してきた。黄金郷"エルドラド"の伝説は夢見る者たちを大海原へと旅立たせたし、19世紀における"ゴールドラッシュ"はアメリカに限らず世界の人々がカリフォルニアへと集結し黄金の輝きに湧いた。しかしその輝きの裏には…

Charles Poekel&"Christmas, Again"/クリスマスがやってくる、クリスマスがまた……

クリスマス、小さな頃は確かに待ち遠しい日だったが、大人になってからはただただ孤独を噛み締めるための日になっている。何か最近クリスマスの思い出なんかあったか?って何もない、強いて言うなら人の家に行ってその人と夜通し映画でも観ようかと思ったが…

リュウ・ジャイン&「オクスハイドⅡ」/家族みんなで餃子を作ろう(あるいはジャンヌ・ディエルマンの正統後継)

さて、餃子である。餃子はとても美味しい、ニンニクと肉が沢山入っている餃子はとても美味しい、個人的にはニラとかはいらない。みんなバランスだなんだとか言うが、ニラにせよなんにせよニンニク以外の野菜とかは全然必要ない、それは餃子に限らないのだが…

パスカル・ブルトン&"Suite Armoricaine"/失われ忘れ去られ、そして思い出される物たち

私に大学時代のことを余り聞かないで欲しい。何か思い出したくないことがある訳ではなく、だが思い出したいことがある訳でもない、つまりは大学時代、私には何だって起きることはなかった。それが辛いのだ。しかしそれはまだ私が若いからそう思っているのか…