メキシコ映画
ギレルモ・デル・トロといえばメキシコ映画を時代の寵児に押しあげた映画作家の1人だが、彼の作りだすモンスター映画は「クロノス」のように悍ましいスリルを喚起するものもあれば「シェイプ・オブ・ウォーター」のように切ない共感を呼ぶものもある。だがこ…
私がここずっと注目している才能がメキシコにはいる。それが若き奇才Nicolás Pereda ニコラス・ペレダだ。彼は虚構と現実を自由に行きかいながら、奇妙な映画作品を作り続けている。私も彼の代表作"Juntos"と、彼のフィルモグラフィでも一二を争う奇妙な作品…
うらぶれたスパに置かれたラジオ、そこからニュースが聞こえてくる。過去のメキシコには栄光が広がっていた。しかし今ではどうだろう。記録的な暴力と殺人によって、この国は悍ましい状況へと陥ってしまった。あの黄金時代は一体どこへ行ってしまったのだろ…
現在のメキシコの状況はお世辞にも良好とは言えない。カルテルの暴力が跋扈し、女性や子供たちなどの弱者が真先に踏み躙られる世界がそこには広がってしまっている。だがこんな世界に対して映画を以て立ち向かおうとする人々がいる。今回は現在のメキシコを…
人生を生き続けるというのはとても難しいことだ。退屈な日常の反復に、それ故積み重なっていく徒労感、そして反復に散りばめられた小さな哀しみと諦めの数々。人生というのは全く思うようには行かない。それでも生きていかなくてはいけない。今回紹介するLil…
男女もしくは男性2人の関係性を描き出す映画は多い。だが女性2人というとどうだろう。例えばイングマール・ベルイマンの「ペルソナ」やリドリー・スコットの「テルマ&ルイーズ」などがあるが、前者に比べると挙げられる数は少ないだろう。私はそういう映画が…
さる10月20日からメキシコではモレリア国際映画祭が開催されている。この国において1,2を争うほど大きな映画祭であり、様々なメキシコ映画が上映されたり国内外からゲストが招聘されるなどして活気を呈している。そんなモレリア国際映画祭だが、日本にいる私…
10代の母という主題は、日本でもそういったドラマが幾つかあったが何かとセンセーショナルに扱われがちだ。それは一歩間違えれば彼女たちにスティグマを追わせることに為りかねない故に、細心の注意を払いながら作品を形作ることを当然要求される。さて今回…
日本ではもうすぐで東京国際映画祭が開催されるが、遠くラテンアメリカのメキシコではモレリア国際映画祭が開催中である。メキシコを代表する映画祭の1つであり、メキシコ映画界の素晴らしき才能たちが巣立っていく登竜門的な場所である。さてさて、というこ…
血も何もかも関係はない、人間は究極的に独りだ。それはこの世界に生まれた瞬間には運命づけられている。だから世界は何十億の孤独が集まって出来ているのだ。断絶、拒絶、空白、そして他者は常にあなたの隣にある、逃げられはしない。そんな中では“わたし”…
映画界における女性差別は世界のどこにおいても根深い問題だ。日本においても、アメリカにおいても、フランスにおいても……しかしメキシコにおいては少しばかり状況が違うらしい。劇映画の領域においては他の国と同じく男性中心の状況はほぼ変わっていないの…
アマ・エスカランテ&「よそ者」/アメリカの周縁に生きる者たちについて アマ・エスカランテ監督の略歴、及び第2長編「よそ者」についてはこの記事を参照物語の主人公は題名にもなっている17歳の青年エリ(Armando Espitia)、彼は近くの自動車工場で働きなが…
アマ・エスカランテ Amat Escalanteは1979年2月28日、スペインのバルセロナに生まれた。母はアメリカ人、父はメキシコ人の画家、彼はメキシコからアメリカへと密輸入してきた不法移民でその滞在先で2人は出逢ったのだという。小さな頃はメキシコ・グアナフア…
さて先日はメキシコ映画界の異端児ニコラス・ペレダの"Juntos"を紹介した。だが先述した通り、キャリアはまだ10年にも満たないながら、彼は精力的に作品を制作しまくっている。ということで今回は彼が2015年に製作した新作中編"Minotauro"を紹介していきたい…
米インディー映画界にはマンブルコアというジャンルがある、いやあったと言うべきだろうか。まあこのブログを読んでくれている方にはお馴染みだろうが(知らねーよって人は"マンブルコア"でググるかこちらの記事を読んでね)、まあアレだ、ゼロ年代、お金がな…
日本では偶然連続して、アイラ・サックスの「事実は小説より奇なり」aka "Love is Strange"とアンドリュー・ヘイの「さざなみ」aka "45 Years"が連続で公開される。これはどちらとも長年付き添ってきたパートナーの2人が、大きな試練に直面して自分たちの関…
ロベルト・ボラーニョという名前を貴方は聞いたことがあるだろうか?世界の裏側に潜む大いなる狂気を描き続け、現代の文学界に何者よりも高く聳え立つ永遠の存在となった偉大なる小説家だ。そんな彼が50歳の若さで亡くなる前に残した畢境の大作"2666"にサン…
映画においては劇的な場面を描くよりも、日常を描く方が何倍も難しい。何も起きないことに映画的な強度と意味を宿すのは、そもそも映画という概念とは?という時点から考えないと悲惨な出来に落ちる。私たちは嫌というほど日常を味わっているというのに、映…
さて貴方は自分の生まれた国のことをどのくらい知っているだろう。ずっとそこで生きているのだから沢山のことを知っている?果たしてそうだろうか。例えば貴方が東京都民だとしたら、北海道に初めて旅行に行った時、天候だとか文化だとか様々な物にいわゆる…
さてメキシコ映画界である。ゼロ〜テン年代を代表する作家たちの中で日本でも受容が進んでいるのは、東京国際映画祭で回顧上映も果たした「闇の後の光」カルロス・レイガダス、「父の秘密」や夏には"Chronic"の日本公開が決定しているマイケル・フランコ、そ…
12月末日、米インディー界の鬼才サフディ兄弟の最新作「神様なんてクソくらえ」が公開される。今作はドラッグ中毒に陥った少女の絶望的な愛を描き出した作品なのだが、ドラッグ中毒を描いた作品にはこれに限らずアグレッシブな作品が多い。まあ、そりゃドラ…
自分の子供を亡くすという経験は胸を引き裂かれるほどに辛いものだろう。古今東西、芸術はその悲哀を様々な形で表現し、喪失の痛みを癒すという役割を果たしてきた。映画ではどうだろう、ナンニ・モレッティ監督の「息子の部屋」にジョン・キャメロン・ミッ…
つい先日Varietyにティム・ロスがメキシコ映画界への大いなる期待を語る記事が掲載された(この記事)。2011年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員長だったロスはとあるメキシコ映画に衝撃を受ける、その作品とは日本でも公開された「父の秘密」であり、監…
Carolina Rivasはメキシコ出身の映画監督だ。メキシコシティのCUEC映画学校で映画を学びながら、同時に演劇や舞踏にも親しんでいたという。監督デビューは1995年の"La vida se amputa en seco"、1つの自殺が生む波紋を描き出した短編映画だそうだ。間が空い…
今年はグザヴィエ・ドランの新作「マミー/Mammy」は画郭がInstagram的正方形であったり、リサンドロ・アロンソの「約束の地」は四隅が丸みを帯びている変形スタンダード・サイズであったりと、スクリーン・サイズに工夫を凝らし物語に没入させる新しいタイプ…
Elisa Miller監督は1983年メキシコに生まれる。メキシコシティーの映画学校the Centro de Capacitación Cinematográfica(CCCC)で映画について学んでいたのだが在学中の2006年、3年生だった彼女はメキシコのヤウペテックへと赴き、デビュー短編"Ver llover"を…