鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

私の好きな監督・俳優

済藤鉄腸の2021年映画ベスト!!!!!

昨年に引き続き、世界がコロナウイルスという禍に翻弄された年だった。だが私にはそれ以上の激動があった。4月にクローン病という腸の難病と診断されたのだ。免疫が異常を起こし、腸で炎症が起こり続ける、永遠に。このせいで食事が著しく制限され、行為自体…

Pablo Alvarez-Mesa&“Bicentenario”/コロンビア、独立より200年の後

2019年はコロンビアがスペインから独立して200年という記念の年であり、コロンビア各地で独立を祝う式典が開催された。そこでその立役者として式典の中心にいた人物がシモン・ボリバルだった。“南アメリカ解放の父”と称されるラテンアメリカの独立運動の指導…

Juan Pablo Richter&“98 segundos sin sombra”/ボリビア、このクソみたいな世界で

最近、児童文学、もしくはヤングアダルト小説をよく読んでいる。クローン病という難病と診断されてから、小説家として様々なものを再考せざるを得なくなった。そこで辿りついたのが児童文学だった。そして私は、まずここから文学への関心や素養が培われた筈…

Angeliki Papoulia&“Patchwork”/彼女が内に秘めたる炎

まずこの文章を書くにあたって、ある俳優に関する個人的な思い出から始めさせてほしい。彼女を初めてスクリーンで観たのは2012年に日本で上映された、ヨルゴス・ランティモス監督作「籠の中の乙女」でだった。まずこの映画が提示する異常な世界観に驚かされ…

Emilio Silva Torres&“Directamente para video”/ウルグアイ VHS Z級映画 そして

さて今回紹介する映画は、私が最近お気に入りのウルグアイ映画、Emilio Silva Torres エミリオ・シルバ・トレス監督作“Directamente para video”である。題名から何となく伺えるかもしれないが、ウルグアイで空前の人気を誇ったあるビデオスルー映画をめぐる…

Damien Hauser&“Blind Love”/ケニアのロマコメは一味違う!

さて、ケニア映画である。調べてみると、あれだけ日本未公開映画を紹介しているのに、ケニア映画に関しては1本も紹介していないという事実が発覚し、驚いてしまった。それくらい新作ケニア映画に遭遇するのは難しいことであると言えるのかもしれない。だがこ…

Dušan Kasalica&“Elegija lovora”/モンテネグロ、知と特権と祝福と

旧ユーゴ圏においてセルビアやボスニアといった国々がまず世界で評価されていく中で、今までその力を存分に発揮できなかった国がとうとう脚光を浴びようとしている。まず北マケドニアは2020年において長編ドキュメンタリー「ハニーランド 永遠の谷」がアカデ…

Azer Guliev&“Tengnefes”/アゼルバイジャン、肉体のこの苦痛

さて、アゼルバイジャン映画である。現在の、いわゆる新しきアゼルバイジャン映画を支えるのは現在30代40代の映画作家たちだ。例えば私がこの10年で最も偉大な映画作家になると確信しているHilal Baydarov ヒラル・バイダロフや、2021年のオスカー国際映画賞…

Elitza Gueorguieva&“Un endroit silencieux”/別の言葉で書くということ

さてご存知かもしれないが、私はルーマニア語で小説を書いている、つまりはルーマニアで小説家として活動している。自分でもどうしてこんなことになっているのかよく分からないが、そんなことよりもルーマニア語という母国語以外の新しい言語で書くことを私…

Agustín Banchero&"Las vacaciones de Hilda"/短い夏、長い孤独

さて、私は今、映画批評家としてあることを考えている。2030年代に映画界の頂点を争うのはどこの国かということだ。早すぎるだろうか、いや2030年代に頭角を表すには雌伏の時期、着実に技術を高めていく時間が必要であり、今からそんな原石を探しだしていく…

Marinos Kartikkis&“Senior Citizen”/キプロス、老いの先に救いはあるか?

人間は長く生き続けるかぎり老いていく、この運命は絶対に避けることができない。肉体は朽ちていき、精神は磨耗していく。そして最後には全てが朽ち果てるのみだ。そんな老いという最後の旅路のなかに、救いというものは存在し得るのだろうか? 今回紹介する…

Zvonimir Grujić&“Pomoz bog”/モンテネグロ、お金がない!

世界の映画を観るにあたって最もハードルが高いのは、実はコメディ映画に思える。笑いのセンスくらい各国で異なるものはないし、それが更に地域ごとに細分化していくなかで凄まじく複雑なものになっていく。ゆえに普遍性と地域性のバランスを取るのが一番難…

Hannah Marks&“Mark, Mary & Some Other People”/ノン・モノガミーについて考える

性指向にしろ性自認にしろ、性というものが多様になってきている。いや、多様な性を持つ人々というのは以前から存在していたに決まっているが、彼らが“私たちはここにいる!”と叫んできた行動の数々がとうとう実を結んで、多様性が可視化されてきたという方…

Romas Zabarauskas&“Advokatas”/リトアニア、特権のその先へと

最近よく特権について考える。例えば私は日本国籍を持って生まれてその意味では日本に生きる日本人であり、セクシャリティに関してはシスジェンダーかつヘテロセクシャルの男性ゆえ、この意味で日本においてかなりの特権を持っている。一方で自閉症スペクト…

Laurynas Bareiša&“Piligrimai”/巡礼者たち、亡霊たち

さてリトアニア映画界である。2010年代後半、リトアニア映画史の巨人であるシャルナス・バルタスがセクシャルハラスメントで訴えられ、世界に衝撃が走った。現在もその真偽は有耶無耶のままであり、微妙な状況が続いている。だが例え巨星が堕ちようとも、新…

Barbora Sliepková&“Čiary”/ブラチスラヴァ、線という驚異

先日、ティム・インゴルドの「ラインズ 線の文化史」という本を読んだ。人類学者である著者が楽譜や筆跡など、文字通りの線の歴史を探っていくという作品でなかなか興味深く読んだ。今後、小説執筆などにうまくこの知識を活用できないかと思っている。だがこ…

Ekaterina Selenkina&“Detours”/モスクワ、都市生活者の孤独

最近、私が建築や都市デザインにまつわる映画に興味があるのは、直近の記事を読んでくれたりTwitterを見てくれている方ならご存知だろうと思う。クローン病と診断された後に開き直って大量の本を読み始めたのだが、そこで最も惹かれたものの1つが建築と都市…

Alex Pintică&"Trecut de ora 8"/歌って踊って、フェリチターリ!

私は今、ルーマニア映画界の新人の動向に2つの潮流を見ている。片方に"ルーマニアの新しい波"以降の、例えば長回しや徹底的なリアリズム描写など、いわば新しい伝統を継承し、新しい局面へ進めていく存在がいる。例えば今年のカンヌ批評家週間に出品された"I…

Alina Grigore&"Blue Moon"/被害者と加害者、危うい領域

2021年、ただでさえ凄まじいルーマニア映画界が更なる躍進を遂げている。まずベルリンでRadu Jude ラドゥ・ジュデの最新作"Babardeală cu bucluc sau porno balamuc"が金熊賞を獲得、カンヌには5作のルーマニア映画が出品され、ヴェネチアでは新人監督Monica…

Samir Karahoda&"Pe vand"/コソボ、生きられている建築

コソボ映画界がアツいというのは毎度のことこの鉄腸マガジンで言ってきているだろう。が、色々とコソボの最新映画を紹介してきたが、実を言えば私がコソボ映画に嵌ったキッカケの人物を紹介していなかった。そんな中、彼が新作映画を作った訳で、とうとう紹…

Andrija Mugoša&"Praskozorje"/モンテネグロ、そこに在る孤独

今、個人的にマジにモンテネグロがアツい。以前からモンテネグロには注目しており、この鉄腸マガジンでも何作かレビューを書いたり、モンテネグロの映画批評家にインタビューを行っていたりはした。そしてつい先日、Svetlana Kana Radević スヴェトラーナ・…

Núria Frigola&"El canto de las mariposas"/ウイトトの血と白鷺の記憶

ペルーに住むインディオに、ウイトト人と呼ばれる人々がいる。ヨーロッパ人入植者が来る前まで彼らは平穏な暮らしを送っていたが、20世紀初めより彼らは入植者によってゴム栽培の労働力として搾取され、その人口は劇的に減少することになる。それでも独自の…

Ernar Nurgaliev&"Sweetie, You Won't Believe It"/カザフスタン、もっと血みどろになってけ!

現在、カザフスタン映画界がアツいというのはこの鉄腸マガジンで何度も書いている。この前もまだ詳細は書けないのだが、カザフスタンの友人から"新作ができたから、意見を聞きたい"と作品を送られ、これがまた素晴らしかった。今作が映画祭でプレミアを迎え…

Alvaro Gurrea&"Mbah jhiwo"/インドネシア、ウシン人たちの祈り

インドネシアの東ジャワ州にはウシン人という少数民族が住んでいる。元々はヒンドゥー教徒の国で会ったブランバンガン王国の住民だったが、18世紀に東インド会社によってイスラム教に改宗させられ、今はジャワ島の最東端であるバニュワンギ県に居住している…

Norika Sefa&"Në kërkim të Venerës"/コソボ、解放を求める少女たち

私は2020年の映画界を制する国の1つはコソボだと常々言っているが、2021年は正にコソボ映画界が大躍進を果たしそうだ。まず年間の長編制作数が5本ほどのこの国から既に1作がサンダンス映画祭、1作がロッテルダム映画祭に選出されるという快挙を成し遂げた。…

アゼルバイジャン、列車を待つ男~Interview with Şövkət Fikrətqızı

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Iuli Gerbase&"A nuvem rosa"/コロナ禍の時代、10年後20年後

さて、世界中の誰もがこのコロナ禍によって未曽有の状況に追いこまれている。容易く人とは会えなくなり、部屋に閉じこもらざるを得ない閉塞した状況は一体いつまで続くのだろうか。そんな苦悩を抱えている人々は今回紹介する映画を観るべきではないかもしれ…

オランダ映画界、謎のエロ伝道師「処女シルビア・クリステル/初体験」

最近はそうでもなかったが、前はこの鉄腸マガジンで"文芸エロ映画"というジャンルを紹介していた。TSUATAYAなどのレンタル店にある外国映画の棚、その端に煽情的なタイトルの、ポルノではないけども限りなくポルノに近そうな題名の映画が多々置いてあること…

Marija Stonytė&"Gentle Soldiers"/リトアニア、女性兵士たちが見据える未来

ウクライナ・クリミア侵攻をきっかけとして、旧ソ連諸国においてロシアへの危機感が再燃している。その中の1国であるリトアニアは脅威に備えて徴兵制を設置、若い男性たちに兵役を課している。そして義務ではないが、少数の女性たちが志願兵として兵役を行っ…

Chloé Mazlo&"Sous le ciel d'Alice"/レバノン、この国を愛すること

レバノン映画はいつであってもその激動の歴史を見据え、傑作を生みだしてきた。例えばMaroun Bagdadi マルーン・バグダディは"Les petites guerres"や"Hors la vie"などレバノン内戦をテーマとした作品を作り続けたし、日本でも著名なNadine Labaki ナディー…