鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

私の好きな監督・俳優

Isabel Sandoval&"Lingua Franca"/アメリカ、希望とも絶望ともつかぬ場所

さて、今映画界におけるトランスジェンダー表象が話題である。例えばNetflixでトランスジェンダー表象を当事者の目線で描きだした"Disclosure"(邦題は長すぎる)が配信された一方で、ハル・ベリーがトランスジェンダー男性を演じようとして批判が殺到、彼女が…

Martin Turk&"Ne pozabi dihati"/この切なさに、息をするのを忘れないように

兄と弟の関係性を描いた作品というものは男らしく、武骨なものが大半を占めるだろう。それは実際の兄弟関係を反映しながらも、多様性という意味では少しつまらなく感じる。だが今回紹介するスロヴェニア期待の映画作家Martin Turkの第3長編"Ne pozabi dihati…

Lachezar Avramov&"A Picture with Yuki"/交わる日本とブルガリア

日本で最も有名なブルガリア人作家は誰だろう? 「軛の下で」のイワン・ヴァーゾフ(Иван Вазов)か、それとも「あらくれ物語」のニコライ・ハイトフ(Николай Хайтов)か、もしくは「タバコ」のディミートル・ディーモフ(Димитър Димов)だろうか。だが驚くべき…

Ismet Sijarina&"Nëntor i ftohtë"/コソボに生きる、この苦難

第2次世界大戦後にユーゴスラビアが成立した時、コソボ一帯はアルバニア人が多かったゆえに、セルビアの自治州となった。それからアルバニア人たちは幾度となく独立運動を行い、2008年にはとうとう独立を獲得することになるが、そこまでには険しい道を歩まね…

Savaş Cevi&"Kopfplatzen"/私の生が誰かを傷つける時

小児性愛は欧米においては絶対的なタブーであるだろう。それ故にこれを描きだした芸術作品というのはあまりに少ないし、これから新しい作品が作られることもほとんどないだろう。そんな中で、ドイツからこの社会的タブーを描きだそうとする映画が現れた。そ…

Luciana Mazeto&"Irmã"/姉と妹、世界の果てで

今現在ブラジル映画界が空前の活気を見せていることはこのブログでも何度もお伝えしているが、その1つの動向としてジャンル映画的な要素を駆使しながらアートハウス映画を作るという技巧派の台頭がある。例えばホラー映画やSF映画などそういった要素を人間ド…

Asli Özge&"Auf einmal"/悍ましき男性性の行く末

今作の主人公であるカーステン(Sebastian Hülk)は前途有望な青年だ。彼はドイツの小さな町に住んでいるが、両親はこの町の権力者であるゆえに、多大なる恩恵を受けている。献身的な恋人ラウラ(Julia Jentsch)にも恵まれており、彼は仕事も私生活も順風満帆だ…

Jodie Mack&"The Grand Bizarre"/極彩色とともに旅をする

さて、今はコロナウイルスによって前代未聞の隔離の時代がやってきている。満足に外に出ることもできず、それは映画館で映画を観ることすらままならないことを意味している。だがそんな時こそ配信で映画を観るにはうってつけの時とも言えるし、そんな時のた…

エストニア映画界に春は来るか?~Interview with Tristan Priimägi

さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…

Radu Jude&"Iesirea trenurilor din gară"/ルーマニアより行く死の列車

ラドゥ・ジュデ&"Cea mai fericită fată din ume"/わたしは世界で一番幸せな少女 Radu Jude&"Toată lumea din familia noastră"/黙って俺に娘を渡しやがれ! Radu Jude & "Aferim!"/ルーマニア、差別の歴史をめぐる旅 ラドゥ・ジュデ&"Inimi cicatrizate"…

Radu Jude&"Tipografic majuscul"/ルーマニアに正義を、自由を!

ラドゥ・ジュデ&"Cea mai fericită fată din ume"/わたしは世界で一番幸せな少女 Radu Jude&"Toată lumea din familia noastră"/黙って俺に娘を渡しやがれ! Radu Jude & "Aferim!"/ルーマニア、差別の歴史をめぐる旅 ラドゥ・ジュデ&"Inimi cicatrizate"…

Burak Çevik&"Aidiyet"/トルコ、過ぎ去りし夜に捧ぐ

最近、実録犯罪ものが流行している兆しが見える。例えばNetflixはアメリカを中心としてこの国で繰り広げられる前代未聞の犯罪をドキュメンタリー化し、世界中に配信している。だが今回紹介する作品はただの実録犯罪ものではなく、この鋳型を巧みに使い、様々…

Florenc Papas&"Derë e hapur"/アルバニア、姉妹の絆と家父長制

東欧映画は伝統的に女性が主体である語りの作品が少ない。そもそもの話、共産主義に支配されていた東側諸国では映画という芸術体系は抑圧を余儀なくされたが、その中ではマイノリティである女性にスポットライトが当てられることも少なかった。そして共産主…

José Luis Valle&"Uzi"/メキシコ、黄金時代はどこへ?

うらぶれたスパに置かれたラジオ、そこからニュースが聞こえてくる。過去のメキシコには栄光が広がっていた。しかし今ではどうだろう。記録的な暴力と殺人によって、この国は悍ましい状況へと陥ってしまった。あの黄金時代は一体どこへ行ってしまったのだろ…

Camilo Restrepo&"Los conductos"/コロンビア、その悍ましき黙示録

さて、コロンビア映画界において私が注目してきた映画作家が2人いる。まずはLaura Huertas Millánだ。彼女はフランスを拠点としながらも、コロンビアに広がる現在や過去を見据える作品を多く作ってきた。そしてもう1人がCamilo Restrepoだ。彼はコロンビアと…

Iris Elezi&"Bota"/アルバニア、世界の果てのカフェで

さて、前回アルバニア映画史を概覧する記事をこの映画誌にアップした。その執筆者であるThomas Logoreciは映画評論家であると同時に、映画作家でもある。アメリカで撮影や編集など様々な経歴を経た後、妻であるIris Eleziとともにアルバニアで監督としてデビ…

Salomón Pérez&"En medio del laberinto"/ペルー、スケボー少年たちの青春

さて、ペルーである。アンデス山脈の険しさ、リャマの可愛さ、日系人の多さなどなど日本人にも親しみ深い国の1つかもしれない。だがこの国の映画を観た人は少ないかもしれない。古い映画だとアルマンド・ロブレス・ゴドイ監督の「みどりの壁」が、新しい映画…

Davit Pirtskhalava&"Sashleli"/ジョージア、現実を映す詩情

さて、前に2020年代、期待の新鋭映画監督100!という記事を執筆した。この記事は未だ短編しか撮っていない、いわば未来の巨匠を特集した記事であり、これを書くために100本を優に越える短編を鑑賞した。そのうちに私は短編を観るのが好きになってしまった。…

Arun Karthick&"Nasir"/インド、この地に広がる脅威

今現在、インドは転換期にあると言える。インドの頂点に立つナレンドラ・モディ首相がヒンドゥー至上主義を推し進めており、反イスラムの機運がかつてないほど高まっているのである。ヒンドゥー教徒イスラム教徒間の融和が崩れ去ろうとしている今、インドに…

Juan Mónaco Cagni&"Ofrenda"/映画こそが人生を祝福する

映画を観ている時、時おり映画にしかできないことはなんだろうと考えることがある。小説や演劇、絵画や彫像、芸術には様々な形態がありながらも、それを越えて映画にしかできないことは一体何かと。正直言って答えは簡単にでることはない。それでも、この映…

Sebastián Lojo&"Los fantasmas"/グアテマラ、この弱肉強食の世界

さて、今までそれほど存在感を発揮してこなかったながらも、2010年代後半から俄かにグアテマラ映画界が活気を呈している。この国の若手作家ハイロ・ブスタマンテのデビュー長編「火の山のマリア」がベルリン国際委映画祭のコンペ部門に選ばれた後、彼の後続…

Eduardo Morotó&"A Morte Habita à Noite"/ブコウスキーの魂、ブラジルへ

さて、チャールズ・ブコウスキーといえばアメリカで最も有名な無頼小説家だ。彼の破天荒な作品群や人生は幾度となく映画化されてきた。例えばバーベット・シュローダーの「バーフライ」やマルコ・フェレーリの「ありきたりの狂気の物語」などである。だが202…

Maria Clara Escobar&"Desterro"/ブラジル、彼女の黙示録

ボルソナーロ政権発足以後、ブラジル映画界は危機に立たされている。現在の映画界のトップをひた走るクレベール・メンドンサ・フィーリョは映画製作を弾圧され、映画製作庁であるAncineは移転を余儀なくされた。財政サポートもいくつか潰されてしまい、映画…

Matjaž Ivanišin&"Oroslan"/生きることへの小さな祝福

さて、今私の中でスロヴェニア映画がアツい。きっかけはスロヴェニア映画界の巨匠Boštjan Hladnikの作品を観る機会があって、それでド嵌りしてしまったのである。それからスロヴェニアの映画評論家にインタビューを敢行し、スロヴェニア映画史について学んで…

Marko Đorđević&"Moj jutarnji smeh"/理解されえぬ心の彷徨

いわゆる"コミュ障"という言葉が日本語にはある。内に引きこもるばかりで他者との交流の仕方を知らず、孤独をこじらせていく悪循環に陥る人々のことだ。日本ではこの言葉がカジュアルに使われているが、実際問題この障害によって実生活に悪影響が及んでいる…

Jure Pavlović&"Mater"/クロアチア、母なる大地への帰還

ユーゴ紛争が勃発してから約30年もの時が経つことになった。この頃に祖国から去らざるを得なかった若者たちも、今や中年世代となっている。そして故郷に残った親世代の人々は老いて、独りで行動することも難しくなったゆえに、彼らは自身の親を介護せざるを…

Alexander Zolotukhin&"A Russian Youth"/あの戦争は今も続いている

ロシア映画、特にソビエト時代の映画作品には戦争映画の傑作が多い。例えばロシアにおけるドイツ軍の凄惨な虐殺を描いた衝撃作「炎628」や独ソ戦の脅威に立ち向かう少年の姿を描いた「ぼくの村は戦場だった」さらにはボリス・バルネットが監督した、第1次世…

済藤鉄腸の2010年代ベスト100!!!!!

ということで、題名通りの記事。私のブログを読んでる方にはお解りの通り、あまりにも未公開映画が多すぎるので、表記は全部英語に統一してある。もう面倒臭いので、邦題があるのを知りたい方は各自でググってください。それからよくベストを選ぶ時、1監督1…

2020年代、期待の新鋭映画監督110!

さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…

Fabio Meira&"As duas Irenes"/イレーニ、イレーニ、イレーニ

同じ名前を持つ、そこには奇妙な絆が生まれることになる。不快さを感じるにしろ、心地よさを感じるにしろ、私たちは名前の奇妙な重力に引き込まれていくのだ。クシシュトフ・キェシロフスキ監督作「ふたりのベロニカ」など、その魔力を描き出した芸術作品は…