鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

私の好きな監督・俳優

Morteza Farshbaf&"Tooman"/春夏秋冬、賭博師の生き様

最近のイラン映画がアツい。未だにキアロスタミ、パナヒ、ファルハーディといったイラン革命以後の巨匠たちの影響は濃厚ながら、その安全地帯から這い出て、新たなるイラン映画を作ろうとする映画作家たちが現れ始めている。例えばSaeed Roustaee サイード・…

Eugen Jebeleanu&"Câmp de maci"/ルーマニア、ゲイとして生きることの絶望

ルーマニアはLGBTQの権利という意味ではかなり保守的な部類に入る。それを象徴する事件が近年頻発している。例えばロマ文化研究者とロマ文化の担い手が恋に落ちる、ゲイ版"ロミオとジュリエット"と呼ばれるルーマニア映画"Soldații: Poveste din Fereastra"…

Ruxandra Ghitescu&"Otto barbarul"/ルーマニア、青春のこの悲壮と絶望

どこの国にも、どの時代にもパンク野郎というものはいて、若く苦悶に満ちた音を響かせているものだ。だがルーマニアのパンク野郎についての芸術作品を、あなたは観たことがあるだろうか?無いのならばあなたはRuxandra Ghitescu監督による驚くべきデビュー長…

Ismail Safarali&"Sessizlik denizi"/アゼルバイジャン、4つの風景

私はこの鉄腸マガジン上で2020年代の映画界を担うのはアゼルバイジャンだと何度も発言している。故に私はアゼルバイジャンの新たなる才能に目を光らせている訳だが、そこで出会ったのである。彼の名はIsmail Safarali、彼の最新短編"I Still Must Watch You …

Paúl Venegas&"Vacio"/エクアドル、中国系移民たちの孤独

中国系移民たちはよりよい未来を求めて世界各地へと散らばることになるが、彼らの行く先の1つがラテンアメリカだった。彼らは南米の異国の地で身を寄せ合いながら暮らし、今ではブエノスアイレスやサンパウロなど大都市各地に大きな共同体が作られているほど…

David Pérez Sañudo&"Ane"/バスク、激動の歴史と母娘の運命

2018年にバスク自由と祖国(ETA)が解散宣言を行ったことは記憶に新しい。しかしそれがバスク紛争の終りを告げたかと言えばそうではないし、人々の心には未だ過去が憑りついている。それはバスクの芸術家たちがこの長きに渡る紛争の時代を描き続けていることか…

Anna Cazenave Cambet&"De l'or pour les chiens"/夏の旅、人を愛することを知る

"De l'or pour les chiens"の始まりはいささか、いやかなり軽薄なものだ。制作会社のロゴが出る時点で男女の喘ぎ声が聞こえ、予想通りファーストショットから彼らが砂浜でセックスをする場面が映しだされる。カメラはある程度離れているが、女性の乳房が揺れ…

Pavol Pekarčík&"Hluché dni"/スロヴァキア、ロマたちの日々

東欧文化を語るうえでロマの存在は欠かせないだろう。東欧の人々は彼らの存在を否定する(私はルーマニア人と話すことが多いが、その傾向が多く見られる。"彼らはルーマニア人ではない"と)が、ロマの人々は確かに生きていて、独自の文化を築いている。最近注…

Esther Rots&"Retrospekt"/女と女、運命的な相互不理解

ゼロ年代も終りに近づいた2009年、1つの映画がオランダ映画界に激震を巻き起こした。それが新人監督Esther Rotsによるデビュー長編"Kan door huid heen"だった。精神的激動に見舞われた女性が救いを求める姿を描きだした本作は、オランダ最大の映画祭ロッテ…

Ameen Nayfeh&"200 Meters"/パレスチナ、200mという大いなる隔たり

パレスチナ人映画作家たちは魅力的な娯楽性を通じて、パレスチナの現状を語るのに長けた者たちが多い印象を受ける。例えばエリア・スレイマンは「D.I.」や「天国にちがいない」などにおいて知性に裏打ちされたユーモアと共に、パレスチナの現在を見据え続け…

Horvát Lili&"Felkészülés meghatározatlan ideig tartó együttlétre"/一目見たことの激情と残酷

一目惚れというものにはその人の人生を変貌させる、時には完膚なきまでに破壊し尽くす魔力が存在している。それは理論や倫理を越えた凄絶なる力を持ち合わせている。一度その魔力に憑りつかれた人間は抵抗も虚しく、その荒波のような勢力に呑みこまれ、愛へ…

Nora Martirosyan&"Si le vent tombe"/ナゴルノ・カラバフ、私たちの生きる場所

皆さんもニュースでご覧になられただろうが、今アルメニアとアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフという地域を巡って激しい紛争を繰り広げている。Twitterでは紛争の動画が流れ(日本人はまるでこの動画を一種の娯楽作品のように捉え、気軽にTwitterで共有し…

Desiree Akhavan&"The Bisexual"/バイセクシャルとして生きるということ

デジリー・アッカヴァン&「ハンパな私じゃダメかしら?」/失恋の傷はどう癒える? - 鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!! Desiree Akhavan監督の経歴と彼女のデビュー作"Appropriate Behavior"についてはこちら参照。今、日本で上映されている作品の中では「エマ、愛の罠…

「半沢直樹」とマスード・キミアイ、そして白色革命の時代

お世辞にも真剣な視聴者とは言えなかったが、未公開映画を観る間に私も「半沢直樹」のSeason 2を観ていた。先の最終回なんかはラストにおける堺雅人と香川照之の対峙場面などは男と男の意地のぶつかりあいが最高潮に達し、もはや噎せ返る官能性がマニエリス…

Visar Morina&"Exil"/コソボ移民たちの、この受難を

セルビアとの度重なる紛争や未だに国に蔓延する貧困故に、コソボの人々には自身の故郷に背を向け、ヨーロッパ各地で移民として生活する者たちも多い。そして彼らはそれぞれに深刻な問題と直面することとなっている。例えば2017年制作の"T'Padashtun"はオラン…

More Raça&"Galaktika e andromedës"/コソボ、生きることの深き苦難

コソボは2008年にセルビアから独立を宣言したばかりの、ヨーロッパで最も若い国だ。それ故に貧困は大きな問題であり、多くの人々が苦闘している状況が続く。今回紹介する作品はそんな貧困との闘いを続ける中年男性の姿を追ったコソボ映画、More Raça監督の長…

Ru Hasanov&"The Island Within"/アゼルバイジャン、心の彷徨い

日本ではあまり知られていないが、アゼルバイジャンはチェスの強豪国である。この国にはヴガル・ガシモフやガルリ・カスパロフといった数多くのチェス・チャンピオンがおり、例えば2019年には世界U-16チェスオリンピックでは幾つもの優勝候補を破り、アゼル…

Hilal Baydarov&"Səpələnmiş ölümlər arasında"/映画の2020年代が幕を開ける

映画批評家として映画を観続けてきたうえで、2020年代に台頭する国はどこかと聞かれたとするなら、私はこう答える。コソボ、スロヴェニア、カザフスタン、そしてアゼルバイジャンと。アゼルバイジャンに関してこう確信させてくれた映画作家がHilal Bydarov …

Adilkhan Yerzhanov&"Yellow Cat"/カザフスタン、映画へのこの愛

さて、2010年代はカザフ映画界において躍進の年だった。Emir Baigazin エミール・バイガジンのデビュー長編"Harmony Lessons"がベルリン国際映画祭で上映、撮影賞を獲得し、更に彼の第3長編"The River"はヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で監督賞を獲得する…

Azra Deniz Okyay&"Hayaletler"/イスタンブール、不安と戦う者たち

2016年、トルコで勃発したクーデターは記憶に新しい。トルコ軍の反乱勢力がエルドアン政権に反旗を翻したこのクーデターは未遂に終わったが、これがエルドアン政権の強権をさらに強めることになる。この事件を否応なく思いださせる光景から幕を開けるAzra De…

Ahmad Bahrami&"The Wasteland"/イラン、変わらぬものなど何もない

何事も、永遠に続くことはない。どんなに頑強に建てられた家も、どんなに密な関係性を持つ共同体も、どんなに強靭な生命力を持つ生命も。この世界に在る限り、終りを持たないものというのは存在するはずもないのである。この至極自然な、しかしいつだって目…

ジョージ・アーミテイジ論~のらりくらりと中指突き立て

さて、皆さんはジョージ・アーミテイジという映画作家を知っているだろうか。正直、彼を知っている人はそう多くないだろう。唯一彼の監督作「マイアミ・ブルース」は日本でカルト的な人気を誇っているゆえに、今作の監督として記憶に残っている方はいるかも…

集まれ、あぶない看護婦たち!~めくるめくNurseploitationの世界

エクスプロイテーション映画、セクスプロイテーション映画、ブラックスプロイテーション映画、そういったジャンル名に聞き覚えのある方は多いかもしれない。だがNurseploitation ナースプロイテーション映画という名前を聞いたことがあるだろうか。その名の…

Shahram Mokri&"Careless Crime"/イラン、炎上するスクリーンに

1978年、イランにおいて勃発したイスラム革命は西欧化や世俗化という風潮を転覆させ、今に繋がる保守的なイスラム文化を作りあげた。この革命の最中、怒りに燃える民衆たちは、革命前に活躍していた映画作家Masoud Kimiai監督作"The Deer"が上映されるCinema…

ロカルノ2020を振り返る

コロナウイルスによって映画の在り様はもちろんのこと、映画祭の在り方すらも変わってしまった。この状況で多くの映画祭が中止かオンライン開催を余儀なくされるなか、いわゆる三大映画祭に次ぐ有名映画祭、スイスで行われるロカルノ映画祭もまたオンライン…

Octav Chelaru&"Statul paralel"/ルーマニア、何者かになるために

私は5年ほど前にCorneliu Porumboiu コルネリュ・ポルンボユ監督の第2長編"Polițist, adjectiv"を観た時の感動を、昨日のように思いだせる。EU加盟を前にして、マリファナを密売する高校生を逮捕するか否か迷う警察官の姿を追った本作は、今まで観てきた映画…

ロカルノ2020、Neo Soraと平井敦士

今年のロカルノ映画祭はコロナウイルスの影響でオンラインで行われることになったが、Pardi di domani部門に2本の日本にルーツを持つ監督による作品が選出された。日本人の映画批評家として正直に言おう、日本映画界は空前の淀みを見せている訳で、まあクソ…

Oliver Hermanus&"Moffie"/南アフリカ、その寂しげな視線

1980年代、マイノリティである白人によって統治されていた南アフリカ共和国において、人種隔離政策、いわゆるアパルトヘイトが頂点を極めていた。そんな中でこの国は、共産主義であったアンゴラ人民共和国における内戦に介入、共産主義政権を潰そうと活動し…

Nicolás Pereda&"Fauna"/2つの物語が重なりあって

私がここずっと注目している才能がメキシコにはいる。それが若き奇才Nicolás Pereda ニコラス・ペレダだ。彼は虚構と現実を自由に行きかいながら、奇妙な映画作品を作り続けている。私も彼の代表作"Juntos"と、彼のフィルモグラフィでも一二を争う奇妙な作品…

Isabel Sandoval&"Lingua Franca"/アメリカ、希望とも絶望ともつかぬ場所

さて、今映画界におけるトランスジェンダー表象が話題である。例えばNetflixでトランスジェンダー表象を当事者の目線で描きだした"Disclosure"(邦題は長すぎる)が配信された一方で、ハル・ベリーがトランスジェンダー男性を演じようとして批判が殺到、彼女が…