鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

私の好きな監督・俳優

Ru Hasanov&"The Island Within"/アゼルバイジャン、心の彷徨い

日本ではあまり知られていないが、アゼルバイジャンはチェスの強豪国である。この国にはヴガル・ガシモフやガルリ・カスパロフといった数多くのチェス・チャンピオンがおり、例えば2019年には世界U-16チェスオリンピックでは幾つもの優勝候補を破り、アゼル…

Hilal Baydarov&"Səpələnmiş ölümlər arasında"/映画の2020年代が幕を開ける

映画批評家として映画を観続けてきたうえで、2020年代に台頭する国はどこかと聞かれたとするなら、私はこう答える。コソボ、スロヴェニア、カザフスタン、そしてアゼルバイジャンと。アゼルバイジャンに関してこう確信させてくれた映画作家がHilal Bydarov …

Adilkhan Yerzhanov&"Yellow Cat"/カザフスタン、映画へのこの愛

さて、2010年代はカザフ映画界において躍進の年だった。Emir Baigazin エミール・バイガジンのデビュー長編"Harmony Lessons"がベルリン国際映画祭で上映、撮影賞を獲得し、更に彼の第3長編"The River"はヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で監督賞を獲得する…

Azra Deniz Okyay&"Hayaletler"/イスタンブール、不安と戦う者たち

2016年、トルコで勃発したクーデターは記憶に新しい。トルコ軍の反乱勢力がエルドアン政権に反旗を翻したこのクーデターは未遂に終わったが、これがエルドアン政権の強権をさらに強めることになる。この事件を否応なく思いださせる光景から幕を開けるAzra De…

Ahmad Bahrami&"The Wasteland"/イラン、変わらぬものなど何もない

何事も、永遠に続くことはない。どんなに頑強に建てられた家も、どんなに密な関係性を持つ共同体も、どんなに強靭な生命力を持つ生命も。この世界に在る限り、終りを持たないものというのは存在するはずもないのである。この至極自然な、しかしいつだって目…

ジョージ・アーミテイジ論~のらりくらりと中指突き立て

さて、皆さんはジョージ・アーミテイジという映画作家を知っているだろうか。正直、彼を知っている人はそう多くないだろう。唯一彼の監督作「マイアミ・ブルース」は日本でカルト的な人気を誇っているゆえに、今作の監督として記憶に残っている方はいるかも…

集まれ、あぶない看護婦たち!~めくるめくNurseploitationの世界

エクスプロイテーション映画、セクスプロイテーション映画、ブラックスプロイテーション映画、そういったジャンル名に聞き覚えのある方は多いかもしれない。だがNurseploitation ナースプロイテーション映画という名前を聞いたことがあるだろうか。その名の…

Shahram Mokri&"Careless Crime"/イラン、炎上するスクリーンに

1978年、イランにおいて勃発したイスラム革命は西欧化や世俗化という風潮を転覆させ、今に繋がる保守的なイスラム文化を作りあげた。この革命の最中、怒りに燃える民衆たちは、革命前に活躍していた映画作家Masoud Kimiai監督作"The Deer"が上映されるCinema…

ロカルノ2020を振り返る

コロナウイルスによって映画の在り様はもちろんのこと、映画祭の在り方すらも変わってしまった。この状況で多くの映画祭が中止かオンライン開催を余儀なくされるなか、いわゆる三大映画祭に次ぐ有名映画祭、スイスで行われるロカルノ映画祭もまたオンライン…

Octav Chelaru&"Statul paralel"/ルーマニア、何者かになるために

私は5年ほど前にCorneliu Porumboiu コルネリュ・ポルンボユ監督の第2長編"Polițist, adjectiv"を観た時の感動を、昨日のように思いだせる。EU加盟を前にして、マリファナを密売する高校生を逮捕するか否か迷う警察官の姿を追った本作は、今まで観てきた映画…

ロカルノ2020、Neo Soraと平井敦士

今年のロカルノ映画祭はコロナウイルスの影響でオンラインで行われることになったが、Pardi di domani部門に2本の日本にルーツを持つ監督による作品が選出された。日本人の映画批評家として正直に言おう、日本映画界は空前の淀みを見せている訳で、まあクソ…

Oliver Hermanus&"Moffie"/南アフリカ、その寂しげな視線

1980年代、マイノリティである白人によって統治されていた南アフリカ共和国において、人種隔離政策、いわゆるアパルトヘイトが頂点を極めていた。そんな中でこの国は、共産主義であったアンゴラ人民共和国における内戦に介入、共産主義政権を潰そうと活動し…

Nicolás Pereda&"Fauna"/2つの物語が重なりあって

私がここずっと注目している才能がメキシコにはいる。それが若き奇才Nicolás Pereda ニコラス・ペレダだ。彼は虚構と現実を自由に行きかいながら、奇妙な映画作品を作り続けている。私も彼の代表作"Juntos"と、彼のフィルモグラフィでも一二を争う奇妙な作品…

Isabel Sandoval&"Lingua Franca"/アメリカ、希望とも絶望ともつかぬ場所

さて、今映画界におけるトランスジェンダー表象が話題である。例えばNetflixでトランスジェンダー表象を当事者の目線で描きだした"Disclosure"(邦題は長すぎる)が配信された一方で、ハル・ベリーがトランスジェンダー男性を演じようとして批判が殺到、彼女が…

Martin Turk&"Ne pozabi dihati"/この切なさに、息をするのを忘れないように

兄と弟の関係性を描いた作品というものは男らしく、武骨なものが大半を占めるだろう。それは実際の兄弟関係を反映しながらも、多様性という意味では少しつまらなく感じる。だが今回紹介するスロヴェニア期待の映画作家Martin Turkの第3長編"Ne pozabi dihati…

Lachezar Avramov&"A Picture with Yuki"/交わる日本とブルガリア

日本で最も有名なブルガリア人作家は誰だろう? 「軛の下で」のイワン・ヴァーゾフ(Иван Вазов)か、それとも「あらくれ物語」のニコライ・ハイトフ(Николай Хайтов)か、もしくは「タバコ」のディミートル・ディーモフ(Димитър Димов)だろうか。だが驚くべき…

Ismet Sijarina&"Nëntor i ftohtë"/コソボに生きる、この苦難

第2次世界大戦後にユーゴスラビアが成立した時、コソボ一帯はアルバニア人が多かったゆえに、セルビアの自治州となった。それからアルバニア人たちは幾度となく独立運動を行い、2008年にはとうとう独立を獲得することになるが、そこまでには険しい道を歩まね…

Savaş Cevi&"Kopfplatzen"/私の生が誰かを傷つける時

小児性愛は欧米においては絶対的なタブーであるだろう。それ故にこれを描きだした芸術作品というのはあまりに少ないし、これから新しい作品が作られることもほとんどないだろう。そんな中で、ドイツからこの社会的タブーを描きだそうとする映画が現れた。そ…

Luciana Mazeto&"Irmã"/姉と妹、世界の果てで

今現在ブラジル映画界が空前の活気を見せていることはこのブログでも何度もお伝えしているが、その1つの動向としてジャンル映画的な要素を駆使しながらアートハウス映画を作るという技巧派の台頭がある。例えばホラー映画やSF映画などそういった要素を人間ド…

Asli Özge&"Auf einmal"/悍ましき男性性の行く末

今作の主人公であるカーステン(Sebastian Hülk)は前途有望な青年だ。彼はドイツの小さな町に住んでいるが、両親はこの町の権力者であるゆえに、多大なる恩恵を受けている。献身的な恋人ラウラ(Julia Jentsch)にも恵まれており、彼は仕事も私生活も順風満帆だ…

Jodie Mack&"The Grand Bizarre"/極彩色とともに旅をする

さて、今はコロナウイルスによって前代未聞の隔離の時代がやってきている。満足に外に出ることもできず、それは映画館で映画を観ることすらままならないことを意味している。だがそんな時こそ配信で映画を観るにはうってつけの時とも言えるし、そんな時のた…

エストニア映画界に春は来るか?~Interview with Tristan Priimägi

さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…

Radu Jude&"Iesirea trenurilor din gară"/ルーマニアより行く死の列車

ラドゥ・ジュデ&"Cea mai fericită fată din ume"/わたしは世界で一番幸せな少女 Radu Jude&"Toată lumea din familia noastră"/黙って俺に娘を渡しやがれ! Radu Jude & "Aferim!"/ルーマニア、差別の歴史をめぐる旅 ラドゥ・ジュデ&"Inimi cicatrizate"…

Radu Jude&"Tipografic majuscul"/ルーマニアに正義を、自由を!

ラドゥ・ジュデ&"Cea mai fericită fată din ume"/わたしは世界で一番幸せな少女 Radu Jude&"Toată lumea din familia noastră"/黙って俺に娘を渡しやがれ! Radu Jude & "Aferim!"/ルーマニア、差別の歴史をめぐる旅 ラドゥ・ジュデ&"Inimi cicatrizate"…

Burak Çevik&"Aidiyet"/トルコ、過ぎ去りし夜に捧ぐ

最近、実録犯罪ものが流行している兆しが見える。例えばNetflixはアメリカを中心としてこの国で繰り広げられる前代未聞の犯罪をドキュメンタリー化し、世界中に配信している。だが今回紹介する作品はただの実録犯罪ものではなく、この鋳型を巧みに使い、様々…

Florenc Papas&"Derë e hapur"/アルバニア、姉妹の絆と家父長制

東欧映画は伝統的に女性が主体である語りの作品が少ない。そもそもの話、共産主義に支配されていた東側諸国では映画という芸術体系は抑圧を余儀なくされたが、その中ではマイノリティである女性にスポットライトが当てられることも少なかった。そして共産主…

José Luis Valle&"Uzi"/メキシコ、黄金時代はどこへ?

うらぶれたスパに置かれたラジオ、そこからニュースが聞こえてくる。過去のメキシコには栄光が広がっていた。しかし今ではどうだろう。記録的な暴力と殺人によって、この国は悍ましい状況へと陥ってしまった。あの黄金時代は一体どこへ行ってしまったのだろ…

Camilo Restrepo&"Los conductos"/コロンビア、その悍ましき黙示録

さて、コロンビア映画界において私が注目してきた映画作家が2人いる。まずはLaura Huertas Millánだ。彼女はフランスを拠点としながらも、コロンビアに広がる現在や過去を見据える作品を多く作ってきた。そしてもう1人がCamilo Restrepoだ。彼はコロンビアと…

Iris Elezi&"Bota"/アルバニア、世界の果てのカフェで

さて、前回アルバニア映画史を概覧する記事をこの映画誌にアップした。その執筆者であるThomas Logoreciは映画評論家であると同時に、映画作家でもある。アメリカで撮影や編集など様々な経歴を経た後、妻であるIris Eleziとともにアルバニアで監督としてデビ…

Salomón Pérez&"En medio del laberinto"/ペルー、スケボー少年たちの青春

さて、ペルーである。アンデス山脈の険しさ、リャマの可愛さ、日系人の多さなどなど日本人にも親しみ深い国の1つかもしれない。だがこの国の映画を観た人は少ないかもしれない。古い映画だとアルマンド・ロブレス・ゴドイ監督の「みどりの壁」が、新しい映画…