鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済藤鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

私の好きな監督・俳優

Amil Shivji&“Vuta N’Kuvute”/ザンジバル、黒い肌と茶色い肌

さて、ザンジバルである。これはタンザニアに属するザンジバル諸島の指す地域名であるが、名前を聞いてパッと何らかの連想が働く人は多くないだろう。とはいえここ出身の有名人が何人かいる。例えばクイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーはイギリ…

「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」のルーマニア語原題を訳す!

さて4月23日から日本でも「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」が上映されている。今作はルーマニアで今最も注目される映画作家Radu Jude ラドゥ・ジューデの最新作で、かつベルリンで最高賞の金熊賞を獲得している。ジューデ監督作が日本公開され…

Ioana Iacob&“Wir könnten genauso gut tot sein”/ドイツのルーマニア移民たち

ルーマニア人俳優は、ルーマニア以外でも世界の映画界で活躍している。ハリウッドで大活躍中のセバスチャン・スタンなどはその代表例だろう。他にもドイツのアレクサンドラ・マリア・ララなどがいるが、今同国でも著しく活躍の幅を広げている人物がいる、そ…

Petna Ndaliko Katondolo&“Kumbuka”/コンゴ民主共和国について語る時、私たちが語ること

Joris Postema ヨリス・ポステマというオランダ人監督がコンゴ民主共和国を舞台に“Stop Filming Us”という作品を製作した。今作はコンゴの現状を映し出したドキュメンタリー作品であり、世界の国際映画祭で評価されることになる。だがこれを疑問に思ったのは…

Stathis Apostolou&“The Farmer”/2つの国、1つの肉体

まずある1人の俳優との出会いについて語らせてほしい。先日、私はロッテルダム映画祭でプレミア上映された“Broadway”というギリシャ映画を観た。詳しくはレビューを書いたのでそれを読んでもらいたいが、少し内容を書くと、今作は家父長制に挑む反逆者たちの…

Farkhat Sharipov&“Skhema”/カザフスタン、底知れぬ雪の春

razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.comFarkhat Sharipov ファルハット・シャリポフというカザフスタンの監督がいる。2020年に彼が製作した長編“18 kHz”は瞠目の1作だった。詳しくは執筆したレビューをお読み頂きたいが、そんな彼が2020年代におけるカザフ映…

Maria Ignatenko&“Achrome”/良心が、その地獄を行く

ソビエト連邦の支配下に置かれていたバルト三国の人々にとって、第2次世界大戦におけるナチスドイツの侵攻はある種の“解放”とも映ったのだという。そして彼らの中にはドイツ軍に加入し、枢軸国側としてソ連軍と戦った者たちもいた。更にナチスによるユダヤ人…

Maryna Er Gorbach&“Klondike”/ウクライナ、悲劇が今ここに

現在、ウクライナに対してロシアが不穏な動きを見せ、ともすれば戦争が起こってしまうのではないかという緊迫した状況が続いている。そんなキナ臭い雰囲気のなか、サンダンス映画祭であるウクライナ映画がプレミア上映された。この作品を観ながら、私は正に…

Bogdan Theodor Olteanu&“Mia își ratează răzbunarea”/私は、傷ついてもいいんだ

razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.com 監督のデビュー長編についてはこちらを参照。今年の4月、ルーマニアの鬼才監督Radu Jude ラドゥ・ジューデのベルリン金熊受賞作品「アンラッキーセックスまたはイカれたポルノ」aka “Babardeală cu bucluc sau porno …

Christos Massalas&“Broadway”/クィア、反逆、その生き様

ギリシャ映画には連綿たるクィア映画の系譜がある。最近でいえば日本ではキワモノZ級映画と見なされている「アタック・オブ・ザ・ジャイアント・ケーキ」とその監督パノス・H・コートラスはギリシャにおけるクィア映画史の重要人物でもある。彼の1世代後に現…

済藤鉄腸の2021年映画ベスト!!!!!

昨年に引き続き、世界がコロナウイルスという禍に翻弄された年だった。だが私にはそれ以上の激動があった。4月にクローン病という腸の難病と診断されたのだ。免疫が異常を起こし、腸で炎症が起こり続ける、永遠に。このせいで食事が著しく制限され、行為自体…

Pablo Alvarez-Mesa&“Bicentenario”/コロンビア、独立より200年の後

2019年はコロンビアがスペインから独立して200年という記念の年であり、コロンビア各地で独立を祝う式典が開催された。そこでその立役者として式典の中心にいた人物がシモン・ボリバルだった。“南アメリカ解放の父”と称されるラテンアメリカの独立運動の指導…

Juan Pablo Richter&“98 segundos sin sombra”/ボリビア、このクソみたいな世界で

最近、児童文学、もしくはヤングアダルト小説をよく読んでいる。クローン病という難病と診断されてから、小説家として様々なものを再考せざるを得なくなった。そこで辿りついたのが児童文学だった。そして私は、まずここから文学への関心や素養が培われた筈…

Angeliki Papoulia&“Patchwork”/彼女が内に秘めたる炎

まずこの文章を書くにあたって、ある俳優に関する個人的な思い出から始めさせてほしい。彼女を初めてスクリーンで観たのは2012年に日本で上映された、ヨルゴス・ランティモス監督作「籠の中の乙女」でだった。まずこの映画が提示する異常な世界観に驚かされ…

Emilio Silva Torres&“Directamente para video”/ウルグアイ VHS Z級映画 そして

さて今回紹介する映画は、私が最近お気に入りのウルグアイ映画、Emilio Silva Torres エミリオ・シルバ・トレス監督作“Directamente para video”である。題名から何となく伺えるかもしれないが、ウルグアイで空前の人気を誇ったあるビデオスルー映画をめぐる…

Damien Hauser&“Blind Love”/ケニアのロマコメは一味違う!

さて、ケニア映画である。調べてみると、あれだけ日本未公開映画を紹介しているのに、ケニア映画に関しては1本も紹介していないという事実が発覚し、驚いてしまった。それくらい新作ケニア映画に遭遇するのは難しいことであると言えるのかもしれない。だがこ…

Dušan Kasalica&“Elegija lovora”/モンテネグロ、知と特権と祝福と

旧ユーゴ圏においてセルビアやボスニアといった国々がまず世界で評価されていく中で、今までその力を存分に発揮できなかった国がとうとう脚光を浴びようとしている。まず北マケドニアは2020年において長編ドキュメンタリー「ハニーランド 永遠の谷」がアカデ…

Azer Guliev&“Tengnefes”/アゼルバイジャン、肉体のこの苦痛

さて、アゼルバイジャン映画である。現在の、いわゆる新しきアゼルバイジャン映画を支えるのは現在30代40代の映画作家たちだ。例えば私がこの10年で最も偉大な映画作家になると確信しているHilal Baydarov ヒラル・バイダロフや、2021年のオスカー国際映画賞…

Elitza Gueorguieva&“Un endroit silencieux”/別の言葉で書くということ

さてご存知かもしれないが、私はルーマニア語で小説を書いている、つまりはルーマニアで小説家として活動している。自分でもどうしてこんなことになっているのかよく分からないが、そんなことよりもルーマニア語という母国語以外の新しい言語で書くことを私…

Agustín Banchero&"Las vacaciones de Hilda"/短い夏、長い孤独

さて、私は今、映画批評家としてあることを考えている。2030年代に映画界の頂点を争うのはどこの国かということだ。早すぎるだろうか、いや2030年代に頭角を表すには雌伏の時期、着実に技術を高めていく時間が必要であり、今からそんな原石を探しだしていく…

Marinos Kartikkis&“Senior Citizen”/キプロス、老いの先に救いはあるか?

人間は長く生き続けるかぎり老いていく、この運命は絶対に避けることができない。肉体は朽ちていき、精神は磨耗していく。そして最後には全てが朽ち果てるのみだ。そんな老いという最後の旅路のなかに、救いというものは存在し得るのだろうか? 今回紹介する…

Zvonimir Grujić&“Pomoz bog”/モンテネグロ、お金がない!

世界の映画を観るにあたって最もハードルが高いのは、実はコメディ映画に思える。笑いのセンスくらい各国で異なるものはないし、それが更に地域ごとに細分化していくなかで凄まじく複雑なものになっていく。ゆえに普遍性と地域性のバランスを取るのが一番難…

Hannah Marks&“Mark, Mary & Some Other People”/ノン・モノガミーについて考える

性指向にしろ性自認にしろ、性というものが多様になってきている。いや、多様な性を持つ人々というのは以前から存在していたに決まっているが、彼らが“私たちはここにいる!”と叫んできた行動の数々がとうとう実を結んで、多様性が可視化されてきたという方…

Romas Zabarauskas&“Advokatas”/リトアニア、特権のその先へと

最近よく特権について考える。例えば私は日本国籍を持って生まれてその意味では日本に生きる日本人であり、セクシャリティに関してはシスジェンダーかつヘテロセクシャルの男性ゆえ、この意味で日本においてかなりの特権を持っている。一方で自閉症スペクト…

Laurynas Bareiša&“Piligrimai”/巡礼者たち、亡霊たち

さてリトアニア映画界である。2010年代後半、リトアニア映画史の巨人であるシャルナス・バルタスがセクシャルハラスメントで訴えられ、世界に衝撃が走った。現在もその真偽は有耶無耶のままであり、微妙な状況が続いている。だが例え巨星が堕ちようとも、新…

Barbora Sliepková&“Čiary”/ブラチスラヴァ、線という驚異

先日、ティム・インゴルドの「ラインズ 線の文化史」という本を読んだ。人類学者である著者が楽譜や筆跡など、文字通りの線の歴史を探っていくという作品でなかなか興味深く読んだ。今後、小説執筆などにうまくこの知識を活用できないかと思っている。だがこ…

Ekaterina Selenkina&“Detours”/モスクワ、都市生活者の孤独

最近、私が建築や都市デザインにまつわる映画に興味があるのは、直近の記事を読んでくれたりTwitterを見てくれている方ならご存知だろうと思う。クローン病と診断された後に開き直って大量の本を読み始めたのだが、そこで最も惹かれたものの1つが建築と都市…

Alex Pintică&"Trecut de ora 8"/歌って踊って、フェリチターリ!

私は今、ルーマニア映画界の新人の動向に2つの潮流を見ている。片方に"ルーマニアの新しい波"以降の、例えば長回しや徹底的なリアリズム描写など、いわば新しい伝統を継承し、新しい局面へ進めていく存在がいる。例えば今年のカンヌ批評家週間に出品された"I…

Alina Grigore&"Blue Moon"/被害者と加害者、危うい領域

2021年、ただでさえ凄まじいルーマニア映画界が更なる躍進を遂げている。まずベルリンでRadu Jude ラドゥ・ジュデの最新作"Babardeală cu bucluc sau porno balamuc"が金熊賞を獲得、カンヌには5作のルーマニア映画が出品され、ヴェネチアでは新人監督Monica…

Samir Karahoda&"Pe vand"/コソボ、生きられている建築

コソボ映画界がアツいというのは毎度のことこの鉄腸マガジンで言ってきているだろう。が、色々とコソボの最新映画を紹介してきたが、実を言えば私がコソボ映画に嵌ったキッカケの人物を紹介していなかった。そんな中、彼が新作映画を作った訳で、とうとう紹…