クィア映画
LGBTという言葉は昨今一般にも膾炙してきたと思える。これはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの略であるわけだが、クィア映画という観点においてはLGTを主人公とする作品は割合として多く、このブログでも何十本も紹介してきた。しかし…
皆さんは“チャウシェスクの落とし子”という言葉を聞いたことがあるだろうか。ニコラエ・チャウシェスクをリーダーとする社会主義政権下のルーマニアでは国力を増強するために避妊や中絶を禁止され、それによって多くの子供たちがこの世に生まれることとなる…
社会主義政権時代、ユーゴスラビアにおいてはパルチザン映画が多く作られていた。パルチザンというのは他国の軍隊による占領支配に抵抗した非正規軍のことであり、ユーゴでは特に枢軸国の支配に抵抗した共産主義者主体の勢力を指している。第二次世界大戦時…
歴史は勝者によって描かれる。そしてその勝者というのは社会における多数派である場合が多いゆえに、力を持てない少数派は歴史から消されて後世で語られることも必然的に少なくなる。ここにおいてクィア理論は、そんな多数派の歴史を性的少数者の視点から描…
さて、釜山国際映画祭である。東アジアで最大規模の映画祭なわけだが、ここのプレミア上映作を観ながら思うのは、東京と並んでマジに玉石混交ということだ。今年も幾つも作品をFestival Scope Proで鑑賞したが“これはアカンわ”と思う作品が多かった。だが同…
ここ最近、鉄腸ブログではガリシアやカタルーニャ、バスクといったスペインにおける自治州、まあ有り体に言えばスペイン、いやカスティーリャに植民地支配されている地域の映画を紹介してきた。それはこのブログでは日本や世界において無視されがちな地域の…
さて、ガイアナである。ラテンアメリカでもカリブ海に面し、スリナムと仏領ギアナを合わせてギアナ三国と呼ばれ独自の立ち位置にあるこの国だが、ガイアナといえば何にしろこの国に存在したカルト宗教である人民寺院とその惨たらしい末路ばかりが言及される…
さて、ナミビアである。この国にはカパーナと呼ばれるソウルフードがある。屋台で提供される、客の目の前で牛肉を切って鉄板で焼くというなかなか豪快な焼肉の一種である。ナミビアの人々は昼食としてこれを食べたり、夜にはアルコールと一緒にこれをかっく…
東欧は悲しいことに性的多様性においては保守的で、LGBTQに対する抑圧がかなり大きい。その保守性を反映してか、映画界においてもいわゆるクィア映画の制作本数は少ない。そもそも産業が小さいので長編制作数自体が少ないので、クィア映画なんかは本当に輪を…
ギリシャ映画には連綿たるクィア映画の系譜がある。最近でいえば日本ではキワモノZ級映画と見なされている「アタック・オブ・ザ・ジャイアント・ケーキ」とその監督パノス・H・コートラスはギリシャにおけるクィア映画史の重要人物でもある。彼の1世代後に現…
性指向にしろ性自認にしろ、性というものが多様になってきている。いや、多様な性を持つ人々というのは以前から存在していたに決まっているが、彼らが“私たちはここにいる!”と叫んできた行動の数々がとうとう実を結んで、多様性が可視化されてきたという方…
最近よく特権について考える。例えば私は日本国籍を持って生まれてその意味では日本に生きる日本人であり、セクシャリティに関してはシスジェンダーかつヘテロセクシャルの男性ゆえ、この意味で日本においてかなりの特権を持っている。一方で腸の難病である…
皆さんはキリスト教におけるConfirmation Campというものを知っているだろうか。このキャンプは思春期のキリスト教徒たちが集まり、信徒である大人たちの導きに従いながら信仰について考えるイベントである。彼らは数日間共同生活を行いながら聖書を読解した…
ルーマニアはLGBTQの権利という意味ではかなり保守的な部類に入る。それを象徴する事件が近年頻発している。例えばロマ文化研究者とロマ文化の担い手が恋に落ちる、ゲイ版"ロミオとジュリエット"と呼ばれるルーマニア映画"Soldații: Poveste din Fereastra"…
さて、このサイトでは2010年代に頭角を表し、華麗に映画界へと巣出っていった才能たちを何百人も紹介してきた(もし私の記事に親しんでいないなら、この済藤鉄腸オリジナル、2010年代注目の映画監督ベスト100!!!!!をぜひ読んで欲しい)だが今2010年代は終…
1980年代、マイノリティである白人によって統治されていた南アフリカ共和国において、人種隔離政策、いわゆるアパルトヘイトが頂点を極めていた。そんな中でこの国は、共産主義であったアンゴラ人民共和国における内戦に介入、共産主義政権を潰そうと活動し…
さて、今映画界におけるトランスジェンダー表象が話題である。例えばNetflixでトランスジェンダー表象を当事者の目線で描きだした"Disclosure"(邦題は長すぎる)が配信された一方で、ハル・ベリーがトランスジェンダー男性を演じようとして批判が殺到、彼女が…
さて、日本の映画批評において不満なことはそれこそ塵の数ほど存在しているが、大きな不満の1つは批評界がいかにフランスに偏っているかである。蓮實御大を筆頭として、映画批評はフランスにしかないのかというほどに日本はフランス中心主義的であり、フラン…
いわゆる"コミュ障"という言葉が日本語にはある。内に引きこもるばかりで他者との交流の仕方を知らず、孤独をこじらせていく悪循環に陥る人々のことだ。日本ではこの言葉がカジュアルに使われているが、実際問題この障害によって実生活に悪影響が及んでいる…
さて、毎年冬に東京ではフィンランド映画祭が行われる。日本では未公開である現代のフィンランド映画を上映してくれる有り難い映画祭だ(個人的にはいつかルーマニア映画祭とかも上映されないかなと羨ましく思っている)という訳で今回はそれに合わせてフィン…
昔から女性を愛し、女性に愛されてきた、いわゆるレズビアンという人々がいた。しかし彼女たちの愛と人生は平坦なものではあり得なかった。社会の同性愛者への不理解や偏見に晒され、そして個人的な苦悩にも苦しめられ、愛する者と別たれてきた人々も多いだ…
ローラ(Valerie Pachner)はビジネス・コンサルタントとしてオーストリアとドイツを飛び回る日々を送っている。仕事の首尾も上々であり、今後これが続けばオーストラリアへの栄転もあるそうだ。上司のエリーゼ(Mavie Hörbiger)とは公私に渡るパートナーであり…
恋はいついかなる時間場所でも花を咲かせる。その恋の風景の数々は共通するところがあれば、異なる部分もある。それらについて映画などを通じて知っていくことは、芸術に触れる楽しみの1つでもあるだろう。今回紹介するKatharina Mückstein監督作“L’animale”…
アルゼンチンの現代史は激動の歴史以外の何物でもないだろう。特に、俗に言う“汚い戦争”が繰り広げられた、7年にも渡る軍事政権は様々な形で人々を翻弄していった。例えば共産主義者などに対する弾圧は有名であるが、同時に同性愛者に対する弾圧も凄まじいも…
さて、コソボである。他の旧ユーゴスラビア諸国のようにこの国もまた苛烈な紛争を経験し、数多の死と破壊に見舞われることとなった。その時代から約20年が経ち復興は確かに進みながらも、今にも癒えない傷や隠された忌まわしき過去というものはコソボの人々…
現在、ルーマニアでは同性婚禁止の動きが活発化している。政府が国民投票によって結婚についての憲法条項の改訂を決めたのである。もしこれによって本当に同性婚が禁止されてしまったならば恐ろしいことだ。LGBTQである人々の権利が著しく侵害されてしまうの…
さて、ヴェネチア国際映画祭はメキシコの映画作家アルフォンソ・キュアロンの最新作“Roma”が金獅子賞を獲得したことで、幕を閉じることとなった。だが私が興味あるのはメインのコンペティション部門よりもサイドのオリゾンティ部門である、とは前も言った。…
リン・シェルトン&"We Go Way Back"/23歳の私、あなたは今どうしてる? リン・シェルトン&"My Effortless Brilliance"/2人の男、曖昧な感情の中で リン・シェルトン&"Humpday"/俺たちの友情って一体何なんだ? リン・シェルトンの経歴および長編作につい…
Chloé Robichaud &"Sarah préfère la course" /カナダ映画界を駆け抜けて Chloé Robichaud&"FÉMININ/FÉMININ"/愛について、言葉にしてみる Chloé Robichaud監督の略歴、および前作についてはこちら参照。さて、Chloé Robichaud監督である。彼女は私にとって…
同性婚がアメリカにおいて認められた後、その事実を背景として様々な作品が作られている。日本でも公開されたアイラ・サックス監督作「人生は小説よりも奇なり」やキャサリン・ハイグルが主演を飾った“Jenny’s Wedding”に、一風変わった作品としては結婚式を…