鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!

映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Carlos Saguier&“El pueblo”/パラグアイ、今に残るその生き様

さて、パラグアイである。この南米の小国、ブラジルやチリなど周りの国がそうであったように軍事独裁政権が続いた時間が長く、1954年から1989年の長きに渡って大統領であるアルフレド・ストロエスネルの支配が続いていた。この期間は反体制派に対する弾圧は…

Tenzin Phuntsog&“Next Life”/故郷から、チベットから遠く離れて

さて、チベットである。中国政府による弾圧で、国外移住をせざるを得ない状況が長きに渡り続いている。このサイトによると“2017年1月現在、世界の亡命チベット人は12万人”だそうで8年後の今はおそらくその数はもっと増えているのではないか。彼らは世界各国…

Majid Al-Remaih&“Perishable Idol”/クウェート、大地に残る傷跡と記憶

さて、クウェートである。イラクとサウジアラビアに囲まれ、海を挟んで向かい側にはイランが位置する、そんな中東の一国である。日本ではおそらくこの国がイラクに侵攻されたことで始まった湾岸危機および湾岸戦争で有名だろう。その湾岸戦争の傷は未だ大き…

Leyla Assaf Tengroth&"Frihetsligan"/レバノン、少女たちの現実

シェイハ(Carol Abboud)は貧困にあえぐ家庭に生まれ、ベイルートの片隅でスリなどの犯罪に手を染めながら何とか暮らしている状態だ。家に帰っても強権的な父親に虐待される時間が続き、心の休まる時間が存在しない。とうとうシェイハは弟のアフメドと一緒に…

Emilios Avraam&“Smaragda”/私が選んだ、この大切な孤独

孤独だったり、一人になりたいって思いだったりは何だかんだやっぱり侮られがちだろう。そうしたいからと誰かからの誘いを断ると付き合いが悪いと陰口叩かれたり、好きで一人で生きているのにずっと独り身という風に勝手に憐れまれたりね。そして孤独でいる…

Abigail Mallia&“Castillo”/マルタ、お前の成した罪を見据えろ

今回紹介するAbigail Mallia監督によるマルタ映画“Castillo”はアマンダ(Analise Mifsud、劇伴も担当)という女性が母エマ(Simone Zammit)を訪ねるところから始まる。アマンダが子供の頃に突然家を出ていった彼女とはかれこれ20年も疎遠だったが、とうとう居場…

Andreas Pantzis&“I sfagi tou kokora”/キプロス、その血塗られた業

友人関係にある男2人エヴァゴラス(Georges Corraface)とオニシロス(Dimitris Vellios)は、ナイトクラブ兼娼館を経営する日々を送っている。ある日彼らのもとに旧知のアメリカ人男性がやってくるのだが、彼は1本のセックス動画を手にしており、これをネタに男…

Otto Rosing&“Nuummioq”/僕の故郷、グリーンランド

さてグリーンランドである。ここでは古くから映画作られていはしたが、言ってみれば宗主国であるデンマーク資本、ひいてはデンマーク人監督による作品が主だっていた。長編に関しては、そんな中でグリーンランド舞台でこの国固有のグリーンランド語を使用し…

Muhamad ’Ali al-Farjani&“Al-Shazia”/リビア、我らが生きるこの大地で

さて、リビアである。イタリアによる植民地支配、第二次世界大戦による荒廃、英仏の共同統治領から独立、カッザーフィー独裁政権、長きに渡る内戦……その現代史は波乱に満ちたものであり、ここにおいて映画産業はほとんど発展することなく今に至っている。だ…

Joël Akafou&“Loin de moi la colère”/コートジボワール、怒りよりも赦しを

さて、コートジボワールである。映画界においては正直あまり目立たない国だが、最近はこの国の新鋭Philippe Lacôte フィリップ・ラコートの“La nuit des rois”が話題になり、ラコートはAmazon制作のノワール映画「キラーヒート 殺意の交差」に抜擢されるなど…

Carlos Yuri Ceuninck&“Omi nobu”/カーボベルデ、それでも生きる者たちへ

生というものには悲しみや苦しみがつきものだ。どうしてこんなに悲しいことが起こるのか、どうしてここまで苦しまなくてはいけないのか、どうしてこの世に生まれてしまったのか? そんな苦悩に苛まれたことのない人はあまりいないだろう。この答えの簡単には…

Ruy Duarte de Carvalho&“Nelisita”/今始まる、アンゴラVS資本主義

さて、アンゴラである。アフリカにおけるポルトガルの元植民地国でモザンビークとギニアビサウ、カーボベルデの映画は以前にも鉄腸ブログで紹介してきたが、もう一国であるアンゴラを取りあげるのは実は初である。何故に紹介しなかったかと言えば、アンゴラ…

Timothy Nimanwanya&“A History of Film in Uganda”/40分で分かる、ウガンダ映画の歴史!

さて、ウガンダである。ウガンダ映画といえば、日本でにおいてもハリウッドならぬワカリウッドが有名であり、ワカリウッドを代表する映画監督ナブワナIGGの作品が上映されているし、その制作裏を追ったドキュメンタリー作品「ワカリウッド・フォーエバー!」…

Raymond Rajaonarivelo&“Tabataba”/マダガスカル、奪いつくされ踏みにじられ

舞台は1947年のマダガスカル、独立を目指して宗主国フランスへの反乱が活発化していた時代だ。この国の南部では特に反乱が激化していたのであるが、主人公であるソロ(François Botozandry)はそこに位置する村に暮らしていた。ここでも反乱の機運が高まってお…

Lopes Barbosa&“Deixem-me ao Menos Subir às Palmeiras”/モザンビーク、大地へ還る者たちに捧ぐ

さて、モザンビークである。インド洋沿いに位置する東アフリカの一国がこの国だが、ポルトガルに植民地支配され、1975年に独立後も十数年に渡る内戦で荒れに荒れる状況が続いていた。終結後は経済も少しずつ発展していってるが、未だに安定はしていない。そ…

Luck Razanajaona&“Disco Afrika: Une histoire malagache”/マダガスカル人として、アフリカ人として

さて、マダガスカルである。マダガスカルの映画と聞くと、おそらくはDreamWorksのアニメーション映画「マダガスカル」しか思いつかない人が大半だろうが、この国にも独自の映画文化が確かに存在している。Ignace Solo RandrasanaやRaymond Rajaonariveloとい…

Sarra Tsorakidis&“Ink Wash”/私は、ルーマニアはどこへ向かうの?

40歳というのはやはり人生の節目なのだろう。今の世の中、多くの人が70代80代辺りで亡くなるのが多くなってきたわけで、人生半周もここの辺りになってきている。結構長く生きているわけで、より寿命が短かっただろう時代に生きた孔子が40歳を不惑の年と表現…

Ivan Salatić&“Otapanje vladara”/モンテネグロ、寄る辺なき小さな国よ

razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.com Ivan Salatić監督のプロフィールとデビュー長編"Ti imaš noć”に関してはこちら参照。舞台は19世紀、モンテネグロは危機に瀕していた。オスマン帝国の脅威に常に晒される一方、その保守的な政治体制から西欧諸国から孤…

Christine Haroutounian&“Yerazeluts heto”/アルメニア、夢の後に黙示録は来たる

世界史を学んだ人の中にはアルメニア人ディアスポラについて聞いた人も多いだろう。彼らは歴史上においてまずは商業活動を通じてヨーロッパを中心に世界へと広がっていき、現代においてはトルコによるアルメニア人虐殺、ソ連からの独立以後から始まった経済…

Kukla&“Fantasy”/スロヴェニア、私たちは確かにここに生きてる!

東欧は悲しいことに性的多様性においては保守的で、LGBTQに対する抑圧がかなり大きい。その保守性を反映してか、映画界においてもいわゆるクィア映画の制作本数は少ない。そもそも産業が小さいので長編制作数自体が少ないので、クィア映画なんかは本当に輪を…

Zhannat Alshanova&“Becoming”/カザフスタン、青春のこの絶望と足掻き

さてロカルノ映画祭である。つい今日その結果が発表され、三宅唱の新作がコンペで最高賞を獲ったことが話題になっているが、まあそれしか話題にならない。いつもの日本中心主義が繰り広げられており、少しでもその注目を去年最高賞を、しかも初長編で射止め…