2017-01-01から1年間の記事一覧
さてコンゴである。とはいえまず言うべきなのは、いわゆるコンゴという国はこの世界に2つ存在している、つまりコンゴ共和国とコンゴ民主共和国である。前者はフランスが、後者はベルギーが植民地化した故に公用語も同じフランス語で紛らわしいことこの上ない…
今、未曽有の経済危機がスペインを襲っている。特に若者への打撃は酷く、2016年時点で25歳以下の失業率が約50%に近づくなどかなり危うい水準にある。そんな状況で故郷を出て、他のEU諸国へと出稼ぎに行く若者たちの数が近年多くなってきている。今回はそんな…
ヨルゴス・ランティモス監督作「籠の中の乙女」において、観客の度肝を抜くシーンは余りにも多すぎて枚挙に遑がないが、特に脳髄をブチ震わされた場面を1つ挙げるとするなら、私は終盤での奇妙過ぎるダンスを選びたい。ギターの音色に合わせて最初は割と普通…
さて、いわゆる“ギリシャの奇妙なる波”はこの国が直面した経済危機に端を発して巻き起こった潮流と言うべきものだ。危機的状況において自分たちはどう映画を作れば良いのか?という苦悩の元に映画作家たちは団結し、低予算で勝負するために全くもって奇妙な…
主人公たちがマリファナを吸いまくってマリファナで笑わせまくってマリファナって最高!と大団円に至る、いわゆるストーナーコメディというジャンルがある。「チーチとジョン〜スモーキング大作戦」や「ハロルド&クマール」シリーズなんかがその例だが、私と…
前回、ルチアン・ピンティリエの“Terminus paradis”をレビューしたが(という書き出しから、この記事が大分前に書かれたことを察して欲しい)、その記事の中で今作は20年越しにピンティリエがルーマニアで作り上げたアメリカン・ニューウェーブの末裔的な作品…
さて、久しぶりの文芸エロ映画である。去年は序盤からセルビアの「インモラル・ガールズ〜秘密と嘘」やノルウェーの「妹の体温」チリの「ダニエラ 17歳の本能」など粒揃いだったが、今年の文芸エロ映画はかなり不作だ。1月の「モデル〜欲望のランウェイ」は1…
サフディ兄弟&"The Ralph Handel Story”/ニューヨーク、根無し草たちの孤独 サフディ兄弟&"The Pleasure of Being Robbed"/ニューヨーク、路傍を駆け抜ける詩 サフディ兄弟のプロフィール及び前作についてはこちら参照。時々、映画を観ている時に“○○に捧ぐ…
ベン・ウィートリーの「フリーファイヤー」を観た。いやいや予想を越える、というか予想外な方向で素晴らしかった。私が思うに、この映画は今世紀最低の銃撃戦映画であり、今世紀最高のアンチ銃撃戦映画であり、今世紀最高の“銃はとても危ないから使っちゃい…
60年代のブルガリア、他の国がそうであったように共産主義国家であったこの国にも、ビートルズなどのロックミュージックや性の解放がもたらされるなどして、自由の気風が高まりを見せていた。だが今作の舞台となる寄宿学校はそれとは真逆の方向を行っていた…
2007年、ジョシュ・サフディが長編作品の計画を立てていた頃、彼らは友人の映画作家Casey Neistatを通じてある人物と出会うこととなる。実業家であるその人物アンディ・スペードは映画作家に自身の会社の広告を手掛けてもらう代わりに、映画製作のサポートを…
2017年も1/3が過ぎたが、それが意味するのは世界最大の映画祭であるカンヌ国際映画祭が開催されるということだ。コンペティション部門にはトッド・ヘインズからポン・ジュノ、ノア・ボーンバックにミヒャエル・ハネケなどなど錚々たる映画作家が揃っているが…
さて、マンブルコア/マンブルゴアというムーブメントは配信サイトの発達によって支えられてきたと以前にも書いたが、その中心となる存在がネットフリックスだった。まずデュプラス兄弟のデビュー長編“The Puffy Chair”(紹介記事)の配給権をまだレンタル/配給…
空港、絶え間なく人々が行き交う場所、様々な人生が交錯する場所。ここから新たな場所へと飛びたつ者がいれば、遥かな旅の末にここへと戻ってくる者がいる。そんな特別な場所ゆえに、空港を舞台とした作品はスティーヴン・スピルバーグの「ターミナル」や「…
物語の舞台はブダペスト郊外にある病院、そこでの人々の姿が描かれるのだが、中心となる1人の青年医師ヤーロムだ。彼は人の命を救うという自分の仕事に疑問を持ち始めている。そんな中で70歳になる恩師が手術に復帰すると聞き、複雑な思いを抱きながら手術に…
その時ユーゴスラビアは歓喜に湧いた。イタリアやナチスドイツら枢軸国の敗北によって、第2次世界大戦はとうとう終わりを告げたのである。彼らからの支配を逃れ自由を獲得した兵士たちは喜びに浸りながら、町を練り歩き、ユーゴスラビアの美しい大地をひた走…
これ本当は本家にアップする予定だったが、こんなブログを作ったのでこっちに流しておく。さて、ヴェラ・ヒティロヴァである。日本では完全無欠最強のガールズムービー「ひなぎく」でお馴染みな、チェコ・ヌーヴェルヴァーグの代表的映画作家だが、そうであ…
60年代のブルガリア、ヴァニョという少年はパパとママと一緒に平穏な日々を送っている。そんな中パパが新品の車を買ったのでピクニックに行くこととなった。ヴァニョはとっても嬉しくて後部座席でワッチャワッチャと騒ぎまくるのだが、何故だか良く分からな…
今作は1956年のハンガリー暴動から幕を開ける。ソビエト連邦の支配に業を煮やした民衆が放棄し、ブダペストの街は戦火に燃え盛ることとなる。主人公であるディニと兄のガボルの父親はこの街から逃げ出そうとするのだが、母親はそれを良しとせず廃墟の中で彼…
さてラオスである。東南アジアの小国であるラオスは、今まで映画界において日の目を見ることはほぼなかった。しかし最近ラオスが関連する映画作品が同時期に幾つも現れている。まず1作目は日本映画「バンコクナイツ」である。タイトルの通り物語の舞台はタイ…
フランク・V・ロス&"Quietly on By"/ニートと出口の見えない狂気 フランク・V・ロス&"Hohokam"/愛してるから、傷つけあって フランク・V・ロス&"Present Company"/離れられないまま、傷つけあって フランク・V・ロス&"Audrey the Trainwreck"/最後にはい…
フランク・V・ロス&"Quietly on By"/ニートと出口の見えない狂気 フランク・V・ロス&"Hohokam"/愛してるから、傷つけあって フランク・V・ロス&"Present Company"/離れられないまま、傷つけあって フランク・V・ロス&"Audrey the Trainwreck"/最後にはい…
今、ブリテン諸島映画界を席巻する存在は何と言ってもベン・ウィートリーである。自身「ハイ・ライズ」や「フリー・ファイヤー」などの監督作で世界をブン殴る一方、プロデューサーとして異様な才能を持つ新人作家たちを世界へ巣立たせていく役割も果たして…
フランク・V・ロス&"Quietly on By"/ニートと出口の見えない狂気 フランク・V・ロス&"Hohokam"/愛してるから、傷つけあって フランク・V・ロス&"Present Company"/離れられないまま、傷つけあって フランク・V・ロスの監督作はこちら参照。いわゆるマンブ…
さて、パラグアイである。1954年、軍事クーデターによってアルフレド・ストロエスネルが最高権力者に君臨したその時から、ラテンアメリカ諸国でも随一に長く過酷な独裁政権が幕を開ける。1989年にやはりクーデターで彼が政権を追われるまで30年もの間、国民…
フランク・V・ロス&"Quietly on By"/ニートと出口の見えない狂気 フランク・V・ロス&"Hohokam"/愛してるから、傷つけあって フランク・V・ロスの監督作はこちら参照。映画監督には大きく分けて2つのタイプがいる。まずは自分の人生と自分の作品を切り離す…
2005年フランク・V・ロスが第2長編“Quietly on By”を完成させた頃、SXSW映画祭においてアンドリュー・ブジャルスキやジョー・スワンバーグ、デュプラス兄弟などが集い、マンブルコアという言葉が生まれることとなった。彼らの作品は正にロスの作品とDIY的な…
このブログでは、マンブルコアというゼロ年代のアメリカで隆盛を誇った潮流を一気に振り返ってきた。その過程でジョー・スワンバーグにアンドリュー・ブジャルスキ、デュプラス兄弟にリン・シェルトン、アーロン・カッツなどこの潮流の中心作家を紹介してき…
この頃ルーマニア映画を多く観ている訳だが、その中に何故か日本についての描写が結構出てくる。ラドゥ・ジュデの監督作“Toată lumea din familia noastră”ではエンディングに「黒猫のタンゴ」日本語版がいきなり流れたり、“Terminus paradis”では主人公が日…
芸術作品とは否応なくその時代を反映するものであるが、こと映画に関しては映像メディアという側面もあるがゆえ、もはやフィクションですらもある意味で時代を撮すドキュメンタリーのような役割を果たすことになる。その過程で否応なく問題となってくるのが…