2015-01-01から1年間の記事一覧
チェコ映画といったら、まずはヤン・シュヴァンクマイエルだろう。「アリス」「悦楽共犯者」などアニメと実写が混ざり合う唯一無二の異形なる世界観にはファンが多い。そしてチェコ・ヌーヴェルヴァーグ、「夜のダイヤモンド」のヤン・ニェメツ、「火葬人」…
今年はグザヴィエ・ドランの新作「マミー/Mammy」は画郭がInstagram的正方形であったり、リサンドロ・アロンソの「約束の地」は四隅が丸みを帯びている変形スタンダード・サイズであったりと、スクリーン・サイズに工夫を凝らし物語に没入させる新しいタイプ…
デイヴィッドとジェイ、20年来の親友である彼らはとある場所へと赴く。高校生の頃だよな、ジェイは語る、ここで誰かが俺たちに襲いかかってきて、ビンを後頭部に叩きつけられた、その時思ったんだよ、ああこれ西部劇によくある酒場での喧嘩みたいだなってさ…
映画というメディアが生まれて百余年、この映像芸術は様々な形で世界の終わりを描いてきたが、私が一番愛している世界の終わり映画は「ミラクル・マイル」という作品だ。ある理由でロシアから核ミサイルがアメリカへと発射されたのを知った主人公は、最愛の…
つい先日、リアルサウンド映画部にポール・トーマス・アンダーソンの新作ドキュメンタリー"Junun"についてのレビューを寄稿(このページを読んでね)したのだが、そこで私は配信サイトMUBIについて書いた。PTA自身がこのサイトの利用者だったのがきっかけで、…
まず映るのは少女の後ろ姿だ、赤毛を三つ編みにした彼女は、森の中の道筋をふらふらと歩く、カメラはその姿を追い続け、ふと彼女は携帯電話を取りだし、歩みは止めないまま何処かへ電話をかける、呼び出し音、呼び出し音、彼女はふらふらと歩く、呼び出し音…
以前、イランの映画監督モハマド・ラスロフを紹介した時(記事はこちらから)、題名にも付けたのだが"国とは船だ、沈み行く船だ"というように船は荒廃する国のメタファーとして映画によく表れるという話をした。だが"Jazireh Ahani"も「海にかかる霧」にも出て…
10月末に開催される東京国際映画祭で「タンジェリン」という作品が上映される。あれではない、アブハジア紛争を描いたエストニア映画の「タンジェリン」ではない、EUフィルムデイズで観たけども、私の感想としては「ノー・マンズ・ランド」最高!という一言…
私はどちらかと言えば劇映画が好きなので、今までドキュメンタリーというものを余り観てこなかった。いやいや今、正にそれを後悔している所だ。切断された足を巡って2人の男がアメリカ全土を巻き込んで激しい争奪戦を繰り広げる「拾ったものは僕のもの」(こ…
ブラディ・コーベット、この名にピンとこなくともミヒャエル・ハネケ監督作「ファニーゲームUSA」の不愉快甚だしいガキ2人の中で、マイケル・ピットではない方と言えば分かる人も多いのではないだろうか。俳優として「サーティーンズ」やグレッグ・アラキ監…
さて、今回紹介する映画はバスク映画である。私含め皆さんに馴染みのないだろう国の映画を紹介する時の、あのお決まりの問いをここにも書くとしよう、あなたはバスクのことをどのくらい知っているだろうか。スペインの北に位置する地域、この前私がかなり注…
走る者を描いた作品であなたの好きな映画はなんだろうか。「炎のランナー」「長距離走者の孤独」「誓い」「駆ける少年」「リトル・ランナー」……私が好きなのは、1つがナ・ホンジン「哀しき獣」だ。ハ・ジョンウ演じる主人公が妻を追い求めて、暴力に追いたて…
今、アメリカでFilm Fatalesという団体が注目を集めている。LAとNYを拠点として活動しているこの団体は、女性差別の激しいハリウッドから離れて、自分たちで映画を作っていこう!という意気を同じくした作り手たちの団体だ。ここからどんどん才能ある作り手…
実業家であるシャノン・ウィズナントは、オークションで買ってきたおかしな品の数々を、巧みな話術で高く売りさばいて生計を立てていた。この日もそうだ、いつものようにオークションで売れそうな物を見繕っていく、そして買ったのは古びたバーベキュー用グ…
さて、あなたはベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞に輝いた"長編"作品をいくつ言えるだろう。私は今年の受賞作すら覚えてはいない(調べたらジャファール・パナヒ"Taxi"だった)。ではベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞に輝いた"短編"作品をいくつ言えるだ…
アメリカのインディー映画界というのは本当に広くて、色々観まくってああ今の映画界こんなことになってるのねと知った気になっていると、その多様性にブン殴られる時が多々ある。「女教師」「6年愛」ハンナ・フィデル(この記事とこの記事を読んでね)、"Glass…
韓国、ギリシャ、ルーマニア、イスラエルの映画が私は好きだ。韓国は過去に犯してきた、もしくは今現在犯し続けている罪について、このことは一生語り継いでいかなければならないという信念が、時には圧倒的な熱量を以て、時には驚くほど理知的なアプローチ…
2015年現在、イングランド映画界において私が"ビッグ3"と呼ぶ監督がいる。まず1人がジョナサン・フレイザーだ。映像作家としてジャミロクワイ"Virtual Insanity"などを手掛けていたフレイザーは2000年に異色のノワール映画「セクシービースト」でデビュー、…
アンナ・オデル Anna Odell は1973年10月3日、スウェーデンに生まれた。ターヌムのGerlesborgsskolanという学校でファイン・アートを学び、その後もスウェーデン国立美術工芸大学(Konstfack)、王立美術大学(Kungliga Konsthogskolan)を渡り歩き、美術と映画…
リサ・ラングセット& "Till det som är vackert"/スウェーデン、性・権力・階級 リサ・ラングセット監督の略歴、デビュー作についてはこの記事を参照。私とは一体何なのだろう。私とはあなたの心から湧きあがる物によって構成されるのだろうか、それとも私と…
さて、現代インドネシア映画界の話である。日本、というか世界で一番有名なのは「ザ・レイド」だろう、監督はウェールズ人のギャレス・エヴァンスだがインドネシアの武術シラットを全面に押し出したことで新世紀のアクション映画!と世界中で話題になってい…
私にとってブラジル映画といったら、少し前まではエログロのカリスマキチガイ貴公子コフィン・ジョー一択だった。いやだって取り敢えずこの動画観てみてよ、アレだろ!……しかしここ最近、現代ブラジル映画を何本か観てきて、新しい才能現れ始めてるなあと思…
エストニア、エストニア、取りあえず今の段階で私が知っていることを書くと、リトアニアとラトビアと共にバルト三国の一国であること、去年か一昨年公開した「クロワッサンで朝食を」はフランス+エストニア映画であること、いや、本当にそれくらいしか知識が…
香港映画、台湾映画、そして大陸映画、いわゆる中国映画は大きくこの3つに分けられる。香港映画はもう大分昔からジミー・ウォングからジョン・ウー、ウォン・カーウァイからジョニー・トー、ダンテ・ラム、そして今年上映された「八仙飯店之人肉饅頭」「エボ…
バディ・アクションものと言えば男&男が普通で、ときどき男&女があり、しかし女&女という組み合わせはあまり見当たらない。アクションといえば男性が中心で、女性は彼らの添え物か恋愛を絡めりゃ客来んだろ!って意図で出てくるだけの存在でしかなかった訳だ…
トーマス・イーガン(「ゲッタウェイ スーパースネーク」イーサン・ホーク)は朝起きる、1階に降りる、朝食を食べる、車を運転する、基地につく、席に座る、液晶を見る、液晶を見る、ドリンクを飲む、液晶を見る、ボタンを押す、10数える、爆発する、死体を数…
名誉殺人という言葉を聞いたことがあるだろうか。親が決めた結婚相手ではない男性と交際したり、結婚したりした、もしくは結婚後においても夫に反抗する女性を“一族の名誉を汚した”という理由で、家族から殺害されること、それを名誉殺人という。こうした因…
映画にとって編集は重要だ、時によっては撮影や音楽よりも。シーンとシーンを繋ぐ編集はそのまま映画全体のリズムを決める、余計な部分を容赦なく切り捨てれば勢いよく物語は進む、むしろ余計な部分をそのままにして意図的な間延び間を生み出すことで逆に魅…
新聞をつらつらと眺める、あなたはある記事に目を引かれる、誰かが亡くなったという記事、名前と年齢と亡くなった場所と、それから……冷ややかなリズム、この四角の中だけでは説明できるはずのない人生がその人にもあったはずなのに、あなたは少しだけそう思…
イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド、この4つから構成されている地域を何と言えばいいのか、イギリスとか英国とかUKとか色々あるが、調べてみると厳密にはそれでは駄目らしい。いや、別にそこ纏めて語る必要なくない?というのもある…