2018-01-01から1年間の記事一覧
あなたはポール・ヴェキアリ Paul Vecchialiというフランスの映画作家を知っているだろうか。ヌーヴェルヴァーグの影で個性的な作品を作り続けた映画団体ディアゴナール社のリーダー的存在であり、80代を越えても現役で映画を製作し続ける生ける伝説というべ…
さて、ノヴァスコシアである。カナダ東部の大西洋へ突き出た半島部に位置するこの州は幾度となく映画の舞台となっており、以前紹介したAshley Mackenzieの“Werewolf”も正にこの州にあるケープ・ブレトン島が舞台となっていた。 カナダにおいては田舎として扱…
さて救急車映画である。私的にまず思いつくのはニコラス・ケイジ主演の「救命士」だ。名前の通りケイジ演じる救命士が眠らない街ニューヨークを、救いを求めて疾走する今作は個人的にマーティン・スコセッシ監督作でも1,2を争うほどお気に入りの作品だ。「ア…
映画史においてダメ親父映画というのは枚挙に暇がないほど膨大に作られてきた。えっ?じゃあその例を出せって?いやもう多すぎて例を出すのすら憚られるほどだよ。どうせすぐに思い付かないからだろって?何を馬鹿な、そんなのすぐ思い出せるし今までのブロ…
「やあ、ご無沙汰だな!我々のこと覚えているかな?」 「全く以て覚えていないと思います。ワタシ自身、自分のこと忘れてましたからね」 「まあ、そうだろう。このブログに登場するのは3年ぶりだからな。私はZ級映画を教養として紹介してきた教授だ!Z級映画…
さて、私はアメリカのインディペンデント映画界における才能を多数紹介する記事を多く書いている訳で、日本においていかに彼らが紹介されていないかが残念に思えてならない。だがアメリカのドキュメンタリー映画を愛する人々の悲しさは更に深いものだろう。…
さて、カーボベルデ共和国である。まずカーボベルデって何処だよ?っていうと、北アフリカの西の沖に位置している。共和制の島国で、元々ポルトガルの植民地であった故にポルトガル語が公用語になっている(カーボベルデ・クレオール語も公用語)文化について…
さて、クルドである。クルド人は自分たちの国家を持たない世界最大の民族集団であり、トルコやイラク、イランやシリアなど中東の各国にその大多数が住んでいる。それ故に少数派として差別・抑圧される立場にあり、特にトルコ人との対立は有名なものだろう。…
同性婚がアメリカにおいて認められた後、その事実を背景として様々な作品が作られている。日本でも公開されたアイラ・サックス監督作「人生は小説よりも奇なり」やキャサリン・ハイグルが主演を飾った“Jenny’s Wedding”に、一風変わった作品としては結婚式を…
たまに地方都市へと旅行に行く時、旅館の部屋でテレビなんか見ていると、何ともローカルとしか言い様がない平和でのどかなニュースが流れてくることがある。東京では殺人だとか詐欺だとかそういう不穏なニュースばかり流れてくるのになぁと、微笑みが自然と…
さてスロヴェニアである。この国は……といつものように続けようとしたが、このブログにおいては既にスロヴェニア映画を紹介していた。ふう。実際レビューを書く時に一番苦労するのがこの序文なのである。レビューの幕開けとして、これから続く文章を包括的に…
ソフィア・タカール&"Green"/男たちを求め、男たちから逃れ難く ソフィア・タカールの略歴、および第1長編"Green"についてはこちら参照。さて、ソフィア・タカール監督である。マンブルコアに参加することで演技力や演出力を養い、2011年には初の監督作“Gre…
さて、イラン=イラク戦争の勃発はイランという国に大いなる傷を刻むことになる。ミサイルの応酬によって互いの都市は破壊され、崩壊し、多大な被害を被ってしまう。そしてそこで生まれた傷は今にもまだ続いているのだ。ということで今回はそんな状況を背景と…
Liryc Dela Cruzはフィリピン・ミンダナオ島の南コタバト州に生まれた。小さな頃から映画監督を志し、高校時代は学校のパソコンでYoutubeにアップされた映画の予告やクリップ動画を観て、想像を働かせる日々を送っていたのだという。2008年には大学に通うた…
死は誰の元にも平等にやってくる。あなたの元にも、そして信じたくはないだろうが、あなたの大切な人の元にも。あなた自身の後にあなたの人生は続くことはないが、しかしあなたの大切な人の死の後にはあなたの人生は否応なく続いていく。その時、あなたはそ…
今現在、世界から求められているルーマニア映画とは一体何か。チャウシェスク政権が現代に残した傷を見据える作品、もしくはチャウシェスク政権における抑圧を鋭く描き出した作品の数々と言える。そんな中でユニバーサルな感覚を持つルーマニア映画は国際映…
(注:これ結構前に書いた記事の練り直しなので、冒頭の文は結構の前の出来事です)ブログでも映画配信サイトMUBIの名は何度も出してきたが、このサイトは映画のデータベースという側面も持っており、それぞれのページにはユーザーの感想が記載されるなどして…
あなたはズジスワフ・ベクシンスキーという画家を知っているだろうか。名前は知らないかもしれないが、この絵を見たならば“ああ!”と恐怖と共に思い出すかもしれない。そう彼は3回見たら死ぬと言われる絵画など、おぞましい作品を多く描いてきた画家なのであ…
世界的に見ると、オランダ映画界の存在感はあまり大きくないのかもしれない。というかこの国が産み出した残虐変態大将軍ポール・ヴァーホーヴェンの威光が鮮烈すぎて、他の作家たちがほぼ知られていないという状況にあるというのが正確かもしれない。最近の…
さて、カザフスタンである。中央アジアに位置するこの国の有名人と言えば誰だろう。例えば今年急逝したフィギュアスケート選手デニス・タンや映画界においては去年「ベン・ハー」のリメイクという映画史の神に悖る行為をやらかしたティムール・ベクマンベト…
さて皆さん、アメリカのアジア系映画作家と言われて誰が思いつくだろうか。例えば「ドゥーム・ジェネレーション」の鬼才グレッグ・アラキや「SAW」シリーズに「死霊館」シリーズをブームに押し上げたホラー映画界の立役者ジェームズ・ワン、最新映画「クレイ…
このブログにおいておそらくカナダ映画は結構多く紹介してきた。おそらくアメリカ、ルーマニア、メキシコの次に多いのではないだろうか。そんな中で私が贔屓にしてブログでも多く話題にしている映画配信サイトMUBIで次世代のカナダ映画作家大特集が始まった…
私のツイッターのフォロワーは台湾好きが多い。彼/彼女らは頻繁に台湾へと旅行し、様々に楽しんでからほっくり顔で帰ってくる。そして皆がその時の写真を挙げる訳だが、美味しそうな食事に洒脱な建物、美しい風景や驚きの仮装写真などなど見てるこっちまで台…
チリは1989年まで軍政によるピノチェト独裁政権が続いていた。その後政権が崩壊して民主化が進行する中で、しかし忘れられていくものも存在していた。失われた文化、失われた命。今回紹介するAlireza Khatami監督作“Los Versos del Olvido”はチリの過去と現…
男女は平等であるはずなのに、どうしてこんなにも深刻な女性差別が罷り通っているのか絶望したくなる時が、この日本で生きていると本当によくある。女性専用車両への抗議やレイプ事件を告発した伊藤詩織氏へのバッシング、東京医科大学でのテスト点数改竄問…
さて、ルーマニア映画を観るにあたって本当に本当に有り難いのは、様々なルーマニア映画を配信する国公認のYoutubeアカウントCINE PUBが存在していることだ。旧作に新作、短編に長編、劇映画にドキュメンタリーなどなど何でもござれで正直宝の山としか言い様…
思春期を生きるというのは真綿で首を絞められるような苦しみを伴う。自分を支配しようとする親や先生たち、自分と同じ長さを生きているはずだのにどうにも理解できない同級生や友人たち、そして何より大人と子供の間で身体も心も自由にならない自分への苛立…
最近このブログで紹介してきた奇妙な映画として(注:この記事は結構前に書いて放置していたので、実際は最近じゃない)挙げられるのは、ダミアン・マニヴェルによる愛の劇的な移ろいを描いた“Le parc”(レビュー記事読んでね) や、引きこもりの母親に振り回され…
アドリアン・シタル&"Pescuit sportiv"/倫理の網に絡め取られて アドリアン・シタル&"Din dragoste cu cele mai bune intentii"/俺の親だって死ぬかもしれないんだ…… アドリアン・シタル監督の略歴と彼の長編についてはこちら参照前、ルーマニアの友人と犬…
人間は生きている限り、老いからは逃れられない。その例外は一切存在していない。しかし殊に、誰かの子供であった私たちは自分の親だけは他の人々と違って、ずっと老いることなく自分たちの傍らにいると思ってしまっていないだろうか。それは悲しいがあり得…