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映画痴れ者/ライター済東鉄腸のブログ。日本では全く観ることができない未公開映画について書いてます。お仕事の依頼は 0910gregarious@gmail.com へ

Laurent Pantaléon&“Garanti 100% Kréol”/レユニオン、クレオールのこの混沌よ

さて、レユニオン島である。インド洋に浮かぶフランスの海外県であるこの島には、独自の文化が存在している。最近だと“エレクトロニック・マロヤ”というこの島伝統の音楽マロヤをEDMとして再構築した音楽が世界的に名声を博しており、実は私もどハマりしている。さて今回はそんなレユニオン島に根づく文化を描きだしたドキュメンタリー作品である、Laurent Pantaléon監督作“Garanti 100% Kréol”を紹介していきたいと思う。

今作のテーマとなるのはgaranti ギャランティと呼ばれる文化だ。これはレユニオン島に伝わる呪術的な力のことである。島の人々はこの力が自分たちに幸福をもたらしてくれると信じており、普段から力の宿ったお守りを持ち歩いたり、何か困ったことがあった際には呪術師に相談なども行ったりしている。監督は、このギャランティがいかにレユニオン島の日常に根づいているかを関係者への密着取材やインタビューを通じて描きだそうとする。

例えば彼は呪術師のもとに赴き、彼らが実際に呪術を使う現場をを撮影しながら、呪術や儀式について語ってもらう場面がある。その際に儀式に使うだろう道具が映るのだが、そこにはヒンドゥー教の神を描いた絵などアフリカ文化に限らぬ道具が置いてある。このように土着信仰、レユニオン島の隣に位置するマダガスカル島ひいてはマダガスカル人の文化、植民地化されて後に流入したヨーロッパひいてはキリスト教文化、さらにはここにインドや中国の文化が混淆し、ギャランティは今のような様相を呈しているのが分かる。ちなみに監督が呪術師に何をお願いしたかと言えば、自作映画の成功らしい。

そして例えばこのギャランティのお守りを売り歩く行商人の姿もカメラは映し出していく。彼はカメラの前で面接に通らない女性がお守りを得て仕事に就くことができたというご利益について語ったり、自分の感情をコントロールできないことが悩みという女性がうってつけのお守りはないかと行商人に相談する場面も存在する。こういった光景は、神社で無病息災のお守りを買うといった日本の人々の姿とも遠くはないだろう。

撮影において特徴的なのは、今作の少なくない部分が映像ではなくラ・ジュテといった作品のように白黒写真の連なりで構成されていることだろう。彩りを廃した、陰影が濃い写真の数々には、煙のくゆりや呪術師たちの表情、そして儀式の熱量がより鮮烈に浮かぶわけだ。白魔術と黒魔術の話題も出てくるので、その白と黒に合わせた意味でもこういった演出は粋かもしれない。

さらにギャランティの儀式においてはレユニオン島の伝統音楽であるマロヤが流れる。そのリズム感はひどく独特で幻惑的な響きを宿しており、儀式の熱気と相まって、画面越しにも意識を持っていかれそうな感覚がある。作品中には、昔はこれを聴きながら踊り狂っていたがトランス状態になりすぎることに危機感を覚え、この習慣を断ち切りキリスト教に帰依したという女性も登場するが、その言葉も納得の魅力がある。

そして私が冒頭で書いたエレクトロニック・マロヤという音楽ジャンルは、正にこういった音楽の現代的解釈でもあるわけだ。今ジャンルに関しては日本語でも特集記事があるのでぜひそれを通じてエレクトロニック・マロヤに親しんでほしいが、そのファンである私はこの源を見ることができた感慨がある。こういった呪術文化が背景にあること、全く納得だ。

今作の題名にある“Kréol クレオール”とはさまざまな人種が混じり合って生まれたカオスの文化の総称であり、カリブ海やアフリカなど西欧に植民地化された地域で発展することになった、ある種の抵抗の文化でもある。そしてレユニオン島に息づいたギャランティという文化は、徹頭徹尾100%クレオール文化なのである!“Garanti 100% Kréol”それを観客に饒舌に語る作品なのである。